転生したらとんでもないトコロをイケメンにされた

餅月ぺたこ

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7.二十一日目

第11話

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 7 二十一日目 

  

 久々の自慰でぐっすり眠れたから、スッキリさっぱりした目覚めだった。 

 そんな今日は、いつもと行動を変えて、俺たちは川辺に並んで、釣りをしている。 

 なので、二人ともが無言で、反応のない川面をずーっと見ていた。 

 その何もない静かな時間は、己と向き合うのにもってこいで。 

 俺は、久々に神様とのやりとりを思い返して、不意に大事なことを思い出した。 

「身長!」 

 あと10センチくらい欲しい、って。 

 そのことを思い出して、俺は竿が流されないように石で固定すると、小石を一つ握りしめて、近くの木に駆け寄る。柱の傷の背比べの要領で、頭の高さの場所で手のひらをスライドさせ、持ってた石で幹に印をつけると、履いてた革靴を物差し代わりに計算してみる。地面からちょうど靴6個分だった。 

「25センチのサイズの靴で、外寸をおよそ28センチとして、掛ける6だと……」 

 とりあえず25を6倍して、150にしてから、革靴の空洞になってる先端3センチの6倍、18を足す。 

 おぉ!? 168センチ! 

 すごい! 確かに10センチほど伸びている!

 転移じゃなくて、転生だ! グレードアップされていた!

「……って、168かーい! ここまでしてくれるなら、あと2センチ足してくれもいいんだよぉ!?」 

 いや、全然嬉しいよ! 夢みたい! 嬉しい! けどね! けどさぁ!

「い、いや……ひょっとしたら靴の外寸が28・5センチかもしれない! そうしたらさらに3センチアップだから、……171センチ!」 

 これがダメなら、168はもう情状酌量の四捨五入の170でいいだろう!

「いやー、そっかー、コレが170の景色かぁ。170だと空気も美味いわー」 

 今さら気づいた異世界転生特典に、ルンルンで元の川辺に戻って、マティアスに声を掛ける。 

「ねえ、ねえ!」 

 弾んだ気持ちのまま声をかけたら、睨まれた。 

「大きな声を出すな。魚が逃げる」 

 イケボの小声で注意されて、「ごめんごめん」と小声で謝って、話を続ける。 

「ねえ、ねえ、あのさ」 

「なんだ」 

「俺って、身長高い? かっこいい?」 

 釣りの途中で木まで走っていった俺が、ご機嫌で帰ってきてこんな質問をしてくる。その意味が分からないとでも言うように、座った体勢で上体をひねって振り向いたマティアスが、いぶかしげに俺を頭の天辺から足のつま先までじっと見つめた。 

 そして、俺を呼ぶように手招きして、内緒話をする仕草をし、俺にそばへ寄って腰を屈めるよう促す。誘導されるまま近づいた俺の耳元へ、マティアスがそっと口を寄せると、背中がゾクゾクする低音で答えた。

「小さくて可愛い」 

「なっ……」 

 違うもん! 大きいもん!

「マティアスと比べてじゃないの! 世間と比べて!」 

 170センチの俺が見上げる背丈のマティアスなら、みんな小さくて可愛くなるだろ。 

 ぷるぷると肩を振るわせる俺に、マティアスは困ったように眉を寄せる。 

「分かってるよ。一般的にだろ? 高い低いは色々あるけど、友人や同僚達は皆俺と同じくらいだった。カイトは間違いなく、とても可愛いサイズだ」 

「みんなそんなデカいの!?」 

「だからうるさいって!」 

「うるさくないもん! マティアスの声のほうがデカいもん! 声も背もデカいもん! 俺だってデカくなりたかったもん!」 

 神様は俺のお願いを、ちゃんと叶えてくれていた。 

 ただ、周りの標準が変わっていて、依然俺は小さいままなのであった。 

「もんもん鳴くな。可愛さが増す。いいから静かに釣りをしてろ。夕飯がまた、もちもちキノコでいいのか」 

「いやですもんっ。ごめんなさいもんっ」 

 はぁ。喜んだのも束の間だった。 

 身長もキノコも、現実厳しい。 

 あ、キノコと言えば、マティアスが狩りでいなかった一人の時間に、ピンクのキノコを干してお湯で煮出したら、スープというより紅茶に近い味になるって発見した。先に俺だけ飲んでみたけど、体調も問題ないから毒もなさそうだし、今干してる分が明日で三日目のいい感じに干しあがるので、次はマティアスにも勧めてみるつもりだ。 

 それはともかく、夕飯がもちもちキノコだけは嫌だったから、すごすごと座って、俺は大人しく釣りを再開する。 

 けれど、釣り竿はピクリとも動かないから、またすぐに暇になって、神様との話に思考は戻っていく。 

(えーと、他に神様と何話したっけ……) 

 あ、神様とお友達になったんだった。 

 もしいつか、この島から出て、どこかの国で彼の神様を祀ってるところがあれば、ちゃんとお参りして挨拶はしよう。よくもこんな世界にって。 

(あー、それから最後の最後に、アレをお願いしたんだったなー) 

「佐田に負けないくらいのイケメンかぁ。ほんと、こんな生活じゃまったく役に立たないよ。どーでもいいお願い事しちゃったなぁ……」 

 呟いてからハッとして、そっとマティアスを伺う。 

 何も言ってこないので、これくらいの小声なら大丈夫みたいだ。 

(イケメンかぁ。男だけの泥んこ生活で気にもならなかったけど、身長を改造してくれてるなら、顔も修正入ってるんだろうなぁ) 

 そっと川を覗き込んで、顔を映してみる。 

 水面が揺れてて、はっきりとは分からないが、あんまり変わったようには思えない。 

「えーっ、俺がもともとイケメンだったってことー?」 

 はい、マティアス君、聞こえててもそんな失礼な顔でこっちを見ないように。 
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