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道連れの先にある幸せ
長く、そして、夢のように幸せな一日は、終わりを告げた。
王宮の、主の寝室として、新しくあてがわれた、その部屋で、私は、アレクシスと、二人きりになっていた。
窓の外では、静かな夜が、広がっている。
私は、緊張のあまり、どうしていいかわからず、ただ、窓辺に佇んでいた。
すると、後ろから、彼が、そっと、私を、抱きしめてくれた。
彼の、逞しい胸の中に、すっぽりと、包み込まれる。
「……疲れただろう、レベッカ」
「いいえ。とても、幸せな、一日でしたわ」
「そうか。それは、良かった」
彼は、私の髪に、顔をうずめ、その香りを、吸い込んだ。
そして、私の耳元で、甘く、囁く。
「……覚えているか、レベッカ」
「え……?」
「最初に、君との婚約が決まった、あの日のことを」
「ええ。もちろん、覚えておりますわ」
忘れるはずがない。
あの、屈辱と、絶望に満ちた、始まりの日を。
「あの時、アナスタシアが、俺の心を、勝手に、暴露しただろう?」
彼の言葉に、私は、くすりと、笑ってしまった。
「ええ。『毎晩でも、そのプライドごと、抱き潰してやりたい』と、殿下は、お考えでしたわよね?」
「ああ」
彼は、私の体を、自分の方へと、くるり、と向き直らせる。
そして、私の瞳を、まっすぐに、見つめて、言った。
「あれは、紛れもない、俺の本心だった」
彼の、熱のこもった、青い瞳。
その瞳に見つめられると、体中の、血が、沸騰してしまいそうだった。
私は、照れ隠しに、彼の胸を、軽く、叩く。
「まあ、なんて、はしたないことを」
「はしたないか? だが、今も、その気持ちは、変わらない。いや、あの時以上に、強くなっている」
彼は、私の顎に、そっと、指を添えると、顔を、近づけてくる。
「レベッカ。君を、愛している。君の、全てが、欲しい」
その、熱烈な、愛の言葉に、私は、もう、抗うことなど、できなかった。
「……存じておりましたわ」
私も、彼に、自分の気持ちを、素直に、告げる。
「そして、わたくしも、あなたに、抱かれたいと、ずっと、ずっと思っておりましたのよ、アレクシス」
初めて、彼のことを、愛称で呼んだ。
その瞬間、彼の瞳が、驚きと、そして、どうしようもないほどの、歓喜に、見開かれる。
「……ああ、レベッカ……!」
私たちの唇が、再び、重なり合う。
それは、もう、誓いのキスのような、優しいものではなかった。
互いの、存在を、確かめ合うような、深く、激しく、そして、どこまでも、甘美な、口づけ。
彼は、私を、軽々と、抱き上げると、そのまま、ベッドへと、運んでいく。
これから、始まる、愛の営み。
それは、私と彼が、心も、体も、完全に、一つになる、聖なる儀式。
もう、何も、怖いものは、ない。
この人の腕の中でなら、私は、どこまでも、堕ちていける。
道連れに、してやると、誓った、あの夜。
まさか、その道連れの先に、こんなにも、温かく、幸せな未来が、待っているなんて、誰が、想像しただろうか。
――そして、数年の、時が流れた。
王宮の庭園では、小さな、二つの影が、楽しそうに、走り回っている。
アレクシスに、そっくりな、金色の髪を持つ、幼い王子。
そして、私に、似たという、少し、気の強そうな、黒髪の、愛らしい王女。
「まあ、二人とも、そんなに走っては、転んでしまいますわよ」
ベンチに座り、私は、微笑みながら、子供たちに、声をかける。
その、私の肩を、たくましい腕が、優しく、抱き寄せた。
「放っておけ。子供は、風の子だ」
隣には、国王としての威厳と、父親としての優しさを、兼ね備えた、アレクシスが、座っている。
私は、彼の胸に、そっと、寄り添った。
「……思い返せば、不思議なものですわね」
「何がだ?」
「わたくし、最初は、あなたのことを、道連れにして、破滅させてやろうと、思っていたのですから」
私の言葉に、彼は、愛しそうに、笑う。
「ああ。だが、君が、俺を、道連れにしてくれたからこそ、今の、この幸せがあるんだ」
彼は、私の額に、優しく、キスを落とす。
子供たちの、楽しそうな、笑い声。
木々の間を、吹き抜ける、穏やかな風。
愛する人の、温かい、温もり。
全てが、ここに、ある。
道連れから始まった、私たちの、不器用な恋。
それは、これからも、永遠に、この、幸せな日常へと、続いていくのだろう。
【完】
長く、そして、夢のように幸せな一日は、終わりを告げた。
王宮の、主の寝室として、新しくあてがわれた、その部屋で、私は、アレクシスと、二人きりになっていた。
窓の外では、静かな夜が、広がっている。
私は、緊張のあまり、どうしていいかわからず、ただ、窓辺に佇んでいた。
すると、後ろから、彼が、そっと、私を、抱きしめてくれた。
彼の、逞しい胸の中に、すっぽりと、包み込まれる。
「……疲れただろう、レベッカ」
「いいえ。とても、幸せな、一日でしたわ」
「そうか。それは、良かった」
彼は、私の髪に、顔をうずめ、その香りを、吸い込んだ。
そして、私の耳元で、甘く、囁く。
「……覚えているか、レベッカ」
「え……?」
「最初に、君との婚約が決まった、あの日のことを」
「ええ。もちろん、覚えておりますわ」
忘れるはずがない。
あの、屈辱と、絶望に満ちた、始まりの日を。
「あの時、アナスタシアが、俺の心を、勝手に、暴露しただろう?」
彼の言葉に、私は、くすりと、笑ってしまった。
「ええ。『毎晩でも、そのプライドごと、抱き潰してやりたい』と、殿下は、お考えでしたわよね?」
「ああ」
彼は、私の体を、自分の方へと、くるり、と向き直らせる。
そして、私の瞳を、まっすぐに、見つめて、言った。
「あれは、紛れもない、俺の本心だった」
彼の、熱のこもった、青い瞳。
その瞳に見つめられると、体中の、血が、沸騰してしまいそうだった。
私は、照れ隠しに、彼の胸を、軽く、叩く。
「まあ、なんて、はしたないことを」
「はしたないか? だが、今も、その気持ちは、変わらない。いや、あの時以上に、強くなっている」
彼は、私の顎に、そっと、指を添えると、顔を、近づけてくる。
「レベッカ。君を、愛している。君の、全てが、欲しい」
その、熱烈な、愛の言葉に、私は、もう、抗うことなど、できなかった。
「……存じておりましたわ」
私も、彼に、自分の気持ちを、素直に、告げる。
「そして、わたくしも、あなたに、抱かれたいと、ずっと、ずっと思っておりましたのよ、アレクシス」
初めて、彼のことを、愛称で呼んだ。
その瞬間、彼の瞳が、驚きと、そして、どうしようもないほどの、歓喜に、見開かれる。
「……ああ、レベッカ……!」
私たちの唇が、再び、重なり合う。
それは、もう、誓いのキスのような、優しいものではなかった。
互いの、存在を、確かめ合うような、深く、激しく、そして、どこまでも、甘美な、口づけ。
彼は、私を、軽々と、抱き上げると、そのまま、ベッドへと、運んでいく。
これから、始まる、愛の営み。
それは、私と彼が、心も、体も、完全に、一つになる、聖なる儀式。
もう、何も、怖いものは、ない。
この人の腕の中でなら、私は、どこまでも、堕ちていける。
道連れに、してやると、誓った、あの夜。
まさか、その道連れの先に、こんなにも、温かく、幸せな未来が、待っているなんて、誰が、想像しただろうか。
――そして、数年の、時が流れた。
王宮の庭園では、小さな、二つの影が、楽しそうに、走り回っている。
アレクシスに、そっくりな、金色の髪を持つ、幼い王子。
そして、私に、似たという、少し、気の強そうな、黒髪の、愛らしい王女。
「まあ、二人とも、そんなに走っては、転んでしまいますわよ」
ベンチに座り、私は、微笑みながら、子供たちに、声をかける。
その、私の肩を、たくましい腕が、優しく、抱き寄せた。
「放っておけ。子供は、風の子だ」
隣には、国王としての威厳と、父親としての優しさを、兼ね備えた、アレクシスが、座っている。
私は、彼の胸に、そっと、寄り添った。
「……思い返せば、不思議なものですわね」
「何がだ?」
「わたくし、最初は、あなたのことを、道連れにして、破滅させてやろうと、思っていたのですから」
私の言葉に、彼は、愛しそうに、笑う。
「ああ。だが、君が、俺を、道連れにしてくれたからこそ、今の、この幸せがあるんだ」
彼は、私の額に、優しく、キスを落とす。
子供たちの、楽しそうな、笑い声。
木々の間を、吹き抜ける、穏やかな風。
愛する人の、温かい、温もり。
全てが、ここに、ある。
道連れから始まった、私たちの、不器用な恋。
それは、これからも、永遠に、この、幸せな日常へと、続いていくのだろう。
【完】
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