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146話

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グレンが答えた。
美鈴は、真剣な眼差しで言う。
「私たちも、協力させてもらってもいいですか?」
「いいのかい?」
「おーい!」
優斗が遠くから呼ぶ。すると、真司は返事を返した。
「はい!」
グレンは言う。
「お願いします!」
こうして、勇者討伐チームが結成された。
~~~~~~
「どこにもいねぇな……」
「おかしいですね……」
「そうだな……」
「どうする?」
「一旦戻るか……」
グレンが言うと、全員で戻ることにした。
その途中……
「ん?」
グレンは何かに気づいた。
すると、突然……
ドォーン!! 大きな爆発音が聞こえてきた。
「なんだ?」
「まさか……」
「おいおい……」
「急ぐぞ!」
グレンたちは、急いで音のした方へ向かった。
すると、そこには大きな穴ができており、煙が出ていた。
それを見たグレンたちは、嫌な予感がした。
「おい……これって……」
グレンが言うと、グレンたちはその場所へと向かった。
すると、そこには勇者の姿があった。
「お前らが新しい魔王だな」
「そうだ!俺は桐谷真司!」
「僕は、武井優斗!」
「「俺たちが新しい魔王だ。この世界を平和に導く存在なり!」」
それを聞いた勇者は、驚く。
「魔王が二人だと!?」
それを聞いたグレンは、呆れた様子で勇者に話しかける。
「はぁー……」
「俺らは魔王じゃねぇよ」
それを聞いて勇者は、少し動揺していた。
「魔王じゃない?どういうことだ?」
グレンは、勇者にこれまでのことを説明した。
「なるほどね……」
勇者は、納得したように言う。
そして、勇者はグレンに剣を向ける。
「なら、お前を倒せば問題ないな」
「やれるもんならやってみろ!!」
グレンは、聖属性の魔力を纏うと、高速で移動し、背後へと回り込むと、背中を斬りつけた。
だが、勇者には効かなかった。
「この程度か?」
「ちぃ……」
(こいつ……なんて硬さだ)
すると、魔王が勇者に攻撃を仕掛ける。
魔王は、闇属性の魔力を纏った拳で殴りかかる。
しかし、勇者は攻撃を軽々と避けて反撃に出る。
「遅い!!」
勇者は、攻撃を避けきれずにダメージを受けてしまう。
だが、それでも倒れることはなかった。
「くそが!!」
グレンが叫ぶと、勇者がこちらに向かってきた。
そして、グレンと美鈴に攻撃を仕掛けてくる。
二人は、回避しきれないと思い、防御魔法を使うが、勇者の攻撃は二人のガードを突き破り、ダメージを与える。
「がはっ!!」
「きゃぁ!!」
グレンと美鈴は、壁に叩きつけられた。
グレンと美鈴は、ダメージを負いながらも立ち上がる。
すると、勇者が追撃を仕掛ける。
グレンは、それをなんとか防いだが、美鈴は反応が遅れてしまい、攻撃を受けてしまった。
美鈴は、吹き飛ばされると、床に倒れる。
それを見たグレンは怒り狂い、勇者に襲い掛かる。
「よくも!!」
グレンは、魔剣を振り下ろす。
「くらえ!!」
その一撃は、勇者に直撃した。
「やったか?」
グレンは、そう思ったが、勇者は平然と立っていた。
「なに!?」
グレンは、驚いていた。
それは、美鈴も同じだった。
「どうして……」
「これが、魔王の力か……」
グレンは、すぐに距離を取ると、美鈴に言った。
「大丈夫か?」
「はい……なんとか」
美鈴は、立ち上がった。
グレンは、美鈴を守るようにして前に立つ。
「ここは、俺に任せてくれないか?」
「でも……」
「頼む……」
「わかりました……」
美鈴は、グレンの覚悟を感じ取り、任せることにした。
グレンは、美鈴の言葉を聞くとニヤリと笑みを浮かべた。
「サンキューな……」
グレンは、聖属性の魔力を纏うと、光速に近い速度で移動すると、勇者に攻撃を仕掛けるが……
パシッ!!
「なんだと!?」
グレンの攻撃を簡単に受け止めていたのだ。
(こいつ……さっきより強くなってやがる!)
グレンは、一旦距離を取ろうとするが、勇者はグレンを捕まえようとする。
「逃すかよ!」
グレンは、咄嵯の判断で美鈴を抱えて逃げる。
「おい!しっかり捕まってろ!」
「はっ、はい!」
グレンは、全速力で逃げた。
すると、勇者は追ってくることはなかった。
「なんなんだあいつ……」
グレンは、疑問を抱いていた。
すると、美鈴はグレンの腕の中から降りると言った。
「ありがとうございます……」
「気にすんな……」
「それで……これからどうしますか?」
「そうだな……まずは他の奴らと合流してから対策を練るか」
「そうですね……」
グレンたちは、他の仲間たちと合流するために行動を開始した。
~~~~~~
真司は、魔王クシャラドと戦いながら考えていた。
(こいつは強い……だけど……勝てる!)
優斗も同じように考えており、二人で同時に仕掛けることにした。
「行くぞ!」
「あぁ!」
優斗が魔王に斬りかかると、真司も同時に攻撃をする。
すると、魔王は二人に気づき、両手で受け止めた。
「何度やっても無駄だ!」
「どうだろうな?」
「俺たちのコンビネーションを見せてやるぜ!」
二人は、再び攻撃を仕掛ける。
優斗が右から攻撃を仕掛けると、魔王はその攻撃を左手で止める。
次に左真司が攻撃を仕掛けると、魔王は右手で止めた。
魔王は言う。
「ふん!この程度なのか!」
すると、魔王の体に異変が起きる。
魔王の体が再生していく。
「なに!?」
魔王の体を見ると、斬られたはずの傷口が塞がっていた。
それを見た真司は、焦り始めた。
(まさかこいつ不死身か!?)
魔王は言う。
「お前らは、この世界の魔王じゃねぇな……」
それを聞いた真司は、魔王に言う。
「俺たちは魔王じゃない」
魔王は、それを聞いて驚く。
「魔王じゃないだと!?どういうことだ?」
「俺たちは魔王を倒すために来た」
それを聞いた魔王は、笑う。
「ハハッ!面白い冗談を言うじゃねぇか」
魔王は、そう言うと、真司に攻撃してきた。
「ぐっ……」
「オラァ!!」
魔王は、さらに追撃を仕掛けてきた。
「くそ……」
「もう終わりか?ならこれで終いだ」
魔王は、魔剣を振るうと、衝撃波が発生した。
「うわぁー!!」
「きゃぁ!!」
それを見た魔王は、少し驚く。
そして、魔王の後ろには、美鈴がいた。
「なに!?」
魔王は、美鈴の存在に気づくと、すぐに攻撃を仕掛ける。
だが、魔王の攻撃は、美鈴に当たることなく空を切る。
魔王が攻撃を外すと、今度は魔王の後ろから衝撃が走った。
「なに!?」
魔王が振り返ると同時に、美鈴が攻撃を放った。
「くらえ!!」
美鈴が放った攻撃が直撃すると、魔王は吹き飛ばされる。
「がはっ!!」
そして、美鈴は魔王に追撃を仕掛ける。
「くらえ!!」
美鈴が、攻撃を放とうとすると、魔王が美鈴の腕を掴む。
「離せ!!」
「誰が離すかよ!!」
美鈴は、必死に抵抗するが、魔王の力には敵わず、そのまま投げ飛ばされる。
美鈴は壁に激突し、地面に倒れる。
「がはっ……」
(そんな……)
美鈴は、立ち上がろうとするが、ダメージが大きく動けなかった。
(このままでは……)
すると、そこにグレンが現れた。
「無事か?」
「グレンさん……すみません……私は足手まといにしかなれませんでした」
グレンは、美鈴に近づくと、美鈴を抱き上げる。
「大丈夫か?」
「はい……」
グレンは、美鈴に回復魔法をかける。
「癒光」
美鈴の傷が治ると、グレンは言った。
「ここは俺に任せてくれないか?」
「ですけど……」
「頼む……」
「わかりました……」
グレンは、美鈴にお礼を言うと、魔王に向かって行った。
「待たせたな……」
「てめぇ……」
魔王は、怒り狂ったように叫ぶ。
「よくもやりやがったな!!ぶっ殺してやる!!!」
グレンは、冷静な口調で言う。
「俺が相手だ……」
グレンは、剣を構えると、魔王に攻撃を仕掛けた。
グレンと魔王の戦いが始まった。
グレンは、魔王に攻撃を仕掛けると、魔王は避けることしかできなかった。
「くそが……」
魔王は、グレンの攻撃を防ごうとするが、グレンの攻撃を受けてしまい、ダメージを受けてしまう。
「がはっ!」
(なんだこいつ……さっきまでとは動きが違う)
魔王は、グレンの動きを見て、戸惑っていた。
(こいつ……さっきよりも強くなってやがる)
魔王は、グレンの一撃を受けるたびに、自分の体が壊れていくのを感じていた。
(まずいな……こいつを倒さないと俺は死ぬ)
魔王は、グレンを殺すために、攻撃するが、グレンはそれを防ぐ。
「くっ……」
(こいつの攻撃力は異常だ……)
魔王は、グレンに攻撃を仕掛けるが、グレンはそれを全て受け流す。
グレンは、反撃しようとするが、魔王は、それを察知するかのように、距離を取る。
「逃すかよ!」
グレンは、距離を詰めようとするが、魔王はグレンの視界から消える。
「なに!?」
グレンは、魔王を探すと、魔王はすでにグレンの背後に回っていた。
魔王は、グレンに攻撃を仕掛ける。
「死ね!!」
魔王は、魔剣を勢いよく振り下ろす。
すると、魔王の攻撃は空を切り、グレンの姿はなかった。
「どこへ消え……」
次の瞬間、魔王の体に異変が起きた。
「がはっ!」
魔王の体を見ると、無数の切り傷ができていた。
魔王は、そのことに動揺していると、再び魔王の体は切り裂かれる。
「ぐふっ!」
魔王は、なんとか耐えると、周りを見渡した。
すると、魔王の目の前にグレンが立っていた。
「なに!?」
「もう終わりか?」
魔王は、すぐに体勢を立て直すと、再び攻撃を仕掛けた。
「舐めるんじゃねぇぞ!!」
魔王は、連続で攻撃を仕掛ける。
「オラァ!!」
「無駄だよ……」
魔王の攻撃を、グレンは全て避けている。
「なに!?」
(こいつ……)
その後も魔王は、何度も攻撃を仕掛けるが、全く当たらない。
すると、グレンは魔王の後ろに回り込む。
「これで終いだ!」
グレンが、魔王に斬りかかろうとした時だった。
魔王は振り返りながら言う。
「甘いんだよ!!」
魔王は、グレンの攻撃を弾き返すと、そのまま蹴りを入れる。
「ぐはっ……」
「オラァ!!」
魔王は、さらに追撃を仕掛ける。
「くらえ!!」
魔王は、グレンに連続攻撃を与えると、グレンは膝をつく。
「ぐっ……」
「どうだ?もう終わりか?」
魔王は、余裕そうな表情でそう言うと、グレンは立ち上がる。
「まだ終わってない……」
「諦めろよ」
「それはできない……」
「そうか……なら終わらせてやる!!」
魔王は、グレンに襲いかかる。
「死ねえ!!」
魔王は、魔剣を振り下ろしたが、グレンはその攻撃を避け、魔王の懐に入ると、剣を突き刺す。
「終わりだ……」
グレンの攻撃が直撃し、魔王の胸からは血が流れ出す。
「ぐはっ!!」
魔王は、後ろによろけると、グレンは剣を構えて言う。
「これで最後だ……」
グレンが魔王にとどめを差そうとしたその時、グレンは何者かによって吹き飛ばされてしまった。
「何者だ?」
そこには、一人の男がいた。
男は、グレンを吹き飛ばすと、魔王を守るようにして立つ。
「貴様は何者だ?」
魔王がそう聞くと、男が答える。
「俺の名はジャックだ……」
魔王は、その名前を聞いて驚く。
「お前がジャックだと!?」
「そうだ……」
魔王は、驚きながらも質問をする。
「なぜここにいるんだ……」
すると、ジャックは答えた。
「この世界を救う為に来た」
それを聞いた魔王は、笑う。
「ハハッ!笑わせるぜ!!俺たちの世界を救おうとしている奴が俺を殺そうとしてるのか?」
「ああ、だが俺はお前を殺すつもりはない」
魔王は、少し困惑していた。
(どういうことだ?)
魔王は、疑問に思ったことを尋ねる。
「じゃあ何をするつもりだ?」
すると、ジャックは答える。
「俺は、お前たちを倒すだけだ」
「ふざけんなよ……」
魔王の怒りが頂点に達した。
「俺を殺すんじゃなかったのか?」
「殺すつもりはないが、倒すと言ったはずだ……」
「上等じゃねぇか!!」
魔王は、魔剣を構える。
「いくぞ……」
「来い……」
魔王とジャックの戦いが始まった。
魔王とジャックはお互いを睨み合う。
(こいつは強い……)
魔王は、内心焦っていた。
魔王は、ジャックの隙を伺うが、一向に見つけることができなかった。
(どうすればいい?)
魔王が考えていると、ジャックが話しかけてくる。
「お前の目的はなんだ?」
「そんなもん決まってるだろうが!!」
魔王は、声を上げると、魔王はジャックに向かって攻撃を仕掛けるが、ジャックはそれを避ける。
そして、ジャックは続けて言った。
「世界を支配でもする気か?」
魔王は、ジャックの言葉を聞くと、動きを止める。
「違うな……俺は人間を支配する気もないし、滅ぼすつもりもない」
「ならば、なんの為に戦う?」
「俺は……家族を殺したやつらを許さない……だから俺はそいつらを皆殺しにする」
「復讐か……」
「ああ、そうだ……」
魔王は、そう言うと、今度はジャックが口を開く。
「復讐は何も生まない……」
「うるせぇよ……」
魔王は、怒りに満ちた声で叫ぶ。
「俺はあいつらが許せない……殺さないといけないんだよ」
「本当にそれで良いと思っているのか?」
「なにが言いたい?」
「復讐はただの自己満足に過ぎない……」
「黙れ!!」
魔王は、剣を振ると、ジャックはそれを防ぐ。
「復讐する気持ちはわかる……だが……」
「くどい!!」
魔王は、ジャックを斬りつける。
「俺は、絶対に忘れない!!」
魔王は、剣を振って攻撃するが、全て防がれてしまう。
「クソッ!」
魔王の攻撃が通じないと悟った魔王は、距離を取る。
「なら、これならどうだ?」
魔王はそう言うと、魔王の周りに魔法陣が現れる。
「なに!?」
「消え失せろ!!」
魔王がそう言うと、魔法陣から炎の玉が無数に現れる。
「喰らえ!!」
魔王が手をかざすと、全ての炎の玉が、ジャックを襲う。
「くっ……」
ジャックは、なんとか避けようとするが、全てを捌ききれず、いくつか当たってしまう。
「ぐわぁ!!」
魔王は、その光景を見て、ニヤリとする。
「どうだ?まだ続けるか?」
魔王がそう言うと、ジャックは立ち上がる。
「なに!?」
「こんなものなのか?」
「バカな!?」
魔王が驚いていると、ジャックは、手を前に突き出す。すると、ジャックの手のひらに魔力が集まる。
「まさか!?」
「もう終わりにしよう……」
「やめろぉ!!」
魔王の叫びも虚しく、ジャックは、技を放つ。
「食らうがいい……闇黒砲!!」
ジャックの放った攻撃は、一直線に魔王に向かう。
「うおおお!!」
魔王は、なんとか避けようとしたが、間に合わず、直撃してしまう。
「ぐふっ……」
魔王は、そのまま地面に倒れ込む。
「終わりだ……」
ジャックが止めを刺そうとした時だった。
「まだ終わってない……」
魔王は、立ち上がりながら言う。
「なに……?」
「お前にはまだ負けられないんだよ!!」
魔王は、ジャックに殴りかかるが、ジャックは避ける。
「無駄だ……」
ジャックは、再び魔王を殴ろうとすると、魔王はそれを受け止める。
「ぐっ……」
魔王は、拳を握りしめると、ジャックの顔に一撃を入れる。
「ぐはっ……」
ジャックは、怯むと、魔王は蹴りを入れて、ジャックを吹き飛ばす。
「まだまだ!!」
魔王は、さらに追撃を仕掛けるが、ジャックは、それを避けて、反撃をする。
「爆音魔法 ハウリング」
「ぐっ……」
魔王は、ダメージを負うが、ジャックに向かって走る。
「これで最後だ!!」
魔王は、そう言うと、ジャックに向かって飛び上がる。
「いくぞ!!」
魔王は、ジャックに飛びかかろうとしたが、ジャックは冷静に対処する。
「光壁魔法 シャイニングウォール」
ジャックの前に光の障壁ができると、魔王はそれに激突する。
「なに!?」
魔王が戸惑っていると、ジャックが言う。
「終わりだ……闇極砲」
ジャックが技を放とうとしたその時、魔王がジャックの後ろに回り込み、背中に蹴りを入れた。
「なに!?」
ジャックは、体勢を崩し、攻撃を外してしまう。
「危なかったぜ……」
魔王は、ホッとすると、ジャックは、すぐに起き上がり、こちらを見る。
「なぜ動ける?」
「教えてやるよ……」
魔王は、ニヤリと笑うと、答えを言う。
「俺には回復能力があるんだよ」
「なに……?」
魔王は、自分の体に触れながら話す。
「俺の能力は再生と吸収……お前の体力を吸収したんだ」
「なるほどな……だがそれだけではないだろう?」
魔王は、笑みを浮かべる。
「さすがだな……」
「当然だ……」
魔王は、再び構える。
「次で決めるぞ!!」
「ああ……」
魔王とジャックの戦いは最終局面を迎える。
魔王とジャックの戦いは、お互いに譲らずにいた。
(このままじゃまずいな……)
魔王は、焦っていた。それは、ジャックも同じようであった。
(こいつを倒す手段がない……どうすれば……)
(どうすれば勝てる……?)
二人は、お互いを警戒していた。
(考えろ……考えるんだ……)
魔王は、必死に考えていた。そして一つの結論に至った。
(仕方ない……使うか……)
魔王は、決心すると、ジャックに向かって走り出す。
「来い……」
ジャックはそう言うと、迎え撃つ準備をした。そして、魔王が攻撃を仕掛けようとした瞬間、魔王は突然方向を変える。
「なんだ……?」
ジャックは疑問に思ったが、魔王は気にせず走る。
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