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アルベルトの婚約破棄宣言と、それに続く罵詈雑言。
華やかだった夜会の空気は完全に凍りつき、死のような静寂が大広間を支配していた。
誰もが、息を飲む。
視線の先には、ただ一人、広の中央に取り残されたウピエル。
彼女は、何も言わなかった。
ただ、茫然とアルベルトと、その腕に抱かれるリリアナを見つめている。
その美しい貌から、いつもの能面のような無表情が、まるで張り子の仮面が剥がれ落ちるように、消えていた。
「……え?」
誰かが、小さな声を漏らす。
ウピエルの大きな瞳が、みるみるうちに潤んでいく。
完璧に結われていた唇が、わななと震え始めた。
それは、誰も見たことのない、ウピエルの姿だった。
次の瞬間。
「う……」
彼女の喉から、押し殺したような嗚咽が漏れた。
「う、うわ……」
そして。
「うわあああああああんっ!」
完璧な淑女、冷静沈着な天才令嬢、氷の心を持つと噂されたウピエル・フォン・クライフォルトは、その場にぺたんと座り込み、まるで迷子の子供のように、声を上げて泣き出したのだ。
「ひっく……うわあああん! あんまりですわ……! アルベルト殿下の、うそつきーっ!」
大粒の涙をぽろぽろと零しながら、小さな両手でごしごしと目をこする。
その姿は、これまで彼女が築き上げてきた全てのイメージを木っ端微塵に破壊するものだった。
悪役令嬢でも、氷の令嬢でもない。
そこにいたのは、ただ、信じていた人に裏切られ、心が張り裂けそうになっている、一人の十六歳の少女だった。
広間は、唖然、という言葉ですら生ぬるいほどの衝撃に包まれた。
アルベルトですら、目を白黒させている。
「な……な、なんだ……?」
自分の知っているウピエルと、目の前で号泣している少女が、どうしても結びつかない。
「ど、どうしましょう……ウピエル様が……」
「誰か、ハンカチを……!」
「いや、迂闊に近づけんぞ!」
周りの貴族たちは、右往左往するばかり。
誰もが、泣きじゃくるウピエルにどう対応していいのか分からないのだ。
「ひどい……ひどいですわ……! わたくし、殿下のために、がんばったのに……!」
「お、おい、どうするんだアルベルト……」
アルベルトの友人である侯爵子息が、青い顔で彼に囁く。
「わ、私に聞くな! こんな……こんな姿、見たことがない……!」
アルベルトも狼狽えていた。
彼が望んだのは、感情豊かなウピエルの姿ではなかったのか。
だが、これは、彼の想像を遥かに超えていた。
こんな、赤子のような泣き方をされるなど、夢にも思わなかった。
リリアナもまた、アルベルトの腕の中で呆然とウピエルを見ている。
彼女が思い描いていたのは、怒りに燃えて自分を罵倒する、恐ろしい悪役令嬢の姿だった。
しかし、現実は全く違う。
夜会は、完全に破綻した。
ウピエルの兄たちが、血相を変えて彼女の元に駆け寄り、優しく抱きかかえる。
「ウピエル、もういい、もういいから」
「帰りましょう。こんな場所にいる必要はない」
兄たちに抱きかかえられ、会場を去っていくウピエルは、それでもまだ「うわーん、うわーん」としゃくりあげていた。
その小さな背中を見送りながら、アルベルトは、自分がとんでもないことをしてしまったのではないかという、漠然とした、しかし強烈な予感に襲われ始めていた。
そしてその予感は、すぐに現実のものとなる。
華やかだった夜会の空気は完全に凍りつき、死のような静寂が大広間を支配していた。
誰もが、息を飲む。
視線の先には、ただ一人、広の中央に取り残されたウピエル。
彼女は、何も言わなかった。
ただ、茫然とアルベルトと、その腕に抱かれるリリアナを見つめている。
その美しい貌から、いつもの能面のような無表情が、まるで張り子の仮面が剥がれ落ちるように、消えていた。
「……え?」
誰かが、小さな声を漏らす。
ウピエルの大きな瞳が、みるみるうちに潤んでいく。
完璧に結われていた唇が、わななと震え始めた。
それは、誰も見たことのない、ウピエルの姿だった。
次の瞬間。
「う……」
彼女の喉から、押し殺したような嗚咽が漏れた。
「う、うわ……」
そして。
「うわあああああああんっ!」
完璧な淑女、冷静沈着な天才令嬢、氷の心を持つと噂されたウピエル・フォン・クライフォルトは、その場にぺたんと座り込み、まるで迷子の子供のように、声を上げて泣き出したのだ。
「ひっく……うわあああん! あんまりですわ……! アルベルト殿下の、うそつきーっ!」
大粒の涙をぽろぽろと零しながら、小さな両手でごしごしと目をこする。
その姿は、これまで彼女が築き上げてきた全てのイメージを木っ端微塵に破壊するものだった。
悪役令嬢でも、氷の令嬢でもない。
そこにいたのは、ただ、信じていた人に裏切られ、心が張り裂けそうになっている、一人の十六歳の少女だった。
広間は、唖然、という言葉ですら生ぬるいほどの衝撃に包まれた。
アルベルトですら、目を白黒させている。
「な……な、なんだ……?」
自分の知っているウピエルと、目の前で号泣している少女が、どうしても結びつかない。
「ど、どうしましょう……ウピエル様が……」
「誰か、ハンカチを……!」
「いや、迂闊に近づけんぞ!」
周りの貴族たちは、右往左往するばかり。
誰もが、泣きじゃくるウピエルにどう対応していいのか分からないのだ。
「ひどい……ひどいですわ……! わたくし、殿下のために、がんばったのに……!」
「お、おい、どうするんだアルベルト……」
アルベルトの友人である侯爵子息が、青い顔で彼に囁く。
「わ、私に聞くな! こんな……こんな姿、見たことがない……!」
アルベルトも狼狽えていた。
彼が望んだのは、感情豊かなウピエルの姿ではなかったのか。
だが、これは、彼の想像を遥かに超えていた。
こんな、赤子のような泣き方をされるなど、夢にも思わなかった。
リリアナもまた、アルベルトの腕の中で呆然とウピエルを見ている。
彼女が思い描いていたのは、怒りに燃えて自分を罵倒する、恐ろしい悪役令嬢の姿だった。
しかし、現実は全く違う。
夜会は、完全に破綻した。
ウピエルの兄たちが、血相を変えて彼女の元に駆け寄り、優しく抱きかかえる。
「ウピエル、もういい、もういいから」
「帰りましょう。こんな場所にいる必要はない」
兄たちに抱きかかえられ、会場を去っていくウピエルは、それでもまだ「うわーん、うわーん」としゃくりあげていた。
その小さな背中を見送りながら、アルベルトは、自分がとんでもないことをしてしまったのではないかという、漠然とした、しかし強烈な予感に襲われ始めていた。
そしてその予感は、すぐに現実のものとなる。
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