転生したらとんでもないトコロをイケメンにされた

餅月ぺたこ

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8.二十二日目

第13話

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 8 二十二日目 

 その日、俺は人の言い争う声で目が覚めた。 

 寝床にしてる木の下で、マティアスが森の奥に向かって怒鳴っている。 

 その怒鳴り声を向けられた方角から、別の声が怒鳴り返してきた。 

 俺は、マティアス以外の人の声に驚いて、声のする方向に顔を向ける。 

 そこには、森の木々の色に浮く、空色の髪と南国の海のような色の瞳を持つ第二の腰蓑マッチョが、肩で息をするほど呼吸を乱して、槍を片手に立っていた。 

 もしかしなくてもアレが、マティアスが二度と会いたくないと言ってた、もう一人の遭難者だろう。全身に泥は塗ってないから、彼は彼で、何か別の対策をしているのかもしれない。 

 ていうか、青髪すごい! 異世界っぽい要素を初めて見れた! 

(へぇ、マティアスとはまた違う顔立ちだけど、女性にモテそうな、線の細い、優しい目元のイケメンさんだ) 

 二人の争う状況がよく分からなくて、思わず異世界を楽しんで浮かれてしまったが、そんな場合ではない。二人は一体何を言い争っているんだろうか。 

「帝国語も分からない下等な国の猿のクセに、僕に呪いを掛けるなんて殺されたいのか!」 

「相変わらず何言ってるか分からないな! まだ殴られ足りないのか!」 

 ひぃっ、殺すとか殴るとか、朝からハードだった。 

「その惚けたツラが何よりの証拠だ! 貴様が僕の身体に何かしたんだろう!」 

「うるさい! まだ寝てるのに起きるだろうが!」 

 うん、ありがとう。そうだね、マティアスもうるさいよ。 

「それがどうしたとでも言ったようだな!」 

「やっと分かったか。素直に謝る気になったなら、この前の分も謝れ!」 

 会話が微妙に噛み合ってない気がして、俺は首を捻る。 

 そういえばマティアスが、あの人と言葉が通じないと言っていたのを思い出す。 

(ん? 俺にはどっちも日本語に聞こえるんだけど……) 

 そうこうしている間に、二人がジリジリと間合いを詰め、腰を低くして戦う構えをし出したから、俺は慌てて寝床から身を乗り出して叫んだ。 

「ま、待って! 喧嘩する前に、話し合おう!」 

 突然上から声をかけた俺に、二人の動きがピタリと止まる。 

 そして、次の瞬間、青髪のマッチョが持ってた槍をパタリと落とし、雄叫びをあげると泣きながら俺の居る木に猛然と駆け出した。なんだかマティアスとの初日を思い出させる行動に、もれなくこの人も会話に飢えていたことが分かる。 

 当然、木によじ登る前にマティアスに捕まって、取り押さえられてしまった。 

「カイト、降りてこなくていい」 

 俺の身を案じてくれたマティアスだったけど、柔道の寝技から逃げ出す人みたいに、青髪さんは抵抗している。 

今にも殴り合いが始まりそうで、俺もじっとしていられない。 

「上からだと対等に話せないよ」 

 俺なら大丈夫、と降りるために立ち上がると、昨夜、自慰の為に前を寛げたままだったズボンが、そしてそのズボンに付いてトランクスが、二枚一緒にストンと足首まで落ちた。 

 木の下から見上げていた二人の目に、ぷるんと、俺の無毛のちんちんがお披露目されて、二人を固まらせる。 

「――わぁっ」 

 思わず情けない声を出して慌ててズボンを履き直す俺を置いて、地面では再び二人の取っ組み合いが始まった。 

「貴様っ、いつの間にあんな子供を囲って……、手篭めにしたのか!」 

「カイトの可愛いものを、出会って初日でよくも勝手に見たな!」 

 肉を打つ鈍いパンチの音を、木から降りて慌てて止めて、なんとか二人を引き離す。 

「さ……先ほどはお見苦しいものを……。はじめまして。彼はマティアスで、俺はカイトと言います。あなたも遭難して、ここへ来たと聞いています」 

 直ぐに殴り合わないように、二人の間に俺が座って、二人に俺特製のキノコ茶を出して一服してもらい、落ち着いたところで左にいる青髪さんに話しかける。 

 俺の言葉をじっくり聞いて、青髪さんは再び涙を溢れさせた。 

「僕は……ロランだ。っ……こんなところで敬語はいらない。……ここで、……初めて人と話せた……っ」 

 感極まった声に、マティアスと出会った日を思い出し、俺も貰い泣きしそうになって、鼻がジンとする。 

 マティアスにはロランの言葉がほんとに通じていないようだったけど、言葉が分からなくても、自分と同じことが起きた状況を汲むことはできたのだろう。お茶を飲みながら、一先ず黙って様子を伺っていた。 
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