草むしりでもしてろ!と草をぶちまけられた草取り少年、葉っぱカッターを覚える 〜お花の国にご贔屓にされた僕は、花壇でのびのびと無双する〜

カミキリ虫

文字の大きさ
3 / 51
第1章 草取りの覚醒

3話 応援してくれる女の子

しおりを挟む
「プランくん、今、大変なんだよね……。でも、頑張ってて偉いね。そんなプランくんには、このお弁当食べて元気出してほしいなっ」

「あ、ありがとうございます……」

 ベンチに座っているアリアさんが、隣にいる僕の膝に包みを置いてくれた。
 それは暖かいお弁当で……その暖かさを感じると心まで温かくなった。

 アリアさん。
 茶色の髪、年は僕と同じか、少しだけ年上のような雰囲気がある女の人だ。
 柔らかい印象を受ける彼女は、大きな黄金色の瞳を向けてくれる。

 アリアさんとは、よく街で会うことが多い。
 そして、こんな風にお弁当をくれることも、今まで何度もあった。

「うんっ。だってプランくん、いつも頑張ってるから、見かけたら応援したくなるもんっ。……っていっても、そのお弁当は昨日の残り物で作ったやつだから、ごめんね」

「い、いえ、とても嬉しいです」

「ふふっ、ならよかったっ」

 微笑んでくれるアリアさん。
 本当に嬉しい。

 アリアさんがくれたお弁当は、何か尊いようなものに見えた。
 包みを開けてみると、丸々と入っている肉、バランスのいい野菜。綺麗なご飯で、食べるのが勿体ないぐらいだ。

 でも……ここまでやってもらってもいいのかとも思う。僕はアリアさんにしてもらうばっかりで、何も返せてはいない。

「そんなことないよ。私だってプランくんから元気をもらってるんだから。それと……ほら、これ」

「あ、それはクリーム……」

「うんっ。この前プランくんがくれたクリームだよ」

 アリアさんの手に持たれていたのは、容器に入れられたクリームだった。
 あれは、この前僕が薬草で作った、手荒れとかに効果があるクリームだ。

 まだ、持っててくれたんだ……。

「そうだよ。いつも大事に使わせてもらってます。だから、これもお返し。私はプランくんが頑張ってるの知ってるから、それだけは覚えててね」

「アリアさん……」

 穏やかな日差しが差し込んでいるベンチは、暖かくて、隣にいるアリアさんの姿がほのかに光って見えた。
 そんなアリアさんと一緒に食べるご飯は、美味しかった。

 そして、しばらく会話をすると僕たちは別れることになり、お互いに手を振り合った。

「じゃあプランくん、またね」

「はい。ありがとうございました」

「うん。プランくんならきっといつかその頑張りが報われると思うから、頑張ろうね! 私も頑張るから!」

 明るくそう言ってくれるアリアさんは眩しかった。
 その姿を見ていると、こっちまで元気付けられる。

 ……そうだ。頑張らないと。
 そんな僕の足は、自然にギルドへと向かっていた。



 ……とはいっても、僕にできることといえば決まっていて、


「お、プランくん、この依頼だよね。分かってる。うんうん。頑張りたまえよ」

「……ど、どうも」

 ギルドの建物の中に入り、掲示板のところへと向かうと、そこにいた冒険者が一枚の依頼書を差し出してきた。
 それは『薬草採取の依頼』。

 ……これは一人でギルドにくると、なぜかいつものように僕に差し出されるやつだ。

『薬草採取の依頼』……。
 それは、冒険者になりたての人がやるようなことで、みんなが僕にこれを勧めてくるのだ……。

「プランくんはなんといっても、【草取り】だからね。期待しているよ」

「ど、どうも……」

 ……悪気はないのだろう。

 僕はそれだけ言うと、受付へと向かう。
 その間も、周りの冒険者たちは生暖かい目を向けてきていて、ギルドには居づらい雰囲気をとても感じる。

 それでも、僕は依頼の手続きを終えると、街の外へと向かい早速薬草を探し始めた。

 晴れ晴れと晴れ渡る空の下、地面を見てみると草が生えている。

 雑草や、薬草。
 街の近くで探すよりも、少し離れた所の方が質のいいのが見つかるから、僕がいつも薬草採取をするのは、街から距離を置いた場所でだった。

「今日はこの辺りでいいかな……」

 プチ……っ。

 一本抜き、質を確認する。

 ……うん、いい質だ。
 あと【草取り】の能力で、少しだけ質が上がり、若緑色だった薬草が深緑色になったのが見て取れる。

 所詮は薬草。
 報酬の査定には響かないけど、どうせ採るなら質のいい方がいいはずだ。

 僕は地面にしゃがむと、それをせっせと集めていく。

 この作業をしていると腰が痛くなるけど、もう慣れたものだ。

 採取している最中は、いろんなことが頭の中に渦巻いている。

 それを振り払うように、もう一本僕は薬草を抜いた。

 ……すると、そんな時だった。

「この匂い……」

 ふと、土の匂いと虫のような匂いを感じて、僕は顔を上げた。

 すると、遠くの方で誰かが魔物と相対している姿が見えた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...