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94話

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零がそう言い終えた直後、魔王軍が一斉に襲いかかってきた。
だが零達は一切ひるまず、シルフィードは魔法を放ちまくり零とシルエルティのコンビネーションによりどんどん敵を薙ぎ払っていった。しかし敵の数は一向に減らないどころか増える一方だった。
「もう無理かも……これ以上戦ってたら死んじゃう……」
シルフィードは弱音を吐いていたが零とシルエルティは気にせず戦い続けた。だがそんな時、1人の少女が声をかけてきた。
「ちょっと待った~!私も混ぜてくださいよ!」
その少女を見た零達は驚きを隠せなかった。その少女は魔王の娘、シルフレイアだったのだ。
「なんでここに!?」
「だって面白そうだな~って思ってさ!」
「君、名前は?」
「私?私は『シルフレイア』っていいます!よろしくね!」
「よろしく。それで……どうして君は戦っているんだい?」
「暇つぶしってとこかな~!あと私のお母さんが魔王軍に殺されちゃってね。仇をとりたいんだ~!」
「そうなんだ……君は強いのかい?」
「もちろん!まあ見ててよ!」そう言うとシルフレイアの周りに竜巻が現れた。
「風魔法か……」
「うん!そうだけど?」
「すごいな……僕のは風魔法だけじゃなくて他の属性の魔法を使えるけど、君には敵わないかもしれない……」
「それはやってみないとわからないよ。それよりあの2人は?」
「あの二人はシルフィールっていう勇者とシルフィっていう女の子の勇者でこの世界を救う為に僕達はここに来たんだ」
そう話していた時、背後に突然気配を感じた零とシルエルティは後ろを振り向くとそこにはなんと魔族の中でもトップクラスの強さを誇る男、『ギルス』が立っていた。
「よぉ久しぶりだな零」
「ギルス……やっぱり生きていたのか……」
「ああ。でもお前のせいでこの世界で死んだがな。その借り、ここで返させてもらうぜぇ!!」
「来るよ零くん!シルフさん!君は他の人達を助けに行って!ここは僕に任せてくれ」
「分かった!ありがとう!頑張ってね!」
シルエルティはそう言って戦場へと向かった。シルフィードは零達の事を心配そうに見つめていた。
「大丈夫!僕を信じて!君は自分の家族の事を考えるんだ!」
「……わかった!気をつけてね!」
シルフィードがシルエルティの後を追うように去って行くのを確認すると、ギルスは笑みを浮かべた。
「ククク……やはりお前は甘い奴だ。俺との約束なんて忘れちまったみたいだなぁ。」
「……悪いけど僕は君のことなんか覚えていないよ。」
「あぁ?じゃあ思い出させてやるよ……お前がここでくたばるという現実でなァ!」
そう叫びながら襲い掛かってきた。シルエルティは拳を握りしめ思い切り地面へと叩きつけた。するとそこから大きな衝撃波が発生して辺りにいた魔物達が一瞬で消し飛んだ。だがそれとほぼ同時に零はシルエルティの腕を掴んだ。
「今だよ!」
そう叫ぶとシルエルティは走り出した。シルエルティ達は無事に逃げることに成功した。しかしそれを黙って見ているほど敵は甘くなかった。
「逃すわけねぇだろ?テメェはオレがぶっ殺す!」
「やれるものならやって見せなよ!返り討ちにしてあげるからさ!」
シルエルティとギルスが激しい戦闘を繰り広げている中、零とシルフィードはなんとか逃げ続けていた。だが零は体力の限界に達しようとしていた。だが零はそれでも必死に逃げていた。その時、突如上空から魔力弾が降ってきてシルフィードの足に当たった。その衝撃でシルフィードは転んでしまった。
「痛っ……」
「シルフィード!逃げよう!今は君だけでも助けたいんだ!」
「で、でもクシャラドが……」
「彼はきっと生きている!信じていればきっと……」
「う、うん……」
零は魔力弾の発射地点に向かって魔法を連射した。すると煙幕のような物が現れそこに人影があった。するとその中からクシャラドが現れた。
「無事だったかクシャラド!」
「おう!俺の体は粒子に変えられてしまったんだ。だがクシャドラドには俺の魂の一部が残っていた。だからこうやってまた実体化できたんだよ。だが俺には戦う力が残っていない……すまないが俺の代わりに戦ってくれ……」
「わかった。君のおかげでシルフィードを死なせずに済んだ。後は任せてくれ」
「頼んだぞ……シルフィード……俺の事は気にせず生きるんだ……」
そう言い残してクシャラドは再び粒子となって消えていった。すると魔王軍の大群が一気に攻めてきた。
「くそ!邪魔だ!」
「零くん!ここは私に任せて!」
シルフィードは魔法を放ったが、あまり効果はなかった。だがそこでシルフィードはとっておきの魔法を唱えた。
「聖魔法、ホーリーフィールド!」
シルフィードを中心にして白い光の結界が張られた。そしてその中にいる者は全員回復することができた。しかし敵はその光の中でどんどんダメージを受けていき死んでいった。
「よし!これでなんとか……」
「よくやったシルフィード……ここから先は俺たちだけで大丈夫だ……」
「え!?でも!」
「いいんだ。それにシルフィードに何かあったら元も子もないだろ?」
「そうだね。じゃあお言葉に甘えて行ってくるよ!」
シルフィードは魔王軍の大軍がいる方へ走って行った。その隙を狙って零達はその場を立ち去った。零は疲れ果てながらもひたすら逃げた。シルフィードもその後を追いかけていたが途中で限界がきて倒れ込んでしまった。
「ハァ……ハァ……ここまで来たらもう大丈夫だろう……大丈夫?シルフィード?」
「私は大丈夫だけど……ちょっと動けないかな」
「わかった……少し休もう」
「うん……」
シルフィードはそのまま眠ってしまった。だがその直後、零とシルフィードの前に1人の男が降り立った。
「やあ……お久しぶりだね……」
「あ……貴方は……」
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕は『アビス』この世界の管理者をしている者だ」
「な、なぜここに?」
「君に会いに来た……とだけ言っておくよ」
零がそう言った直後、アビスの周りに紫色のオーラが発生した。
「この力は一体……」
「これは僕が持つ能力、神威の力の一部なんだ。これを君に見せたのは他でもない。この世界を救う為だ。この世界が崩壊するまで残り10分程しかない。だからこの僕の手で君達を殺してあげようという訳さ」
「そうですか……なら僕たちも負けるわけにはいきませんね……」
零は拳を構えた。するとアビスは笑みを浮かべながら剣を取り出した。
「面白い……君に僕を倒す事ができるかい?僕の能力は『創造』。つまりなんでも創り出すことができる。例えばこの武器や鎧だって」
そう言うとアビスは剣や防具を創り出した。その光景を見た零は驚きつつもすぐに気持ちを切り替えてアビスと戦い始めた。
「オラァ!!」
「遅いね!そんなんじゃ当たらないよ!」
2人は互角の戦いを繰り広げていた。だが徐々に零の方が押され始めていた。
「どうだい?このまま僕と一緒にこの世界を救おうじゃないか!」
「嫌です!!あなたとは戦いたくない!だからやめてください!」
「それはできないね!僕は君を殺すつもりで戦うから君もそれくらいの覚悟を持って戦わないか!」
アビスはそう言い放つとさらに攻撃のスピードを上げた。零はギリギリ避けていたが全ての攻撃を防ぐことができず少しずつ傷が増えて行き遂に致命傷を負ってしまった。
(まずい!早く逃げないと……)
「逃げても無駄だよ。ほら!」
「うぐっ!か、体が動かない!」
零の体は地面に吸い寄せられるように倒れた。零は諦めて目を瞑った。だがその時、シルフィの事が頭に浮かんできた。すると零は無意識に声に出していた。
「まだ死にたく無い……こんなところで……」
零がそう呟いた瞬間、体の周りから青い光が発せられた。その光が消えるとシルフィードが目の前に現れた。シルフィードは困惑している零に微笑んだ。
「零くん、君はここで死なせないよ。絶対に守ってみせるから!」
シルフィードの体はさっきの零と同じように地面へと引っ張られていた。しかしそれに対抗してシルフィードは叫んだ。
「私は勇者だ!みんなを守る為に生まれてきたんだ!なのにこんな所で死ぬわけにはいかないんだ!私の思いに応えろ!ホーリーウェポン!」
するとシルフィードの手に純白の弓が現れた。シルフィードはそれを空に向けて矢を射た。その矢は真っ直ぐ飛び雲を貫き、やがて大きな光の塊となった。シルフィードはその光の塊に向かって手をかざした。するとその光の塊は零の体に入って行った。その瞬間、零は全身に痛みを感じながらも立ち上がった。
「な、何が起こってるんだ……」
零は自分の体を見て驚いた。なぜなら背中に白い翼が生えていたからだ。
「なんで羽が……」
「それは私が君に与えた加護だよ。君の力の根源となるもの……だから使いこなしてね」
「うん。ありがとうシルフィード。じゃあ行こうか」
零はアビスに向かって走り出した。アビスは焦らずに構えたが突然背後から魔法弾が飛んできたためそれを防御した。すると今度はシルフィードが剣を構えて斬りかかった。
「零くん!今の私ならあの技が使えるはず!2人で協力してあいつを倒そう!」
「わかった!」
零はシルフィードの後ろについて走った。そしてアビスの前でジャンプして剣を振り下ろした。だがアビスも黙って見ている訳もなく零に向かって攻撃をしたがそれは簡単に防がれてしまった。
「今だ!」
「わかった!」
アビスが一瞬怯んだ隙にシルフィードが剣を振って魔法を放った。
「これで決める!聖なる裁き!」
2つの魔法が合わさってアビスを飲み込んだがそれでもアビスは立っていた。
「くそ……なんてパワーだ……まさかこれほどまでに成長していたとは……」
「もう終わりですよ。さようならアビスさん」
零は剣先を向けた。だが次の瞬間、零は吹き飛ばされて地面に倒れていた。
「ガハッ……」
「零くん!」
「フッ……流石に油断しすぎじゃないのか?僕は神なんだぞ?」
アビスは余裕そうな顔をしながら言った。するとアビスの顔つきが変わった。その理由はとても簡単だった。零が起き上がってアビスの腹にパンチをしたからだ。アビスは口から血を流してそのまま倒れてしまった。
それから少し時間が経ち、アビスがようやく起き上がった。
「おやおや……これは予想外だね……」
「あなたの負けです。大人しく降参してください」
「ふむ……いいだろう……僕の目的は達成できたしね」
アビスはそう言うとどこかへ消えてしまった。それを確認した零は地面に座っているシルフィードに駆け寄った。
「シルフィード!」
「大丈夫だよ。それよりごめんね。勝手なことをして……」
「そんなことないよ。君がいなかったら俺は死んでいたかもしれない。本当にありがとう」
「良かった~。でもまだ終わっていないみたいだよ」
「え?どういう事?シルフィードは無事だよね?魔王軍は全滅させたはずだよ?」
「違うの。多分この世界のどこかに魔王軍の幹部がいるんだよ」
「なるほど……じゃあ探しに行かないと」
「そうだね」
2人は立ち上がろうとした時、シルフィードのお尻の下が急に輝きだした。
「な、なにこれ!?」
「こ、これは召喚魔法陣……ということは……」
シルフィードは咄嵯に零の体に飛びついて回避しようとしたが全く間に合わず魔法陣の光の中に入ってしまった。零も急いで飛び込もうとするがその前に転移されてしまった。そして零達は城の中庭らしき場所に飛ばされていた。
「ここって確か……僕が勇者として呼ばれた場所……」
「懐かしいね~」
「確かに……という事はやっぱりこの世界は僕がいた世界に繋がっているんだな。よし!それじゃあさっさと魔王の幹部を倒してこの世界を救おう!」
「了解!」
こうして零とシルフィードは新たな敵を倒す為、再び旅立った。
零達が城内を探索していると前から1人の男が現れた。
「久しぶりですね……勇者様……それと……聖女……様?」
「あなたは……」
零は言葉を失った。何故なら目の前にいる男は紛れもない、自分が元いた世界で殺した張本人、神崎優馬なのだから。
「どうして貴方がここにいるんですか……」
「ああ……俺の事を覚えているんだね。それは嬉しいことだ」
「質問には答えてくれないのですか……」
「そうか……まあいい。それじゃあ改めて自己紹介をしよう。私はアビス……アビス・コーリング。この世界を創造した者、神である」
アビスは堂々と言い放った。すると零の隣にいたシルフィードは震えながら一歩前に出た。
「あ、あなたが神様だって?冗談も大概にしてください!あなたが創り出した存在のせいでどれだけ多くの人が死んだと思っているの!絶対に許さない!」
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