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109話

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「早速で申し訳ないが……これからの事を話そう」
そして俺たちは、近くの町へ向かうことにした。
(それにしても何なんだよこの状況……まるでファンタジー小説みたいじゃないか)
しばらく歩いていると、何かがこちらに向かってきていることに気づく。
(やべぇ……どうしよう……このままじゃ……戦うしか……)
「おい!逃げるぞ!」
俺がそう言うも、大木戸も桐谷も動こうとはしない。
「おいおい……冗談はやめてくれ……」
「いや、これは本気さ」
そう言って二人は前に出る。
「おい!なんでお前らが戦おうとするんだ!」
「だってさぁ?弱いやつが足を引っ張ったら大変でしょ?」
「まあ、そう言うこと」
どうする。どうしたら……
俺は迷う。だが
「仕方がない……こうなったら、お前らを先に殺す!!」
(こいつらは、仲間じゃない。なら遠慮する必要は無い)
そうして戦闘が始まった。
俺は二人に攻撃を繰り出すも、全く効いてない様子である。
「はぁー。真司の攻撃ってそんなもん?弱すぎない?」
大木戸の言葉にイラつきながらも必死に考える。
すると九条は口を開く。
「真司君。君はもうちょっと冷静に判断した方がいいよ」
その言葉を聞いた直後、俺は地面に押し倒される。
すると俺は剣のようなもので首を切られる感覚を覚える。
「ぐぁーーーー!!」
俺は激痛に叫び声をあげる。
そして意識が飛びかける。
(あー……ここで死ぬのか)
すると頭の中に聞き覚えのある声で
「まだ……諦めない……だろう?」
と言う声が聞こえてきた。
「誰……だ?」
すると今度は、はっきりと
「君の仲間だよ」
そう答えてくれた。
そして次の瞬間、視界が眩しくなり、次に目を開けた時には
「ようこそ。僕の……いや……俺たちの住処へ」
そこには、見知らぬ男が居た。
~真司が大木戸に殺されたあと~
「ふぅ……終わったよ。真司」
「これで……俺の復讐は終わるんだな?」
「そうだね……真司……僕は君と出会えて本当に良かったと思ってるんだ。だから、真司のことは忘れたくない」
「そうか……俺も同じ気持ちだよ。涼太」
そうして2人の少年はお互いの顔を見つめ合いながらキスを交わす。
こうして一人の男による壮大な復讐劇が幕を下ろしたのであった。
真司が異世界へ行ってから数日ほどたった頃、涼太にとあるメッセージが届く。
それは真司からの連絡だった。
内容は 真司が死んだ。
真司が死んでから数日後、涼太は優斗と一緒に学校へと来ていた。
(まさか、真司くんが来る前にこんな事になるなんて……)
真司の死の原因は大木戸である事は分かっている。しかし、真司を殺した相手についてはまだ分からずじまいだという事に優斗は不満を感じていた。
「あのー?どうかされましたか?」
すると担任の女性教師が優斗達に話しかける。
涼太達は事情を話すことにする。
そして全て話し終えたあと先生は泣き崩れてしまう。
(ごめんなさい……先生……)
そう思いながら優斗は教室を出て行くと涼太は優斗に声を掛けてくる。
「ねえ、優斗。この後時間ある?」
「うん。大丈夫だけど?」
涼太は優斗を連れて人気の無い所へ移動する。
そして周りに人が居ないことを確認すると優斗の方を向いて真剣な顔をしながら話し始める。
「実は優斗に相談したいことがあるんだけど……いいかな?」
「いいけど……何の話なの?」
「大木戸の事なんだ」
その名前を聞いて驚く。
「それってもしかして……大木戸君のこと?」
「ああ。そういえば言ってなかったね。あいつの名前は……大木戸健吾」
「え!?」
驚きを隠せない。
何故なら、大木戸とは小学校の頃の同級生だったからだ。
(どうして、彼がここに……でも今は)
「分かった。それで?何を相談したいの?」
「大木戸と仲直りがしたいんだ」
涼太が言った言葉に対して優斗は、少し考えながら答える。
「多分、無理だと思うよ?それにどうやって仲直する気?喧嘩別れとかじゃなくて完全に嫌われているんだよ?」
すると涼太は優斗に反論をする。
「そんな事ないと思う!大木戸はまだ僕たちのことを憎んでいるはず!」
優斗はその言葉で決心がついた。
「よし!わかった!協力する!」
「ありがとう!」
そうして2人は行動を開始する。
涼太と別れた後、まず最初にやる事は情報収集である。
(取り敢えずは、この世界について知らなくちゃいけない)
優斗は、パソコンを開きネットサーフィンを始めた。
(なるほど……ここは《エル・ダリス》って言う国で冒険者ギルドがあるのか……)
そうして色々と調べていると、気になる記事を見つける。
『謎の連続殺人事件』
そう題されたニュースに目が止まる。
(これは……どういう意味だ?)
内容を詳しく見てみるとどうやらここ最近になって急に人が襲われるようになったらしい。
(これはもしかしたら、僕達と同じ異世界から来た人間かもしれないな……)
そう考えた優斗は急いで、家を出る。
(今からだと遅くても6時前には帰れるか……よし!)
こうして、涼太と大木戸の和解作戦が始まろうとしていた。
「さて……ここからどうしようか……」
優斗は、大木戸の自宅へ向かっていた。
だが、住所を知らないため何処にあるのか分からない。
なので仕方なく聞き込みをすることにした。
「すみません……この辺で高校生ぐらいの男の子を見ませんでしたか?」
すると女性は答える。
「あぁ!それなら見たわよ!確かその子は……大木戸?って子の家に行くわね。何か用でもあるの?」
その質問に困ってしまう。だが、嘘をつくわけにもいかない。
「はい……そうなんです。大木戸君を探していて……」
「あらそう?なら早く行きなさい。あっちよ」
女性が指を指した方向に歩いて行く。するとそこには確かに大きな家が建っていた。
(これが……大木戸君の家……)
そう思ったが、今はそれよりも重要な事があると思い直す。
(さて……行こう)
そして家の中へ入ろうとする。すると後ろから声をかけられた。
「おい。あんた、何してる?」
優斗は声がした方を見るとそこには警察官らしき男性が居た。
「いや、僕は怪しい人じゃないですよ?」
優斗は焦ったような口調で言う。
「お前みたいな奴が怪しくないはずがないだろ」
優斗は完全に信用されていない様子だ。
(マズイ……このままでは警察のお世話になってしまう……仕方ない)
優斗は、懐に手を入れると一つの銃を取り出す。
「おい。それは……なん……だ?」
男は、優斗の手から現れた銃を見て動揺する。
それもそうだろう。
警官はモンスターに変化する。
「!?」
警官は一瞬にして、その場から離れる。
しかし優斗は引き金を引くことはせず、警官に向かって叫ぶ。
「僕のことを信じてくれますか?」
「……ああ。信じるよ」
「よかった……信じてもらえて。ところで一つお願いがあります。僕がここで起こった事件の真相を突き止めるまで、あなたが犯人ということにして欲しいのですが」
「は!?」
優斗は自分が知っている事を全部話す。
(この世界の人間が大木戸くんを……そんな事はありえない……一体どうなって……)
そうこうしている内に、他の警察が来る。
(不味いな……逃げるしかない)
そう思いながら逃げようとすると男が話しかけてくる。
「待ってくれ!俺からも頼んでみる。だから少しだけ時間をくれないか?」
優斗は少し考えるがすぐに答えを出す。
「わかりました。じゃあその時間の間に出来る限り調べてきてください。それともう一つ、これを渡しておきますね。僕との連絡先です」
そう言って男にスマホを渡す。
「ああ。必ず見つけ出してみせる!」
そうして優斗は大木戸の家へと向かっていった。
優斗は大木戸宅の前まで着くと早速、インターホンを押してみることにした。
「はーい!どちら様ですか?」
女性の声で返事があったので優斗は慌てて言い訳を言う。
「あ、あのですね……実は友達の涼太って子が来てないか見に来たんですよ」
「ああ、そういうことね!ちょっとまってて」
しばらく待っていると玄関の扉が開かれる。
「涼太君はいる?」
「それが……中で死んでいます」
「!?」
驚いてしまうが何とか平静を保つように努力する。
「それで……貴方はどうしてここに来たの?」
そう聞かれると優斗は何も考えずに来てしまったので誤魔化す事にした。
「あ、いや実は涼太に大事な話があって……」
「それなら本人に直接言ったらどうかしら?それに貴方も死んだらどう?」
グサッ
(え?)
バタッ
(ここはどこ?)
優斗は、目を覚ます。
辺りを見回すとそこは薄暗い場所だった。
優斗は自分の状態を確認しながら呟く。
(僕は刺されて殺されたはずだけど……)
すると近くから声が聞こえてきた。
「やあ、久しぶり」
「大木戸君!」
優斗の前には大木戸健吾の姿があった。
「どうして……生きているの?……へ?真司!?」
「あ、優斗……おかえり……いままでが異界での出来事……実際には俺らは死んでいるという訳では無い……シナリオだよ一種の」
そう言われてみると確かにここは死後の世界と言われても違和感が無い。
「そう……か。なら安心だな。大木戸君。今度こそ仲直りしないか?僕達はお互いに憎む必要なんて無かったんだと思う。だって僕達が喧嘩した理由は些細な事なんだから」
「そうだな……ごめん……優斗、真司。俺は自分のことを正当化してただけだったよ……本当に……ごめん」
「よし、これで和解だな!後は涼太か……」
そう言うと、突然、目の前の景色が変わる。
「これは……?」
そこには大木戸健吾の死体が横たわっていた。
「どうなっているの……?」
困惑しながらも、その光景を見ていると後ろから声を掛けられる。
「やっと起きたのか……優斗。随分寝ていたな……」
真司の声だった。そして真司の顔を見ると驚愕する。そこには傷跡が無かったのだ。つまり、この世界にはもうゾンビは存在しない事になる。
(これは……どういうことだ?一体何が起こってるんだ?)
その疑問の答えを聞こうとした時、視界に文字が現れる。
『大木戸のスキルを確認せよ』
そう書かれた後、再び景色が変わりそこには一人の男性が立っていた。
「こんにちは。君たち。僕は大木戸健人、この《エル・ダリス》の国王をしている者だ」
「あ、どうも……優斗です……」
戸惑いながらも挨拶をする。すると今度は別の文章が浮かぶ。
『優斗と大木戸のスキルの共通点を探し出しそれを大木戸に伝えることで大木戸の能力を優斗に譲渡することが可能になる。』
大木戸と優斗はお互いの顔を見る。
(これは大木戸の能力を調べる必要がある。その為にはまず……)
「あ、あのさ、健人と少し話がしたいんだけど良いかな?」
「ああ、勿論構わないよ。じゃあ少し移動するね」
そうして三人は別室に移動した。
「じゃあ早速だけど聞かせてくれないか?」
「ああ、何でも聞いてくれ」
「まずは、何故、僕の事を知っていたの?」
「実は俺達二人は昔から異世界転生に憧れてたんだよ。特に優斗はその傾向が強くてさ……よく小説なんかも書いていて凄かったんだぜ」
「へぇ~そんな風に思っててくれたんだね」
優斗が感心していると、再び視界に文字が表示される。
『共通項目が見つかりました。条件を満たしているためスキルが発動します。なおこの情報は他の二人に知らせる事が可能になります。これにより二人の能力は互いに交換されます。』
その表示が出た瞬間に大木戸は倒れ込む。だが意識はあるようだ。
「おい、大丈夫か?」
「ああ、なんとかね。それよりも、この世界のことについて色々分かったことがある。優斗は何か気づいたことは無いか?」
「えっと、大木戸君の能力と僕の能力が似ている気がする……とか?」
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