異世界でラブコメしたりギルド登録したり別の人になったり!?

みなと劉

文字の大きさ
20 / 161

20話

しおりを挟む
そう言うと男は立ち上がり、彼女に握手を求めてきた。
彼女は恐る恐る手を握り返した。
すると相手は満足そうな笑みを浮かべる。それから椅子を勧めると自分も席に着いた。
ミリアは出された紅茶に口をつけると、ゆっくりと飲み干す。緊張しているのだろうか?彼女は普段より飲むペースが遅い。
「ミリア様は大変礼儀正しい方ですね」
男の言葉に彼女は首を振った。
「いいえ、とんでもないことでございます。それよりも私に何か用件があるとのことでしたが……」
ミリアがそう尋ねると、彼は思い出したかのように話を始めた。
「実はミリア様に頼みたいことがあり、こちらへお呼び立てしました」
「どのような内容でしょうか?」
彼女が聞き返すと、彼はすぐに答える。
「単刀直入に申せば、ミリア様に私の孫娘に魔法についての指導をしていただきたいと存じます。ミリア様はとても優秀でいらっしゃるので、きっと良い刺激になるでしょう」
それを聞いてミリアは驚く。なぜ自分がそのようなことを引き受ける必要があるのか?と。だがそれを顔には出さない。彼女は冷静を装って言った。
「それは構いませんが、何故私のような者にその役目を任せようとなさっているのですか?」
すると、今度は彼が逆に質問を投げかけてきた。
「では質問を変えましょう。どうして貴女は今の地位を手に入れられたのです?」
「地位を得られた、というのは少々違うかもしれません。私は何もかも自分の力だけで手に入れた訳ではありません。様々な人達に助けられた結果なのです」
「それでも貴女の実力があればこそだ。ミリア様のお母上や妹君、それに弟君の協力もあったとはいえ、それを成し遂げたのは間違いなくミリア様なのですよ」
その言葉に彼女は戸惑う。するとさらに続けてこう言われた。
「ミリア様。私どもの一族は魔法に長けた者達が多い家系です。それゆえか代々続くこの伝統を大事にしている。しかし時代は変わりつつあるのもまた事実。我々は新たな可能性を模索しなければなりません。だからこそ貴女が必要なのだと私は思っております」
その言葉に彼女は考える。果たして自分はどのように答えるべきなのか?彼女は自分の気持ちを伝えるべく口を開く。
「恐れながらお答えいたします。私は今まで自分一人で生きてきました。それが当然であり、それこそが私にとっての最善だと思っていました。
けれども今は仲間ができ、支えてくれている人がいます。それに気付くことができたのは本当に幸運だったと思います。だから私は皆さんがいてくださることに感謝しています。私は今の自分のままで十分幸せです。これ以上は望まないつもりでした。けれどあなた方が望まれるというのであれば喜んで引き受けさせていただきます」
それを聞くと、彼は嬉しそうな顔をした。
「やはり貴女をここへ呼んで正解だったようです。これからよろしくお願いいたします」
こうしてミリアはレイジスタ家の孫娘、ルーナの教育係になった。そして定期的に会う約束を交わす。

***
その後ミリアは学園へ戻り、ギル達と授業を受ける。
ルーナはミリアのことを尊敬しており、とても良く懐いていた。そして彼女は他の生徒達に魔法を教える時よりも丁寧に指導をする。ルーナも真剣な表情でそれを聞き、吸収していった。
***
そんな生活を続けていき、ミリアがルーナの元に通うようになってから三か月ほどが経ったある日、事件は起こった。ミリアは放課後、部屋に戻るために寮へと向かっていた。しかし彼女は途中で誰かに呼ばれたような気がして立ち止まる。
(何だろう?)
辺りを見回してみる。すると後ろから声をかけられた。
「ミリア様!」
振り返るとそこにはルーナがいた。彼女はいつも通り可愛らしい格好をしており、手にはバスケットを持っている。ミリアはその姿を見て微笑んだ。そして彼女に近付いていく。すると彼女は言った。
「今日もお越し下さりありがとうございます。お茶会の時間が待ち遠しくてつい来てしまいましたわ」
そう言って彼女は笑顔を見せた。その表情はミリアが見たことのないものばかりである。
(この子はこんなに可愛い子だったかしら?)
そんな疑問を抱く彼女に対して彼女は言う。
「それで今日のお話はどんなものをご所望ですか? 本日は何種類かご用意させていただきました」
ルーナはそう告げると、持っていたバスケットを少しだけ開ける。
すると中に入っている物が僅かに見えた。
ミリアはその中にお菓子が詰められていることを察する。彼女は思わず感嘆の声を上げた。そして興味津々と言った様子で尋ねる。
「それは、一体どうされたんですか?」
「はい、先日のお茶会でお友達の方に差し上げましたところ大変喜ばれまして……。それから何度かご要望をお聞きしていたら沢山持ってくるようになったんです」
そう言いながらも彼女の顔には嬉しそうな表情が浮かんでいる。ミリアはそれを見て、彼女が多くの友人に囲まれていることに安心感を抱いた。それと同時に羨ましいという感情も湧く。彼女はそんなことを考えながら、目の前にいる彼女の姿をまじまじと見つめた。
すると、彼女の髪に白い粉のようなものが付いていることに気づく。よく見るとスカートの裾にも落ちていた。
ミリアはそれを不思議に思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...