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vol.5
人狼の秘密
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●●●●●
どれくらい経ったのか分からなかったけど、目覚めたら夜中だった。相変わらずズキズキと頭が痛む。喉がカラカラに乾いて、耐えられない。
顔をしかめながら身を起こして初めて、ベッドの上だと分かった。
きっと雪野先輩が運んでくれたんだ。
途端に、またしても胸がムカムカしてきた。
……どうやら本当に先輩の事を考えると具合が悪くなるみたいだ。……なんでかは解んないけど。
私は溜め息をつくと一階に下りてキッチンを目指した。
……げっ。
キッチンに足を踏み入れた途端、ギクッとした。
だって冷蔵庫の前に雪野先輩がしゃがんでいたから。
……なにしてんの、冷蔵庫開けたいのに。退いてほしい。
私は眉を寄せて先輩の後ろ姿を見つめた。
……うそ……でしょ?
先輩の行動にドキンと鼓動が跳ねる。
だって……。
だって先輩が……ビリビリに破られた私の画を一生懸命貼り合わせていたから。
一心不乱に紙切れと化した画を拾い、繋がりを確認しては裏返し、丁寧にテープで貼り合わせていく先輩。
な、んで……。
『殺されてぇのか、お前は』
『テメェ、ぶっ殺すぞ』
私は先輩の言葉を思い出しながら思った。
口が悪くて。鋭く冷たい眼差しで。笑いもしなくて。
……狼で。
「いいよ、そんな事しないで」
私の声は掠れていたけど聞こえないわけないのに、先輩は反応しなかった。
黙々と裂かれた画を貼り合わせている先輩に私はイラついて声を荒げた。
「やめてよっ!そんな事したって、意味ない」
「…………」
それでも先輩は何も言わかったし、作業をやめなかった。
「先輩っ……」
私は先輩の前に回り込むと床に座り、画を拾い上げる彼の手をキュッと掴んだ。
精悍な頬がゆっくりと傾き、漆黒の瞳が私を見る。
いつもは冷たい切れ長の眼が、今は苦し気だ。
私はポツンと呟くように言った。
「なんでそんな顔するのよ。いつもみたいに冷たくしてたらいいじゃん」
先輩は私を見つめたまま、何も言わない。
その瞳を見ているうちに、私はあの日……あの犬神様の祠でプラチナ色の狼になった先輩の姿を思い返した。
それから出逢ってからの出来事が映画のように脳裏に浮かぶ。
あなたが……学校一のモテ男が狼だったなんて本当に驚いたよ。
カッコ良くてスタイルも良くて、私の人生に無縁だと思っていた人とこんな風に関わる事になるなんて。
抱き締められてドキドキして、怒られてゾッとして。
なのに旬から私を守ってくれて。
失恋した私を慰めてくれて。
ああ私って、なんて小さいんだろう。あんな風に私を守ってくれた先輩をたった一枚の画を破られただけで避難して傷付けて。
翠狼達に殺されそうになったのだって先輩のせいじゃない。
きっと私には分からない何かがあるんだ。だって翠狼は言ってた。
『許嫁が死んだとなると、白狼は長になれない』って。
「先輩……ごめんね」
私がそう言うと、先輩は眼を見開いて私を見つめた。
「先輩は旬から私を守ってくれたのに……画ぐらいで取り乱して本当にごめん」
私は膝で立つと、先輩の身体をギュッと抱き締めた。前までの私なら、怖くて先輩に触れることなんか出来なかったと思う。
「先輩……気を付けて。翠狼が……先輩が人狼の王になるのを阻もうとして……でも、分かんないの。確かに翠狼は私になにか言ったのに、私はそれをどうしても思い出せないの」
「瀬里」
先輩が私から身を起こした。
「それは暗示だ」
「……暗示……」
……暗示をかけられたの?私。
暗示ってドラマとかで、ヴァンパイアがよく使うヤツだよね?
「ヤツはお前に暗示をかけてるんだ」
「どんな?!」
先輩はゆっくりと立ち上がりながら私の腕を引いた。
たちまち目線が逆転し、私は背の高い先輩を見上げた。
「アイツは……翠狼は人狼王の座を狙ってる。石は俺を選んだがヤツはそれが気に入らないんだ」
「石が選ぶって……?」
私の問いに、先輩が顔を傾けた。
そのせいで先輩の耳のピアスがキッチンのライトで柔らかく光る。
そのプラチナの台座はレトロな風合いで、中央に大きくて真ん丸い白乳色の石が鎮座している。
これって……ムーンストーンなのかなあ……。
実は私、先輩のピアスをちゃんと見たことがなかったんだよね。
だってジロジロ見て、
『何見てんだよ、このブス!ぶっ殺すぞ!』
とか言われて逆鱗に触れるのが怖かったんだもの。
先輩は耳のピアスを私に見せながら続けた。
「石とは、これのことだ。……これは……人狼王を自ら選ぶ石なんだ。昔、俺達を創造した天狼神(てんろうじん)の魂から出来た石だと伝えられている」
私は先輩の口から出た神話的な話に驚いて眉を寄せた。
「天狼神?石が人狼王を選ぶ……?」
先輩は頷いた。
「人狼王の命が尽きるとすぐこの石はその身体を離れ、次期王の身体に宿るんだ。大抵、石に選ばれた者はすぐに王となるが……俺はなれなかった」
「……どうして?」
「石に選ばれた当時、俺はまだ十歳だったからだ」
「十歳……」
先輩はグッと眉を寄せて続けた。
「歴代の王は、石に選ばれるとすぐ即位できる年齢だったが俺はまだ十歳で、当然のごとくその事実が争いを生み、人狼界の和を乱すという結果に繋がっていったんだ。少年が王に選ばれるという前例がなかったから」
先輩……。
多分十歳の少年が王として即位出来る歳ではないのをいいことに、実権を握ろうとする人狼同士の争いが起こったんだろうな……。
もしかしたら私が想像も出来ないような悲劇が起こったのかもしれない。
先輩は私を見つめながら尚も続けた。
「翠狼は……五歳上の俺の幼馴染みなんだ。昔は凄く仲が良くて、いつも一緒にいた。石が……俺を選ぶまでは」
それって……。
天狼神の魂から生まれた石が翠狼ではなく先輩を王に選んだために、二人の仲がこじれたって意味だよね……。
それに、私に言った翠狼の言葉が気になる。
「先輩。許嫁って……?」
私の言葉に驚きつつも、先輩は頷いた。
「派閥代表会議で決まったんだ。婚約することで、十八歳での即位が認められる」
「だから、私に……婚約者のフリを?」
「若い人狼王が何かと軽視されるのを防ぐために、王としての責任や義務を司る事の出来る証として課せられた義務なんだ。だからお前にその役を頼み、周りには正真正銘の許嫁だと思わせておきたかった。俺はどうしても王になりたいから」
「 許嫁が死ねば、先輩は王になれないの?」
先輩が頷いた。
「許嫁が姿を消すということを、未熟さの表れと捉えられてしまうんだ。許嫁が死ぬなんて事態が起こると、俺の身体から石が去っていくかも知れない」
多分……未成年に加え最年少で人狼王になるって事は……様々な試練を与えられて王に相応しい器かどうかを試されるって事なんだ。
「先輩は……どうして王になりたいんですか?」
私は質問しながら不思議だった。
……相変わらず先輩といると気分が悪い。胸のムカムカが治まらなくて、無意識に眉を寄せてしまう。
なのにどうして知りたいんだろう。どうしてこんなに私は先輩を知りたいんだろう。
食い入るように見つめる私に、先輩は答えを返した。
「お前は……信じないかもしれないが、人狼は世界各国にいる。人狼の種類の数だけ王が存在し、その中には勢力を拡大しようと攻撃を仕掛けてくる奴等もいるんだ。俺は守りたい。天狼神の魂を引き継いでいる俺の仲間を」
先輩の切な気な声が胸に刺さるようで、私は夢中で彼の綺麗な瞳を見つめた。
先輩の眼も私を捉えていて、お互いに視線が絡む。
「……先輩……。私、人狼なんて初めてなんです。だからよく分からないけど、でも、先輩が天狼神の石に選ばれたって事は、先輩が一番王に相応しいからだと思うの。私……応援します、先輩の事」
先輩が、驚いたように息を飲むのが分かった。
気分がどんどん悪くなる中、私は吐き気と戦いながら一生懸命言葉を続けた。
「私……『満月の儀式』で先輩の許嫁の役をやります。その後先輩は王になって、本当の恋人を見つけて結婚したらいい。許嫁は派閥会議の決定であって、天狼神様の指示じゃないんだし……」
「瀬里」
「それから……改めて本当にごめんなさい。先輩は私を旬から守ってくれたのに、画がダメになったくらいで八つ当たりしちゃっ」
「瀬里……!」
言い終えないうちに、グッと腕を引かれた。
固い先輩の胸に額がコツンと当たる。
それから、背中に回された逞しい先輩の腕の感触。至近距離から私を見下ろす、切れ長の眼。
これって……。
ドキンと鼓動が跳ねる。でも……もう限界。
「じゃあ……私、もう寝ます。先輩、お休みなさい」
私は先輩から身を離すと、部屋へと戻った。
●●●
部屋に戻ってベッドに倒れ込むと、 喉の乾きも胸のムカムカも、少しマシになってきた。
よかった……。
それにしても、あのピアス……。
天狼神の魂から生まれたとかいう、先輩の耳のピアス。
凄く綺麗だった。もう一度見たいなあ。あのピアスに触れてみたい。
明日、もう一度先輩に見せてもらおう。
私はそう思いながら眼を閉じた。
今思うと……この時の私はまるで気付いてなかった。
徐々に強くなる執着心に。
天狼神の石への思いに……。
どれくらい経ったのか分からなかったけど、目覚めたら夜中だった。相変わらずズキズキと頭が痛む。喉がカラカラに乾いて、耐えられない。
顔をしかめながら身を起こして初めて、ベッドの上だと分かった。
きっと雪野先輩が運んでくれたんだ。
途端に、またしても胸がムカムカしてきた。
……どうやら本当に先輩の事を考えると具合が悪くなるみたいだ。……なんでかは解んないけど。
私は溜め息をつくと一階に下りてキッチンを目指した。
……げっ。
キッチンに足を踏み入れた途端、ギクッとした。
だって冷蔵庫の前に雪野先輩がしゃがんでいたから。
……なにしてんの、冷蔵庫開けたいのに。退いてほしい。
私は眉を寄せて先輩の後ろ姿を見つめた。
……うそ……でしょ?
先輩の行動にドキンと鼓動が跳ねる。
だって……。
だって先輩が……ビリビリに破られた私の画を一生懸命貼り合わせていたから。
一心不乱に紙切れと化した画を拾い、繋がりを確認しては裏返し、丁寧にテープで貼り合わせていく先輩。
な、んで……。
『殺されてぇのか、お前は』
『テメェ、ぶっ殺すぞ』
私は先輩の言葉を思い出しながら思った。
口が悪くて。鋭く冷たい眼差しで。笑いもしなくて。
……狼で。
「いいよ、そんな事しないで」
私の声は掠れていたけど聞こえないわけないのに、先輩は反応しなかった。
黙々と裂かれた画を貼り合わせている先輩に私はイラついて声を荒げた。
「やめてよっ!そんな事したって、意味ない」
「…………」
それでも先輩は何も言わかったし、作業をやめなかった。
「先輩っ……」
私は先輩の前に回り込むと床に座り、画を拾い上げる彼の手をキュッと掴んだ。
精悍な頬がゆっくりと傾き、漆黒の瞳が私を見る。
いつもは冷たい切れ長の眼が、今は苦し気だ。
私はポツンと呟くように言った。
「なんでそんな顔するのよ。いつもみたいに冷たくしてたらいいじゃん」
先輩は私を見つめたまま、何も言わない。
その瞳を見ているうちに、私はあの日……あの犬神様の祠でプラチナ色の狼になった先輩の姿を思い返した。
それから出逢ってからの出来事が映画のように脳裏に浮かぶ。
あなたが……学校一のモテ男が狼だったなんて本当に驚いたよ。
カッコ良くてスタイルも良くて、私の人生に無縁だと思っていた人とこんな風に関わる事になるなんて。
抱き締められてドキドキして、怒られてゾッとして。
なのに旬から私を守ってくれて。
失恋した私を慰めてくれて。
ああ私って、なんて小さいんだろう。あんな風に私を守ってくれた先輩をたった一枚の画を破られただけで避難して傷付けて。
翠狼達に殺されそうになったのだって先輩のせいじゃない。
きっと私には分からない何かがあるんだ。だって翠狼は言ってた。
『許嫁が死んだとなると、白狼は長になれない』って。
「先輩……ごめんね」
私がそう言うと、先輩は眼を見開いて私を見つめた。
「先輩は旬から私を守ってくれたのに……画ぐらいで取り乱して本当にごめん」
私は膝で立つと、先輩の身体をギュッと抱き締めた。前までの私なら、怖くて先輩に触れることなんか出来なかったと思う。
「先輩……気を付けて。翠狼が……先輩が人狼の王になるのを阻もうとして……でも、分かんないの。確かに翠狼は私になにか言ったのに、私はそれをどうしても思い出せないの」
「瀬里」
先輩が私から身を起こした。
「それは暗示だ」
「……暗示……」
……暗示をかけられたの?私。
暗示ってドラマとかで、ヴァンパイアがよく使うヤツだよね?
「ヤツはお前に暗示をかけてるんだ」
「どんな?!」
先輩はゆっくりと立ち上がりながら私の腕を引いた。
たちまち目線が逆転し、私は背の高い先輩を見上げた。
「アイツは……翠狼は人狼王の座を狙ってる。石は俺を選んだがヤツはそれが気に入らないんだ」
「石が選ぶって……?」
私の問いに、先輩が顔を傾けた。
そのせいで先輩の耳のピアスがキッチンのライトで柔らかく光る。
そのプラチナの台座はレトロな風合いで、中央に大きくて真ん丸い白乳色の石が鎮座している。
これって……ムーンストーンなのかなあ……。
実は私、先輩のピアスをちゃんと見たことがなかったんだよね。
だってジロジロ見て、
『何見てんだよ、このブス!ぶっ殺すぞ!』
とか言われて逆鱗に触れるのが怖かったんだもの。
先輩は耳のピアスを私に見せながら続けた。
「石とは、これのことだ。……これは……人狼王を自ら選ぶ石なんだ。昔、俺達を創造した天狼神(てんろうじん)の魂から出来た石だと伝えられている」
私は先輩の口から出た神話的な話に驚いて眉を寄せた。
「天狼神?石が人狼王を選ぶ……?」
先輩は頷いた。
「人狼王の命が尽きるとすぐこの石はその身体を離れ、次期王の身体に宿るんだ。大抵、石に選ばれた者はすぐに王となるが……俺はなれなかった」
「……どうして?」
「石に選ばれた当時、俺はまだ十歳だったからだ」
「十歳……」
先輩はグッと眉を寄せて続けた。
「歴代の王は、石に選ばれるとすぐ即位できる年齢だったが俺はまだ十歳で、当然のごとくその事実が争いを生み、人狼界の和を乱すという結果に繋がっていったんだ。少年が王に選ばれるという前例がなかったから」
先輩……。
多分十歳の少年が王として即位出来る歳ではないのをいいことに、実権を握ろうとする人狼同士の争いが起こったんだろうな……。
もしかしたら私が想像も出来ないような悲劇が起こったのかもしれない。
先輩は私を見つめながら尚も続けた。
「翠狼は……五歳上の俺の幼馴染みなんだ。昔は凄く仲が良くて、いつも一緒にいた。石が……俺を選ぶまでは」
それって……。
天狼神の魂から生まれた石が翠狼ではなく先輩を王に選んだために、二人の仲がこじれたって意味だよね……。
それに、私に言った翠狼の言葉が気になる。
「先輩。許嫁って……?」
私の言葉に驚きつつも、先輩は頷いた。
「派閥代表会議で決まったんだ。婚約することで、十八歳での即位が認められる」
「だから、私に……婚約者のフリを?」
「若い人狼王が何かと軽視されるのを防ぐために、王としての責任や義務を司る事の出来る証として課せられた義務なんだ。だからお前にその役を頼み、周りには正真正銘の許嫁だと思わせておきたかった。俺はどうしても王になりたいから」
「 許嫁が死ねば、先輩は王になれないの?」
先輩が頷いた。
「許嫁が姿を消すということを、未熟さの表れと捉えられてしまうんだ。許嫁が死ぬなんて事態が起こると、俺の身体から石が去っていくかも知れない」
多分……未成年に加え最年少で人狼王になるって事は……様々な試練を与えられて王に相応しい器かどうかを試されるって事なんだ。
「先輩は……どうして王になりたいんですか?」
私は質問しながら不思議だった。
……相変わらず先輩といると気分が悪い。胸のムカムカが治まらなくて、無意識に眉を寄せてしまう。
なのにどうして知りたいんだろう。どうしてこんなに私は先輩を知りたいんだろう。
食い入るように見つめる私に、先輩は答えを返した。
「お前は……信じないかもしれないが、人狼は世界各国にいる。人狼の種類の数だけ王が存在し、その中には勢力を拡大しようと攻撃を仕掛けてくる奴等もいるんだ。俺は守りたい。天狼神の魂を引き継いでいる俺の仲間を」
先輩の切な気な声が胸に刺さるようで、私は夢中で彼の綺麗な瞳を見つめた。
先輩の眼も私を捉えていて、お互いに視線が絡む。
「……先輩……。私、人狼なんて初めてなんです。だからよく分からないけど、でも、先輩が天狼神の石に選ばれたって事は、先輩が一番王に相応しいからだと思うの。私……応援します、先輩の事」
先輩が、驚いたように息を飲むのが分かった。
気分がどんどん悪くなる中、私は吐き気と戦いながら一生懸命言葉を続けた。
「私……『満月の儀式』で先輩の許嫁の役をやります。その後先輩は王になって、本当の恋人を見つけて結婚したらいい。許嫁は派閥会議の決定であって、天狼神様の指示じゃないんだし……」
「瀬里」
「それから……改めて本当にごめんなさい。先輩は私を旬から守ってくれたのに、画がダメになったくらいで八つ当たりしちゃっ」
「瀬里……!」
言い終えないうちに、グッと腕を引かれた。
固い先輩の胸に額がコツンと当たる。
それから、背中に回された逞しい先輩の腕の感触。至近距離から私を見下ろす、切れ長の眼。
これって……。
ドキンと鼓動が跳ねる。でも……もう限界。
「じゃあ……私、もう寝ます。先輩、お休みなさい」
私は先輩から身を離すと、部屋へと戻った。
●●●
部屋に戻ってベッドに倒れ込むと、 喉の乾きも胸のムカムカも、少しマシになってきた。
よかった……。
それにしても、あのピアス……。
天狼神の魂から生まれたとかいう、先輩の耳のピアス。
凄く綺麗だった。もう一度見たいなあ。あのピアスに触れてみたい。
明日、もう一度先輩に見せてもらおう。
私はそう思いながら眼を閉じた。
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徐々に強くなる執着心に。
天狼神の石への思いに……。
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