異世界でラブコメしたりギルド登録したり別の人になったり!?

みなと劉

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30話

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(えっと、確か……)
アルフレッドは必死になって記憶を辿るが出てこない。
(まずいなぁ……ここで間違えたら取り返しがつかないぞ)
そう考えたアルフレッドはすぐに行動に移った。
「ちょっと中に入ってくれないかな」
「えっ……どうしてですか?」
当然のように戸惑いを見せる彼女だったが、構わず中へ招き入れる。
アルフレッドはそのまま部屋の中に入ると、机の上にあった椅子を引っ張ってきて、彼女の隣に置いた。そして、腰掛けると改めて自己紹介をする。
「僕はアルフリード・ロゼリウスだよ」
その言葉を聞き彼女は困惑気味に首を傾げた。
「アルフリード先生って確か……」
(ん?……あっ、そうだ! 思い出した!!)
そこで彼はハッとした表情を浮かべる。
そう、彼女の名前を呼んだことがあったからである。
「そういえばティナちゃんに君の話を聞いていたんだ。まさか、こんなところで会うなんて思わなかったよ」
彼女が何か言う前に、すかさずアルフレッドが口を開いた。
「あの時は変装していたせいですぐに気づけなかったんだよ。本当にごめんね」
「あぁ、そうなんですね。別に気にしなくていいですよ」
「ありがとう。それなら良かったよ」
彼は安堵の表情で胸を撫で下ろすと、早速本題へと移ることにした。
「えっと、実はティナちゃんから君の恋人のことを教えてもらっていたんだけど……」
「あぁ、なるほど……そういうことですか」
納得がいったのか、彼女は少し照れくさそうに笑みを見せる。
(可愛いな……ティナちゃんもこういう一面を持っているのかもしれないね)
思わず見惚れてしまうアルフレッド。しかし、すぐに我に帰ると、咳払いをして誤魔化した。
(いけない、つい見とれてた……)
気持ちを切り替える。ここからが勝負どころなのだ。
「それで君はティナの恋人さんがどんな人なのか知っているかい?」
「えぇ、もちろんです」
アリシアは笑顔で即答する。だが、それは嘘だ。
(悪いですけど、あなたに教えるつもりはありません)
彼女はキッパリと言い切った。だが、アルフリードはその態度を見ても特に反応を示さない。
ただ一言、
「そうか……」
とだけ呟く。
アリシアは意外だったのか、戸惑うような様子を見せた。
そんな彼女に彼は淡々と告げてくる。
「君に恋人がいないというなら話は早い。今から言うことは冗談なんかじゃなく、本気で話しているということを理解して聞いて欲しい」
真剣な眼差しを向けられアリシアは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
そして、緊張の面持ちで彼の言葉を待つ。
「率直に言おう。僕とティナは将来を誓い合った仲なんだ」
アルフレッドの言葉にアリシアは衝撃を受けた。同時に強い焦燥感に襲われる。
(えっ、嘘でしょう? 一体どういうことなのよ!)
混乱する彼女をよそに、アルフレッドは尚も語り続けた。
「それに、あの子のことを一番よくわかっているのは僕だと自負できるよ。だって僕は彼女の家族だからね。だからこそ断言させて貰おう――君は邪魔者だとね!」
鋭い視線を浴びせられたアリシアは何も言い返せなかった。いや、そもそも反論の余地がなかったのだ。
何故なら彼女の心には不安があったからだ。
(確かにそうよね……彼はまだ高校生だもの。いくら何でも幼すぎるわよね)
アルフレッドの発言は、彼女にとってショックを与える内容であったが、冷静さを保つように務める。すると、ここでようやくある疑問が生まれた。
(あれ、待って……どうして私にこんなことを言う必要があるの?)
普通ならばわざわざ自分の立場を明確にするような真似はしないはずだ。
(ということは、これはもしかして私を牽制するために言ったということ……? もしそうなら……私はとんでもない勘違いをしていたということになる)
アルフレッドの目的に気付いた時、自然とある答えに行き着いた。
そう――彼こそが真犯人だと。
「……わかりました。今回の件については私の誤解であったと認めます。失礼な態度をとって申し訳ありませんでした」
アリシアは素直に謝罪の言葉を口にした。
「うん、分ってくれればいいんだよ」
アルフレッドは満足げに笑うと、椅子から立ち上がる。
「えっ……どこに行くんですか?」
突然の行動に戸惑いを見せるアリシア。
「もう帰るに決まっているじゃないか」
アルフレッドが答えると、彼女もハッとした表情を見せた。
(まさか、私が謝る姿を見て嘲笑うつもりだったの?)
彼女は咄嵯に扉の方へと駆け出した。このまま帰らせてはいけないと思ったからである。
しかし――
扉まで辿り着く前に足を止めることとなった。
何故なら、背後からアルフレッドに腕を強く掴まれたからである。
彼女は驚き振り返ると、そこには怒りの形相を浮かべたアルフレッドの姿が目に映った。
(ど、どうしたの……?)
アリシアは戸惑うばかりである。
「まったく、油断ならない女だな。君はまだ気付いていないのかい?」
アルフレッドが問いかけてきたことでようやく気付く。
(そうか、嵌められたんだ)
彼女は苦々しい表情を浮かべた。
「君が余計なことをしたせいで、計画が台無しになってしまっただろう?」
「計画?」
彼女は眉をひそめる。
アルフレッドは不敵な笑みを浮かべた。
「あぁ、僕は君のことを信用していなかった。いつ裏切るのか分からない奴に大事な情報を渡すわけがないだろ」
彼はアリシアの腕を掴む力を強める。
「でも、君を始末すれば問題ないと思ってね」
その言葉を聞きアリシアはゾッとした。だが、不思議と恐怖はなかった。それよりも、ただひたすらに虚しさだけがこみ上げてくる。
アルフレッドが懐に手を入れるとナイフを取り出し、彼女の首元へ突きつけた。
「まさかこんな簡単に引っかかるなんてね」
そう言うと、アルフレッドの顔が一気に青ざめていく。
「あっ、あれ……」
彼の手から力が抜けていき、握っていたはずの刃が床に落ちた。
アリシアは素早く身を捻らせるとアルフレッドの腹部に膝蹴りを食らわせる。
彼は小さく悲鳴を上げると、そのまま気絶してしまった。それを確認すると彼女の身体から緊張が抜けるのを感じる。そこで、彼女は改めて自分の手に握られているものに視線を向けた。
(あっ……しまった!)
アルフレッドから奪った拳銃を手にしていたことをすっかり忘れていたのである。
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