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78話

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そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。
「よお、真悟君。」
「ああ、優斗か。一緒に帰るか?」
「ああ、構わないよ。」
「よし、じゃあ行くか。」
それからしばらく無言で歩いていると優斗が話しかけてきた。
「なあ真悟君、最近この辺りで起こっている事件についてなのだがね。」
「はい、それがどうかしましたか?」
「いや、実はその事件に巻き込まれている生徒がいるという情報があったのでね。」
「そうなんですか。それは大変ですね。」
「ああ、そこで君にも協力して欲しいのだ。」
「なるほど、分かりました。では何をすれば良いのですか?」
「うむ、まずはその被害者について調べて欲しいのだよ。」
「はい、わかりました。」
「頼んだぞ。」
こうして俺は調査をすることになった。
その日の帰り道、俺は優斗と一緒に帰っていた。
すると突然、優斗がこんなことを言ってきた。
「なあ真悟君、昨日は災難だったな。」
「ああ、まあな。でも真司が助けてくれたからなんとかなったぜ。」
「へー、あの真司がね。」
「ああ、意外だろ?でも本当に助かったぜ。」
「ふーん、まあ真司が人を助けるなんて珍しいこともあるもんだな。」
「ああ、俺も驚いたぜ。」
「まあいいや、とりあえず真司に感謝しとくといいぜ。」
「ああ、そうだな。」
「ところで、お前らはなんでこんな時間まで残ってたんだ?」
「ああ、それは……」
「……まあ色々あってな。」
「まあいいや、とりあえず家に帰ろうぜ。」
「ああ、そうだな。」
そして家に着き玄関を開けるとそこには真司がいた。
(また俺に何かしてきたりしないだろうな……あいつ)
そんなことを考えながら靴を脱いでいると、真司が近づいてきた。
「よお、おかえり。」
「ただいま。……ってなんでここにいるんだ?」
「いや、ちょっと話がしたくてな。」
「そっか……ご飯食べてからでもいい?」
「ああ、構わんよ。」
「じゃあ待っといて~」
そう言って俺は台所に向かった。
「……で、話したいことってなんだ?」
俺は夕飯を食べ終えて、リビングにあるソファーに座っていた。
「ああ、大したことじゃないんだけどさ、お前に聞きたいことがあるんだよ。」
「うん、いいけど……(嫌な予感しかしない)……」
「じゃあ聞くぞ。」
「おう」
「お前はあの事件の犯人を知ってるのか?」
「……え?」
「だから、お前があの事件の犯人なのか?」
「いや、違うぞ。」
「そうか、なら良かった。」
「ああ、だから安心してくれ。」
「そうか、ならよかった。」
(いや、全然よくねぇよ!)
「じゃあもう帰ってくれないか?まだ風呂入ってないし。」
「そうか、ならまた今度来るわ。」
「じゃあな」
そう言って真司は去っていった。
(なんか今日は疲れたな)
そう思い俺は眠りについた。
次の日の朝、俺はいつも通り学校に向かって歩いていた。
(今日も平和だと良いな)
そんなことを考えていると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
(誰だろう?)
そんなことを考えていると、いきなり後ろから抱きつかれた。
「なんだいきなり!!」
「真悟~!会いたかったよぉ!」
後ろを振り向くとそこに居たのは優斗だった。
「どうしたんだ優斗?」
「いやぁ、最近お前と遊べなかったから寂しくなっちゃったんだよねぇ」
「いや、別に遊ぶくらいいつでもできるだろ?」
「まあそうなんだけどねぇ……」
「まあそんなことは置いといて早く学校に行こうよ。」
「そうだな」
こうして2人は一緒に登校することになった。
しばらく歩いていると、優斗が話しかけてきた。
「なあ、真悟君」
「ん?」
「君はこの辺りで起こっている事件について知っているかい?」
「ああ、知ってるがそれがどうかしたのか?」
「いや、僕としては少し心配になってしまってね。」
「どういうことだ?」
「実はその事件に巻き込まれた生徒というのが僕の知り合いなんだよ。」
「そうなんだ。それは大変だな。」
「ああ、本当に困っているんだよ。」
「まあ何かあったら言ってくれよ。」
「ありがとう。そうさせてもらうよ。」
(それにしてもそんな大変なことが起こっていたとはな)
そんなことを考えていると校門が見えてきた。
(よし、今日の授業も頑張るか)
こうして、俺の日常はまた騒がしいものへと変わっていく。
ある日の放課後のこと、俺は教室で友達と話していた。
すると突然後ろの扉が開かれ、そこから1人の男子生徒が入ってきた。
「おい、お前が例の事件の被害者か?」
「はい。花村幸人って言います」
「よし、じゃあお前はこっちに来てくれ。」
「はい、分かりました。」
そして俺は男についていった。
しばらく歩くと、どこかの部屋に着いた。
「ここに入ってくれるか?」
「はい、分かりました。」
部屋に入ると、そこには机と椅子があるだけだった。
「よし、座れ」
「はい、分かりました。」
そして俺は言われた通りに席に座り、その後男が正面の席に腰掛けた。
「それでは始めようか。」
「はい、お願いします。」
「まずは名前を教えてくれるかな?」
「はい、僕は一年三組の花村幸人です。」
「なるほど、それでどうしてあの公園にいたのだ?」
「はい、実は昨日友人達と一緒にあそこでゲームをしていたのですが、気がついた時にはみんな帰っていたんです。」
「ふむ、ではその時には何も無かったというわけだな?」
「はい、何もありません。」
「そうか、ならば何故あの時間まで残っていたんだ?」
「はい、あの後友人たちを待っていたのですが誰も来なかったので先に帰りました。」
「そうか、ご苦労であった。もう戻っていいぞ。」
「はい、失礼しました。」
そして俺が部屋に戻ろうとした時、男の人が声をかけてきた。
「あ、ちょっと待ってください。」
「なんですか?」
「最後に一つだけ聞かせてください。あなたは本当にこの事件とは無関係なのですか?」
「はい、もちろん無関係ですよ。」
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