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ゲーセン事変~好きな子が見た目は女神、心は天使だと確信した話3
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「三、二……始まる!」
ゲームどころじゃない心境だったはずなのに、柔らかい声音で促されるとそうしなければならないような気がして、言われた通りに着席する。きっとこれは彼女なりの気遣いなのだ。
覗き込んだ目の縁はうっすらとだが濡れていたように見えた。暴言に傷ついているに違いないのに、それを感じさせないよう明るく振舞う健気さに胸が苦しくなる。
怒りの感情は、すでに対戦相手ではなく自分自身へと向かっていた。
守ることができなかった悔しさや不甲斐なさをぶつけるように、対戦に全力をかける。魅力的なプレイを見せられれば万結の気分が少しは晴れるかもしれない。
安定の三人抜きでCPUを下すと、ようやく肩の力を抜くことができた。
ランキングのトップテン以内に入れるようで、プレイヤー名を入力するように要求されている。いつもなら入力する所だが、今日はそれよりも優先するべきことがあった。
席を離れ、二メートルほど離れた壁際に立つ万結の前まで近づいた。
「小田桐くん、ほんとに強いんだね」
「まあ、それなりに……参考になってたらいいんだけど」
「それは勿論! 帰ったら今日のこと弟に話すよ。ありがとう」
屈託なく笑顔を見せてくれる万結を見て、本当に強いのは彼女の方だと感じていた。
嫌な思いをさせただろうに、けしてそれを見せようとしない。尊敬の念すら感じるのに、もどかしさもあった。
その理由はただのクラスメイトという関係を思い知らされるからだ。怒ったり悲しんだりする姿を見せるほど親しくはないと一線引かれているようで切なかった。
そんな身勝手な考えは自分の中だけにとどめておく。
「こっちこそありがとう。俺、身近な人からゲームのことで褒められたこと、あんまりなくて……嬉しかった」
「そうなんだ。立派な特技だと思うのに」
ゲーム仲間の間では一目置かれているものの、家庭や学校ではあまり自分から趣味について公言しないようにしていた。それは一種の自己防衛だった。
小学生時代は友人と一緒にゲームで遊んでいたこともあった。けれどいつも勝つから疎まれて、そのうち仲間に入れてもらえなくなった。攻略法を教えたりもしたのに理解されなくて、子どもだったから接待プレイなんてできなくて、ただただ寂しかったことを覚えている。
勿論一人でやってもゲームは楽しかったけれど、皆でわいわい騒ぎながら遊ぶ時間が好きだった。
今日、数年ぶりに応援され、勝利を祝われる喜びを思い出すことができて、何にも代えがたいくらいの充実を感じていた。
彼女からもらったものの何分の一かでも返せているだろうか。
改めて感謝の気持ちを伝えようと考えて、呼びかける。
「「あの、」」
すると見事に声が重なった。
「ゴメン、何かな?」
「いや、俺も。先、どうぞ」
譲り合った末、万結が口を開く。
「ごめんなさい」
深々と頭を下げられ、宗吾は慌てる。
「そんな、そこまで謝ってもらわなくても」
「ううん。私のせいで嫌な思いさせちゃったから」
その言葉で発言のタイミングが被ったことではなく、男に絡まれたことを言っているのだと理解する。
「違う。あれは俺のせいだから」
自分が舐められたせいで傷つけてしまったのだ。
「えっ、そんなことないよ」
手ぶりもまじえて否定されるも心は晴れない。
「もっとうまく立ち回れたはずなんだ」
「それは私だって。もっと離れてたら他人のふりもできたし」
恩人にそんな悲しいことを言わせてしまうなんて、自分が情けなかった。
「……でも俺は、山下さんと今日話せて嬉しかった」
たとえ彼女にとってはなかった方がいい時間だったとしても。
「それは私も。小田桐くんのプレイに勇気もらった気がする」
じわりと頬に熱が昇るのがわかった。どこまで好きにさせる気だ、とそら恐ろしくなる。今の言葉は宗吾にとって、人格、人生を肯定されたのと等しい。
「あ……ありがとう」
「いえいえ」
胸を渦巻く激情を伝えるわけにはいかなくて無難なことしか言えなかったが、何とか思いを伝える。
「それじゃ、私そろそろ帰るね」
「うん。また学校で」
バイバイ、と手を振り、柔らかな黒髪を揺らしながら去っていく万結の後ろ姿が完全に見えなくなるまで、瞬きもせずに見送った。
この日、宗吾の中で彼女に対する気持ちは少し変化した。
最初に気になったきっかけは見た目だった。安心感を与える柔らかなフォルムは宗吾の好みと完全に一致していた。
性格も姉たちとは対極で、人を悪く言うことも乱暴な言葉を使うこともない。
その印象は今も変わらない。ただ、大人しくて優しい分繊細なのではと思っていた性格は芯の強さを兼ね備えているとわかった。
追い詰められた時に真の人間性が出ると聞いたことがある。
それなら万結は完璧だ。ほんの三十分ほどの短い時間でより深く惚れ直した。
今日あった出来事は一言一句を完璧に思い浮かべられるくらい鮮烈に記憶に焼き付いている。
ただし、その日をきっかけに彼女と仲良くなった……というようなことはなかった。
数日後、弟と一緒にゲームセンターに行ってみたと教えてくれた時はもしかしたらと期待をしたが、以降はタイミングが合えば挨拶を交わしたり授業で同じ班になった時に必要な会話をするくらいだった。それでも以前と比べれば会話の頻度は増えたと思う。
更に踏み込むことを考えなくもなかったけれど、これまで異性と特別に仲良くしてきた経験がないせいか、具体的にどうしたらよいかがわからなかった。
見ているだけで満足なんて心境には程遠く、できるならもっと話したい、少しでも接点が欲しいと願い続けた。けれど好きになってもらえる自信がまるでなかったし、そもそも好きと伝える資格がないという考えが邪魔をした。
ゲームセンターで絡まれた時にうまく対処できなかったことが尾を引いていたのかもしれない。
半年後、進級と共に万結とはクラスが離れてしまった。そうなってから後悔しても手遅れだ。
手が届かないとわかって諦められるような物分かりのいい性格はしていない。
まさか十年以上も引きずることになるとは予想外だったが。
十年越しの恋が動き出すのは、また別のお話。
ゲーセン事変~好きな子が見た目は女神、心は天使だと確信した話
了
ゲームどころじゃない心境だったはずなのに、柔らかい声音で促されるとそうしなければならないような気がして、言われた通りに着席する。きっとこれは彼女なりの気遣いなのだ。
覗き込んだ目の縁はうっすらとだが濡れていたように見えた。暴言に傷ついているに違いないのに、それを感じさせないよう明るく振舞う健気さに胸が苦しくなる。
怒りの感情は、すでに対戦相手ではなく自分自身へと向かっていた。
守ることができなかった悔しさや不甲斐なさをぶつけるように、対戦に全力をかける。魅力的なプレイを見せられれば万結の気分が少しは晴れるかもしれない。
安定の三人抜きでCPUを下すと、ようやく肩の力を抜くことができた。
ランキングのトップテン以内に入れるようで、プレイヤー名を入力するように要求されている。いつもなら入力する所だが、今日はそれよりも優先するべきことがあった。
席を離れ、二メートルほど離れた壁際に立つ万結の前まで近づいた。
「小田桐くん、ほんとに強いんだね」
「まあ、それなりに……参考になってたらいいんだけど」
「それは勿論! 帰ったら今日のこと弟に話すよ。ありがとう」
屈託なく笑顔を見せてくれる万結を見て、本当に強いのは彼女の方だと感じていた。
嫌な思いをさせただろうに、けしてそれを見せようとしない。尊敬の念すら感じるのに、もどかしさもあった。
その理由はただのクラスメイトという関係を思い知らされるからだ。怒ったり悲しんだりする姿を見せるほど親しくはないと一線引かれているようで切なかった。
そんな身勝手な考えは自分の中だけにとどめておく。
「こっちこそありがとう。俺、身近な人からゲームのことで褒められたこと、あんまりなくて……嬉しかった」
「そうなんだ。立派な特技だと思うのに」
ゲーム仲間の間では一目置かれているものの、家庭や学校ではあまり自分から趣味について公言しないようにしていた。それは一種の自己防衛だった。
小学生時代は友人と一緒にゲームで遊んでいたこともあった。けれどいつも勝つから疎まれて、そのうち仲間に入れてもらえなくなった。攻略法を教えたりもしたのに理解されなくて、子どもだったから接待プレイなんてできなくて、ただただ寂しかったことを覚えている。
勿論一人でやってもゲームは楽しかったけれど、皆でわいわい騒ぎながら遊ぶ時間が好きだった。
今日、数年ぶりに応援され、勝利を祝われる喜びを思い出すことができて、何にも代えがたいくらいの充実を感じていた。
彼女からもらったものの何分の一かでも返せているだろうか。
改めて感謝の気持ちを伝えようと考えて、呼びかける。
「「あの、」」
すると見事に声が重なった。
「ゴメン、何かな?」
「いや、俺も。先、どうぞ」
譲り合った末、万結が口を開く。
「ごめんなさい」
深々と頭を下げられ、宗吾は慌てる。
「そんな、そこまで謝ってもらわなくても」
「ううん。私のせいで嫌な思いさせちゃったから」
その言葉で発言のタイミングが被ったことではなく、男に絡まれたことを言っているのだと理解する。
「違う。あれは俺のせいだから」
自分が舐められたせいで傷つけてしまったのだ。
「えっ、そんなことないよ」
手ぶりもまじえて否定されるも心は晴れない。
「もっとうまく立ち回れたはずなんだ」
「それは私だって。もっと離れてたら他人のふりもできたし」
恩人にそんな悲しいことを言わせてしまうなんて、自分が情けなかった。
「……でも俺は、山下さんと今日話せて嬉しかった」
たとえ彼女にとってはなかった方がいい時間だったとしても。
「それは私も。小田桐くんのプレイに勇気もらった気がする」
じわりと頬に熱が昇るのがわかった。どこまで好きにさせる気だ、とそら恐ろしくなる。今の言葉は宗吾にとって、人格、人生を肯定されたのと等しい。
「あ……ありがとう」
「いえいえ」
胸を渦巻く激情を伝えるわけにはいかなくて無難なことしか言えなかったが、何とか思いを伝える。
「それじゃ、私そろそろ帰るね」
「うん。また学校で」
バイバイ、と手を振り、柔らかな黒髪を揺らしながら去っていく万結の後ろ姿が完全に見えなくなるまで、瞬きもせずに見送った。
この日、宗吾の中で彼女に対する気持ちは少し変化した。
最初に気になったきっかけは見た目だった。安心感を与える柔らかなフォルムは宗吾の好みと完全に一致していた。
性格も姉たちとは対極で、人を悪く言うことも乱暴な言葉を使うこともない。
その印象は今も変わらない。ただ、大人しくて優しい分繊細なのではと思っていた性格は芯の強さを兼ね備えているとわかった。
追い詰められた時に真の人間性が出ると聞いたことがある。
それなら万結は完璧だ。ほんの三十分ほどの短い時間でより深く惚れ直した。
今日あった出来事は一言一句を完璧に思い浮かべられるくらい鮮烈に記憶に焼き付いている。
ただし、その日をきっかけに彼女と仲良くなった……というようなことはなかった。
数日後、弟と一緒にゲームセンターに行ってみたと教えてくれた時はもしかしたらと期待をしたが、以降はタイミングが合えば挨拶を交わしたり授業で同じ班になった時に必要な会話をするくらいだった。それでも以前と比べれば会話の頻度は増えたと思う。
更に踏み込むことを考えなくもなかったけれど、これまで異性と特別に仲良くしてきた経験がないせいか、具体的にどうしたらよいかがわからなかった。
見ているだけで満足なんて心境には程遠く、できるならもっと話したい、少しでも接点が欲しいと願い続けた。けれど好きになってもらえる自信がまるでなかったし、そもそも好きと伝える資格がないという考えが邪魔をした。
ゲームセンターで絡まれた時にうまく対処できなかったことが尾を引いていたのかもしれない。
半年後、進級と共に万結とはクラスが離れてしまった。そうなってから後悔しても手遅れだ。
手が届かないとわかって諦められるような物分かりのいい性格はしていない。
まさか十年以上も引きずることになるとは予想外だったが。
十年越しの恋が動き出すのは、また別のお話。
ゲーセン事変~好きな子が見た目は女神、心は天使だと確信した話
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