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第28話 懺悔の儀式を始めよう……。(間話)
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*************
一方そのころ、王城に用意された大部屋では、ピリついた雰囲気が張り詰められていた。
この部屋にいるのは、この世界で生まれたものたちではない。つまり異世界から召喚された、英雄の高校生たちだ。
英雄として召喚された彼らは王城に住むことになっていて、ここでは食事をしたり、会議をしたり、異世界から召喚されたクラスメイト同士たちが話し合う際に使われる場所である。
そして、現在。
その場所では、とある儀式の準備が執り行われていた。
「これは俺たちがしなければならないことだ。……そう、柴裂くんに対しての、懺悔の儀式をしなければならないのだ」
一人の生徒がそう宣言した。
行われているのは、先日、自分達の前からいなくなったクラスメイト、柴裂くんに対しての懺悔の儀式の準備だった。
「皆も知っている通り、今、俺たちの周りでは、様々な祟りが起きている。心当たりはあるはずだ」
「私なんて”……! 私なんて”……! 昨日、朝起きたら、顔がパンパンに腫れていたわ……”! これもきっと、柴裂くんの祟りのせいよ!」
「ボクの顔もこんなにパンパンだよ!」
一人の女子生徒が涙ながらに訴える。
同じように男子生徒も訴える。
……しかし、ことは深刻だった。
先日の召喚の間。
そこで、クラスメイトの柴裂くんが死んでからというもの、彼らには不可解な現象が起きているのだ。
一日に数度は必ず地震が起きていたり。朝起きたら、寒気を感じていたり。彼女に限らず、生徒たちの顔がパンパンに腫れている。まるで、肥えたみたいに、お腹も出てきている。
この原因は、なんなのか。
そう考えた時、真っ先に思い浮かんだのは、柴裂くんが死んだことだった。
捧げ姫フィリスティアを守り、クラスメイトの人気者七宮さんを守り、死んでしまった柴裂くん。
その柴裂くんは、多分、自分達のことを恨んでいるのだ。
はっきり言って、元の世界での柴裂くんの扱いはひどいものだったからだ。
あの日、この世界に召喚された日だってそうだ。
朝、学校に登校すると、机の上に花瓶が置かれていた。いじめだ。その花瓶には腐った花が生けられていて、なんと、その花瓶には泥水が入っていた。
そしてそれをやったのは、同じクラスメイトの生徒だ。
主にやったのは、男子二人だ。
このクラスで、ふんぞりかえっていた奴らだ。
そして他のクラスメイトは自分達に被害が降りかからないように、柴裂くんには関わらないようにしていた。
彼らにとって、そっちの方が得をするからだ。柴裂くんがターゲットになっていれば、自分達には被害は降りかからない。
そういう認識だった。
だからこそ、死んでしまった柴裂くんは自分達を恨んでいるのだと思った。
「私、この前、何もない廊下で転んだ……。きっと柴裂くんが怒ってるんだ……」
呟く女子生徒。泣きながら、柴裂くんに懺悔する。
柴裂くんが怒っているんだ。
だからこそ、何もない廊下で転んでしまったんだ。
「私、この前、ベッドで寝てたのに、床に落ちてた……。きっと柴裂くんが怒ってるんだ……」
呟く女子生徒。泣きながら、柴裂くんに懺悔する。
柴裂くんが怒っているんだ。
だからこそ、朝になったらベッドから転げ落ちていたんだ。
全部、柴裂くんが怒っているから、発生している出来事。
これは、そう、祟りだ。
何もない廊下で転んだのも、朝になったらベッドから転げ落ちていたのも、男子生徒の顔がパンパンになっていたのも、女子生徒の顔がパンパンになっていたのも、全部全部柴裂くんの祟りなんだ。
しかし……それはただの偶然である。
何もない廊下で転んだのは、この城のカーペットが上質なため、歩き慣れていないから転んだだけである。
ベッドから転げ落ちたのだってそうだ。寝返りを打ったから、ただ転げ落ちたのである。
女子生徒の顔がパンパンになっているのは元からである。彼女は、むくみやすい体質なのだ。慣れない異世界に来たのも関係しているのだ。
もっというなら、ここにいるクラスメイトたち全員の顔がパンパンに膨れ上がっている。
ただ単純に食べ過ぎが原因だ。
英雄として、この世界に召喚された彼らは、毎日豪華な食事を口にしている。デザートも食べ放題だ。
だから、食べ過ぎてむくんだのだ。そして、若干息苦しくなった。
しかし、それもきっと、柴裂くんが祟りを起こしているから、息苦しくなったのだ。
そういうこともあり、彼らは恐れていた。柴裂くんの祟りを。
彼は死んだのに、自分達だけこんな生活をしていてもいいのかと。後ろめたかった。
だから、決行することにした。
懺悔の儀式を、だ。
「では、こうなった原因の奴を裁くことにしよう! 柴裂くんが起こっているのも、健矢と岡沢レンジ、お前らのせいだ!」
「「は、離せッ!」」
床に二人の生徒が組み伏せられていた。
男子二人。そう、日頃から彼に酷いことをしていたものたちである。
健矢と呼ばれる男子生徒と、岡沢レンジと呼ばれる男子生徒。
彼の机の上に花瓶を置いて、足を引っ掛けて、泥水を頭から浴びせたあいつら、つまり、諸悪の根源だ。
この二人は元の世界にいた頃、自分勝手にイキリ散らしていたため、クラスメイトたちからも相当な怒りをかっていた。
恨まれて当然だ。こいつらのせいで、自分達の青春はメチャクチャになったんだ。
「おい、健矢さんとレンジくんよ? お前たちは、あっちの世界にいた時、好き勝手にしてくれたよなぁ?」
「ぐっ、やめろぉ!」
「グアアァァ……!」
胸ぐらを掴まれ、苦しむ二人。
「もうやめてよぉ……! こんなことして、何になるのぉ……!」
泣き出す女子生徒。
人間不信になりそうだった。
「ここで二人を責めて、何になるのよぉ……! 責めても、もう、柴裂くんは帰ってこないのよ!?」
「ああ、そうさ。だからだよ。だからこそ、死んだ柴裂くんのために、二人を裁かないといけないんだ」
このクラスの中で、一番高レア度のスキルを持った男子生徒が、泣いている生徒にそう言った。
彼はサッカー部の生徒だ。女子に人気があり、彼に慰められた女子生徒は彼の腕の中で泣き始める。
「ふんっ。くだらないね。君は、そうやって、いつも、いい顔ばっかりするんだね」
「なにかな? 僕は別にそんなつもりじゃ……」
「はいはい。イケメンくん、おつ~」
そう言ったのは、眼鏡をかけている生徒だった。
知的そうで、痩せ型の生徒だ。ただし、成績はあまり良くない。
しかし、この世界に来てからというもの、彼は生き生きしていた。
「まあ、いいや。で、さあ。問題はそいつらだよ、そいつら。柴裂くんをいじめてたゴミクズ二人だよ。そいつらを半殺しにして、まずはそこらへんに吊し上げるんだ。僕はそれがいいと思うな」
「お、お前、残虐だな……」
彼の言葉に、他のクラスメイトは若干引いていた。
「て、てめ……! この、調子に乗りやがって!」
「は? 何かな? ゴミクズが何か言ってるね。ちょっと、黙ってもらわないといけないね」
「ぐアァァ……”””ッ」
眼鏡の生徒が、いじめっ子二人を蹴り倒した。
そして、その頭を踏み躙り、痛めつけていた。
「あんまり、調子に乗らないことだね。僕だってさぁ? 君たちに恨みがあるんだよね。なんたって、僕は柴裂くんがそいつらの標的になる前に、いろいろ馬鹿にされていたからね。今度はこっちの番だよ。いつまでも、弱者が弱者のままだと思わないことだね。僕と君とでは、対等ではないんだよ?」
そう言って、彼は再びいじめっ子二人を蹴り倒した。
そしてクイッと眼鏡をあげて、天井を見上げる。
「ああ、柴裂くん。君は僕に希望をくれたんだ。弱者だった僕に今があるのは、君のおかげさ。だから、君に代わって、僕がきっちりこいつらを始末してあげるよ」
その顔には、柴裂くんを崇拝している気配があった。
それぐらい、彼は柴裂くんのことを、リスペクトしていたのだ。だから、諸悪の根源であるこいつらを滅することを心から望んでいた。
「……い、いや、だめだ。そんなこと、彼は望んでない。柴裂くんは、そんなこと、望まないんだ」
一人の生徒が止めようとする。
「だったら、なんで彼は私たちに祟りを起こしてるのよぉ……! あんた、説明できるの!?」
女子生徒が掴みかかる。
憎悪は連鎖する。それが今、起こっていた。
「もう……嫌! 七宮さんも最近、部屋に閉じこもってるし、嫌……!」
今、この場には、欠席している生徒がいる。
七宮ひなのだ。このクラスの唯一の心の拠り所、七宮ひなのは、この世界に来てから、部屋に閉じこもっていることが多い。
それに関してはしょうがないことで、みんなが容認している。しかし、七宮ひなののいない生徒たちの間では、悪意が助長してしまうばかりだった。
そしてクラスメイトの怒りの矛先は、元凶の男子二人だけではなく、よく一緒につるんでいた女子二人にまで降りかかる。
「細田さんと鍵原さんのせいでもあるんだからよ!?」
「はああああああああ!? なんで、私までそうなるのよ! 私は、何もしてないわ!」
「でも、あの二人とよく一緒にいたじゃない!」
「いたけど、私は何もしてないわよ! ただ、笑ってただけじゃない!」
「それがいけないの!」
女子生徒の一人が反論する。しかし、クラスメイトたちは軽蔑の眼差しでその生徒を見ていた。
「ってか、鍵原さんは、なんでいないの?」
「もしかして、あいつ、逃げたんじゃ……ッ!?」
そして、もう一人の女子生徒。鍵原かすみという生徒は、そもそもこの場にはいなかった。
ここにはクラスメイトたちのほとんどが出席している。いないのは、懺悔の儀式に使用する道具を買いに行ったクラスメイト数人と七宮ひなのだけだった。
そう思っていたけれど……。
あの日、柴裂くんが花瓶の泥水をかけられた時に、そばで笑っていた女子生徒がもう一人いる。それが鍵原かすみという生徒だ。
彼女はまるで消えたように、クラスメイトたちの元からいなくなっていたのだ。
一方そのころ、王城に用意された大部屋では、ピリついた雰囲気が張り詰められていた。
この部屋にいるのは、この世界で生まれたものたちではない。つまり異世界から召喚された、英雄の高校生たちだ。
英雄として召喚された彼らは王城に住むことになっていて、ここでは食事をしたり、会議をしたり、異世界から召喚されたクラスメイト同士たちが話し合う際に使われる場所である。
そして、現在。
その場所では、とある儀式の準備が執り行われていた。
「これは俺たちがしなければならないことだ。……そう、柴裂くんに対しての、懺悔の儀式をしなければならないのだ」
一人の生徒がそう宣言した。
行われているのは、先日、自分達の前からいなくなったクラスメイト、柴裂くんに対しての懺悔の儀式の準備だった。
「皆も知っている通り、今、俺たちの周りでは、様々な祟りが起きている。心当たりはあるはずだ」
「私なんて”……! 私なんて”……! 昨日、朝起きたら、顔がパンパンに腫れていたわ……”! これもきっと、柴裂くんの祟りのせいよ!」
「ボクの顔もこんなにパンパンだよ!」
一人の女子生徒が涙ながらに訴える。
同じように男子生徒も訴える。
……しかし、ことは深刻だった。
先日の召喚の間。
そこで、クラスメイトの柴裂くんが死んでからというもの、彼らには不可解な現象が起きているのだ。
一日に数度は必ず地震が起きていたり。朝起きたら、寒気を感じていたり。彼女に限らず、生徒たちの顔がパンパンに腫れている。まるで、肥えたみたいに、お腹も出てきている。
この原因は、なんなのか。
そう考えた時、真っ先に思い浮かんだのは、柴裂くんが死んだことだった。
捧げ姫フィリスティアを守り、クラスメイトの人気者七宮さんを守り、死んでしまった柴裂くん。
その柴裂くんは、多分、自分達のことを恨んでいるのだ。
はっきり言って、元の世界での柴裂くんの扱いはひどいものだったからだ。
あの日、この世界に召喚された日だってそうだ。
朝、学校に登校すると、机の上に花瓶が置かれていた。いじめだ。その花瓶には腐った花が生けられていて、なんと、その花瓶には泥水が入っていた。
そしてそれをやったのは、同じクラスメイトの生徒だ。
主にやったのは、男子二人だ。
このクラスで、ふんぞりかえっていた奴らだ。
そして他のクラスメイトは自分達に被害が降りかからないように、柴裂くんには関わらないようにしていた。
彼らにとって、そっちの方が得をするからだ。柴裂くんがターゲットになっていれば、自分達には被害は降りかからない。
そういう認識だった。
だからこそ、死んでしまった柴裂くんは自分達を恨んでいるのだと思った。
「私、この前、何もない廊下で転んだ……。きっと柴裂くんが怒ってるんだ……」
呟く女子生徒。泣きながら、柴裂くんに懺悔する。
柴裂くんが怒っているんだ。
だからこそ、何もない廊下で転んでしまったんだ。
「私、この前、ベッドで寝てたのに、床に落ちてた……。きっと柴裂くんが怒ってるんだ……」
呟く女子生徒。泣きながら、柴裂くんに懺悔する。
柴裂くんが怒っているんだ。
だからこそ、朝になったらベッドから転げ落ちていたんだ。
全部、柴裂くんが怒っているから、発生している出来事。
これは、そう、祟りだ。
何もない廊下で転んだのも、朝になったらベッドから転げ落ちていたのも、男子生徒の顔がパンパンになっていたのも、女子生徒の顔がパンパンになっていたのも、全部全部柴裂くんの祟りなんだ。
しかし……それはただの偶然である。
何もない廊下で転んだのは、この城のカーペットが上質なため、歩き慣れていないから転んだだけである。
ベッドから転げ落ちたのだってそうだ。寝返りを打ったから、ただ転げ落ちたのである。
女子生徒の顔がパンパンになっているのは元からである。彼女は、むくみやすい体質なのだ。慣れない異世界に来たのも関係しているのだ。
もっというなら、ここにいるクラスメイトたち全員の顔がパンパンに膨れ上がっている。
ただ単純に食べ過ぎが原因だ。
英雄として、この世界に召喚された彼らは、毎日豪華な食事を口にしている。デザートも食べ放題だ。
だから、食べ過ぎてむくんだのだ。そして、若干息苦しくなった。
しかし、それもきっと、柴裂くんが祟りを起こしているから、息苦しくなったのだ。
そういうこともあり、彼らは恐れていた。柴裂くんの祟りを。
彼は死んだのに、自分達だけこんな生活をしていてもいいのかと。後ろめたかった。
だから、決行することにした。
懺悔の儀式を、だ。
「では、こうなった原因の奴を裁くことにしよう! 柴裂くんが起こっているのも、健矢と岡沢レンジ、お前らのせいだ!」
「「は、離せッ!」」
床に二人の生徒が組み伏せられていた。
男子二人。そう、日頃から彼に酷いことをしていたものたちである。
健矢と呼ばれる男子生徒と、岡沢レンジと呼ばれる男子生徒。
彼の机の上に花瓶を置いて、足を引っ掛けて、泥水を頭から浴びせたあいつら、つまり、諸悪の根源だ。
この二人は元の世界にいた頃、自分勝手にイキリ散らしていたため、クラスメイトたちからも相当な怒りをかっていた。
恨まれて当然だ。こいつらのせいで、自分達の青春はメチャクチャになったんだ。
「おい、健矢さんとレンジくんよ? お前たちは、あっちの世界にいた時、好き勝手にしてくれたよなぁ?」
「ぐっ、やめろぉ!」
「グアアァァ……!」
胸ぐらを掴まれ、苦しむ二人。
「もうやめてよぉ……! こんなことして、何になるのぉ……!」
泣き出す女子生徒。
人間不信になりそうだった。
「ここで二人を責めて、何になるのよぉ……! 責めても、もう、柴裂くんは帰ってこないのよ!?」
「ああ、そうさ。だからだよ。だからこそ、死んだ柴裂くんのために、二人を裁かないといけないんだ」
このクラスの中で、一番高レア度のスキルを持った男子生徒が、泣いている生徒にそう言った。
彼はサッカー部の生徒だ。女子に人気があり、彼に慰められた女子生徒は彼の腕の中で泣き始める。
「ふんっ。くだらないね。君は、そうやって、いつも、いい顔ばっかりするんだね」
「なにかな? 僕は別にそんなつもりじゃ……」
「はいはい。イケメンくん、おつ~」
そう言ったのは、眼鏡をかけている生徒だった。
知的そうで、痩せ型の生徒だ。ただし、成績はあまり良くない。
しかし、この世界に来てからというもの、彼は生き生きしていた。
「まあ、いいや。で、さあ。問題はそいつらだよ、そいつら。柴裂くんをいじめてたゴミクズ二人だよ。そいつらを半殺しにして、まずはそこらへんに吊し上げるんだ。僕はそれがいいと思うな」
「お、お前、残虐だな……」
彼の言葉に、他のクラスメイトは若干引いていた。
「て、てめ……! この、調子に乗りやがって!」
「は? 何かな? ゴミクズが何か言ってるね。ちょっと、黙ってもらわないといけないね」
「ぐアァァ……”””ッ」
眼鏡の生徒が、いじめっ子二人を蹴り倒した。
そして、その頭を踏み躙り、痛めつけていた。
「あんまり、調子に乗らないことだね。僕だってさぁ? 君たちに恨みがあるんだよね。なんたって、僕は柴裂くんがそいつらの標的になる前に、いろいろ馬鹿にされていたからね。今度はこっちの番だよ。いつまでも、弱者が弱者のままだと思わないことだね。僕と君とでは、対等ではないんだよ?」
そう言って、彼は再びいじめっ子二人を蹴り倒した。
そしてクイッと眼鏡をあげて、天井を見上げる。
「ああ、柴裂くん。君は僕に希望をくれたんだ。弱者だった僕に今があるのは、君のおかげさ。だから、君に代わって、僕がきっちりこいつらを始末してあげるよ」
その顔には、柴裂くんを崇拝している気配があった。
それぐらい、彼は柴裂くんのことを、リスペクトしていたのだ。だから、諸悪の根源であるこいつらを滅することを心から望んでいた。
「……い、いや、だめだ。そんなこと、彼は望んでない。柴裂くんは、そんなこと、望まないんだ」
一人の生徒が止めようとする。
「だったら、なんで彼は私たちに祟りを起こしてるのよぉ……! あんた、説明できるの!?」
女子生徒が掴みかかる。
憎悪は連鎖する。それが今、起こっていた。
「もう……嫌! 七宮さんも最近、部屋に閉じこもってるし、嫌……!」
今、この場には、欠席している生徒がいる。
七宮ひなのだ。このクラスの唯一の心の拠り所、七宮ひなのは、この世界に来てから、部屋に閉じこもっていることが多い。
それに関してはしょうがないことで、みんなが容認している。しかし、七宮ひなののいない生徒たちの間では、悪意が助長してしまうばかりだった。
そしてクラスメイトの怒りの矛先は、元凶の男子二人だけではなく、よく一緒につるんでいた女子二人にまで降りかかる。
「細田さんと鍵原さんのせいでもあるんだからよ!?」
「はああああああああ!? なんで、私までそうなるのよ! 私は、何もしてないわ!」
「でも、あの二人とよく一緒にいたじゃない!」
「いたけど、私は何もしてないわよ! ただ、笑ってただけじゃない!」
「それがいけないの!」
女子生徒の一人が反論する。しかし、クラスメイトたちは軽蔑の眼差しでその生徒を見ていた。
「ってか、鍵原さんは、なんでいないの?」
「もしかして、あいつ、逃げたんじゃ……ッ!?」
そして、もう一人の女子生徒。鍵原かすみという生徒は、そもそもこの場にはいなかった。
ここにはクラスメイトたちのほとんどが出席している。いないのは、懺悔の儀式に使用する道具を買いに行ったクラスメイト数人と七宮ひなのだけだった。
そう思っていたけれど……。
あの日、柴裂くんが花瓶の泥水をかけられた時に、そばで笑っていた女子生徒がもう一人いる。それが鍵原かすみという生徒だ。
彼女はまるで消えたように、クラスメイトたちの元からいなくなっていたのだ。
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