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第3章 誰かが死ぬということ
牙を剥くマハ
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行きずりの夫婦の娘は遂に見つけること叶わず、玲士朗が渋面を浮かべたまま三叉路に戻ると、既に集まっていた幼馴染達も同様の表情を見せていた。とりわけメーネは殊更狼狽しながら玲士朗に駆け寄った。
「レイジロー、ヨースケがまだ戻らないんです」
「鷹介が?」
見通しの良い場所で待機していた夫婦のもとに鷹介は現れなかったらしい。用を足すと言い残して既に三十分弱。彼の身に何かが起こったのは明白だった。
しかし、玲士朗の反応は淡白なものだった。
「まぁ心配しなくても、アイツならじきに戻ってくるさ」
玲士朗の口振りを薄情と受け取ったのか、メーネは珍しく食い下がった。
「そ、それでいいんですか? ヨースケの身に危険が及んでいるとしたら――」
メーネの肩に優しく触れたのは詩音だった。
「だから言ったでしょうメーネ。玲士朗も私達と同じことを言うって」
「シオン……貴方達は、どうして」
「なんとなくだけどさ、鷹介は戻ってくるって分かるんだよ。もう長い付き合いだもん」
「ユズキ……」
柚希の呑気な笑顔に当てられて、メーネの差し迫った表情も少し和らいだが、承服できかねる心境は相変わらずのようだった。
顎に手を当てて考え事をしていた梢が記憶を辿るように呟いた。
「そういえば、前にも似たようなことがあったわね。確か……中三の頃だったかな。鷹介が急に早退して行方知れずになって」
梢の思い出話に、柚希が楽し気に応じる。
「懐かしいね! 確か、在来線を乗り継いで、全然知らない場所で野宿したんだよね。周りの人は警察に連絡したりなんかして心配してたみたいだけど、私達は全然そんなことなくて、むしろいつも通りで!」
「どうせアイツは戻ってくるもの。勝手に悩んで、勝手に解決して、何食わぬ顔で私達の前に現れる。これまでもそうだったし、きっとこれからもそう。心配するだけ無駄よ。たぶん、竹馬ナインの全員、そう思ってるわ」
「竹馬、ナイン?」
疑問符を頭の上に浮かべるメーネに、詩音が答えた。
「嗚呼、私達九人で作った野球チームの名前よ。えーと、野球っていうのは……これくらいの丸いボールを投げて木の棒で打ったり、打ったボールを拾ったりして得点を競う運動で、九対九で勝負するの。あ、でも実は指名打者制度っていうのがあって、十人目のメンバーも試合に出れるから、メーネも竹馬ナインの一員にスカウトしちゃう!」
「それいいね! まだ一回も試合はしてないし、半分以上は未経験者だからさ、メーネも練習して、一緒に甲子園目指そう!」
「ちょっと柚希! どこまで飛躍した野球する気なのよ! 大体、甲子園に指名打者制度はない」
「え!? そうなの?」
呆けるメーネと若い夫婦を置き去りにして、蛙鳴蝉噪する三叉路。土地に不慣れな友人が行方知れずとなり、幼い女の子――ブルーナという名の黒髪の少女がいなくなった状況においては似つかわしくない能天気さだった。玲士朗は困ったような笑みをメーネに見せる。
「自棄を起こしてるわけじゃないんだ。気分がよければ何でも良く見えるし、悪ければ何でも悪く見えてくるって、昔の人は言ったもんさ。意志さえあれば、良い流れを引き寄せたり、遠ざけたりできるんだなって今なら思う。きっと、アイツらもそれを感じてるんだ。
鷹介は絶対戻ってくるし、ブルーナも絶対に見つけ出す。だからメーネも一緒に信じてくれ」
穏やかながら決然とした表情を浮かべる玲士朗に、メーネは観念したかのような、それでいて彼に全幅の信頼を寄せる笑みを見せる。竹馬ナインのメンバーとして、彼女もまた、共に望んだ未来を引き寄せる心の強さを持ちたいと願うのだった。
「どこへ行く? ぬしら」
マハが鷹介と子ども達の行く手を阻んだ。マハに対して罪悪感を抱くブルーナ達は皆一様に視線を逸らし、この場を立ち去りたい衝動に心掻き乱されていたが、鷹介は悪びれる様子もなく、あっけらかんと答える。
「お、丁度良かった。今からみんなでマハの所に行くところだったんだ」
「下等種族が雁首揃えて、喜劇でも演じて見せてくれるのか」
「マハにとっちゃ面白くないかもしれんがな。実はこの子達、親元に帰りたいらしいんだ。帰りたいなら帰してやった方がいいだろ? だから許可をもらおうと思って」
「……ぬし、本気でわらわが許すと思ってるのかえ?」
表情は穏やかだが、声色は明らかに静かな怒気を含み、地の底から響くような低さだった。
「おお、こわ。土下座して頼んでも許してくれなさそうだな」
緊張感のない鷹介の軽口に、いよいよマハは気色ばんだ。
「気高きエッヘの王女たるわらわが、ぬしら下等種族を暗愚と迷妄の苦しみから救ってやろうと情けをかけてやったというのに。思い上がるでないぞ人間風情が」
それまでのマハからは想像もつかない鬼気迫る形相と恫喝の響きを帯びた声色に、子ども達は恐れをなして蒼褪めた。しかし鷹介は怯むことなく、やれやれと肩を竦める。
「美人に限って性格は困ったちゃんってよく言うけど、まさにそれだ。女のミステリーほどそそられるものは無いが、女のヒステリーほど興醒めするものも無いな」
鷹介は一呼吸ついてから、それまでの軽々しさとは一転した真摯な態度でマハに対する。
「マハ。アンタの王国は確かに“理想郷”だよ。権威主義、選民思想、種族的身分制度……どれも黴臭いけど、絶対に間違わない王者がその制度を使って国を治めるなら、区別や不自由を不公平には思わないし、正当に報われるなら制限された生き方にだって満足できる。マハはそういう公正な統治ができるんだろ?」
「そうじゃ。ぬしら下等種族は、高貴なるわらわのために生き、奉仕すればいい。わらわの慈悲と庇護の下、何不自由ない生を約束してやろうというのじゃ。
ここには不平等も不公正もないのじゃぞ? わらわは常に正しく、ぬしらに存在意義を与え、奉仕の喜びを啓蒙してやるのじゃから。生きる道に迷わず、希望を抱かず、絶望を知らず、幸福になれる」
怯える子ども達を意にも介さず、マハは誇らしげに、自らに酔ったかの如く恍惚としながら主張を開陳する。鷹介は頭を掻いた。
「満足と幸福は別物なんだと思うんだよなぁ。幸せって誰かに与えられるものじゃなくて、いつの間にか手に入れて、銘銘、形を与えるもんだろ?」
マハは嘲笑を漏らす。
「在りもしないものを追い続ける滑稽さ、在ると偽る欺瞞、つくづく愚かじゃな人間。そんなものは自己満足の妄想に過ぎん」
「そりゃそうさ。どれだけ美辞麗句で取り繕おうと、幸福なんて所詮、自己満足だろ。みんな、誰かのために生きることを存在理由にしたがるけど、誰かのために存在してる奴なんて一人もいない。アンタも子ども達も、そう思い込みたい者同士が出会って、傷を嘗め合ってるに過ぎない」
「……生意気なことを言う」
「悪いな、さとり世代は理想よりも現実を見てるんだ。誰かが作った幸福は、穴があくほど見つめ続けていればそのインチキが見えてくる。与えようとした時点で、それは押し付けの嘘っぱちだ。自分で気づいた幸福でない限り、騙されてるんだよ」
マハはゆっくりと頭を振って反駁する。
「世迷言じゃ。そうやってぬしらは悩み、苦しみ続ける。その苦悶から逃れようと、強欲な者は金品に価値を見出す。傲慢な者は人を従わせて悦に入る。無力な者は諦観し現状を嘆く。なんと浅ましく、劣等にして低俗な生なのか。わらわはぬしらより優れた存在の責務として、ぬしらを導いてやるのじゃ。わらわの示す幸福こそ、人類の普遍にして誇り高き生をもたらす」
「だとしても、俺は御免だな。何が幸福か、分かりやすい形はないし、誰かに教わるものでもない。定められたレールを走らされる気楽さよりも、レールを作った連中の思惑に乗るのは癪だと感じるようなひねくれ者だって、それなりの幸せを感じることもできる。ブルーナ達だってそれぞれの幸せがあって、それはマハの王国の外にあるって、内心、気付いてるんだよ。一寸の虫にも五分の魂って言うだろ? 下等種族だからってあんまり馬鹿にするもんじゃないぜ」
これ以上の問答は時間の無駄だと判断したマハは、語気を強めて言い放った。
「その小賢しさ、不愉快じゃな。生意気な口が叩けぬように、わらわが手ずから矯正してやろう」
マハは神働術を行使する。彼女の足元には眩く輝く幾何学模様が現れて、大地に円形の陣を刻んでいく。陣の内側はマハの自意識に支配された自在空間と化し、神羅万象に遍満する生命の息吹を取り込んで練り上げられた精神力がマハを神懸かり状態に移行させる。
マハは自らの指の皮膚を嚙み千切り、その血が地面に滴り落ちると、血を核として土が纏わり、凝集して、武骨な土塊人形を組み上げていく。
鷹介は目を剥いた。地面から上半身だけを露わにした土塊人形は、これまで見た個体のどれよりも巨大で、獰猛で、威圧的だった。子ども達は悲鳴を上げて身を寄せ合った。
土塊人形は一瞬のうちに周囲の土を吸収して巨大化した右拳を、鷹介と鷹介の影に隠れる子ども達に暴戻な速度で打ち込まんとする。
マハは“矯正”という目的を達成するため、土塊人形の力を多少加減していたが、それでも密度を高めた拳は、鷹介達を軽々吹き飛ばし、その脆弱な筋肉や骨を砕いてしまうだろう。痛めつけ、改悛させ、涙ながらに命乞いをさせてから治療してやれば、所期の目的は達成される。マハは疑いの余地のない未来図を思い描いて悦に入っていた。
「レイジロー、ヨースケがまだ戻らないんです」
「鷹介が?」
見通しの良い場所で待機していた夫婦のもとに鷹介は現れなかったらしい。用を足すと言い残して既に三十分弱。彼の身に何かが起こったのは明白だった。
しかし、玲士朗の反応は淡白なものだった。
「まぁ心配しなくても、アイツならじきに戻ってくるさ」
玲士朗の口振りを薄情と受け取ったのか、メーネは珍しく食い下がった。
「そ、それでいいんですか? ヨースケの身に危険が及んでいるとしたら――」
メーネの肩に優しく触れたのは詩音だった。
「だから言ったでしょうメーネ。玲士朗も私達と同じことを言うって」
「シオン……貴方達は、どうして」
「なんとなくだけどさ、鷹介は戻ってくるって分かるんだよ。もう長い付き合いだもん」
「ユズキ……」
柚希の呑気な笑顔に当てられて、メーネの差し迫った表情も少し和らいだが、承服できかねる心境は相変わらずのようだった。
顎に手を当てて考え事をしていた梢が記憶を辿るように呟いた。
「そういえば、前にも似たようなことがあったわね。確か……中三の頃だったかな。鷹介が急に早退して行方知れずになって」
梢の思い出話に、柚希が楽し気に応じる。
「懐かしいね! 確か、在来線を乗り継いで、全然知らない場所で野宿したんだよね。周りの人は警察に連絡したりなんかして心配してたみたいだけど、私達は全然そんなことなくて、むしろいつも通りで!」
「どうせアイツは戻ってくるもの。勝手に悩んで、勝手に解決して、何食わぬ顔で私達の前に現れる。これまでもそうだったし、きっとこれからもそう。心配するだけ無駄よ。たぶん、竹馬ナインの全員、そう思ってるわ」
「竹馬、ナイン?」
疑問符を頭の上に浮かべるメーネに、詩音が答えた。
「嗚呼、私達九人で作った野球チームの名前よ。えーと、野球っていうのは……これくらいの丸いボールを投げて木の棒で打ったり、打ったボールを拾ったりして得点を競う運動で、九対九で勝負するの。あ、でも実は指名打者制度っていうのがあって、十人目のメンバーも試合に出れるから、メーネも竹馬ナインの一員にスカウトしちゃう!」
「それいいね! まだ一回も試合はしてないし、半分以上は未経験者だからさ、メーネも練習して、一緒に甲子園目指そう!」
「ちょっと柚希! どこまで飛躍した野球する気なのよ! 大体、甲子園に指名打者制度はない」
「え!? そうなの?」
呆けるメーネと若い夫婦を置き去りにして、蛙鳴蝉噪する三叉路。土地に不慣れな友人が行方知れずとなり、幼い女の子――ブルーナという名の黒髪の少女がいなくなった状況においては似つかわしくない能天気さだった。玲士朗は困ったような笑みをメーネに見せる。
「自棄を起こしてるわけじゃないんだ。気分がよければ何でも良く見えるし、悪ければ何でも悪く見えてくるって、昔の人は言ったもんさ。意志さえあれば、良い流れを引き寄せたり、遠ざけたりできるんだなって今なら思う。きっと、アイツらもそれを感じてるんだ。
鷹介は絶対戻ってくるし、ブルーナも絶対に見つけ出す。だからメーネも一緒に信じてくれ」
穏やかながら決然とした表情を浮かべる玲士朗に、メーネは観念したかのような、それでいて彼に全幅の信頼を寄せる笑みを見せる。竹馬ナインのメンバーとして、彼女もまた、共に望んだ未来を引き寄せる心の強さを持ちたいと願うのだった。
「どこへ行く? ぬしら」
マハが鷹介と子ども達の行く手を阻んだ。マハに対して罪悪感を抱くブルーナ達は皆一様に視線を逸らし、この場を立ち去りたい衝動に心掻き乱されていたが、鷹介は悪びれる様子もなく、あっけらかんと答える。
「お、丁度良かった。今からみんなでマハの所に行くところだったんだ」
「下等種族が雁首揃えて、喜劇でも演じて見せてくれるのか」
「マハにとっちゃ面白くないかもしれんがな。実はこの子達、親元に帰りたいらしいんだ。帰りたいなら帰してやった方がいいだろ? だから許可をもらおうと思って」
「……ぬし、本気でわらわが許すと思ってるのかえ?」
表情は穏やかだが、声色は明らかに静かな怒気を含み、地の底から響くような低さだった。
「おお、こわ。土下座して頼んでも許してくれなさそうだな」
緊張感のない鷹介の軽口に、いよいよマハは気色ばんだ。
「気高きエッヘの王女たるわらわが、ぬしら下等種族を暗愚と迷妄の苦しみから救ってやろうと情けをかけてやったというのに。思い上がるでないぞ人間風情が」
それまでのマハからは想像もつかない鬼気迫る形相と恫喝の響きを帯びた声色に、子ども達は恐れをなして蒼褪めた。しかし鷹介は怯むことなく、やれやれと肩を竦める。
「美人に限って性格は困ったちゃんってよく言うけど、まさにそれだ。女のミステリーほどそそられるものは無いが、女のヒステリーほど興醒めするものも無いな」
鷹介は一呼吸ついてから、それまでの軽々しさとは一転した真摯な態度でマハに対する。
「マハ。アンタの王国は確かに“理想郷”だよ。権威主義、選民思想、種族的身分制度……どれも黴臭いけど、絶対に間違わない王者がその制度を使って国を治めるなら、区別や不自由を不公平には思わないし、正当に報われるなら制限された生き方にだって満足できる。マハはそういう公正な統治ができるんだろ?」
「そうじゃ。ぬしら下等種族は、高貴なるわらわのために生き、奉仕すればいい。わらわの慈悲と庇護の下、何不自由ない生を約束してやろうというのじゃ。
ここには不平等も不公正もないのじゃぞ? わらわは常に正しく、ぬしらに存在意義を与え、奉仕の喜びを啓蒙してやるのじゃから。生きる道に迷わず、希望を抱かず、絶望を知らず、幸福になれる」
怯える子ども達を意にも介さず、マハは誇らしげに、自らに酔ったかの如く恍惚としながら主張を開陳する。鷹介は頭を掻いた。
「満足と幸福は別物なんだと思うんだよなぁ。幸せって誰かに与えられるものじゃなくて、いつの間にか手に入れて、銘銘、形を与えるもんだろ?」
マハは嘲笑を漏らす。
「在りもしないものを追い続ける滑稽さ、在ると偽る欺瞞、つくづく愚かじゃな人間。そんなものは自己満足の妄想に過ぎん」
「そりゃそうさ。どれだけ美辞麗句で取り繕おうと、幸福なんて所詮、自己満足だろ。みんな、誰かのために生きることを存在理由にしたがるけど、誰かのために存在してる奴なんて一人もいない。アンタも子ども達も、そう思い込みたい者同士が出会って、傷を嘗め合ってるに過ぎない」
「……生意気なことを言う」
「悪いな、さとり世代は理想よりも現実を見てるんだ。誰かが作った幸福は、穴があくほど見つめ続けていればそのインチキが見えてくる。与えようとした時点で、それは押し付けの嘘っぱちだ。自分で気づいた幸福でない限り、騙されてるんだよ」
マハはゆっくりと頭を振って反駁する。
「世迷言じゃ。そうやってぬしらは悩み、苦しみ続ける。その苦悶から逃れようと、強欲な者は金品に価値を見出す。傲慢な者は人を従わせて悦に入る。無力な者は諦観し現状を嘆く。なんと浅ましく、劣等にして低俗な生なのか。わらわはぬしらより優れた存在の責務として、ぬしらを導いてやるのじゃ。わらわの示す幸福こそ、人類の普遍にして誇り高き生をもたらす」
「だとしても、俺は御免だな。何が幸福か、分かりやすい形はないし、誰かに教わるものでもない。定められたレールを走らされる気楽さよりも、レールを作った連中の思惑に乗るのは癪だと感じるようなひねくれ者だって、それなりの幸せを感じることもできる。ブルーナ達だってそれぞれの幸せがあって、それはマハの王国の外にあるって、内心、気付いてるんだよ。一寸の虫にも五分の魂って言うだろ? 下等種族だからってあんまり馬鹿にするもんじゃないぜ」
これ以上の問答は時間の無駄だと判断したマハは、語気を強めて言い放った。
「その小賢しさ、不愉快じゃな。生意気な口が叩けぬように、わらわが手ずから矯正してやろう」
マハは神働術を行使する。彼女の足元には眩く輝く幾何学模様が現れて、大地に円形の陣を刻んでいく。陣の内側はマハの自意識に支配された自在空間と化し、神羅万象に遍満する生命の息吹を取り込んで練り上げられた精神力がマハを神懸かり状態に移行させる。
マハは自らの指の皮膚を嚙み千切り、その血が地面に滴り落ちると、血を核として土が纏わり、凝集して、武骨な土塊人形を組み上げていく。
鷹介は目を剥いた。地面から上半身だけを露わにした土塊人形は、これまで見た個体のどれよりも巨大で、獰猛で、威圧的だった。子ども達は悲鳴を上げて身を寄せ合った。
土塊人形は一瞬のうちに周囲の土を吸収して巨大化した右拳を、鷹介と鷹介の影に隠れる子ども達に暴戻な速度で打ち込まんとする。
マハは“矯正”という目的を達成するため、土塊人形の力を多少加減していたが、それでも密度を高めた拳は、鷹介達を軽々吹き飛ばし、その脆弱な筋肉や骨を砕いてしまうだろう。痛めつけ、改悛させ、涙ながらに命乞いをさせてから治療してやれば、所期の目的は達成される。マハは疑いの余地のない未来図を思い描いて悦に入っていた。
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