転生したらとんでもないトコロをイケメンにされた

餅月ぺたこ

文字の大きさ
7 / 29
4.一日目

第7話

しおりを挟む
 味わうより、腹を膨らませるだけの食事が終わると、寝る準備だといって、マティアスが持っていた赤土と、焚き火の周りにできた灰と、謎の草の汁とを混ぜて作った泥で、俺の顔にパックを施す。 

「ねえ、この泥、マティアスと同じ? ハーブの爽やかな匂いだ。ほんとにコレで虫も獣もこないの?」 

「今のところ成功している。全身に塗った方が効果はあるだろうが……」 

 だからマティアスはそんな姿だったのか。 

 なんと腰蓑姿は、理に適った最終形態だった。 

「虫刺されはイヤだな……。俺も腰蓑になったほうがいいんじゃない?」 

「お前は肌を出すな――じゃなくて、いや、服を脱いで風邪をひくほうが厄介だ。ここに慣れるまで、とりあえず出ている肌だけでも塗っておけばマシだろう。日中に川で水浴びをしたときに、草の汁だけでも全身につけるようにしてみてくれ」 

「うん、わかった」 

 俺のことを気遣って色々教えてくれるマティアスの配慮に、ますます信頼度が増していく。 

 泥を塗り終わると、寝床となる木に上手く登ることもできない俺を、先に登ったマティアスが引っ張り上げてくれて、寝床から落ちないように「今夜は横で支えてやる」と、腕枕の申し出までしてくれる。 

「木の上で寝るのは初めてだけど、落ちないように頑張るよ。俺も男だし、そんなに気を遣うと、マティアスが疲れちゃう」 

 泣いてしまったからか、役立たずの俺に至れり尽くせりである。 

 あまりに大事にしてくれるので、出された腕をやんわり断ると、髪と髭の奥から悲しい目をされた。 

「人がいることが、夢でないと実感したいんだ。今夜だけでいいから、側で寝てくれないか?」 

 もうね、こんなに優しくしてくれる人の頼みなんて断れないよ。髭面のおっさん上等だよ。近い将来、俺も同じ姿じゃん!

「そっか、マティアスも寂しかったもんね! もちろんだよ! 俺も落ちたくないし、添い寝が俺なんかでいいなら、喜んで!」 

 ――そう思っていた時が、俺にもありました。 

 まさか熟睡してるマティアスに、朝まで胸を揉まれ続けるなんて、誰が想像するんだよ!

 背後から抱き込まれる体勢で二人が並んで横になり、目を閉じ、毛布代わりに掛けたスーツの上着の下で、止まることなく幸せそうに動く男の手に、俺はこれから始まる男だけの遭難生活に、やるせない気持ちで朝を迎えたのだ。 

 翌日、案の定マティアスは何も覚えていない。 

 それどころか、寝不足で疲れ果てた俺を見て、朝から一生懸命に世話を焼いてくれるから、お前のせいだよっ、と寝相の文句も言い出せないし。 

 だから二日目の今夜は、最初から「一人で寝る!」と毅然と自立を宣言した。 

 木登りのコツも分かって、寝床の真下から心配顔で見上げてくるマティアスに親指を立て、無事に登れた事を報告する……ところまでは上手くいったのだが、寝床で肩の位置を変えようと、コロンと動いた寝返り一回で、ツルっと木から落ちてしまって、まだ真下にいてくれたマティアスに軽々受けとめられて助けられると、結局今夜も一緒に寝る事になっている。 

 太い腕に身体をガッチリ捉えられ、俺の耳の直ぐ側でスヤスヤと寝息を立てているマティアスの両手が、今夜も身体の柔らかい部分を探してシャツの上から上半身をまさぐってくる。 

 そして、無事に胸を見つけると、楽しそうにモミモミが始まった。 

「ねえっ、ほんとに寝てるんだよね!?」 

 二年間の人への飢えが、彼をこうさせてしまうのか。 

 近々俺もこうなってしまうのか……。 

 地面からそんなに高く感じていなかったけど、寝床から落ちるのは、想像以上に速度があって怖かった。 

 アレとコレを天秤に掛けた俺は、マティアスの哀しき男の性を受け入れる。 

「あっ……、イヤ、ちょっと……、あの、なんか……変な気分になっちゃうから……、あんまり中心をしつこく、しないで……っ、アッ」 

 自分の口から出る変な声に困り果て、これ以上追い込まれる前にモゾモゾと身体を反転させると、泥の付いた逞しい半裸の胸に、同じ泥を塗った顔を埋めるような体勢に向きを変える。 

 マティアスの温かい体温と、ハーブの爽やかな香りに癒されるが、しっかりしろ、海斗。これはマッチョの胸だぞ。 

 余計なことを考えないように目を瞑り、今日こそは睡眠を取りたくて、無心になる。 

 暫くすると、揉んでいた胸がなくなって所在なげになったマティアスの手が、代わりに見つけた尻を揉んできたのだが、能天気な俺も、さすがに慣れない生活に疲れていた。 

 もう尻を守るのも逃げるのも億劫で、されるがままに放置して、今夜は俺も眠りにつくのだった。 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...