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五月雨と秋雨の間⑸
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「急に誘ってごめんね。一度、こうやって清水さんとゆっくり話がしてみたかったんだ。」
藤森さんはポテトをつまみながら言った。
「学校の昼休みにでも声をかけてくれたらいいのに。」
「あー、いつも清水さんって昼休みは一人で本を読んでるでしょ? 読書の邪魔をしたらいけないかなあって。」
隣のクラスなのに、私は藤森さんに割と観察されていた。
「別にいいよ、家でも読んでるし。」
「あは、そうなんだ! じゃあ学校始まったらガンガン話しかけるね。」
私はここしばらくの疑問をぶつけた。
「あの雨の日、なんで藤森さんは私に話しかけてきたの?」
藤森さんはしばらく視線を上にやって、その後話し始めた。
「清水さんってさ、入学式のときに入学生代表で答辞を読んでたじゃない? あの答辞って、入試の成績が一番の人が読むんだよね? すごいなーと思って。そんな人と友達になれたらいいなって。ダメ?」
入学式のことを思い出した。三月も下旬になって、学校から答辞を考えて読むように手紙が来た。お父さんは無邪気に喜んでいたけど、お母さんは「恥ずかしくないようにちゃんとしなさい」とか「学校も時間があったんだからもっと早く連絡くれないと」とか、しまいには「薫じゃ不安だから私が考える」なんて言い出して、答辞の文章を作って用紙に筆ペンで清書までしたんだっけ。達筆なお母さんのお陰で、立派な答辞の紙が出来上がったのだけど、内容はちっとも私が考えていたことと違っていて、それがかなり嫌だった。でも、あの人のことだ、これをそのまま読まないと怒ってしばらく口を利かなくなると思って、何度か練習をして、式ではそのまま読み上げた。式の後、参列したお母さんは、「もっと中学生らしい元気さが欲しかったわね」などと言ったが、子供らしくない文章を練り上げたのはお母さん本人じゃないか。思い出すと怒りが込み上げてくる。ああ、早く大人になって家を出たい。
「ごめん、何か良くないこと言っちゃった?」
藤森さんが私の表情を読み取ったようだ。
「いや、何でもないよ。そっか、答辞読んだから覚えててくれたんだね。」
私は慌てて笑顔を作った。多分口元は引きつっていたと思う。
「でさ、とりあえず三条さんに色々話を聞いて、その後清水さんに話しかけるタイミングを見てた。ストーカーみたいで気持ち悪いよね?」
「そんなことないよ、関心を持ってくれて嬉しい。」
関心。自分が言った言葉だけど、不思議な言葉だ。どういう関心なんだろう。私は普段自分から他人に関心を持つということが少ない。関心があるのは勉強のことと、そのときに読んでいる小説のこと、あとはお母さんの機嫌がいいか悪いかぐらいだ。でも今は、時々藤森さんのことが気になるかもしれない。
「私みたいな筋肉バカはなかなか清水さんみたいな人と仲良くなれないんじゃないかって思ってた。」
「筋肉バカなんて思ってないよ。ちゃんと中受してうちの学校に入れるだけでもバカじゃないし!」
藤森さんは頭をかいた。
「いや、ほんとにバカなんだけど、バカはバカなりに頑張ったんだよ。でさ、この後どうする?」
生まれたときからここに住んでいる自分としては、ちょっと前に引っ越してきた藤森さんにこの街を案内しなくてはならないのだろう。でも、私はあまり遊ぶ場所を知らなかった。しばらく考えて、だいぶ前にお母さんに連れて行かれた店が思い浮かんだ。
「そうだ、雑貨屋さんに行く?」
「行こう、行こう! じゃあ私、これ片付けてくるね。」
藤森さんは私の分のトレーまで奪って、ゴミ箱に持って行った。
藤森さんはポテトをつまみながら言った。
「学校の昼休みにでも声をかけてくれたらいいのに。」
「あー、いつも清水さんって昼休みは一人で本を読んでるでしょ? 読書の邪魔をしたらいけないかなあって。」
隣のクラスなのに、私は藤森さんに割と観察されていた。
「別にいいよ、家でも読んでるし。」
「あは、そうなんだ! じゃあ学校始まったらガンガン話しかけるね。」
私はここしばらくの疑問をぶつけた。
「あの雨の日、なんで藤森さんは私に話しかけてきたの?」
藤森さんはしばらく視線を上にやって、その後話し始めた。
「清水さんってさ、入学式のときに入学生代表で答辞を読んでたじゃない? あの答辞って、入試の成績が一番の人が読むんだよね? すごいなーと思って。そんな人と友達になれたらいいなって。ダメ?」
入学式のことを思い出した。三月も下旬になって、学校から答辞を考えて読むように手紙が来た。お父さんは無邪気に喜んでいたけど、お母さんは「恥ずかしくないようにちゃんとしなさい」とか「学校も時間があったんだからもっと早く連絡くれないと」とか、しまいには「薫じゃ不安だから私が考える」なんて言い出して、答辞の文章を作って用紙に筆ペンで清書までしたんだっけ。達筆なお母さんのお陰で、立派な答辞の紙が出来上がったのだけど、内容はちっとも私が考えていたことと違っていて、それがかなり嫌だった。でも、あの人のことだ、これをそのまま読まないと怒ってしばらく口を利かなくなると思って、何度か練習をして、式ではそのまま読み上げた。式の後、参列したお母さんは、「もっと中学生らしい元気さが欲しかったわね」などと言ったが、子供らしくない文章を練り上げたのはお母さん本人じゃないか。思い出すと怒りが込み上げてくる。ああ、早く大人になって家を出たい。
「ごめん、何か良くないこと言っちゃった?」
藤森さんが私の表情を読み取ったようだ。
「いや、何でもないよ。そっか、答辞読んだから覚えててくれたんだね。」
私は慌てて笑顔を作った。多分口元は引きつっていたと思う。
「でさ、とりあえず三条さんに色々話を聞いて、その後清水さんに話しかけるタイミングを見てた。ストーカーみたいで気持ち悪いよね?」
「そんなことないよ、関心を持ってくれて嬉しい。」
関心。自分が言った言葉だけど、不思議な言葉だ。どういう関心なんだろう。私は普段自分から他人に関心を持つということが少ない。関心があるのは勉強のことと、そのときに読んでいる小説のこと、あとはお母さんの機嫌がいいか悪いかぐらいだ。でも今は、時々藤森さんのことが気になるかもしれない。
「私みたいな筋肉バカはなかなか清水さんみたいな人と仲良くなれないんじゃないかって思ってた。」
「筋肉バカなんて思ってないよ。ちゃんと中受してうちの学校に入れるだけでもバカじゃないし!」
藤森さんは頭をかいた。
「いや、ほんとにバカなんだけど、バカはバカなりに頑張ったんだよ。でさ、この後どうする?」
生まれたときからここに住んでいる自分としては、ちょっと前に引っ越してきた藤森さんにこの街を案内しなくてはならないのだろう。でも、私はあまり遊ぶ場所を知らなかった。しばらく考えて、だいぶ前にお母さんに連れて行かれた店が思い浮かんだ。
「そうだ、雑貨屋さんに行く?」
「行こう、行こう! じゃあ私、これ片付けてくるね。」
藤森さんは私の分のトレーまで奪って、ゴミ箱に持って行った。
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