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25話

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曹操軍の盾と槍はことごとく粉砕され、曹操軍の将兵は次々と倒れていく。さすがに曹操軍の本陣からは曹操の声が上がったが、それでも突撃を止める事はなかった。その曹操軍に向かって呂布はさらに猛襲を仕掛ける。
それでも前進をやめない曹操軍に呂布は眉をひそめる。呂布軍が曹操軍をここまで圧倒出来る事は分かっていたし、それでも曹操軍が退却しなかった場合にはさらなる攻勢に移るつもりではあった。だが、あまりにも無茶すぎる。呂布の知っている曹操はこんなところで勝負を急ぐような人物ではない。曹操と直接対峙していない者の中には、曹操は狡猾だから用心しろと忠告する者もいたくらいである。
もしこれが陶謙なら、あるいは李豊であったなら、呂布はここまで心配する事は無かったかもしれない。だが、今の曹操では、と言う思いもあった。曹操と言う男は慎重であり、臆病であり、それでいて決断力もある男だ。そんな男が、こうまで性急な行動を取ると言う事は何かあるのではないかと呂布は疑う。
だが、それも無意味だったようだ。
すでに勝敗は決したと言うのに、曹操軍はその勢いを止めない。このままでは被害が大きくなる一方なので、呂布は呂布なりの優しさを見せた。
「敵将曹孟徳! 真紅の鎧に、金の冠……!」
敵陣の奥深くまで進んだ曹操の耳に飛び込んできたのは、戦場とは思えない落ち着いた声だった。
呂布奉先。この男との戦いが、曹操が待ち望んでいたものだった。
曹操が父より譲り受けた曹操の名は、天下に鳴り響いている。その名を欲しいままにし、多くの名家、名門の一族を取り込んで曹操の勢力は拡大していった。
呂布の名を知らぬ者はいなくとも、その呂布が曹操の前に姿を現わした事は一度も無い。
曹操は恐れていた。いつかは、その日が来る事を。それが、ついに訪れた。
「我が名は曹操子和、字は文若、真名を孟ちゃん」
曹操は名乗りを上げ、手にした剣を抜いて構える。
その態度は堂々たるもので、曹操は自信に満ち溢れた表情をしていた。
対して呂布は、特に変わった様子もなく普段通りの呂布である。
だが、呂布のその巨躯は見る者を威圧するには十分であり、実際に対峙すると曹操はその強さと言うものがヒシヒシと伝わってくる。
これは尋常な相手ではない。だが、ここで退く事は出来ない。曹操には退けない理由があった。それは己の意地だけではなく、家族である袁紹と袁術、そして孫策にも関わる事である。この曹操の覇業の歩みが、この徐州の戦いの敗北により大きく後退してしまった場合、曹操には挽回する手立てが無い。少なくとも徐州を失陥した事で、曹操の立場はかなり厳しくなっている。
曹操も徐州攻めの際、兵を失ったのは間違いないが、それでも呂布軍の半数には届いていないはずで、その半分は残っているはずである。それに加えて曹操は呂布と戦おうとしている。呂布軍は徐州の城から動かず、そこに陣取っているので兵力差は圧倒的にあると言っていいだろう。
しかし、だからこそこの戦は負けられないのだ。曹操が勝てる見込みの無い戦をするのはありえないが、この戦いだけはそうであっても引けない。ここで退けば曹操はこの先の道を失ってしまう。そうすれば後は、この大陸から曹操の名を知る者すら消えてしまうかも知れない。それほどまでに今の曹操の立場は大きく揺らいでいる。
曹操はこれまで幾度も窮地に陥りながらも切り抜けてきた。それ故に、曹操は自分が強い人間であると思っている。自分がこの程度の状況で膝を屈するほど弱くはないはずだと信じている。だが、今回ばかりは曹操としても厳しい。そう思うと、目の前の強敵に怯えそうにもなる。
曹操の知る限り、呂布の強さは天衣無縫と言えるほど圧倒的なものであって、これまで一度も敗れた事は無い。
曹操は、ここで初めて焦りを感じ始めた。
それでも、退く事は許されない。退く事はこれまでの曹操の努力を無駄にするだけでなく、今まで仕えてくれた諸将に対して裏切りになる。何よりも、曹操自身の意地に泥を塗る事になりかねない。
曹操は深呼吸をしてから改めて、呂布を見る。身長だけで言えば曹操も並外れた長身であるが、それ以上に大きな身体を持っている。その大きな身体にも関わらず、曹操の目には弱々しく映っていた。曹操が想像していたのは、熊や虎と言った猛獣だったが、実際は象か牛のような感じである。ただ、その眼光は鷹のように鋭く鋭いのは確かだった。
これが天下無双と呼ばれる武将なのか。
曹操は今更ながら自分の愚かさを呪った。こんな男が今まで噂にさえ上らなかったと言うのは、やはり曹操の油断と慢心が原因なのだと。
それでも引くわけにはいかない。この男を打ち破ってこそ、曹操の覇の道は開ける。その為に必要なら、どんな非情な手段でも用いるつもりだ。
その思いが、曹操を冷静にさせた。
「孟徳、何をしている? 呂布如き、さっさと討ち取ってこい!」
突然、曹操軍の一角が割れてそこから豪奢な衣装に身を包んだ一人の若者が現れる。
若いが背が高く、堂々とした立ち振る舞いの青年である。
呂布が眉をひそめる様に見ると、彼は曹操の息子の一人であり、曹操の長男である曹丕だと分かった。
だが、曹操はそんな息子の曹丕を見て舌打ちをする。
「曹丕、邪魔だ! 貴様は父上になんと言う事をさせる気だ!」
呂布に気圧されていた曹操が怒りを込めて怒鳴るが、曹丕はまったく応える様子もなく父である曹操に向かって笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ、父上。あんな大言壮語、真に受けるだけ時間の無駄です」
曹丕は笑いながら言う。
「奉先、俺を討ち取るのなら早い方がいいぞ。お前の命は今日までだ」
曹丕は相変わらず余裕綽々な態度のまま言い放つ。その言葉に曹操は曹丕に食ってかかろうとするのを止め、曹丕に向かって頭を下げる。曹丕は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑って言った。
「父上は随分と変わったようだな。以前はそこまで謙虚ではなかった」
曹操の言葉に、曹丕は笑う。
「この父譲りの性格だからな。孟徳とは比べ物にならぬわ。父よ、この戦で勝ったなら徐州を攻め取れば良い。この孫堅文台を討った功績があれば、徐州太守になれる。その後は徐州を手に入れ、荊州へと攻め込むが良い」
曹丕は曹操に向かい、事もなげに言ってのける。
「孫堅殿を殺した事はお悔やみ申し上げるが、この戦はあくまで我が父の覇業の為のもの。この徐州攻略は、その礎となってもらう」
「この曹操を愚弄するか、小童が! 許さん、その首叩き落してくれるわ!!」
呂布と対峙していたはずの曹操が、剣を構え直して馬を走らせようとする。
その瞬間、曹操の胸元から鮮血と共に短剣の先端が現れた。
曹操も呂布もその事態についていけず、呆然とした表情になっている。
だが、それは当然の事だろう。呂布ですら曹操の首筋を狙おうと構えていた矢先の、その真横から剣を突き入れられたのである。
誰が見ても曹操の危機で、誰を狙っての攻撃かも明確である。
そしてその攻撃の主は、呂布も見知った顔であった。
「韓浩!? 何故、このような真似を……!」
驚愕の表情で、曹操は尋ねる。
そこに立っていたのは、呂布軍の武将として共に戦った事もある韓浩だった。
確かに曹操と仲違いをしていたらしいが、それでもまさかこの様な形で攻撃を仕掛けてくるほど曹操に対して恨みを抱いていたとも思えない。
曹操が混乱する中、韓浩は自分の剣を鞘に収めると曹操の馬を降り、その前に片膝をつく。それを見た曹操軍の兵士たちは慌てて駆け寄り、曹操を守るように囲み始めた。
「ご子息に毒刃が向けられた事については、深く陳謝いたします。私の一存による行為であり、曹操殿に責任はありません。また、曹操殿を狙った刺客である事は間違いないのですが、これも全て私一人の責任であると思っております。つきましては如何なる処罰でも受けさせていただきたく思い、ここで腹を切らせて頂きたいと思いますので、曹操殿にはどうか矛を収めて頂き、何卒兵に罰を与えぬようお願いしたいのですが……」
曹操の前に膝をついたまま、韓浩は頭を地面にこすりつける様に下げる。
「何を言うか! 俺はお前たちの働きによって命拾いをしたのだ。そんな者がどうして罪を受ける事があろう。俺こそ、曹操の息子を助けてもらった恩義を忘れてお前たちに死ねと迫ったのだ。済まなかった、この通りだ。何よりもお前たちは、俺の大事な部下だ。死んでくれなどと思うはずがないではないか。とにかく、手当てを受けてくれ。そうしなければ、息子も黙ってはいないぞ?」
曹操は必死になって叫ぶ。
しかし、韓浩は静かに首を振った。
「残念ながら、すでに私は身動き出来ない状態になっておりました。これは間違いなく、貴方の命を狙う刺客の仕業。ですが曹操軍において、その命令を下したものを探し出すよりも先に処置しなければならない問題がありましょう」
そう言うと、背後を振り返る。
そこには曹操の息子曹丕がいた。
曹丕は青ざめた顔をしているが特に怪我も無く、無事な様に見えるのだが、何故かその手には赤い液体の入った瓶を持っている。それが、この騒動の原因となったのであろうことは想像出来た。
「この薬を使って奉先を殺してくれなければ、この曹子桓が自らの手で奉先を始末していたところだぞ!」
曹丕は震える声で叫びながら、持っていた小瓶を投げつける。それは一直線に、呂布の額に命中した。
「……曹丕」
「奉先よ、お前は死んだ方が世のためだ」
曹丕は声高らかに宣言すると踵を返し、そのまま逃げ去る様に去って行く。
韓浩と曹丕が去った後、曹操は自らの血が染み込んだ布を手に取り、呆然としていた。
曹操は韓浩に対し深い借りがある。
以前、徐州に攻め入る前の段階で曹操の元に届けられた密書は、実は曹操が密かに探らせていた孫堅からのものだった。その時に曹操が取った策と言うのは、孫堅の率いる水軍に奇襲をかけるというものだった。ところが実際に現れたのは孫堅本人ではなく、その弟の呉起が率いる軍勢だった。
これには曹操も驚かされたが、逆に言うと孫堅の狙いも分かった。彼は自ら攻め入り、孫堅と対決したかったのだろう。それを見抜いて曹操はわざと孫堅軍を罠にかけさせ、そこで大勝を得るはずだったのである。そしてそれによって、この戦の最大の功労者である孫家を滅ぼすつもりだった。
その思惑は全て外れたわけだが、それでも孫堅は死ぬ事になると思っていた。実際、韓浩はその時は確実に殺すつもりだと聞いていた。韓浩は孫堅から曹操を救ってくれたので、曹操にとって韓浩は命の恩人でもあると言える。
だが、曹操はその韓浩を自らの敵と見なし、息子の曹丕を利用して殺そうとしたのである。
韓浩の行動にも無理は無い。
「……孟徳」
呂布は馬を寄せ、曹操に声をかける。
呂布に声を掛けられるまで、曹操はずっと韓浩から受け取った小瓶を見つめていた。
曹操はしばらく呂布の顔を見る事も出来ずにいたが、呂布の方から話しかけてきた事でようやく顔を上げる。その表情は悲痛そのもので、目から涙が溢れている。それを隠す事もなく、曹操は泣き崩れるように呂布に向かって土下座した。
呂布にはかける言葉が無かった。自分の方も、おそらく曹操を恨んでいたのだから。
曹操も、そして曹操に利用された形の韓浩も呂布を裏切った事に変わりはなく、許せる相手ではないはずだ。少なくとも呂布であれば、曹操の首を討ち取ってもおかしくない行動である。
曹操もそう思ったからこそ韓浩を利用したのだろうし、今まさにこうしてその韓浩は死に瀕している。曹操には呂布を討つ理由も権利もあるのだ。
それなのに、曹操が見せた表情にはまるで憎しみが感じられなかった。
これがもし他の武将であったのなら、呂布も曹操を責める事は出来なかっただろう。
しかし、韓浩ではそうもいかない。韓浩は曹操や劉備、関羽といった様な英雄でもなんでもなく、ただの武将に過ぎない。それも、この様な最期を迎えてしまう様な程度の低い人物である。
呂布がそう考えているうちに、陳宮が曹操の元へと近づいていた。
曹操は陳宮を見ると、すがりつくように抱きしめて嗚咽する。
陳宮は懐に抱えていた巾着袋を取り出し、その中から薬と思われる小さな包みを取り出すと、それを曹操に手渡して首を振る。
「……この薬には、毒は入っておりません」
曹操の腕の中で、陳宮は呟く様に言った。
その薬を見て、さすがに曹操だけでなく呂布たちも驚く。
それは確かに先程曹丕が投げつけた小瓶の中身と同じもので、明らかにあの時曹丕が持っていて投げつけられたものだ。
曹丕はあれが毒物であると思い込み、父親を殺す為に投げたのだろうか?いや、違う。そんなはずはないと、呂布ですら思う。曹丕の性格を考えれば尚更で、この期に及んでそんな愚かな真似をするはずがない。
「この小瓶の蓋を開けて下さい。そして中のものを一口飲んで見せて頂けますか?」
陳宮は曹操の手を取ってそう言う。
曹操は言われた通りに、その中に入っていた赤い液体を口に含む。少し驚いた様子だったが、飲み込むのに支障はなかったらしく、軽く息をつく。
「お疑いになる気持ちは分かりますが、私は医者としての嗜みも多少あります。まず間違いなく、こちらの傷薬には問題はありません」
「何故分かる?」
曹操は不思議そうな顔をするが、その答えも意外なところから来た。
「私もその小瓶を投げた張本人です」
その人物とは曹仁だった。
曹操軍における最古参の人物であり、曹操が最も信頼していた側近である曹仁の言葉であっても信じられないだろうと言うことは、この場にいる誰もが思っていた。だが、意外にも曹操はその言葉を聞き入れたのか小瓶の中に入った薬を指先につけて口に含み、味わうと納得したらしい。
「どうぞ」
呂布は曹操の前に手を差し出す。
曹操はその手に小瓶を渡すと、大きく深呼吸してから薬を喉に流し込んだ。
その様子を見た後、呂布は自分の袖を破って止血を行う。出血は多かったもののそれほど深くは無かったのと、傷の割に痛みが少なかったのが幸いした。とはいえ、これ以上戦うのは難しいのは事実である。
「殿! ご無事ですか!」
そこに駆けつけて来た者がいた。
夏侯惇だ。
「子和!」
曹操は立ち上がり、涙を流しながら抱きつこうとするが、それは叶わなかった。
夏侯惇の強烈な蹴りが曹操の顔面に命中したからである。
「えぇー!? ちょっと待って、何コレどういうことぉ?」
それまで事態を飲み込めていなかった魏続と侯成が思わず叫んでしまうほど、あまりにも凄惨な出来事だった。
曹操軍の兵士達はもちろん、袁紹軍との交戦中に救援に訪れた韓浩軍の兵達すら呆然としているくらいなのだから、相当なものだったと言えるだろう。
呂布はと言えば、韓浩に肩を貸して立ち上がらせようとしていたのだが、子和が夏侯惇から蹴りを受けたことにより体制を崩し
「うお!?」
夏侯惇も
「あ、しまった!?」
地面に激突した。
少しして夏侯惇は起き上がる。
「いてててまさか呂布将軍が肩貸してるとは……」
「夏侯惇!殿!?」
兵士たちが慌てている。
「ん?なに……え?」
夏侯惇の下に顔を赤らめている呂布奉先がいた。この構図が意味するところに気付くまで、しばらくの時間がかかったが夏侯惇はすぐに理解した。
「申し訳ない呂布将……呂布公。我が主に変わって謝らせていただきたい」
「気にすることはない。俺の方こそ不注意だった(はあ、どうしよう俺ドキドキするぞ)」
呂布が笑いかけると、さすがの夏侯惇もばつが悪そうにしている。そんな中、陳宮は曹操に耳打ちをしていた。
それを聞いた曹操は目を見開き、陳宮の方を見ていた。
「おい、孟徳。これは一体どういうことだ?孟徳?曹操さん?もしもし?聞いてる?」
反応の無い曹操に対して、曹操の息子の曹丕が呼びかける。
曹操は曹丕の方に向き直ると、静かに言った。
「孫堅文台は既に死んでいるそうだ。そして今この場で戦っているのは全て袁術配下の者達だとの事。我らを裏切ったのではなく、最初からこの様なつもりだったのだな?」
その言葉の意味を理解するのには時間が必要だった様で、曹丕だけではなく曹純や郭嘉などは唖然として曹操の顔を見つめていた。曹操は曹丕ではなく呂布に向かって話しかけてきた。
「呂布将軍、一つ聞きたい事があるのですがよろしいでしょうか」
曹操が真剣な表情で言う。
呂布は眉をひそめる。
「……なんだ?」
呂布は短くそう言う。
「あの時、何故私の前から消えたのですか?」
呂布はそれを聞いて言葉を失う。その言葉には、呂布の知らない事情が詰まっていたからだ。
曹操が呂布の元を離れたのは、陳宮に頼まれての計略である。陳宮にそう言われ、曹操は陳宮と共に劉備に身を寄せて劉備に天下を取らせる事にしたのだった。しかしそれは、陳宮が立てた策の一つに過ぎなかったのである。
そもそも、曹操と陳宮の考えた事は違っていた。
曹操は呂布が董卓を倒す為に力を必要とし、その為の協力者を探した結果が陳宮であったと言う事であり、陳宮もまた同様に董卓打倒の為には呂布が必要だと考えていたと言う。
そこで二人は協力関係を結ぶ事になったのだが、二人の間に齟齬が生じてしまう。
陳宮は当初、袁紹の元で反董卓連合の結成を考えていた。その目的は李儒を排除すれば簡単に事が運ぶと考えた為だが、それは曹操との約束があった以上実行できなかった。
その次に陳宮が考えたのは、呂布を王佐の才を持つとされる劉表の元へ送り込むと言うものだった。
荊州は南陽郡の太守となった張飛によって平定された。この功績により、荊州の守護となっていた荊州刺史の丁原が殺害された事により、その領地を呂布に与えようという動きもあった。だが、荊州刺史の座を巡って張飛が趙雲に敗れた結果、その流れも無くなったかに思えた。
ところが張飛が殺された直後に、張遼の父である張超が後任となり荊州刺史の地位を得る。この話は瞬く間に広がり、曹操の耳にも入った。当然、曹操はこの件について呂布と話し合う事になる。その時、呂布が言ったらしい。
張超は野心家だから油断はできない、と言うか何か企んでいそうである、と。それに対して、曹操はこう答えたらしい。
呂布は確かに英傑ではあるが世情に疎く武人の心が分かっておらず、軍師としては能力があっても人の上に立てる器量を持っていない。呂布と同盟関係を結んでいるとは言え、いずれその関係は崩壊するだろうし、そうなれば荊州は曹操の手中に落ちるのは目に見えているので、それまでに何とかしなければならない。
そう、曹操は考えていたらしい。
そして、そんな折に起こったのが漢王朝の都、長安での事件だ。
董卓の悪政に耐えかねた市民が蜂起して、都は混乱に陥る。
そこへ皇帝自らが乗り出して来たが、護衛の任にあたっていたのは皇甫嵩と朱儁という歴戦の勇将だったが、両名とも討たれてしまいその隙を狙って反乱者は都を掌握してしまった。
その後の混乱により洛陽では民衆が武器を手に取って戦い、ついには皇族までもが乱に荷担して争いが起こった。その中には、当時の皇太子でもあった霊帝の孫の袁術の姿もあり、さらにはこの騒ぎに乗じた袁紹、袁術兄弟の謀反もあって、漢王朝は事実上滅びた。
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