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第1章
27話 テオってば、くすぐったいよ……。
しおりを挟む「テオくんはもうっ、ほんっとうにいい子! 私、大好き!」
「く、くるしい……」
カウンターから身を乗り出した受付の職員さんが、ぎゅっと抱きしめてくる。
『て~お~~』
俺の腕輪からは、テトラのそんな非難する声が聞こえてきた……。
どうやら今回手に入れた『幻希草』はそれぐらい貴重だったとのことで、ギルドに提出すると受付のジェシカさんはとても驚いていた。
「そうよ! ちょうど今、私はこれを求めてたの! でも困ってて、どうしようか悩んでたから、テオくんのおかげでどうにかなりそうだわ……! ほんっとうにありがとう!」
笑みを浮かべ、提出した品を受け取ってくれるジェシカさん。
「報酬は依頼を達成したことで、銅貨100枚。そして『幻希草』の買取分が金貨10枚になるわ……!!」
「『おお……』」
金貨10枚……ということは、かなりの高額だ。
カウンターに差し出されたコインを見ると、金色の輝きが眩しかった。
街に戻ってくるまでの間に、手頃なスライムも追加で倒していたから、微かにだけど報酬も上乗せされている。
「そしてこれがテオくんのギルドカードです」
手のひらサイズのカードも発行してもらい、俺はそれを両手で受け取った。
ギルドカード。ギルドに登録できた証。
これでようやく、正式に冒険者になることができたということだ。
そして、それらを受け取ると、受付のジェシカさんは改まった様子で向き直り、
「テオくん、本当にありがとね。そしてお疲れ様でした。また何かあった時は……ううん、テオくんなら何もなくても大歓迎だから、時間がある時は是非、私に会いに来てね。待ってます」
そう言ってくれた彼女に俺もお礼を言い、その後、ギルドを後にするのだった。
* * * * * * * *
ひとまずこれでギルドでの目的は達成することができた。
身分証も作れた。報酬ももらえた。しかもその報酬が金貨10枚だから、かなりの高額だ。
大抵のものは買うことができるし、気持ちにも余裕ができた。
「じゃあ今度は服を買いに行こう」
『よ! 待ってました……!』
腕輪の中でテトラの弾む声が聞こえて来た。
俺はその腕輪を撫でると、街の中を歩き始める。
喧騒に包まれる街の中は、やっぱり賑やかだ。
歩いている人も、売ってある物も、数え切れないぐらいたくさんある。
だからこそ……それを見ていると、思う。
ここをテトラと一緒に歩けたらどれだけいいだろう……と。
「……テトラ、フード付きの服を買ったら、腕輪から出て一緒に歩こっか」
『あっ、ううん。あんまり気にしなくてもいいよ? 私、こうやって腕輪の中にいるのも幸せだよ?』
腕輪の中からテトラのそんな声が聞こえてくる。
「それならいいけど……でも、俺がそうしたいんだ」
「てお……」
俺は腕輪を撫でながら、それを望んだ。
せっかく街に来てるんだ。だからテトラと歩きたい。
テトラにも色々見せたいし、食べたいものはなんだって買ってあげたい。
一緒に美味しいものを食べ歩きとかもして、普通に楽しめることを一緒にしたい。
『もう……っ。テオってば、くすぐったいよっ』
腕輪の中から、身じろぎをするテトラの気配がした。
……そうか。
腕輪で通じてるから、これも全部伝わるのか……。
「「~~~~っ」」
俺は腕輪をまた撫でて、宝石の部分を手のひらで覆った。
腕輪に宿っているテトラの視界がこの宝石にあるのかどうかは分からないけど、無性に隠したくなった。
そうしている間も腕輪からはテトラの感情も伝わってきて、腕輪が熱を持ったかのように熱くもなる。
だけど、それはなんだか心地の良い熱だった。
俺はそれからも腕輪の宝石を撫でて、街の中を歩いていく。
そうしていると、ひと気のない道へとやってきて、俺はさらに奥に進んだ。
『あ、お店だっ』
数分後、たどり着いたのは一軒の店。
薄暗い路地にあるその店の前には、杖の絵が描かれている看板が下げられている。
『確かここって、ソフィアちゃんが教えてくれたお店だよね』
「うん」
街に来た時に、「私のオススメの店なので、もし良かったら是非のぞいていくといいかもしれません」とソフィアさんは教えてくれていた。
話によると、ローブとか、そういうものが取り揃えられているとのことだった。
入り口のドアは開いており、ひとまず中に入ってみる。
『おお……』
店の中は薄暗く、ぱっと見、雑貨屋のような場所だった。
鼻をかすめるのは埃っぽい匂い。あと、少しだけ懐かしいような田舎の匂い。
……そして、その時だった。
『「あ……っ」』
ピカッと、俺の腕輪の宝石が光を帯びた。
その瞬間、目の前がまばゆい光に包まれて、姿を現したのは腕輪に宿っていたテトラだった。
「私、腕輪からはじき出された……?」
そして、パタンという音がして、店の入り口のドアが閉まった。
「ヒッヒッヒ……。よくきたねぇ……。若い客とはこれまた珍しいねぇ……」
「「……!?」」
背後。俺たちの後ろにいたのは、杖を手に持った老婆で、
「ようこそ、アタシのお店へ。歓迎するよ……」
その老婆はそう言うと、俺の顔を見ながら愉快そうに笑うのだった。
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