The Load of Chaos ~勇者オシリスの日常的な冒険~

秋野ユーヒ

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The Load of Chaos ~勇者オシリスの日常的な冒険~(2)

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ラスボスは、自分の家族について語り出した。
「ワシには、兄と妹がいる。いずれ、会うことになるかもしれんが。」
(妹?では、ラスボスが最後ではないのか。)
クビスは心の中で冷静にツッコミを入れた。
「名前は何て言うんだい?」
ムネスは尋ねたが、視線は次のパンに向かっている。
「兄は『中ボス』、妹は『ザコ』という。」
「それじゃ、あんたがいちばん強いってわけね。」
ハラスはラスボスの前の、カラになったグラスを回収しながら言った。
「いや、ザコには手を焼いているな。」
「ザコちゃんは、カワイイのかい?」
カタスはカワイイ女の子に目がない。
「あら、私じゃ満足できないわけ?」
ハラスがわざとらしく口を尖らせた。
「いやいや、ハラスちゃんには誰もかなわないぜ、…なあ、ワキス。」
カタスはカワイイ女の子には目がないのだが、カワイイ女の子には弱くもある。
「ぜひとも君の妹も、『お友だち登録』させてもらいたいな。」
ワキスはスマートフォンを眺めている。待ち受け画面には、ワキス自身の横顔が映っている。
「勝手な想像はしないほうが身のためだぞ、お前ら。ザコは母親似だと言われている。」
「何、ではお前には母上がいるのか。」
オシリスは意外という表情をしている。
(親無しで子どもは生まれまい。たとえ人外であっても。)
クビスは当然という気持ちでラスボスの語りに耳を傾けている。
「名前は何て言うんだい?」
ムネスはまた尋ねたが、パンを食べる手は止まらない。
「…『サチコ』だ。」
「え?ラスボスの母ちゃんがサチコ!?」
クビスとムネス以外は驚いた様子だったが、声を上げたのはカタスだった。
オシリスは確認せずにはいられなかった。
「では、お前たち家族の苗字は、コ…」
「…いや、違うな。おしくはあるが。」
「…おしい、の?」
ハラスは上目遣いでラスボスを見つめた。
「ワシらの苗字は、『大林』だ。」
「つまりお前は、『大林ラスボス』ってんだな。」
カタスは鼻の下を人差し指でこすりながら言った。
「改めて大林君、今後ともよろしく願おう。後で連絡先の交換を。」
ワキスは手に持っていたスマートフォンを軽く振った。
「さあ、今度はお前たちのことを聞かせてもらおうか。誰からでもかまわないぞ。」
「じゃあ、まずは私から言わせてもらおうか。」
オシリスは話し始めた。
「私はコントーンの街を統べるイミフ=メイ城の王子だ。名は『オシリス』と言う。王である父の名は『オイドス』、王妃である母の名は『ヒップス』という。そして、『デンブー』という妹がいる。」
(そう、独特な香りのする家族なのだ。)
クビスの鼻の穴が少し広がり、ピクピクと動いている。
「お前には苗字は無いのか?」
ラスボスは尋ねた。
「何言ってんだよ。コイツを誰だと思ってんだよ。なあ?」
カタスはオシリスに向けて、両手をひらひらとさせている。
「そう、私こそが『勇者オシリス』だ。」
オシリスは右手の拳を自分の胸元に当てて誇らしげに言った。
「え?『勇者』って苗字だったの?」
ハラスは知らなかったようだ。
「なるほど、お前は勇者君なのだな。胸に刻んでおこう。」
「よろしく。じゃあ次は、クビス。紹介してやってくれ。」
オシリスはクビスを促した。
「私の名はクビス。イミフ=メイ城の守衛を務めている。オシリス殿のことは幼少の頃から知っていて、剣術や武術を教えたりもしていた。…あまり身についていないようだが。」
「うるさいな、父に言いつけてクビにするぞ。」
「…クビスだけに。」
ぼそっと言ったのは、ワキスだった。
「…失礼。夜勤で城に泊まることもあるが、家はコントーンの隣村、ムジューンにある。ムジューンは私の生まれ故郷だ。」
「ずっと城に住んでいても良さそうなものだがねぇ。故郷ってやつには、それほど愛着がわくもんなのかねぇ。」
ムネスは指についたパンのカスを舐めながら言った。クビスは照れたように微笑んだ。
「ムジューンにいる、『ウナージ』という女性と懇意にしている。彼女は私の家の近くで、彼女の両親と一緒に住んでいるが、私のことを気にかけてくれているのだ。」
「うらやましいねぇ、俺も誰かの待っているところに帰りてぇなぁ。」
カタスはニヤニヤと想像しながら言った。
「そもそも君には、帰る家がないじゃないか。」
ワキスが冷たいツッコミを入れた。
「それはまあ、クビスの紹介の次に。クビス、後がつっかえてんだ、手短に頼むよ。」
カタスは促した。
「うむ。もう長らく、彼女とはそんな付き合いを続けてきた。でも、そろそろけじめをつけようかと。」
クビスは鋭い視線をラスボスに向けた。
「ラスボスとの戦いが終わったら、私は彼女と…」
「ダメ!」
言葉を急いで遮ったのは、ハラスだった。
「それは言ってしまわないほうが良い気がするの。…フラグ、だったっけ?」
つづく?つづけたい
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