聖女と作る眷属のハーレム 〜人知れず村の生活を豊かにしていた少年は、いずれ全ての聖女たちから溺愛されることになるそうです〜

カミキリ虫

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第1章

35話 最初の眷属 ⑶ もう二度と失いたくないから

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 目の前でオークが肉塊になった。
 彼女のそばには二人の人物がやってきてくれていた。

「よかったっ。ここにいたね」

「お、お母様……」

 テオとテトラ。
 自分を降臨させてくれた二人だった。

 テトラは自分のことを後ろから抱きしめてくれていて、テオは自分を守るように前にいてくれている。
 前と後ろ。さっきまで一人ぼっちで孤独だったのが嘘のように、二人がそばに寄り添ってくれている。

「探したよ。いきなり飛んでいくんだもん。でも見つけられてよかった……」

 後ろから抱きしめてくれているテトラからは、温かさのようなものを感じた。

 しかし、それをゆっくりと感じていられる状況ではないというのも確かだった。

「テトラは、その子をお願い」

 二人の前に立っているテオが、手に魔力を込めて、周りを警戒する。

 すると、森が騒がしくなり、あちこちから何かがやって来る足音が響き始めた。

『『『オオオオオオオオオオオオオオオオ』』』

 ギガントオークだ。

 先ほど倒したキングオークはこの森のボスだった。
 それを倒されたことを悟ったオーク達が、こちらへとやって来ているのだ。

 その数、今この場にいるだけでも50はいる。

 まるで取り囲むように。

 三人に狙いを定めて、一気に詰め寄ってくる。

『『『オオオオオオオオオオオオオオオオ』』』

 森に生えている木を鷲掴みにし、そのまま引っこ抜いて、棍棒代わりとして振り下ろしてきた。

 しかし、その瞬間、

「スパーク・ブレイク」

 バチバチバチィ……ッ! と、繰り出されたのはテオの魔法だ。

 直後、翡翠色の弾ける魔法で撃ち抜かれるオーク。

 腹を。頭を。命を散らす。

 悲鳴をあげる暇もなかった。

「す、すごい……」

 テオの魔力で、数十体いたオーク達が跡形もなく消滅していた。

『『『オオオオオオオオオオオオオ』』』

 それでも、追加でやってくるオーク。

 その数は先ほどよりも多い。

 ここは現在、オークの縄張りとして注意喚起が行われている森だ。
 ギルドでは、この森のオーク討伐が大々的に行われる予定が組まれているほどでもある。

 故に、腐る程オークがいる。
 周りに被害を与えているため、いつかは討伐しないといけない存在だ。

 そしてオーク達にとって、今がその時だった。

「スパーク・ブレイク」

 バチィと音がした。

 少し遅れて、バチバチバチィ……ッッッ、という音がした。

 それを肌で感じた瞬間、プツンと何かが切れた音がして、次に感じたのは轟音だった。

「す、すごい……」

 それしか言いようがなかった。

 テオを中心に翡翠色の魔法が展開され、容赦なく敵を貫いている。

 オークが棍棒を振り下ろそうとしても、その暇もない。

 殴りかかろうとしても、その暇もない。

 オーク達はまるで死ぬために、こちらに来ているかのようだった。

 それを行なっているテオの後ろ姿は、どこからどう見てもかっこいいと思った。

「私のご主人様って……こんなに強かったんだ」

 誰が見ても、きっとそう思うだろう。


 ……でも。


「どうしてだろう……」

 ……どうしてご主人様の後ろ姿は、こんなに苦しそうなんだろう……。

「余裕そうに見えるのに……」

 彼女はオークを蹂躙しているテオの後ろ姿を見て、どこか胸騒ぎのようなものを感じた。

 オークを殲滅しているテオは、どこからどう見ても軽々と敵を倒し続けている。

 だけど……どうしてか苦しそうに見える。

 そして時折、テオから痛みのようなものを感じる。

 彼女にはその理由が分からなかった。

「テオ……」

 彼女を抱きしめているテトラが、テオの後ろ姿を見て祈るような顔をしていた。

 だけど彼女にはその理由も分からなかった。テトラはどうしてそんなに心配そうにしているのだろう……。

 今、自分たちの目の前にいるご主人様は、どこも心配するところなんてないように見えるのに……。

 彼女にはその理由が分からない。
 テオが今どんな状態か分からない。

 どうして分からないんだろう……。

 自分はまだ降臨されたばかりだから……? それとも、テオと一緒にいた時間がまだ少ししかないから……?

 ……もちろんそれもある。

 だけど、腕輪だ。
 腕輪をしていれば、知ることができた。

 そう……彼女はテオと腕輪を交換してないのだ。

『眷属の腕輪』と『降臨の腕輪』。
 それはご主人様と眷属にとって大きな意味を持つ。

 信頼の証。だから軽々しく渡してはいけない。
 だからこそ、交換すればその威力を発揮することができる。

 テオとテトラは腕輪を交換しており、お揃いの腕輪がお互いの腕に嵌められている。
 気持ちも、腕輪も、繋がっていて、テオとテトラはこれ以上にないぐらい繋がりあっている。

 だけど、彼女は違う。
 彼女はテオに『眷属の腕輪』を渡してはいないし、テオからもまだ『降臨の腕輪』を受け取っていない。
 そういうことをする前に、自分はテオの元から飛び去ってしまったのだ。

 気持ちも、腕輪でも繋がれていない彼女は、ご主人様のテオとの繋がりがひどく曖昧になってしまっている。

 だから、今のテオがどういった状態なのかは分からない。
 テオがどうして助けに来てくれたのかも分からないし、どうして今そんなに苦しそうな顔をしているのかも分からない。

 分かっていることは一つだけ。
 そんな曖昧な状態にも関わらず、テオが自分を助けに来てくれたということだけだった。

 そこで、彼女は思い至ることがあった。

(そうだ……。魔力が乱れてるんだ……)

 ちょうど今の自分の魔力も乱れている。
 降臨したばかりだから、自分の中で魔力が不規則になっているのだ。

 多分、今のテオもそれと同じような状態に……いや、それ以上に乱れているはずだ。

 スキルを使用したことで、魔力が乱れており。
 それを抜きにしても、テオの魔力はずっと乱れている。

 純粋に、テオは魔力を使うことに不慣れなのだ。
 それでもなんとか無理して使っているだけなのだ。

 目の前のテオを見てみると、それがよく分かった。

「スパーク・ブレイク」

 バチィと音がした。

 少し遅れて、バチバチバチィ……ッッッ、という音がした。

 それを肌で感じた瞬間、プツンと何かが切れた音がして、次に感じたのは轟音だった。

(やっぱり……)

 不規則な魔力の波長。
 無理をしているのが伝わってくる。

 無理をしているせいで、体が魔力に追いつかず、あれだと魔法を使うたびに全身が悲鳴をあげているはずだ。

 ……それでも、テオが魔法を使うことをやめることはない。


 彼は知っているからだ。何かを失った時の痛みを。

 あの夜、テトラを守れなかった……。

 無力だったから、テトラを一度失ってしまった。

 それがずっと頭の中にあり、後悔していた……。


 だからもう、テトラを失わないように、その力を使い続ける。

 大切な人を守るために。

 大切な人を傷つけさせないために。

 あんな思いをするなんて、もう二度とごめんだ。

 だからーー


「……業火雷撃……」


「……!」

 バチバチバチバチィ……ッッッ!! と弾けていた魔力が限界を超え、翡翠色だったその魔力が徐々に色を変えていく。

 翡翠色から、黄色へ。

 黄色から、橙色へ。

 そして、赤黒く弾ける莫大な魔力へ。

 それを感じ取った森が大きく揺れ始めている。まるで森自体がテオに怯えているかのようだった。

 それでもテオの魔力は縦横無尽に膨れあがり、止まることを知らない。

「まだ大きくなる……」

 そして敵が散っていく。

 弾け飛ぶ敵の体。

 魔物の破片が降り注ぎ、それすらも瞬く間のうちに弾け、赤黒い魔力の残滓になる。

(これが私のご主人様……)

 そしてある程度敵を始末し終えると、テオは地面に腰を落としていた自分の方へとやってきて自分を抱きかかえてくれた。

「ほら、おいで」

「あ……っ」

 優しく守るように、抱きかかえてくれた。

 腕輪が光り、テトラがテオの腕輪の宝石に宿る。

 そしてテオと彼女の二人っきりになると、テオはこの森を抜けるために、彼女を抱えたまま森の外を目指し始めた。

 その間もテオは、赤黒い魔力を周りに撒き散らしながら敵を倒し続けて……。

「ご主人様……」

 彼女は抱きかかえられたまま、心を奪われたように自分のご主人様のことを見つめ続けるのだった。
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