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8.二十二日目
第14話
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ロランが涙を拭って、それから俺たちは互いの年齢や簡単な経緯を伝えあう。ロランも俺が子供だと思っていたようで、ほんとに成人しているのかと、三回念押しで確認された。ロランもマティアスには及ばないけれど、背がとても高い。身長にしろ顔面にしろ、この二人がこの世界の標準だというのなら、俺は視界が眩しくて気軽に外出もできないよ。お願い、キミたちがピラミッドの頂点であってくれ。
そんなことを思いながら、ロランの遭難した経緯を聞く。
掻い摘むとこんな感じだった。
故郷では、とある貴族家の三男で、二十二歳の時に、旅行中に乗っていた船が難破して、それからここで一年ほどが経過している、とのことなので、俺の三歳上で、マティアスの一つ下になるのだが、最近似た話を俺はマティアスから聞いたよ?
「ねぇ……、ここって、二十二歳になると船に乗せられて、谷底へ突き落とされる文化でもあるの?」
マティアスにコソッと確認したら、デコピンされた。
いや、バカにしたつもりはないんだよ? ただ、設定を考えるのが面倒臭くなった感が透けて見えたから確認しただけだ。
「じゃあロラン、さっきは随分怒ってここに来たみたいだけれど、何があったの?」
俺の問いに、ロランはハッとして、表情を一変させる。エメラルドグリーンの目に力を込めて、マティアスを怖い顔で睨みつけた。
「こいつがっ、僕に呪いをかけたんだ! だから、夜通し走って復讐しに来た!」
ロランの住処って、確か四日ほどかかるくらい離れてるって話じゃなかった? 走って二晩でここまできたの?
ものすごい怒ってるじゃん。
「ロランは、マティアスが呪いをかけたから、復讐しに来たって言ってるよ?」
「は?」
通訳、というか、言われた事をそのまま日本語で繰り返して伝えると、マティアスは片眉を上げる程度の反応だ。
うん、これは何もしてないな。
「あの……、ちなみに呪いって?」
マティアスの無実を俺が言っても、ロランはまた怒るだろうから、とりあえず話を聞いてみる。
ロランは、怒りに肩を震えさせると、紅茶を一気に飲み干してから話してくれた。
「一昨日の昼……、狩りをしてたら突然、僕の髭と胸毛が消えたんだ! やっと逞しく見えるように蓄えられてきたところだったのに……!」
「えっ! ロランも毛がなくなったのっ?」
「何て言ったんだ?」
「あっそっか、あのね、一昨日のお昼、ロランも髭とか胸毛が突然なくなったんだって」
今度は右に向いて説明するけど、キミたちほんとに言葉が通じてないの? 俺、同じ言葉しか使ってないんだけど。
「やっといい感じで生えて、逞しく見えてきたところで消えちゃって、で、それがマティアスの仕掛けた呪いだと思って、怒ってる」
俺たちだって慌てたあの状況が、一人でいる時に突然身に起きたら、それはびっくりしただろう。
しかも、ロランはこの島に自分とマティアスの二人しか居ないと思ってるんだから、マティアスを犯人だと思い込んだのも仕方ない。
「俺たちもツルツルになって、驚いたんだよって教えてあげるよ」
「フッ、あのチョビ髭と青カビが生えたみたいな胸毛があっても、そいつは腰抜け野郎のままだ」
「またそんな喧嘩売るような事……」
「何て言ってるの……」
今度は左だ。
「あぁ、ごめんね、彼に説明してて。その日、俺たちも同じ頃に、ツルツルになったねって話してたんだ」
「……そのあとは? そいつ、他に何か言ってただろ」
「え……」
言ってたけど、悪口だったから伝えられない。
「えっと……、マティアスの記憶では、ロランは髭とかそんなに生えてなかった……って」
「そんな事、そいつ言ってないよね。もっと馬鹿にした感じだった」
う、鋭い。
「ねぇ、カイト。一人称から正確に、そのまま、そいつが言ったとおりに伝えて」
ロランはマティアスには怒ってるけど、俺に向ける眼差しはキツくない。
今だって命令というより、お願いする感じだ。
「うーん……。ぉ……怒らない? マティアスのこと、殴ったりしない?」
二人とも俺より体格がいいから、本気の喧嘩なんて止めに入ったら、こっちが死んじゃう。
「うっ……、カイト可愛いね……。その黒真珠のような大きな瞳の上目遣いは、男相手でもココじゃキケンだよ……」
俺の確認に、ロランが何故か赤面して髪を撫でてきて、そしたらマティアスが俺の腕を引っ張って肩に腕を回し、ロランの手が届かないようにして唸る。
「カイトに触るなっ」
「何だその態度……。ふん、もっと撫でてやる。ねぇ、早く教えてよ、カイトぉ」
「えっ……、えっ……、うわっ」
俺に手を伸ばすロランと阻止するマティアス。二人のイケメンマッチョに挟まれて、空気だけで押し潰されそうなんだけど。
そんなことを思いながら、ロランの遭難した経緯を聞く。
掻い摘むとこんな感じだった。
故郷では、とある貴族家の三男で、二十二歳の時に、旅行中に乗っていた船が難破して、それからここで一年ほどが経過している、とのことなので、俺の三歳上で、マティアスの一つ下になるのだが、最近似た話を俺はマティアスから聞いたよ?
「ねぇ……、ここって、二十二歳になると船に乗せられて、谷底へ突き落とされる文化でもあるの?」
マティアスにコソッと確認したら、デコピンされた。
いや、バカにしたつもりはないんだよ? ただ、設定を考えるのが面倒臭くなった感が透けて見えたから確認しただけだ。
「じゃあロラン、さっきは随分怒ってここに来たみたいだけれど、何があったの?」
俺の問いに、ロランはハッとして、表情を一変させる。エメラルドグリーンの目に力を込めて、マティアスを怖い顔で睨みつけた。
「こいつがっ、僕に呪いをかけたんだ! だから、夜通し走って復讐しに来た!」
ロランの住処って、確か四日ほどかかるくらい離れてるって話じゃなかった? 走って二晩でここまできたの?
ものすごい怒ってるじゃん。
「ロランは、マティアスが呪いをかけたから、復讐しに来たって言ってるよ?」
「は?」
通訳、というか、言われた事をそのまま日本語で繰り返して伝えると、マティアスは片眉を上げる程度の反応だ。
うん、これは何もしてないな。
「あの……、ちなみに呪いって?」
マティアスの無実を俺が言っても、ロランはまた怒るだろうから、とりあえず話を聞いてみる。
ロランは、怒りに肩を震えさせると、紅茶を一気に飲み干してから話してくれた。
「一昨日の昼……、狩りをしてたら突然、僕の髭と胸毛が消えたんだ! やっと逞しく見えるように蓄えられてきたところだったのに……!」
「えっ! ロランも毛がなくなったのっ?」
「何て言ったんだ?」
「あっそっか、あのね、一昨日のお昼、ロランも髭とか胸毛が突然なくなったんだって」
今度は右に向いて説明するけど、キミたちほんとに言葉が通じてないの? 俺、同じ言葉しか使ってないんだけど。
「やっといい感じで生えて、逞しく見えてきたところで消えちゃって、で、それがマティアスの仕掛けた呪いだと思って、怒ってる」
俺たちだって慌てたあの状況が、一人でいる時に突然身に起きたら、それはびっくりしただろう。
しかも、ロランはこの島に自分とマティアスの二人しか居ないと思ってるんだから、マティアスを犯人だと思い込んだのも仕方ない。
「俺たちもツルツルになって、驚いたんだよって教えてあげるよ」
「フッ、あのチョビ髭と青カビが生えたみたいな胸毛があっても、そいつは腰抜け野郎のままだ」
「またそんな喧嘩売るような事……」
「何て言ってるの……」
今度は左だ。
「あぁ、ごめんね、彼に説明してて。その日、俺たちも同じ頃に、ツルツルになったねって話してたんだ」
「……そのあとは? そいつ、他に何か言ってただろ」
「え……」
言ってたけど、悪口だったから伝えられない。
「えっと……、マティアスの記憶では、ロランは髭とかそんなに生えてなかった……って」
「そんな事、そいつ言ってないよね。もっと馬鹿にした感じだった」
う、鋭い。
「ねぇ、カイト。一人称から正確に、そのまま、そいつが言ったとおりに伝えて」
ロランはマティアスには怒ってるけど、俺に向ける眼差しはキツくない。
今だって命令というより、お願いする感じだ。
「うーん……。ぉ……怒らない? マティアスのこと、殴ったりしない?」
二人とも俺より体格がいいから、本気の喧嘩なんて止めに入ったら、こっちが死んじゃう。
「うっ……、カイト可愛いね……。その黒真珠のような大きな瞳の上目遣いは、男相手でもココじゃキケンだよ……」
俺の確認に、ロランが何故か赤面して髪を撫でてきて、そしたらマティアスが俺の腕を引っ張って肩に腕を回し、ロランの手が届かないようにして唸る。
「カイトに触るなっ」
「何だその態度……。ふん、もっと撫でてやる。ねぇ、早く教えてよ、カイトぉ」
「えっ……、えっ……、うわっ」
俺に手を伸ばすロランと阻止するマティアス。二人のイケメンマッチョに挟まれて、空気だけで押し潰されそうなんだけど。
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