聖女と作る眷属のハーレム 〜人知れず村の生活を豊かにしていた少年は、いずれ全ての聖女たちから溺愛されることになるそうです〜

カミキリ虫

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第2章

78話 聖女ソフィアとの別れ

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 暖かな陽光の下、穏やかな風が静かに肌を撫でた。
 天気は快晴だ。気温は暑すぎもせず、寒すぎもせず、過ごしやすい温度だと思う。

 そんな日の、昼を少し過ぎた時間。
 俺たちは、ソフィアさんの屋敷の玄関に立っていた。

「ソフィアさん。数日間お世話になりました」

「いえいえ、こちらこそ楽しい時間を過ごせて充実した毎日でした」

 淡い青色のドレス姿のソフィアさんが、微笑みながらそう言ってくれる。

 ソフィアさんの屋敷に泊めてもらって、すでに数日。
 この数日間の間、ソフィアさんは俺の魔力の矯正をしてくれた。テトラと二人がかりで、一日のうちの半分をその時間に当ててくれていた。本当に頭が上がらない。また助けてもらっていた。

 あと、屋敷にいる間、書物も読ませてくれた。教会に関する書物だ。
 聖女が所属する教会に関わる物だから、読んでいいものか……と思ったものの、閲覧禁止書物は教会の本部の方に置いてあるらしいので、屋敷にある分なら構わないとのことだった。これに関してはメモリーネとジブリールが興味深々だった。

『メモはご本を読んで、ご主人様のお役に立つの~』

『ジルも~』

『そうね。私も少し気になることがあるから、一緒に読むわよ』

 コーネリスも本を手に取り、教会に関する情報を取得していく。
 俺とテトラも読ませてもらい、分からないところはソフィアさんに教えてもらったりもした。

 あと……夜はお風呂とかも貸してもらえた。
 屋敷には風呂が三つほどあり、そのうちの一つ、ソフィアさんがいつも使っている浴場での入浴だ。

 テトラ、ソフィアさん、コーネリス、メモリーネ、ジブリール。そして……。

「テオも一緒だった!」

「私……他の人の裸を見たのも、裸を見られたのも初めてでした……。それも、テオ様のお裸……。思い出すだけで、なんだか私ーー」

「…………」

 ……ソフィアさんが思い出したのだろう。
 頬を赤く染めると、俯き気味な顔で口と耳を押さえながら、もじもじと太ももを擦り合わせている。

 ……お風呂でも色々あった。
 それは先日のアイリスさんと一緒に月光龍の巣で風呂に入った時のことを思えば、必然だったのかもしれない。

 沸き立つ湯気。めくられる俺のタオル。泡立つテトラ。
 俺の体をテトラが洗ってくれることになり、直で俺の体も泡立っていた。

 タイル作りの大浴場の中、裸のソフィアさんが手で顔を隠しながらも、そんな俺たちの姿を指の間からまじまじと凝視していて、ソフィアさんまで泡立っていた。

 そんなことがありつつも、今日で俺たちはここを出発することになっている。

「それで、テオ様……。あの件は本当にお願いしてもよろしかったのでしょうか……」

「はい。お世話になりましたので、何かお役に立てるのなら立ちたいです」


 ・【ゴブリンの討伐】
 街から離れた場所にある森林付近。
 そこにゴブリンの群れができ始めている。それもただのゴブリンではない。瘴気を纏っているゴブリン。
 通常の冒険者では倒すことが困難だが、放っておくわけにもいかない。


 だから今回、俺がそれを請け負うことにした。

 この屋敷に泊まるにあたって、俺の方から申し出たことだった。
 何か困っていること、できることがあれば、任せてほしい、と。

 それでソフィアさんが出してくれた依頼がこの依頼だ。
 この街はソフィアさんの結界に守られていることもあり、まだ被害は出ていないとのことだから、その前に対処をしておこうと思う。

「テオ様、ありがとうございます。では、よろしくお願いしますね」

「お任せください」

 俺たちは握手をして、別れの挨拶を済ませる。

「ソフィアちゃん……また、会えるかな?」

「ええ、きっと。その時はこうしてまた過ごしたいです」

「うんっ、絶対だよ」

 隣にいるテトラがソフィアさんを抱きしめる。彼女はそれを抱きしめ返し……二人とも名残惜しそうな顔をしていた。その時のソフィアさんの悲しげな顔が、なんだか頭に焼きついた。

「じゃあソフィアちゃん。またね。バイバイ」

「テトラさん、テオ様。バイバイ」

 手を振って別れる。
 それから俺たちはソフィアさんの屋敷を後にした。


 * * * * * *


「お二人と過ごした時間は、ずっと忘れません……」

 二人を見送ったソフィアの首元では、赤紫色のペンダントがほのかに光を帯びていた。
 それをぎゅっと両手で握りしめたソフィアの蒼い瞳は、静かに、穏やかに、揺れていた。

「……私も準備をしましょう」

 聖女の彼女も、行動を始める。

 お役目の時が近づいていた。


 * * * * * *


 ……いた。

 森の中に、ゴブリンがいる。
 緑色の体。それが若干黒いモヤを帯びている。
 手には棍棒。腰には、苔むした布を巻いている。

 草の潰れた匂い。虫の鳴き声。
 それらに包まれながら、太い木の根元に五匹いる。

 少し離れた場所の草むらで、俺は魔力を練り上げると、その五匹に狙いを定めて心を落ち着けた。

 意識するのは、静かな魔力。
 それを、ふっ、と意識しながら……発射してーー。

「「「グギャアアアアアアアアアアアアア」」」

 放ち初めは翡翠色だった。
 それが一瞬だけ赤黒い魔力に変色し、再度翡翠色に戻ると、かすかに銀色を宿しながら対象のゴブリンに命中した。

『ご主人様、後ろからくるわ』

 俺は振り返りながら、腰から剣を抜く。背後の草むらから飛びかかってきたゴブリンの腹に、その剣を突き刺した。ぐちゃりとした手応えがあった。

 剣を引き抜き、身を屈める。
 今度は右上。植物の蔓をロープのように使ってやってくるゴブリンが棍棒を叩きつけるように飛びかかってきたため、それを避けて、その胴体にも剣を突き立てる。その際に魔力を使用するのも忘れずに、ゴブリンを完全に消滅させた。

「とりあえずここにいる分は、終わりだ」

『そうね。あとは、少し離れたところに何匹かいるみたい』

 俺は周りを確認しながら、剣に付着した血を手早く拭き取った。

 腕輪を通じてテトラの力が働いているため、浄化の能力も作用している。
 そのおかげで、瘴気を纏っている魔物でも、問題なく討伐できる。
 瘴気を纏っている魔物は生命力が段違いだから、中には不死身なのもいるらしい。

『瘴気を纏っている魔物には、二種類あるの。一つが瘴気に飲み込まれてしまった魔物。なんらかの原因で、瘴気の悪影響を受けてしまい、生きたまま苦しむことになる。周りも苦しめることになる。この前のシムルグの件がそうね」

 腕輪を通じてコーネリスが教えてくれる。

『そしてもう一つは、瘴気に飲み込まれるのではなく、瘴気を撒き散らす魔物もいるの。こっちはほとんど瘴気が集まってできた存在だから、悪影響を与えるばかりよ。この森にいるゴブリンがそうみたいだから、遠慮なく倒した方がいいの」

『じゃあ、メモもお手伝いする~』

『ジルも~』

 ピカピカと。
 メモリーネとジブリールの腕輪が光り始めていた。

「分かった。それなら、手伝ってもらおうかな」

「「あいあいさ~!」」

 青色の髪と、黄色の髪。
 首にはバンダナを巻き、頭にはゴーグルを装備したメモリーネとジブリールが森の中に姿を表した。
 その手には、両手にブーメランのようなものが握られている。

 ……ブーメラン。

「この前のご主人様のランクアップで、新しい武器が使えるようになったのぉ!」

「ジルも~」

「おお、すごい」

「「でしょぉ~」」

 誇らしげにブーメランを持った二人が、武器を構える。
 色は赤茶色。L字型の持ち手の部分が布で巻かれた、鋭利な刃物付きの形だ。

「ご主人様! この森には残りのゴブリンが10匹おります! メモが倒してきます!」

「ジルも~」

 そうして、二人が動き出す。

 宙を舞うブーメラン、それをキャッチし、剣のように振るう二人。
 森を駆けるメモリーネとジブリールは、瞬く間に森の中に潜むゴブリンたちを駆逐していく。

「早いな……」

 それほど時間がかからずに、ゴブリンは全て倒せたみたいだった。

 二人のおかげだ。

「こっちは全部倒せたよ」

「ジルもぉ~」

「二人とも、ありがとう。さっき森で果物を見つけたから、どうぞ」

「「あ、美味しそうっ」」

 二人が口を開けて、待ってくれている。
 その口の中に、俺はさっき見つけた黄色い豆粒ほどの大きさの果物をそっと差し入れた。

「「ぎゃ~! すっぱい~」」

『『ふふっ』』

 テトラとコーネリスが腕輪の中で、微笑んでいた。

 でも、すっぱいもんな。
 舌に触れた瞬間、ツンとした酸っぱさが口に広がって、唾液が止まらなくなる。

「でも、これ好き~!」

「ジルも~」

「そっか」

「「えへへっ」」

 俺は目線を合わせ、二人の頭を撫でる。二人は安心したように抱きしめてくれた。

 ……そして、ちょうどそのタイミングで起こった出来事だった。

「……何か来る」

 俺は二人を抱き抱えて、後ろに飛んだ。

 直後、地面が揺れ、下から突き上げられるように、巨大な角が隆起してきた。
 魔物だ。
 刹那、風が吹き、地面から現れたその魔物の前に立つように現れたのは一人のエルフの少女だった。

「……あっ、テオくん」

 こちらを振り向き、驚いた顔をする剣士の少女。

 名前は確か、イデアさん。

 Sランク冒険者『幻影の妖精姫』の人だ。
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