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97話
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俺達がギルドの中に入ると、冒険者たちが一斉にこちらを見てきた。
その瞬間俺は少し恥ずかしくなってしまい、俯いて黙り込んでしまったのだが、すぐに受付嬢がこちらにやってきた。
「ようこそ。当ギルドへ。本日はどのような御用件でしょうか?」
(ふむ。まずいな。どうする?)
俺はどうしようか悩んでいると、アルセリアさんの方が口を開いた。そして彼女は受付嬢に用向きを伝え始めた。
(助かるなぁ。やっぱり大人だなぁ)
「今日は依頼を受けに来たのではないのですよ。この方を案内してきただけなのですが、ここであっていますか?」
「はい。そうですね。確かに登録証をお持ちになっていない方の様ですが、身分証明書の提示をいただいても宜しいでしょうか?」
俺は内ポケットにしまっていたものを取り出し、受付に差し出した。
「はい。これで大丈夫か?」
すると彼女は驚いた表情をして、そして俺の顔をじっと見つめていた。
「な、何?そんなにまじまじと見るようなものではないんだけどなぁ。それと早くしてくれないか?」
「は、はい!大変失礼致しました!少々お待ちくださいませ」
そしてしばらく待つと、ようやく彼女が戻ってきた。
「では手続きが完了しましたので、これで貴方はこの国の国民として認められたこととなります。それともう一つお伝えしなければならないことがございます」
「ん?何かあるのか?」
俺は不思議そうな顔をしながら首を傾げた。すると、受付嬢は少し緊張気味でこんなことを言った。
「は、はい。貴方様は現在この国で一番の冒険者様なのですよ。なので是非この国の為に力を貸して欲しいのです」
俺は一瞬思考停止し、その後、やっと状況を理解した俺は、
「ええええええ!!!!!」
大声で叫んだのだった。
突然のことに驚いてしまい、つい叫んでしまった俺だったが、冷静になってみるとそれはとても喜ばしいことだと思い至った。
「つまりそれは俺が有名だということで間違いないんだよな!?」
「は、はい。そういうことになりますね。あの~どうかなさいましたか?」
「いやなんでもない。気にしないでくれ」
どうやら興奮しすぎたようだ。しかしそれも仕方がないことだろう。何故ならこの世界に来て初めて他人から認められることができたのだから。俺は今まで自分以外の人間からは、ただのうざい奴として扱われ続けてきたのだ。だからこそこの気持ちはとても嬉しく思えたのだ。
「ではこれからはあなたが依頼を出す側でもいいという訳ですよね?」
俺は念の為確認を取ることにした。しかしそれは無意味なことだったようで、彼女は苦笑いしながら俺にこう言った。
「残念ながら、違います。貴方は国からの依頼を受ける立場になるので、こちらから出す側には一切なれないという訳です」
「は?どういうことだ?だって今さっき一番の実力の持ち主って言われたばっかりじゃないか」
俺は困惑していた。
「ああ!すいません!説明不足でしたね。あなたにはランクというものがあって、F・E・D・C・B・Aそして最高であるSランクまでありまして、あなたはまだ登録したばかりの新米なので、Fランクからスタートとなります。しかしそれでは流石に不公平なので、ギルドマスター権限で、あなたをSSランクにしてあります」
「ええ!!なんだってぇ!!!!」
あまりの驚きように、周りにいた人達が一斉にこっちを見てきたが、今の俺にはそんなことは関係なかった。それほどまでに衝撃的なことであったからだ。まさか自分がここまで有名になっているとは思ってもいなかったので、俺は少し気恥ずかしくなった。
「は、はぁ……まあ分かったよ。それじゃあ早速仕事をさせてくれ。」
「了解しました。それでどんな仕事が良いのですか?」
「そうですね。俺、実はここに来る途中でゴブリンの集落を発見しまして、そこで手に入れた素材を持って帰ってきたんですよ。なのでこれを売りたいのですが……良い場所はありませんかね?」
「なるほど。そうでしたか。それならば、ギルドの裏にある倉庫に持っていけば良いと思いますよ。案内しますね。ついてきてください。それとこちらの書類にサインをお願いします」
そう言って渡されたのは一枚の紙切れであった。そこにはこの国の文字で名前を書く欄が用意されていた。
「ありがとうございます。これくらいの文字なら普通に読めますし書けますので安心してください。名前は零と書きますね。」
「はい。分かりました。確かに受理しました。では参りましょうか」
俺達はそのままギルドの裏手に向かい、そこで荷物を置くとまた表へと戻って来た。そして俺はある疑問を投げかけた。
「なあ一ついいかな?」
「はい。なんでしょうか?」
「俺ってどうやってこの国の文字を覚えればいいんだ?」
そう、これが俺にとっての一番の問題なのだ。異世界に来たら必ずやりたい事リストにも入っていたのに、それが未だに実行出来ていないのはかなりの痛手だった。なので俺は、なんとかこの問題を解決する為に彼女に聞いてみた。すると彼女は困った表情を浮かべながらこんなことを言ってきた。
「それなら僕がやるよ」
後ろから聞きなれた声がした。
「え?……あ……優斗」
「やあ、神崎零くん?それとも……桐谷真司くん?」
「!!!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は咄嵯に逃げようとしたが遅かった。
彼の手は既に僕の頭を押さえつけていた。
「くっ!」
「無駄だよ。逃げられない」
(まずいまずいまずいまずい)
どうすれば切り抜けられるのか考えている間に、彼は僕の耳元に口を寄せてきた。
僕はその行為に少しドキッとした。そして彼がこう囁いた
「僕は……如月優斗と小此木優斗の両方の記憶を持ってる……安心して」
(ということは)
(まさかお前俺とセックスした記憶も?)
真っ赤になって
(う、うん……)
そんな感じで、お互いの情報を擦り合わせていったのだが、それを見ていたアルセリアさんに見つかり結局、怒られたのだった。
「ふぅ……」
俺達は先程の部屋に戻って来ていた。
そして俺は、アルセリアさんの目の前で、正座をさせられていた。何故か?それは彼女が怒り出したからだ。
「あなた達!何をしているのですか!ここは遊び場ではないのですよ!もう少し自覚しなさい!全くもう」
「「ごめんなさーい」」
俺はこの時悟った。彼女の前では絶対にふざけた態度を取らないようにしようと。そうしないと殺される。俺は直感的にそう思った。しかし、ここで俺達の関係をばらしてしまうわけにはいかないので、俺はとりあえず適当に合わせることにした。
「で?お前は何優斗なの?現在俺は神界零だけど」
「結城優斗……勇者ラブレスの生まれ変わりらしい」
『勇者ラブレス』この世界の神話に出てくる話の一つで、昔この世界には一人の男がいて、その男はある日突然、魔物を束ね、人々を恐怖のどん底へと突き落としたのだ。その時現れた救世主こそが、初代勇者と呼ばれる存在だ。
その男は悪の力を持ちながら、善の心を持っていた。しかし、ある時男はある出来事によって、闇に落ちてしまう。
だがそんな時、一人の少女が現れて、彼を光の心に戻してくれた。しかしその時に、男の力は失われてしまい、普通の人間となってしまったそうだ。それから数年後、勇者と呼ばれた男は再び、世界を救おうと戦いに出るのであった。という感じの物語である。ちなみに、初代魔王というのは、この世界で最強と言われている存在であり、ラスボス的な存在である。なので俺の目標は初代を倒すことにあった。なので俺も一応勇者の一人と言えるのかもしれない。
「なるほど闇落ちした初代勇者か」
「そゆこと」
「じゃあなんでここに?」
「えっと……僕も零と一緒に旅に出ようと思って」
「マジ?」
「まじ」
俺は思わず顔がニヤけるのを抑えられなかった。まさか優斗が一緒に戦ってくれるとは思ってもいなかったので嬉しかった。なので俺は、思い切って聞いてみることにした。
「あのさぁ、一緒に来るって言うのはもちろん本気だよな……俺、お前を……あれするかもよ」
「いいよ……僕……したいなぁ」
顔を赤くしながら上目遣いで言うものだから俺は我慢できなくなったので、その場でヤろうと持ちかけるとあっさり了承されたので早速寝室へと行こうとしたがアルセリアさんに止められてしまった。
「ちょっと待ってください!あなた達今、何をしようとしたんですか?」
「え?何ってそりゃあナニですけど」
「アルセリアさんは黙ってろ。これは俺と優斗の問題」
俺は、さっきまでとは一変し、真剣な表情でそう言い放った。しかし、彼女は引かなかった。
「そういう問題ではありません!あなた達まだ子供じゃないですか。こういうことは、ちゃんと結婚してからやりなさい!」
そう、この世界には同性結婚が許されている。
「ちえ、恋人同士なのにしちゃだめなんて……溜まるじゃん!」
優斗がいう。
「抜きなさい!」
簡単に言うねぇ
……まあ良いや。
「分かったよ。それならキスだけでもいいよね」
と、俺は言って、優斗の方へ向くと強引に口づけをした。
「ん……ちゅ……れろ……くちゃ……」
優斗は最初は戸惑っていたが、すぐに受け入れ、俺達は長い時間舌を絡め合った後唇を離すと銀色の糸が垂れた。
そしてそれを見ていた
アルセリアさんは真っ赤になって
「していい!それ以外もしていいから!」
と言って部屋から出ていく。
((やったー))
でも、今日はキスだけにした。
翌朝、俺と優斗は宿から出立することにした。
「準備できたか?」
「うん。大丈夫だよ」
と、言って優斗が差し出して来た手を握った瞬間いきなり後ろ襟を引っ張られた。首に物凄い負荷がかかるのと同時に体が後ろに持っていかれるような感覚に陥ると、ドンッと壁に叩きつけられて痛みが走る。
しかし、俺が驚いていたのはその壁ドンした優斗が真剣な眼差しをしていたことだ。
「零?今日は夜覚悟しろよ?……するから」
「う、うん。わかった……」
こうして俺達は旅立ったのだった。
俺達はまず街を出る前に冒険者登録を済ませることにした。
理由は簡単で、身分証明証を作る為である。
俺達は受付嬢の前に立つと話しかけた。
「すみません。この二人の冒険者カードを作って欲しいのですが」
「かしこまりました。では、こちらに記入をお願いします」
渡された紙に名前を書いて渡した後暫くして、
「できました。お受け取り下さい」
と言われたので受け取る。すると、そこには『桐谷真司』と書かれていた。
「えっ?これって本名書くの?」
「当たり前だ。それにしてもお前……零って書いてあったぞ?……ふーん……ふーーーーーーーん……ふふ……可愛いやつだなぁお前」
「ばっか!それはたまたまだって!」
「嘘つくんじゃねえ。本当は嬉しかったんだろ?」
俺は必死で否定しようとしたが無駄だと悟った。
「はい……実はそうです」
「素直が一番だよ」
そうして、俺達の新しい生活が始まった。
「じゃあ行ってくるわ」
俺は家を出てギルドへと向かう。
昨日貰ったばかりのランクFの依頼をこなす為に。
ちなみに、優斗は留守番である。というのも、あいつはまだ自分の実力を理解していないからだ。なので、今は俺のレベル上げを手伝ってもらうために同行はしないのだ。
ギルドに着くと、早速依頼を受けることにした。依頼は掲示板のようなところに張り出されていたのでその中から適当に選ぶと受付へと向かった。
「おはようございます。ご用件は何でしょうか」
「えっと、この薬草採取でお願いします」
「かしこまりました。受理完了致しました。期限は特に設けられておりませんので頑張ってくださいね」
「はい。行ってきます」
俺は、森に向かうため大通りを歩くと途中で声を掛けられた。
「あの……ちょっとよろしいですか?」
「え?あぁ俺の事かな?どうしたんですか?」
「私この街の冒険者を束ねているクランのリーダーのアイリスといいます。最近この街で起こっていることについて、少し話を聞きたいと思いまして、お時間を頂いても?」
「わかりました。それでその事件とは一体?」
「ありがとうございます。では早速……この国には、昔から魔の森と呼ばれていて誰も近寄らない場所があるのを知っていますか?」
「はい。知っていますよ」
魔の森……この世界のどこかにあると言われている伝説の魔物がいると言われる危険地帯であり、そこは常に霧に覆われているため正確な場所は誰にもわからないと言われている場所である。
「その森の奥地にとても強いモンスターが出るらしいのですよ。なのでもし行くことがあれば注意するように言ってください」
「わかりました。覚えておきます」
その後少し雑談をして俺は別れた。
しかしこの時、俺は全く知らなかった。
この後に待ち受ける惨劇を……
~side:アイリス~
私はクランメンバーを引き連れて森の中に訪れていた。ここは魔獣の生息する場所でもあるが故に、普通は人が寄り付くことはほとんどないのだが、今日はある目的の為に訪れた。
私が今いるメンバーは私を入れて五名、みんな腕に自信のある猛者たちだ。
そして今から向かうのはこの近くにある遺跡の調査の為である。そこは数百年前からあるとされ、過去に一度調査が行われたが、何も見つからなかったとされている場所だ。
その瞬間俺は少し恥ずかしくなってしまい、俯いて黙り込んでしまったのだが、すぐに受付嬢がこちらにやってきた。
「ようこそ。当ギルドへ。本日はどのような御用件でしょうか?」
(ふむ。まずいな。どうする?)
俺はどうしようか悩んでいると、アルセリアさんの方が口を開いた。そして彼女は受付嬢に用向きを伝え始めた。
(助かるなぁ。やっぱり大人だなぁ)
「今日は依頼を受けに来たのではないのですよ。この方を案内してきただけなのですが、ここであっていますか?」
「はい。そうですね。確かに登録証をお持ちになっていない方の様ですが、身分証明書の提示をいただいても宜しいでしょうか?」
俺は内ポケットにしまっていたものを取り出し、受付に差し出した。
「はい。これで大丈夫か?」
すると彼女は驚いた表情をして、そして俺の顔をじっと見つめていた。
「な、何?そんなにまじまじと見るようなものではないんだけどなぁ。それと早くしてくれないか?」
「は、はい!大変失礼致しました!少々お待ちくださいませ」
そしてしばらく待つと、ようやく彼女が戻ってきた。
「では手続きが完了しましたので、これで貴方はこの国の国民として認められたこととなります。それともう一つお伝えしなければならないことがございます」
「ん?何かあるのか?」
俺は不思議そうな顔をしながら首を傾げた。すると、受付嬢は少し緊張気味でこんなことを言った。
「は、はい。貴方様は現在この国で一番の冒険者様なのですよ。なので是非この国の為に力を貸して欲しいのです」
俺は一瞬思考停止し、その後、やっと状況を理解した俺は、
「ええええええ!!!!!」
大声で叫んだのだった。
突然のことに驚いてしまい、つい叫んでしまった俺だったが、冷静になってみるとそれはとても喜ばしいことだと思い至った。
「つまりそれは俺が有名だということで間違いないんだよな!?」
「は、はい。そういうことになりますね。あの~どうかなさいましたか?」
「いやなんでもない。気にしないでくれ」
どうやら興奮しすぎたようだ。しかしそれも仕方がないことだろう。何故ならこの世界に来て初めて他人から認められることができたのだから。俺は今まで自分以外の人間からは、ただのうざい奴として扱われ続けてきたのだ。だからこそこの気持ちはとても嬉しく思えたのだ。
「ではこれからはあなたが依頼を出す側でもいいという訳ですよね?」
俺は念の為確認を取ることにした。しかしそれは無意味なことだったようで、彼女は苦笑いしながら俺にこう言った。
「残念ながら、違います。貴方は国からの依頼を受ける立場になるので、こちらから出す側には一切なれないという訳です」
「は?どういうことだ?だって今さっき一番の実力の持ち主って言われたばっかりじゃないか」
俺は困惑していた。
「ああ!すいません!説明不足でしたね。あなたにはランクというものがあって、F・E・D・C・B・Aそして最高であるSランクまでありまして、あなたはまだ登録したばかりの新米なので、Fランクからスタートとなります。しかしそれでは流石に不公平なので、ギルドマスター権限で、あなたをSSランクにしてあります」
「ええ!!なんだってぇ!!!!」
あまりの驚きように、周りにいた人達が一斉にこっちを見てきたが、今の俺にはそんなことは関係なかった。それほどまでに衝撃的なことであったからだ。まさか自分がここまで有名になっているとは思ってもいなかったので、俺は少し気恥ずかしくなった。
「は、はぁ……まあ分かったよ。それじゃあ早速仕事をさせてくれ。」
「了解しました。それでどんな仕事が良いのですか?」
「そうですね。俺、実はここに来る途中でゴブリンの集落を発見しまして、そこで手に入れた素材を持って帰ってきたんですよ。なのでこれを売りたいのですが……良い場所はありませんかね?」
「なるほど。そうでしたか。それならば、ギルドの裏にある倉庫に持っていけば良いと思いますよ。案内しますね。ついてきてください。それとこちらの書類にサインをお願いします」
そう言って渡されたのは一枚の紙切れであった。そこにはこの国の文字で名前を書く欄が用意されていた。
「ありがとうございます。これくらいの文字なら普通に読めますし書けますので安心してください。名前は零と書きますね。」
「はい。分かりました。確かに受理しました。では参りましょうか」
俺達はそのままギルドの裏手に向かい、そこで荷物を置くとまた表へと戻って来た。そして俺はある疑問を投げかけた。
「なあ一ついいかな?」
「はい。なんでしょうか?」
「俺ってどうやってこの国の文字を覚えればいいんだ?」
そう、これが俺にとっての一番の問題なのだ。異世界に来たら必ずやりたい事リストにも入っていたのに、それが未だに実行出来ていないのはかなりの痛手だった。なので俺は、なんとかこの問題を解決する為に彼女に聞いてみた。すると彼女は困った表情を浮かべながらこんなことを言ってきた。
「それなら僕がやるよ」
後ろから聞きなれた声がした。
「え?……あ……優斗」
「やあ、神崎零くん?それとも……桐谷真司くん?」
「!!!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は咄嵯に逃げようとしたが遅かった。
彼の手は既に僕の頭を押さえつけていた。
「くっ!」
「無駄だよ。逃げられない」
(まずいまずいまずいまずい)
どうすれば切り抜けられるのか考えている間に、彼は僕の耳元に口を寄せてきた。
僕はその行為に少しドキッとした。そして彼がこう囁いた
「僕は……如月優斗と小此木優斗の両方の記憶を持ってる……安心して」
(ということは)
(まさかお前俺とセックスした記憶も?)
真っ赤になって
(う、うん……)
そんな感じで、お互いの情報を擦り合わせていったのだが、それを見ていたアルセリアさんに見つかり結局、怒られたのだった。
「ふぅ……」
俺達は先程の部屋に戻って来ていた。
そして俺は、アルセリアさんの目の前で、正座をさせられていた。何故か?それは彼女が怒り出したからだ。
「あなた達!何をしているのですか!ここは遊び場ではないのですよ!もう少し自覚しなさい!全くもう」
「「ごめんなさーい」」
俺はこの時悟った。彼女の前では絶対にふざけた態度を取らないようにしようと。そうしないと殺される。俺は直感的にそう思った。しかし、ここで俺達の関係をばらしてしまうわけにはいかないので、俺はとりあえず適当に合わせることにした。
「で?お前は何優斗なの?現在俺は神界零だけど」
「結城優斗……勇者ラブレスの生まれ変わりらしい」
『勇者ラブレス』この世界の神話に出てくる話の一つで、昔この世界には一人の男がいて、その男はある日突然、魔物を束ね、人々を恐怖のどん底へと突き落としたのだ。その時現れた救世主こそが、初代勇者と呼ばれる存在だ。
その男は悪の力を持ちながら、善の心を持っていた。しかし、ある時男はある出来事によって、闇に落ちてしまう。
だがそんな時、一人の少女が現れて、彼を光の心に戻してくれた。しかしその時に、男の力は失われてしまい、普通の人間となってしまったそうだ。それから数年後、勇者と呼ばれた男は再び、世界を救おうと戦いに出るのであった。という感じの物語である。ちなみに、初代魔王というのは、この世界で最強と言われている存在であり、ラスボス的な存在である。なので俺の目標は初代を倒すことにあった。なので俺も一応勇者の一人と言えるのかもしれない。
「なるほど闇落ちした初代勇者か」
「そゆこと」
「じゃあなんでここに?」
「えっと……僕も零と一緒に旅に出ようと思って」
「マジ?」
「まじ」
俺は思わず顔がニヤけるのを抑えられなかった。まさか優斗が一緒に戦ってくれるとは思ってもいなかったので嬉しかった。なので俺は、思い切って聞いてみることにした。
「あのさぁ、一緒に来るって言うのはもちろん本気だよな……俺、お前を……あれするかもよ」
「いいよ……僕……したいなぁ」
顔を赤くしながら上目遣いで言うものだから俺は我慢できなくなったので、その場でヤろうと持ちかけるとあっさり了承されたので早速寝室へと行こうとしたがアルセリアさんに止められてしまった。
「ちょっと待ってください!あなた達今、何をしようとしたんですか?」
「え?何ってそりゃあナニですけど」
「アルセリアさんは黙ってろ。これは俺と優斗の問題」
俺は、さっきまでとは一変し、真剣な表情でそう言い放った。しかし、彼女は引かなかった。
「そういう問題ではありません!あなた達まだ子供じゃないですか。こういうことは、ちゃんと結婚してからやりなさい!」
そう、この世界には同性結婚が許されている。
「ちえ、恋人同士なのにしちゃだめなんて……溜まるじゃん!」
優斗がいう。
「抜きなさい!」
簡単に言うねぇ
……まあ良いや。
「分かったよ。それならキスだけでもいいよね」
と、俺は言って、優斗の方へ向くと強引に口づけをした。
「ん……ちゅ……れろ……くちゃ……」
優斗は最初は戸惑っていたが、すぐに受け入れ、俺達は長い時間舌を絡め合った後唇を離すと銀色の糸が垂れた。
そしてそれを見ていた
アルセリアさんは真っ赤になって
「していい!それ以外もしていいから!」
と言って部屋から出ていく。
((やったー))
でも、今日はキスだけにした。
翌朝、俺と優斗は宿から出立することにした。
「準備できたか?」
「うん。大丈夫だよ」
と、言って優斗が差し出して来た手を握った瞬間いきなり後ろ襟を引っ張られた。首に物凄い負荷がかかるのと同時に体が後ろに持っていかれるような感覚に陥ると、ドンッと壁に叩きつけられて痛みが走る。
しかし、俺が驚いていたのはその壁ドンした優斗が真剣な眼差しをしていたことだ。
「零?今日は夜覚悟しろよ?……するから」
「う、うん。わかった……」
こうして俺達は旅立ったのだった。
俺達はまず街を出る前に冒険者登録を済ませることにした。
理由は簡単で、身分証明証を作る為である。
俺達は受付嬢の前に立つと話しかけた。
「すみません。この二人の冒険者カードを作って欲しいのですが」
「かしこまりました。では、こちらに記入をお願いします」
渡された紙に名前を書いて渡した後暫くして、
「できました。お受け取り下さい」
と言われたので受け取る。すると、そこには『桐谷真司』と書かれていた。
「えっ?これって本名書くの?」
「当たり前だ。それにしてもお前……零って書いてあったぞ?……ふーん……ふーーーーーーーん……ふふ……可愛いやつだなぁお前」
「ばっか!それはたまたまだって!」
「嘘つくんじゃねえ。本当は嬉しかったんだろ?」
俺は必死で否定しようとしたが無駄だと悟った。
「はい……実はそうです」
「素直が一番だよ」
そうして、俺達の新しい生活が始まった。
「じゃあ行ってくるわ」
俺は家を出てギルドへと向かう。
昨日貰ったばかりのランクFの依頼をこなす為に。
ちなみに、優斗は留守番である。というのも、あいつはまだ自分の実力を理解していないからだ。なので、今は俺のレベル上げを手伝ってもらうために同行はしないのだ。
ギルドに着くと、早速依頼を受けることにした。依頼は掲示板のようなところに張り出されていたのでその中から適当に選ぶと受付へと向かった。
「おはようございます。ご用件は何でしょうか」
「えっと、この薬草採取でお願いします」
「かしこまりました。受理完了致しました。期限は特に設けられておりませんので頑張ってくださいね」
「はい。行ってきます」
俺は、森に向かうため大通りを歩くと途中で声を掛けられた。
「あの……ちょっとよろしいですか?」
「え?あぁ俺の事かな?どうしたんですか?」
「私この街の冒険者を束ねているクランのリーダーのアイリスといいます。最近この街で起こっていることについて、少し話を聞きたいと思いまして、お時間を頂いても?」
「わかりました。それでその事件とは一体?」
「ありがとうございます。では早速……この国には、昔から魔の森と呼ばれていて誰も近寄らない場所があるのを知っていますか?」
「はい。知っていますよ」
魔の森……この世界のどこかにあると言われている伝説の魔物がいると言われる危険地帯であり、そこは常に霧に覆われているため正確な場所は誰にもわからないと言われている場所である。
「その森の奥地にとても強いモンスターが出るらしいのですよ。なのでもし行くことがあれば注意するように言ってください」
「わかりました。覚えておきます」
その後少し雑談をして俺は別れた。
しかしこの時、俺は全く知らなかった。
この後に待ち受ける惨劇を……
~side:アイリス~
私はクランメンバーを引き連れて森の中に訪れていた。ここは魔獣の生息する場所でもあるが故に、普通は人が寄り付くことはほとんどないのだが、今日はある目的の為に訪れた。
私が今いるメンバーは私を入れて五名、みんな腕に自信のある猛者たちだ。
そして今から向かうのはこの近くにある遺跡の調査の為である。そこは数百年前からあるとされ、過去に一度調査が行われたが、何も見つからなかったとされている場所だ。
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