呪いの加護を受けたら、懺悔の儀式が始まった。~ごめんなさい!と祟りを恐れたみんなが謝ってくるけど、それは全部偶然でたまたまだ!~

カミキリ虫

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第23話 変わってしまうのは怖いけれど。

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 そうやって、セレスさんと風呂に入ったりしながら過ごし、数日が経つと、ついにその日がやってきた。

 つまり、森から出るための、手がかりになっている魔物を倒す日だ。

「本当はもう少しお風呂に入ったりしたかったですけど……だめ、ですか?」

「お、お風呂には、魔物を倒してから、また入りましょう……」

「ふふっ」

 俺は玄関の所で抱きしめてくれるセレスさんに、そう言った。

 俺たちはあの日以来、毎日一緒に風呂に入っていた。そのこともあり、今までよりも距離がぐんと近づいていた。
 セレスさんは風呂に入るたびに、俺の体を洗ってくれる。俺が彼女の体を洗うと、セレスさんは安心したように微笑んでくれる。湯船に浸かるときは、ずっと俺の体を抱きしめてくれていた。

 森から出る手がかりが見つかって以来、ずっとそんな感じだ。
 あの日から、セレスさんは今までよりも俺を抱きしめてくれる回数も増えていた。一緒に風呂に入るのも、直で肌で触れ合うための時間みたいな感じにもなっていた。

 ……正直、俺ももう少しだけこの生活を続けていきたい気持ちはある。

 居心地がいいのだ。
 前の世界にいた時よりも、ずっと。
 セレスさんは優しいし、そばにいると安心するし、この家は生活も整っているのだ。

 それでも、だめだ。
 このまま先送りにしていたら、多分俺は甘えてしまう。ずるずると、この生活を変えたくはなくなる。

 森から出る手がかりが見つかったのはいいことだけど……それはこの生活が変わることを意味している。

 セレスさんも、多分、それは分かっているのだと思う。
 だから、一緒に風呂に入ろうと、言ってくれたのではないだろうか。

 最近のセレスさんは、たまに寂しそうな顔をしている時があるのだ。それを誤魔化すように、俺を抱きしめてくれる。最近では暇さえあれば、俺の耳とかも噛んでくるようになった。

 それに関しての話は、また別の機会にするとしても……森から出る手がかりが見つかったというのは、少なからず今の生活が変わっていくということなのだ。

 森から出られるようになった後に、セレスさんがどうするのかは聞いていない。

 聞けなかった。

 お互いにその話は、避けるようになっていた。

 それでも、今日、行動を開始することにした。

 すでに準備も整っている。

 こればっかりは二人でやることにした。

「シバサキくん、お互いに何があっても死なないようにしましょう。あなたが死んだら、私も後を追って死にます」

「し、死なないようにします……」

「ふふっ。お願いしますね」

 そんなことを言われたら、俺も死ぬことができなくなった。



 そして二人で家を出て、現地へと直行する。

 いつみても、ここは腐った森だ。
 地面はドロドロしている。その泥のようなぬかるみに足を取られながら、向かうのは先日あの獣だった少女が指し示してくれた場所だ。
 そこにこの森から出るカギになっている魔物が、潜んでいる。

「着きました」

「ここ……ですか」

 しばらく歩き、魔物の生息地へと辿り着いた。

 二人で周りを見回してみる。一見、なんの変哲もない腐った森の風景だ。
 しかし、よく見てみると、そいつはそこにいるのだ。

「ほら、あそこです」

 俺は声を潜めて、足音を立てないように歩き、ある一点を指さした。
 セレスさんは俺の背中にしがみつきながら、その場所を目を凝らして伺う。

「確かに、あそこだけ……地表の魔力が変ですね」

 一面、呪いで濁っている地面。
 その地表が不自然に蠢いている。目を凝らしてみないと見抜けないけど、あそこにいるのだ。魔物が。それも、恐らく、とびっきり大きなやつがだ。

 そして、そこをじっとしながら見ていると、一定間隔で地面から濁った空気が吹き出しているのも分かる。

「あれは……この森に蔓延している呪いの魔力です。じゃあ、本当にあの魔物がーー」

「恐らくそうだと思います」

 奴が、この森の呪いの元凶なのだ。

 数日前から伺っているけど、多分間違いない。そして今日は呪いを吹き出す感覚が短くなっている。恐らくセレスさんがいるからだろう。
 念の為に、セレスさんは今日初めてここにくるようにしたのだ。奴は、他の生き物の魔力を感じ取れるようで、セレスさんを警戒しているのだ。

 俺には呪いの加護があるから、多分、溶け込めているのだろう。だから、この数日間、結構近くまで近づいても、奴は動き出す気配はなかった。こっちから攻撃すれば、もう、あとはどちらかが倒れるまで、勝負は終わらないと思う。

「それで、あの魔物の習性です。あの魔物は呪いを吸い込む習性があります。そして近づいて分かったのは、俺のステータスが全部無効になってしまうみたいで……」

「だから、レベルが0の状態……になってしまうのですよね」

 セレスさんが心配そうに呟く。
 事前に、予想は立てて、セレスさんにもそれは伝えていた。

 俺のステータスは呪いの加護によるものなのだ。
 そして奴は呪いを吸い込む習性、吐き出す習性、そして俺のステータスがなぜか無効化されてしまう習性を持っているのが判明している。

 つまり、攻撃力、とか、防御力、とか。
 今まで魔物を倒すたびに上がってきた俺の数値が、本来の数値である1になるのだ。

「それでもやりようはあります。敵の急所、体内にある魔石に俺の魔力を一気に注ぎ込んで、限界まで吸収させればそのまま敵は破裂してしまうはずです」

「それは……本当に大丈夫なのでしょうか?」

「多分……大丈夫だと思います」

「多分……ですか」

 セレスさんが苦笑いをしながら呟いた。俺を多分、同じ顔をしている。

 今は……そう思うしかないのだ。

 でも、色々試してみた限りではいけるはずだと思う。
 重要なのは、奴が呪いの魔力を吸い込むこと。そして吐き出すこと。では、なぜ吐き出すか。それは余分な分の呪いの魔力を吐き出しているからなのだ。

 体内に蓄積できる魔力に限界がある。だから、一気に奴の体内に俺の魔力を送り込んで、そのまま破裂させてやればいい。まるで、風船のように。

 レベルが0になっていても、俺のステータスの魔力は∞だ。
 だから、それを考えれば、いけるはずだ。

 でも、それは一応最後の手段になっている。

「まずは私が遠くから魔法を撃って、敵を攻撃します。『宝杖ゴスペルス』の一撃で倒せるのが一番いいのですよね」

 セレスさんが、杖を握りながら気合を入れたように頷く。

 この数日で、お互いに準備はやれるだけやった。
 だからあとはもう、やってみるしかない。

「では、行きます。失われし大地よ、この杖の元の魔力を受けよ、『ロスト・ゴスペル』』

 その次の瞬間だった。

 セレスさんが唱えた結果、彼女の杖に黒と白の魔力が集い始め、呪いの森の上空に眩い光が発生して、ついに戦闘が始まろうとしていた。


【名前】セレス Level 159
【種族】人族
【スキル】黒魔術 ★★★
【装備】
 ・武器 宝杖ゴスペルス
 ・防具 呪布のローブ

 H P 1520/1520 ↓
 M P 1500/1500 ↓
 攻撃力 350  ↓
 防御力 800  ↓
 素早さ 1180 ↓
 運 5850 ↓

 状態 呪い ステータスの大幅減少。

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