聖女と作る眷属のハーレム 〜人知れず村の生活を豊かにしていた少年は、いずれ全ての聖女たちから溺愛されることになるそうです〜

カミキリ虫

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第1章

17話 一旦のお預けと、追われている馬車

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『……私を降臨させたのは……あなたたち?』

 紅い髪で、紅い瞳をこちらに向けながら、彼女は静かにそう聞いてきた。
 その身を包んでいるのは、赤をベースにした服。それに白銀色が混ざっており、派手めな見た目に反して、彼女の言葉遣いは大人しそうなものだった。

 この子がスキルに応えてくれた、一番目の眷属……。

「うん。最初の子だよ……! テオの子だよ……!」

 隣にいるテトラが目を輝かせながら、その子を見ていた。
 そして彼女は彼女で俺のことを見て、テトラのことを見て、綺麗に礼をすると、周りを見回して、自分の姿の確認をし始めた。

 …………のだが、

『……おかしいわ』

「「……?」」

『体が、私の体ではないわ……』

「「私の体ではない……?」」

 私の体ではない……。
 それは……どういうことだろう……。

 何かを間違ってしまったのか……。
 失敗してしまったのだろうか……。

 彼女は自分の姿を確認し、髪の毛を触ると、眉を顰めて困ったような顔をしていた。

『予想外だわ……』

「どうしたの……? 体が違うの……?」

『ええ、おかしいの。普通は降臨する時の体は、事前に決まっているの。だけど、これは私の体ではないわ。別の子の体なの』

「「別の子の体……」」

『……つまり、どうやら私は違ったみたいね。まだ、私が出てくる順番じゃないのかもしれないわ』

 彼女はそう言うと、少しだけ寂しげに微笑んだ……。

『ご主人様。今日のところは控えさせていただきます。そして、いつかその日が来たら、また会えることを祈っています。ちゅ……っ』

 俺のそばに来た彼女が、俺の首の後ろに手を回して、そのまま口づけをしてきた。
 つま先立ちになった彼女の温かい唇が、俺の唇に重ねられる。

 その瞬間、彼女が淡い赤色の光になり、静かに俺たちの前から姿を消した。

「「き、消えた……」」

 彼女がいなくなった後には紅い魔石だけぽとりと落ちていて、彼女はもうどこにもいなくなっていた。

 俺とテトラはただただ立ち尽くし、その魔石を眺めていた。


 ……そして、


「て~お~。さっき私以外の女の子にキスされたでしょ~~。ここに、深い口づけをされてたでしょ~」

「て、テトラ……」

 俺の唇を指でなぞったテトラが、じとっとした目を向けてくる。
 その頬は膨らんでおり、俺は怒られていた……。

「テオはいけないんだからね~~。テオの唇は私だけのものなんだからね~~~」

 テトラはそう言うと、俺の首の後ろに手を回してきて、唇を向けてくれる。

「早く上書きして~~? たくさん私で上書きしたら、許してあげるかもしれないよ……?」

「う、うん」

 俺は恐る恐る頷き、テトラにそっと口づけをした。

 大切なものに触れるように、ゆっくりと……小鳥が赤くて未熟な果実を啄むように……。

「えへ……っ。回収しましたっ。もうっ、今回だけなんだからねっ。特別に許します」

「ごめん……」

「ううん、いいの。だってあの子はテオのスキルで出てきてくれた子だもん。家族みたいなものだから……特別なんだからね?」

 そう言ってテトラは俺に口づけを落とした。
 それは確かめるような口づけだった。

「ふふっ」

 そしてテトラは、頬を赤く染めて照れたように微笑んでくれた。

「でも、さっきの眷属の子、いなくなったね……。『私の出てくる番じゃない』って言ってたし、『体が違うとも言ってたね』。テオ、スキルもう一回使える?」

「ううん……、次使うまでには少し時間がかかるみたいだ」

「そっか……。じゃあまた今度やってみた時に聞いてみよっか」

 テトラが俺の腕に嵌められている腕輪を、優しく撫でる。

 このスキルの発動にも、色々あるようだ。
 だったら色々試して、次こそちゃんと出してあげたい。

 そして、その時、違和感に気づいた。
 俺の腕に嵌められている腕輪が、もう一個増えていた。

 一つはテトラが俺にくれた『眷属の腕輪』。
 そしてもう一つは見覚えのない腕輪だ。

「あっ、それは多分『降臨の腕輪』だね。テオのスキルが形になって現れた姿だよ?」


 ・『降臨の腕輪』……スキルの主に与えられる腕輪。

 所有権は、本人にある。
 それを信頼の証として、眷属に渡すことで、さらに眷属と繋がることができる。
 任意で複製することが可能。作り出せるのは、眷属の数まで。


 腕輪の色は金色。そのふちが赤紫色になっていて、同色の宝石が埋め込まれている。
 意識をやると、その腕輪と同じものをもう一つ作り出すことができた。

 だから俺は新たに作り出したその腕輪を、テトラの手にくぐらせる。

「やったっ。テオとお揃いだね……。私たち、腕輪が二つになったね」

「うん」

 互いに嵌められている腕輪は、左腕に二つずつ。
 心なしか、その二つの腕輪にはまっている宝石が共鳴しているのを感じる。

「あっ、そうだっ」

 そして、テトラが俺の腕輪の宝石に触れた瞬間……宝石が光り、テトラの姿が消えた。

『私、こういう風に宝石に宿れるみたい』

 その声が聞こえたのは、腕輪の中からだった。

『じゃあ今度は、出るね』

 そう言って、再び腕輪の宝石が光ると、人の姿を現してくれるテトラ。
 テトラは腕輪の宝石の中に出たり入ったりできるみたいだ。

 つまり、これでもし何かあった時に、テトラを腕輪の宝石の中に避難させることができるということになる。
 これがあれば、テトラへの危険度はぐっと回避することができるはずだ。

「その他にも腕輪にはいろんな能力があるみたいだけど、なんといっても魔力共有だよ!」

「魔力共有……」

「うん! 私の魔力を、テオと共有することができるの! 生きている者に流れている魔力! それを繋げることができるの!」

「なるほど……」

 それは、嬉しいことだった。
 お世辞にも、俺は魔法の扱いが上手くない。

 昔、おばあちゃんからも言われていた。

『テオは魔法ではなく、魔石を加工した武器で戦いなさい』……と。

 軽い魔法なら使えるけど、それ以上はやめておきなさいと言われていた。
 だから、使えるようになるなら、それは助かることだ。

「じゃあこれも試し撃ちしてみよっか。あ、それと、多分、テオは魔法が使えないんじゃなくて、おばあちゃんが使わせないように抑え込んでただけだと思うの。おばあちゃん言ってたもん。『魔力は後でどうにかなるはずだから、テオには武器で戦うことに慣れさせたい。そっちの方がテオのためになるって』。きっとこうなるのが分かってたんだと思うの」

 テトラが懐かしそうに顔を綻ばせる。
 おばあちゃんは分かっていた……か。

「だからその力を試してみよっ。おばあちゃんが前にやってたみたいに、『スパーク・ブレイク』ってやるのもいいかも」

 確かに、前に一度だけおばあちゃんが魔法を見せてくれたことがあった。
 テトラと二人で、俺はその魔法を眺めたのを覚えている。

「あれは……こんな感じだったかな」

 俺は昔のことを思い出しながら、手のひらに魔力を集中させた。

「おお!」

 すると、俺の手のひらにバチバチと翡翠色の光が弾けたのが分かった。

 あとはこれを、対象に向かって放てば、魔法が発動するはずだ。

「……おっ、ちょうどあそこに魔物の群れが走ってきてるよ……?」


 ……その時だった。


 周りを見回したテトラが指差した。
 そこには、草原の中を魔物の群れが走っているのが見えた。

 ……だけど。

「あ……っ、馬車もいるよ……」

 ポツリと呟くテトラ。

「ほんとだ……」

 そしてその馬車は、魔物の群れに追われるように走っている。

 つまり……。

「……あれは……誰か襲われているのかもしれない」

「……やっぱりそうだよね……。それにこっちに来てるよ……!?」

 遠くの方。
 そこを走っていたのは、草原の中を駆ける一台の馬車の姿。

 その馬車は魔物に追われるように……土煙を上げながら、俺とテトラがいるこっちへとやってきていた。
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