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第1章 草取りの覚醒
3話 応援してくれる女の子
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「プランくん、今、大変なんだよね……。でも、頑張ってて偉いね。そんなプランくんには、このお弁当食べて元気出してほしいなっ」
「あ、ありがとうございます……」
ベンチに座っているアリアさんが、隣にいる僕の膝に包みを置いてくれた。
それは暖かいお弁当で……その暖かさを感じると心まで温かくなった。
アリアさん。
茶色の髪、年は僕と同じか、少しだけ年上のような雰囲気がある女の人だ。
柔らかい印象を受ける彼女は、大きな黄金色の瞳を向けてくれる。
アリアさんとは、よく街で会うことが多い。
そして、こんな風にお弁当をくれることも、今まで何度もあった。
「うんっ。だってプランくん、いつも頑張ってるから、見かけたら応援したくなるもんっ。……っていっても、そのお弁当は昨日の残り物で作ったやつだから、ごめんね」
「い、いえ、とても嬉しいです」
「ふふっ、ならよかったっ」
微笑んでくれるアリアさん。
本当に嬉しい。
アリアさんがくれたお弁当は、何か尊いようなものに見えた。
包みを開けてみると、丸々と入っている肉、バランスのいい野菜。綺麗なご飯で、食べるのが勿体ないぐらいだ。
でも……ここまでやってもらってもいいのかとも思う。僕はアリアさんにしてもらうばっかりで、何も返せてはいない。
「そんなことないよ。私だってプランくんから元気をもらってるんだから。それと……ほら、これ」
「あ、それはクリーム……」
「うんっ。この前プランくんがくれたクリームだよ」
アリアさんの手に持たれていたのは、容器に入れられたクリームだった。
あれは、この前僕が薬草で作った、手荒れとかに効果があるクリームだ。
まだ、持っててくれたんだ……。
「そうだよ。いつも大事に使わせてもらってます。だから、これもお返し。私はプランくんが頑張ってるの知ってるから、それだけは覚えててね」
「アリアさん……」
穏やかな日差しが差し込んでいるベンチは、暖かくて、隣にいるアリアさんの姿がほのかに光って見えた。
そんなアリアさんと一緒に食べるご飯は、美味しかった。
そして、しばらく会話をすると僕たちは別れることになり、お互いに手を振り合った。
「じゃあプランくん、またね」
「はい。ありがとうございました」
「うん。プランくんならきっといつかその頑張りが報われると思うから、頑張ろうね! 私も頑張るから!」
明るくそう言ってくれるアリアさんは眩しかった。
その姿を見ていると、こっちまで元気付けられる。
……そうだ。頑張らないと。
そんな僕の足は、自然にギルドへと向かっていた。
……とはいっても、僕にできることといえば決まっていて、
「お、プランくん、この依頼だよね。分かってる。うんうん。頑張りたまえよ」
「……ど、どうも」
ギルドの建物の中に入り、掲示板のところへと向かうと、そこにいた冒険者が一枚の依頼書を差し出してきた。
それは『薬草採取の依頼』。
……これは一人でギルドにくると、なぜかいつものように僕に差し出されるやつだ。
『薬草採取の依頼』……。
それは、冒険者になりたての人がやるようなことで、みんなが僕にこれを勧めてくるのだ……。
「プランくんはなんといっても、【草取り】だからね。期待しているよ」
「ど、どうも……」
……悪気はないのだろう。
僕はそれだけ言うと、受付へと向かう。
その間も、周りの冒険者たちは生暖かい目を向けてきていて、ギルドには居づらい雰囲気をとても感じる。
それでも、僕は依頼の手続きを終えると、街の外へと向かい早速薬草を探し始めた。
晴れ晴れと晴れ渡る空の下、地面を見てみると草が生えている。
雑草や、薬草。
街の近くで探すよりも、少し離れた所の方が質のいいのが見つかるから、僕がいつも薬草採取をするのは、街から距離を置いた場所でだった。
「今日はこの辺りでいいかな……」
プチ……っ。
一本抜き、質を確認する。
……うん、いい質だ。
あと【草取り】の能力で、少しだけ質が上がり、若緑色だった薬草が深緑色になったのが見て取れる。
所詮は薬草。
報酬の査定には響かないけど、どうせ採るなら質のいい方がいいはずだ。
僕は地面にしゃがむと、それをせっせと集めていく。
この作業をしていると腰が痛くなるけど、もう慣れたものだ。
採取している最中は、いろんなことが頭の中に渦巻いている。
それを振り払うように、もう一本僕は薬草を抜いた。
……すると、そんな時だった。
「この匂い……」
ふと、土の匂いと虫のような匂いを感じて、僕は顔を上げた。
すると、遠くの方で誰かが魔物と相対している姿が見えた。
「あ、ありがとうございます……」
ベンチに座っているアリアさんが、隣にいる僕の膝に包みを置いてくれた。
それは暖かいお弁当で……その暖かさを感じると心まで温かくなった。
アリアさん。
茶色の髪、年は僕と同じか、少しだけ年上のような雰囲気がある女の人だ。
柔らかい印象を受ける彼女は、大きな黄金色の瞳を向けてくれる。
アリアさんとは、よく街で会うことが多い。
そして、こんな風にお弁当をくれることも、今まで何度もあった。
「うんっ。だってプランくん、いつも頑張ってるから、見かけたら応援したくなるもんっ。……っていっても、そのお弁当は昨日の残り物で作ったやつだから、ごめんね」
「い、いえ、とても嬉しいです」
「ふふっ、ならよかったっ」
微笑んでくれるアリアさん。
本当に嬉しい。
アリアさんがくれたお弁当は、何か尊いようなものに見えた。
包みを開けてみると、丸々と入っている肉、バランスのいい野菜。綺麗なご飯で、食べるのが勿体ないぐらいだ。
でも……ここまでやってもらってもいいのかとも思う。僕はアリアさんにしてもらうばっかりで、何も返せてはいない。
「そんなことないよ。私だってプランくんから元気をもらってるんだから。それと……ほら、これ」
「あ、それはクリーム……」
「うんっ。この前プランくんがくれたクリームだよ」
アリアさんの手に持たれていたのは、容器に入れられたクリームだった。
あれは、この前僕が薬草で作った、手荒れとかに効果があるクリームだ。
まだ、持っててくれたんだ……。
「そうだよ。いつも大事に使わせてもらってます。だから、これもお返し。私はプランくんが頑張ってるの知ってるから、それだけは覚えててね」
「アリアさん……」
穏やかな日差しが差し込んでいるベンチは、暖かくて、隣にいるアリアさんの姿がほのかに光って見えた。
そんなアリアさんと一緒に食べるご飯は、美味しかった。
そして、しばらく会話をすると僕たちは別れることになり、お互いに手を振り合った。
「じゃあプランくん、またね」
「はい。ありがとうございました」
「うん。プランくんならきっといつかその頑張りが報われると思うから、頑張ろうね! 私も頑張るから!」
明るくそう言ってくれるアリアさんは眩しかった。
その姿を見ていると、こっちまで元気付けられる。
……そうだ。頑張らないと。
そんな僕の足は、自然にギルドへと向かっていた。
……とはいっても、僕にできることといえば決まっていて、
「お、プランくん、この依頼だよね。分かってる。うんうん。頑張りたまえよ」
「……ど、どうも」
ギルドの建物の中に入り、掲示板のところへと向かうと、そこにいた冒険者が一枚の依頼書を差し出してきた。
それは『薬草採取の依頼』。
……これは一人でギルドにくると、なぜかいつものように僕に差し出されるやつだ。
『薬草採取の依頼』……。
それは、冒険者になりたての人がやるようなことで、みんなが僕にこれを勧めてくるのだ……。
「プランくんはなんといっても、【草取り】だからね。期待しているよ」
「ど、どうも……」
……悪気はないのだろう。
僕はそれだけ言うと、受付へと向かう。
その間も、周りの冒険者たちは生暖かい目を向けてきていて、ギルドには居づらい雰囲気をとても感じる。
それでも、僕は依頼の手続きを終えると、街の外へと向かい早速薬草を探し始めた。
晴れ晴れと晴れ渡る空の下、地面を見てみると草が生えている。
雑草や、薬草。
街の近くで探すよりも、少し離れた所の方が質のいいのが見つかるから、僕がいつも薬草採取をするのは、街から距離を置いた場所でだった。
「今日はこの辺りでいいかな……」
プチ……っ。
一本抜き、質を確認する。
……うん、いい質だ。
あと【草取り】の能力で、少しだけ質が上がり、若緑色だった薬草が深緑色になったのが見て取れる。
所詮は薬草。
報酬の査定には響かないけど、どうせ採るなら質のいい方がいいはずだ。
僕は地面にしゃがむと、それをせっせと集めていく。
この作業をしていると腰が痛くなるけど、もう慣れたものだ。
採取している最中は、いろんなことが頭の中に渦巻いている。
それを振り払うように、もう一本僕は薬草を抜いた。
……すると、そんな時だった。
「この匂い……」
ふと、土の匂いと虫のような匂いを感じて、僕は顔を上げた。
すると、遠くの方で誰かが魔物と相対している姿が見えた。
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