溺愛ENMA様

友崎沙咲

文字の大きさ
13 / 13
十番勝負

溺愛閻魔様

しおりを挟む
※※※※※

シャッという短い音と共に、朝の光が瞼に届いた。
閻魔だ。

「ルナ、アサゲ……じゃなくて朝飯が出来たぞ……て、おい仁っ!なんでお前がルナのベッドで一緒に寝てんだよっ?」

「あー……?いってっ!殴んなっ」

部屋が騒がしくて寝ていられなくなり、私はゆっくりと寝返りを打つと枕元の時計を見た。

「……閻魔……まだ六時じゃん。私、今日は代休なんだけど……」
「今日から俺は涼馬と出張なんだ。明後日まで会えないんだから一緒に飯が食いたい。仁は帰れっ!」
「なんだよ、キレんなっ!」

うるさ……。
眼を擦りながら隣を見ると、閻魔に殴られたらしい仁がベッドの上で胡座をかき、ガシガシと自分の頭を掻きむしっていた。

「なんなのー?」

朝からギャアギャア騒がないでほしい……。
すると何故か閻魔は私をギラッと睨んだ。

「お前っ!なんで仁をベッドに入れるんだっ!おかしいだろ!」

……入ってきたの知らないし。
だってそれに仁とは幼い頃からしょっ中一緒に寝転がっていたし、何の違和感もない。
しかも仁は普通の人には見えない夢魔だし。

確かに姿形は赤髪のイケメンだけど、仁は人間の男性じゃないし親友だもん。
普通の人間には考えられないかも知れないけど、子供の時から超自然的なものが見えていた私には何の不思議もない。

こういう私だから……死者の審判してたような男を恋人にできるわけで……。
あー、だけど面倒くさいなー。
その時仁が閻魔を見上げて叫んだ。

「おい、閻魔っ。術使えねぇお前なんか俺は怖くねぇんだぜ?!ルナは俺の可愛い宝物なんだ。お前よりもずっと前から仲良しだしな!歴史が違うんだよ!」

……仲良しって……幼稚園児か。

「ちょっと、仁も閻魔も」

そこまで言った私の言葉を、閻魔の怒鳴り声がアッサリとかき消す。

「なんだとテメェ、もう一度言ってみろっ!」

怒りに満ちた閻魔が、仁に詰め寄る。……ああ、もう……。
私はハアと溜め息をついた後、仁の腕を掴んだ。

「……仁」
「ん?」

そのまま倒れるように仁にもたれると、彼の耳元に唇を寄せてヒソヒソ声で告げる。

「閻魔煩いから……そろそろ行って」

仁も私の耳に口を寄せた。

「ああ、分かった。コイツ、面倒くさいよな」
「まあね。じゃあまたね」
「了解」

仁が私にハグをした後、溶けるように消えた。

「なんだ今のは」
「……なに……?」
「なんで小声であんな風に話すんだ」
「それは……」

アンタが面倒臭いから、とはまさか言えないしなー……。
私がベッドの上にペタンと座り、イライラしている閻魔を見つめると、今度は何故か彼がポカンと口を開けた。

「…………」
「…………」

なんなんだ、意味の分からないこの間は。
……もういいや。すっかり眼が覚めちゃった。
今更だけど、

「……おはよ、閻魔」

私がそう言って立ち上がろうとした時、

「 わ、きゃあっ!」

急に閻魔がベッドに上がり、私の背中に腕を回した。

「な、なにっ?びっくりするじゃん!」

素早く押し倒された事に驚いて私がこう言うと、閻魔は至近距離からこちらを見つめて低い声を出した。

「……一緒に飯は、もういい」
「えっ、なんで?!っ……」

閻魔の、囁くような甘い声とそれ以上に甘いキス。
恥ずかしくて無意識にキュッとしがみつくと、閻魔が唇を離してクスッと笑った。

「ルナ」
「……ん」
「俺は、お前のためなら何でもしてやるしこの先もずっとお前を守っていく」
「……閻魔……」

ああ、なんて幸せなんだろう。
感動を隠せない私の前で、閻魔は更に続けた。

「三年間も辛い思いをさせて悪かった。これからはお前をめちゃくちゃ甘やかしてやるから。愛してる、ルナ」

幸せでたまらなくて、私は閻魔の首に両腕を絡めた。

「うん、閻魔。私も閻魔を愛してる。これからもずっと」

私がそう言うと閻魔はフウッと笑ってパジャマのボタンに手をかけると、長い指でその一つを外した。

「あ、の、閻魔?朝御飯じゃ……」

焦る私に閻魔が甘く囁く。

「煽ったお前が悪い。これからは何でも望みを聞いてやるから……」

閻魔は一旦そこで言葉を切ると、黒に近い紫色の瞳を甘やかに光らせて続けた。

「だから今は……俺の言いなりになれ」

……閻魔ったら……!
胸がキュンとして、もう何も言えなくなって、私は閻魔に抱き着いたままゆっくりと眼を閉じた。

ねぇ閻魔。
一緒に生きよう。ずっとふたりで。

開け放たれたカーテンから射し込む輝きが、私達を柔らかく照らしていた。





           溺愛ENMA様
            ~end~
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...