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第24話 呪いの森の原因の魔物
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* *
その時のセレスは、全魔力を握っている杖に込めていた。
(この一撃で、私が倒さないと……)
敵の姿は見えない。だけど、地面に擬態するように潜んでいる。
この森の呪いの原因の魔物だ。そしてこの魔物を倒せば、森から出ることができるという。
後悔はない……と思う。
森から出れると分かった日、セレスは嬉しかったが、同時に寂しさのようなものも感じていた。
森から出ることができるということは、彼との今の生活が少なからず変わってしまうということなのだから。
これから先、どうなるのかは分からない。
だから、セレスは寂しさを感じ取っていた。
そういうこともあって、最近ではよく彼と一緒に風呂に入ることが多くなったのだ。
彼の存在を直で感じたかった。
セレスにとって、シバサキくんという彼の存在は、それぐらい大きな存在になっていた。
そんな彼と共に、今、自分は戦おうとしている。……森を出るために。
そして今からやるのは、目の前に潜んでいる敵に魔法を叩きつけるという役割だ。
手には宝杖ゴスペルス。すでに詠唱は済ませている。
だから、セレスはその魔力を発動した。
「『ロスト・ゴスペル』」
直後、上空に集っていたその魔力が、まるで滝のように地面に降り注いだ。
「「ぐ……!」」
セレスの魔力の波動で、地面が抉れる。森が震える。爆風が発生し、森の土が舞い上がる。
「敵はーー」
隣で敵の様子を見ていたシバサキくんが、風圧で吹き飛ばないようにセレスの体を支えながら、敵の様子に注目している。セレスも敵の様子を見た。
申し分ないほどの威力の攻撃だった。この森で鍛えてきたセレスの魔力が、宝杖ゴスペルスで数倍にも膨れ上がっていたのだ。
今の自分で放てる最大限の魔法。これで倒せなかったら、きっと誰も倒すことはできないだろう。
「「……ッ」」
そして、二人は声を出す余裕もなく驚いた。
ーー倒せてなかった。
「「……ぐっ」」
直後、地面が揺れ始める。ゴゴゴとまるで地獄が生まれるような音を立てながら。
そうして現れたのは、想像以上に巨大な敵の全身だった。ここら一体の地面に敵は擬態していた。塔が立ち上がったといえばいいだろうか。いや、そんなに生やさしいものではない。山だ。山の如き大きさだ。いや、それすらも足りないかもしれない。とにかくそんな巨大な人型の魔物だった。
見上げても見上げられないほどに大きいその魔物は人型だ。ヘドロにまみれている。全身が黒く変色しているその体からは、異臭と腐臭と呪いがこれでもかというほどに立ち昇っていた。
そして、一瞬。
その瞬間、セレスは死んだ、と思う感覚があった。
「セレスさん!」
ガッと抱き抱えられる。彼がセレスを抱きしめながら、一気に後ろに飛んでいた。その刹那、この森の呪いが渦巻いて、地面からおびただしい数の針が突き出していた。
巨大で、鋭い針だ。空気が淀み、空からも数え切れないほどの針が発生して、こちらに向かって放たれていた。
「「ぐっ」」
それが着弾と同時に爆発する。
ドロリとしたその爆風が、セレスの髪を揺らす。彼がセレスの頭までしっかりと抱きしめてくれているおかげで、無傷だが、目の前には信じられない光景が広がっていた。
「「……ッ」」
クレーターだ。
地面にクレーターがいくつもできていた。
そして、目の前には巨大な魔物と、おびただしい針の山の数々。
反応できる速さではなかった。
追尾もするようで、無数のその針がこちら目掛けて突き刺さってくる。
それらを避ける。避ける。シバサキくんがセレスを抱き抱えて避ける。
「ロスト・ガード」
直後、彼とセレスの周りに魔力の渦ができた。追尾していた針が全て飲み込まれる。
そしてシバサキくんは自分の魔力を爆発させると、地面の土を巻き上げた。その土に紛れて、一気に後ろに飛び、敵からさらに距離をとった。
「(すごい……)」
セレスは彼の腕の中でそう思う。
着地する。そして少年は、セレスを地面にゆっくりと下ろし、魔力を展開した。見た事のない魔力の使い方だ。
それは周囲の呪いを使用し、敵と同じように針を作るという魔力だった。それで敵の攻撃とぶつけて霧散させている。
彼はそれら全てを破壊して、ここら一帯に防御の障壁を張ると、駆け出した。なるべく目立つように、敵の攻撃を引きつけながら。
全身に黒い魔力を纏って走る彼は、瞬く間のうちに敵の足元へと到達した。一瞬だった。その間に、いくつもの爆発が起き、すでにセレスの目では捉えられないほどのことが起こっていた。
「ロスト・ボルテックス」
彼が魔法を使う。爆発が起きて、敵にぶつける。
しかし、敵にぶつかった瞬間、それらは全て吸収されてしまった。敵は呪いの魔力を吸収するのだ。
いや、恐らく、それだけではない。通常の魔力もこの魔物には通りにくいのだ。
故に、さっきのセレスの一撃を喰らっても倒せなかった。あれがたとえ、他の魔物だったのなら、どんな相手でも塵一つ残らずに消し飛ばすことが可能だろう。
しかし、この魔物はそれすらも無に返す習性を持っているのだ。
それでも、無駄だったわけではない。
セレスの一撃のこともあり、敵には少なからずダメージを与えられていた。
そして、魔物の首付近。そこに、綻びが見える。
「ロスト・ボルテックス」
敵の足元にいる彼が、敵の首目掛けてもう一度魔力を放った。
それはまた吸収されて、直後、敵の口から呪いが吹き出していた。
「シバサキくんが言っていた通りだ……」
敵は呪いを吸い込んで、取り込む。
それは体内にとどめておける魔力に限界があるから、余分な分は吐き出すしかない。
それがこの森に蔓延する呪いになる。
となれば、セレスがやることは一つだけだ。
(あの口に魔法を……)
セレスは目を閉じて、集中する。
狙うのは口だ。
あそこを塞いでやる。
先程の魔法で、全ての魔力を使っていたセレスだが、そんなことは些細なことだ。
この呪われた森で一年もの間、過ごしていたのだ。魔力切れになったことは何度もあり、その度に瞬く間のうちに魔力を回復させてきた。
「シバサキくん、援護します。『ホーリー・ボルテックス』」
次の瞬間、セレスの杖から光が放たれた。
それが、敵の口に命中する。その魔力が凝固し、敵の口を塞いだ。
あれでは、呪いはもう吐き出せまい。
そして、同時に彼は、敵の体をよじ登り、敵の首に武器を突き刺して、一気に魔力を注ぎ込んでいた。
「ロスト・ボルテックス」
次の瞬間、ごごごと、不気味な音が鳴り初め、彼の魔力を注ぎ込まれた敵がもがき苦しみ始めていた。
そして、もう一度。
「ロスト・ボルテックス」
再び彼の魔力が、敵に襲いかかる。
その結果……、敵の体が爆散していた。過剰な分の魔力を吐き出すこともできず、巨大な全身が張り裂けていた。
頭が、腕が、腹が、足が破裂して。
敵の体内の呪いが黒い残滓になって森に降り注ごうとしている。彼はそれすらも一つ残らずに消滅させて、呪いを全て消し去っていた。
(もう私よりも、シバサキくんの方が強いです……。初めて会った時は私の方がまだ強かったのに……)
そんな彼の姿を見ながら、セレスは懐かしい気持ちにもなっていた。
そして、呪いの森の呪いが消えていく。
この腐った森に、光が差し込もうとしていた。
* * * * *
そして、それと同時に、その空間にある真っ赤な鳥居の一つが粉々に砕け散っていた。
「お疲れ様です。柴崎くん、セレスちゃん。よく頑張りました」
黒い巫女服を着ている少女が、優しげな瞳をしながら、敵を撃破した二人のことを見守っていたのだった。
その時のセレスは、全魔力を握っている杖に込めていた。
(この一撃で、私が倒さないと……)
敵の姿は見えない。だけど、地面に擬態するように潜んでいる。
この森の呪いの原因の魔物だ。そしてこの魔物を倒せば、森から出ることができるという。
後悔はない……と思う。
森から出れると分かった日、セレスは嬉しかったが、同時に寂しさのようなものも感じていた。
森から出ることができるということは、彼との今の生活が少なからず変わってしまうということなのだから。
これから先、どうなるのかは分からない。
だから、セレスは寂しさを感じ取っていた。
そういうこともあって、最近ではよく彼と一緒に風呂に入ることが多くなったのだ。
彼の存在を直で感じたかった。
セレスにとって、シバサキくんという彼の存在は、それぐらい大きな存在になっていた。
そんな彼と共に、今、自分は戦おうとしている。……森を出るために。
そして今からやるのは、目の前に潜んでいる敵に魔法を叩きつけるという役割だ。
手には宝杖ゴスペルス。すでに詠唱は済ませている。
だから、セレスはその魔力を発動した。
「『ロスト・ゴスペル』」
直後、上空に集っていたその魔力が、まるで滝のように地面に降り注いだ。
「「ぐ……!」」
セレスの魔力の波動で、地面が抉れる。森が震える。爆風が発生し、森の土が舞い上がる。
「敵はーー」
隣で敵の様子を見ていたシバサキくんが、風圧で吹き飛ばないようにセレスの体を支えながら、敵の様子に注目している。セレスも敵の様子を見た。
申し分ないほどの威力の攻撃だった。この森で鍛えてきたセレスの魔力が、宝杖ゴスペルスで数倍にも膨れ上がっていたのだ。
今の自分で放てる最大限の魔法。これで倒せなかったら、きっと誰も倒すことはできないだろう。
「「……ッ」」
そして、二人は声を出す余裕もなく驚いた。
ーー倒せてなかった。
「「……ぐっ」」
直後、地面が揺れ始める。ゴゴゴとまるで地獄が生まれるような音を立てながら。
そうして現れたのは、想像以上に巨大な敵の全身だった。ここら一体の地面に敵は擬態していた。塔が立ち上がったといえばいいだろうか。いや、そんなに生やさしいものではない。山だ。山の如き大きさだ。いや、それすらも足りないかもしれない。とにかくそんな巨大な人型の魔物だった。
見上げても見上げられないほどに大きいその魔物は人型だ。ヘドロにまみれている。全身が黒く変色しているその体からは、異臭と腐臭と呪いがこれでもかというほどに立ち昇っていた。
そして、一瞬。
その瞬間、セレスは死んだ、と思う感覚があった。
「セレスさん!」
ガッと抱き抱えられる。彼がセレスを抱きしめながら、一気に後ろに飛んでいた。その刹那、この森の呪いが渦巻いて、地面からおびただしい数の針が突き出していた。
巨大で、鋭い針だ。空気が淀み、空からも数え切れないほどの針が発生して、こちらに向かって放たれていた。
「「ぐっ」」
それが着弾と同時に爆発する。
ドロリとしたその爆風が、セレスの髪を揺らす。彼がセレスの頭までしっかりと抱きしめてくれているおかげで、無傷だが、目の前には信じられない光景が広がっていた。
「「……ッ」」
クレーターだ。
地面にクレーターがいくつもできていた。
そして、目の前には巨大な魔物と、おびただしい針の山の数々。
反応できる速さではなかった。
追尾もするようで、無数のその針がこちら目掛けて突き刺さってくる。
それらを避ける。避ける。シバサキくんがセレスを抱き抱えて避ける。
「ロスト・ガード」
直後、彼とセレスの周りに魔力の渦ができた。追尾していた針が全て飲み込まれる。
そしてシバサキくんは自分の魔力を爆発させると、地面の土を巻き上げた。その土に紛れて、一気に後ろに飛び、敵からさらに距離をとった。
「(すごい……)」
セレスは彼の腕の中でそう思う。
着地する。そして少年は、セレスを地面にゆっくりと下ろし、魔力を展開した。見た事のない魔力の使い方だ。
それは周囲の呪いを使用し、敵と同じように針を作るという魔力だった。それで敵の攻撃とぶつけて霧散させている。
彼はそれら全てを破壊して、ここら一帯に防御の障壁を張ると、駆け出した。なるべく目立つように、敵の攻撃を引きつけながら。
全身に黒い魔力を纏って走る彼は、瞬く間のうちに敵の足元へと到達した。一瞬だった。その間に、いくつもの爆発が起き、すでにセレスの目では捉えられないほどのことが起こっていた。
「ロスト・ボルテックス」
彼が魔法を使う。爆発が起きて、敵にぶつける。
しかし、敵にぶつかった瞬間、それらは全て吸収されてしまった。敵は呪いの魔力を吸収するのだ。
いや、恐らく、それだけではない。通常の魔力もこの魔物には通りにくいのだ。
故に、さっきのセレスの一撃を喰らっても倒せなかった。あれがたとえ、他の魔物だったのなら、どんな相手でも塵一つ残らずに消し飛ばすことが可能だろう。
しかし、この魔物はそれすらも無に返す習性を持っているのだ。
それでも、無駄だったわけではない。
セレスの一撃のこともあり、敵には少なからずダメージを与えられていた。
そして、魔物の首付近。そこに、綻びが見える。
「ロスト・ボルテックス」
敵の足元にいる彼が、敵の首目掛けてもう一度魔力を放った。
それはまた吸収されて、直後、敵の口から呪いが吹き出していた。
「シバサキくんが言っていた通りだ……」
敵は呪いを吸い込んで、取り込む。
それは体内にとどめておける魔力に限界があるから、余分な分は吐き出すしかない。
それがこの森に蔓延する呪いになる。
となれば、セレスがやることは一つだけだ。
(あの口に魔法を……)
セレスは目を閉じて、集中する。
狙うのは口だ。
あそこを塞いでやる。
先程の魔法で、全ての魔力を使っていたセレスだが、そんなことは些細なことだ。
この呪われた森で一年もの間、過ごしていたのだ。魔力切れになったことは何度もあり、その度に瞬く間のうちに魔力を回復させてきた。
「シバサキくん、援護します。『ホーリー・ボルテックス』」
次の瞬間、セレスの杖から光が放たれた。
それが、敵の口に命中する。その魔力が凝固し、敵の口を塞いだ。
あれでは、呪いはもう吐き出せまい。
そして、同時に彼は、敵の体をよじ登り、敵の首に武器を突き刺して、一気に魔力を注ぎ込んでいた。
「ロスト・ボルテックス」
次の瞬間、ごごごと、不気味な音が鳴り初め、彼の魔力を注ぎ込まれた敵がもがき苦しみ始めていた。
そして、もう一度。
「ロスト・ボルテックス」
再び彼の魔力が、敵に襲いかかる。
その結果……、敵の体が爆散していた。過剰な分の魔力を吐き出すこともできず、巨大な全身が張り裂けていた。
頭が、腕が、腹が、足が破裂して。
敵の体内の呪いが黒い残滓になって森に降り注ごうとしている。彼はそれすらも一つ残らずに消滅させて、呪いを全て消し去っていた。
(もう私よりも、シバサキくんの方が強いです……。初めて会った時は私の方がまだ強かったのに……)
そんな彼の姿を見ながら、セレスは懐かしい気持ちにもなっていた。
そして、呪いの森の呪いが消えていく。
この腐った森に、光が差し込もうとしていた。
* * * * *
そして、それと同時に、その空間にある真っ赤な鳥居の一つが粉々に砕け散っていた。
「お疲れ様です。柴崎くん、セレスちゃん。よく頑張りました」
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