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41話

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そんな楊奉に対して、李儒は間髪入れずに答える。
「でしたら呂布奉先殿に仕返しする事も可能となりますね」
そんな李儒の返答を聞いた瞬間、怒りに任せて掴みかかろうとするのを程遠志が止めると口を開いたのだ。
「本当にそのような事があったのですか?もしそうであれば、私の方から漢中の張魯様に申し上げて石覧様の官位を賜る事も可能となりますが……」
そんな程遠志の言葉を聞いた楊奉は眉間にシワを寄せると少し考えてから答えたのだ。
「いや……今回の事は口が滑ってしまっただけの様だ……聞かなかった事にしてくれないか?」
そんな予想外の返答に呂布は興味深そうに質問する。
「まぁ、そちらがそう言うのであれば深く追求はしないが、そんなにご家族に弱みがあるのなら戦なんて止めた方が良いんじゃないのか?」
そんな俺の問い掛けに対して楊奉は憤怒の表情を浮かべながら答えてくれた。
「貴様が大将軍を殺した所を見たと言う密偵が現れてな!お前さえいなければ大将軍が死ぬ事など無かったのにな!」
その発言に驚きを隠せない様子の呂布。
(そんな嘘を信じる奴がいる訳ないだろう……)
そんな俺の気持ちなどお構いなしに楊奉は呂布を睨みながら言った。
「俺が許せないのは貴様だ!曹遠殿を討伐し、あまつさえ大将軍となるなんて許せん!」
そんな楊奉の言葉に呂布は真剣な顔で答える。
「俺だって何も考えずに大将軍を殺した訳じゃないんだぞ」
そう言うと呂布は、この黄巾党討伐に向けての気持ちを楊奉に語り出したのだ。
(ああ……これは長くなる奴だな)
そんな俺の予感は見事に的中し、日が傾くまで呂布と楊奉は熱弁を交わし続けたのだった。
俺は話が熱くなり続ける呂布を見て内心呆れていたのだが、その熱の入れようは半端ではなくて……本当にこの戦に勝利したいんだなって思う程だった。
そんな呂布の話が終わる頃には既に日は傾き始めていたので、とりあえず疲れた顔をして呂布が言った。
「とりあえず話をするのは明日にしよう……」
そんな言葉に俺と李儒は賛同するしかなかった。
翌日、俺達は改めて楊奉と今後の事について話し合わなくてはならなくなったのだが……集まったのは俺と呂布と段珪だったのだが楊奉がいない事に違和感を感じている様子でもあった。
だが、そんな空気を一切読まない人物が李儒の元に現れたのであった。
「やはり太師様と仲違いをしていたのでは無かったのですね!」
そんな嬉しそうにしている楊奉に呆れた様子で呂布は問い掛ける。
「お前……何しに来たんだ?」
その質問に楊奉は満面の笑みで答える。
「俺は呂布将軍と共に戦ってみせる事に決めたぞ!」
そんな楊奉に対して段珪も答える。
「私としては優秀な将軍が増えて大変ありがたいです」
そんな段珪に対して楊奉は偉そうに答える。
「当たり前であろう、俺の弓の腕を知ればすぐにお前よりも上だと言う事が分かるだろう!」
自信満々の楊奉であったが……後にその弓の才能が露見してしまい李儒を落胆させる事など誰も予想してなかったのである。
とりあえず話が進まないので俺は強引に会議を始める事にしたのだ。
「そもそも張角達の動きは?」
その質問に段珪が答える。
「当初、我々に帰順を望んでいた張宝、張梁兄弟ですが李洪と言う男の説得により現在は漢中に身を寄せているようです」
その言葉を聞いた呂布は不思議そうな表情をしながら質問したのだ。
「なぜあの者は説得出来たのだ?過去の悪行を考えると何故か納得出来ないのだが……」
俺はその疑問には答える事が出来ないので首を横に振る。
その様子を見た呂布は溜息をつきながら別の質問をしてくる。
「張角の側には誰かいるのか?」
そんな呂布の質問に楊奉が答えたのだ。
「張飛と言う男がいたのですが、その者は前皇帝の劉備に仕官して一緒にこの城の中にいるようです」
その言葉を聞き、呂布は少し考えてから俺達に言った。
「もし黄巾党残党が再び蜂起した際には、彼等は曹操軍に合流する可能性が高いのでその時に対処するぞ」
「分かった」
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