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しおりを挟むレオノーラ様と別れた私たちは、地図を頼りに、王都の旧市街にある古い教会へと向かった。
そこは、今はもう使われていない、打ち捨てられた礼拝堂だった。
私たちは、きしむ扉を開けて中に入る。
内部は、ステンドグラスから差し込む月明かりに照らされ、どこか物悲しくも、神聖な空気が漂っていた。
「地図によれば、入り口は、この祭壇の下にある地下墓地(カタコンベ)に……」
フブカ王女が囁く。
二人で力を合わせ、重い石でできた祭壇をずらすと、ぽっかりと黒い口を開けた、地下へと続く階段が現れた。
カビと、死の匂いが、じっとりとした空気と共に這い上がってくる。
「……行きますわよ、リルティア様」
「はい……!」
私たちは、覚悟を決め、その暗闇へと足を踏み入れた。
地下通路は、人が一人やっと通れるほどの狭さで、壁からは常に冷たい水が滴り落ちていた。
松明の明かりだけを頼りに、私たちは慎重に進む。
「この通路は、建国時代に、有事の際に王族が逃れるために作られたものだそうです。古い仕掛けが、まだ作動するかもしれませんわ」
フブカ王女の言葉通り、通路には、様々な罠が待ち受けていた。
突然、床が抜け落ちそうになったり、壁から錆びた槍が飛び出してきたり。
そのたびに、フブカ王女が驚異的な身体能力で危険を回避し、私を守ってくれた。
しかし、しばらく進んだ先で、私たちは新たな脅威に直面した。
通路の壁に、見慣れない、真新しい魔道具が埋め込まれていたのだ。
「これは……警報装置ですわ。宰相が仕掛けたものに違いありません」
不用意に近づけば、大きな音が鳴り響き、私たちの侵入が敵に知られてしまうだろう。
「どうしましょう……」
私が青ざめる中、フブか王女が冷静に装置を観察する。
「……解除するには、五つの紋章を正しい順番で押す必要があるようですわね」
装置には、歴代の王家に連なる、五つの古い貴族の紋章が刻まれていた。
「順番なんて、分かりませんわ……!」
「いいえ」
私は、首を横に振った。
王妃教育の一環として、私は王家の歴史と、それに連なる貴族の紋章学を、嫌というほど頭に叩き込まされていた。
まさか、こんな場所で、あの退屈だった勉強が役に立つなんて。
私は、記憶の糸を手繰り寄せ、紋章の持つ意味と、その家の歴史的な繋がりを思い浮かべた。
「……これですわ! 建国の歴史に沿って、王家に忠誠を誓った順番のはず!」
私は、震える指で、一つの紋章を指さした。
「最初に押すのは、『獅子』の紋章、初代騎士団長の家系です!」
フブカ王女は、私の言葉を信じ、その紋章を強く押した。
カチリ、と小さな音がする。
私たちは、息を殺して、次々と紋章を押していく。
そして、最後の紋章を押し込んだ、その時。
警報装置のランプが、赤から緑へと変わり、無力化されたことを示した。
「やりましたわ、リルティア様!」
「ええ……!」
私たちは、手を取り合って喜んだ。
フブカ王女の身体能力と、私の知識。
二人なら、この暗闇を乗り越えられる。
私たちは、互いを信じ、さらに地下通路の奥深くへと、進んでいった。
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