草むしりでもしてろ!と草をぶちまけられた草取り少年、葉っぱカッターを覚える 〜お花の国にご贔屓にされた僕は、花壇でのびのびと無双する〜

カミキリ虫

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第4章 幻の花ユグドラシルフラワー

36話 プランがいなくても、俺たちは倒せるんだ……! (元パーティー)

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「くそ……。このままだと、俺たちはいい笑いもんだ……ッ」

 一人の男が苛立たしげに壁を殴った。その音は騒がしいギルド内に消えて行く。

 ここは以前、プランが活動していた街の冒険者ギルド。
 その酒場の隅っこ。そこには三人の冒険者がいて、その三人は肩身の狭い思いをしていた。三人は以前、プランとパーティーを組んでいた男たちである。

 プランを追放して以来、彼らには不幸が降り注ぎ続けていた。

 プランよりも自分たちの方が強いことを証明するために挑んだ、キングキャタピラー討伐は失敗し。
 そのせいで、ランクが一気に降格し、BランクだったのがDランクに。そして今ではEランクにまで落ちている。ほぼ、ルーキーと変わらないまでになっていた。

 ギルドが始まって以来、そんな冒険者は今までおらず、どれだけ三人の実力が不相応だったのかが明るみに出ている。
 それを知っている周りの冒険者たちは、プランが元いたパーティーのことをすでに冒険者とも思っておらず、三人は肩身の狭い思いをしている。

 ……そして、三人もすでに気づいていた。
 このパーティーが落ちぶれたのは、プランがいなくなったからだと。

 そもそも、プランは村の村長に言われてカルゴとパーティーを組んでいただけで、本来はカルゴたちとはレベルが違うのだ。

「おい、どうすんだよ……。俺たち、次に失敗したら今度こそやべえって……」

 パーティーの一人、ゲーラが貧乏ゆすりをしながら、焦っている。

「お前も、少しは考えろや! その頭は飾りかぁ? ほんと、使えねえ奴だな、お前は!」

 カルゴが煽るように言って舌打ちすると、ゲーラも舌打ちをしてカルゴを見下す。
 明らかに不機嫌な二人は、先日依頼に失敗して以来、諍いを起こしている。

「お前も少しは何か言えよ。ほんと、偉そうな口ばっかりベラベラと喋るわりに、肝心なところでは使えねえよな。なあ、アードさんよ?」

 カルゴが憂さ晴らしとばかりに、アードを煽った。

「……君と一緒にしないでくれないかな。一体、誰に口を聞いているのか分かっているのかい?」

「おめえだよ。何にも役に立たねえ、アードさんよ?」

「チッ、……君にだけは言われたくないね」

 アードも舌打ちをする。
 もはやこの三人は、パーティーと呼べるだけの間柄ではなかった。

 しかしそれでもパーティーを組み続けているのには理由がある。
 それは、三人の実力不足の事実が広がっているため、誰もパーティーに入れてくれないのだ。
 ソロで冒険に行くことなど、自殺するに等しい。故に、どこにも入れない三人は、この三人で組むしかないのだ。
 しかも三人のランクは、ほぼ最底辺。このままソロになりでもしたら、すぐに命を落とすことになるだろう。

 それを挽回するためにも、何かをしないといけない。
 自分たちの実力を知らしめるような、何か、を。

 ……そして、そんな時、カルゴは掲示板の方を見て、とある依頼が張り出されていることに気づいた。
 それはーー

「……決めた。ドラゴンの討伐に行くぞ」

「は? 冗談だろ」

「冗談じゃねえよ。もう、これしかねえって、てめえらも分かってんだろ」

 ドラゴンの討伐。
 魔物の中でも、上位に君臨するドラゴン。
 それを倒せば、名声が広がるだろう。さすれば、今の底辺の位置から抜け出すことができて、もっと上を目指すこともできるはずだ。

「俺たちは、そもそもBランクまで登りつめたんだ。ドラゴンを倒せる実力もあるはずだ」

「だが……」

「あ? お前、ビビってんのかよ」

「いや、しかしーー」

「おいおい、ゲーラさんよ? お前はやっぱり口だけの野郎だったのか? こんくらいでビビってるとか、お前、マジありえねえわ」

 そのカルゴの言葉にアードとゲーラは苦々しげに、歯を食いしばった。

 プランを追い出したことで、このザマで。
 おそらくこのままだと、三人は冒険者として馬鹿にされ続けるはずだ。

 自分たちがそうだったのだから。
 自分よりもプランの方が下だと思い込んで、あざ笑って追放した。
 それが三人に跳ね返ってくるだけ。全ては因果応報。自業自得なのだ。

「くそ……」

 そうして三人はもうそれしかないことを悟り、依頼書を剥がして受付に行くことにした。

 それでも、自分たちならやれるとまだ信じてもいた。
 ドラゴンなんざ、楽勝だ。俺たちは元々Bランクまで登りつめていたんだ。相手はでかい的で、小手先の技術よりも、そもそもの実力があれば倒すことができる。
 そして、周りが自分たちの実力を知って吠え面をかくのを見てやる、と。


 しかしーー

「こちらの依頼を受理することはできません」

「はあ!? なんでだよ!」

「なんでも何も、こちらの依頼はBランク以上の方のみが受けることのできる依頼です。Eランクに降格したあなたたちには、受けるための条件を満たしていないのです」

『おいおい、あいつなんだろ? 降格した奴らって。冒険者を続けてて、惨めになんねーのかね』

『言えてる』

 受付嬢とカルゴたちの話を聞いていた冒険者たちが、笑い声をあげた
 それらは全て、カルゴたちに向けられており、三人は逃げるようにギルドを出ることしかできなかった。

「く、くそが……! あの雑魚どもが。舐めやがって!」

「まじ、ありえねえ……。こうなったらギルドを通さずに、行くしかねえよな……」

「腹立たしい……。僕の力を知らないくせに……」

 ギルドを出た三人は、針のむしろだった。

 ギルドで依頼を受けるのは無理。ランクが足りない。
 だったら、依頼を受けずに、ドラゴンを倒しに行くしかない。
 そうすれば、さすがのあいつらも黙るはずだ。

 そうして三人は、名誉挽回のために、ドラゴンが生息するという山へと向かうことにしたのだが……、



 * * * * * *



『グガャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

「「「ひ、ひぃ……。な、なんだよこれ……」」」

 数十日かかってようやくたどり着けた山の中で、三人は目の前にいるドラゴンの咆哮を受けて動けなくなっており、腰を抜かしたことで、立つこともできなくなっていたのだった。
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