のほほん異世界暮らし

ルーセリックの苗を植える準備

帰宅して荷物を下ろすと、三匹はまだ市場の興奮から覚めない様子で部屋を走り回っていた。
しかし僕が「さあ、農場へ行くぞ」と声をかけると、一瞬で動きを止め、嬉しそうに尾を振り出す。

「よし、準備を始めよう。」

ルーセリックの苗を丁寧に箱から取り出し、その姿を改めて眺めた。葉の表面が独特の光沢を持ち、触れると少し弾力を感じる。不思議な生命力を感じさせる苗だ。

農場への荷物を整え、魔力式トラックに苗と農具を積み込む。三匹もいつものように助手席と後部座席に陣取り、出発の合図を待っていた。

農場に着くと、三匹はトラックから飛び降りて、いつものように元気に走り回った。シャズナは草むらで優雅に遊び、ルシファンは地面を掘り返し、リッキーは匂いを嗅ぎながら何かを探している。

「おいおい、あまり散らかさないでくれよ。これから植える場所が大事なんだからな。」

三匹の無邪気な動きに微笑みながら、苗を植える区画を整える。地面を耕し、ふかふかの土を作る作業は汗をかくけれど、土の匂いと触感が心地よい。

苗を一本ずつ間隔をあけて植える。土をかぶせ、根元にたっぷりと水を与えると、ルーセリックの苗はまるで応えるように葉をふるわせた。

「これで準備完了だな。元気に育ってくれよ。」

三匹も僕の作業をじっと見守っていたが、最後にシャズナが苗の周りをくるくる回りながら「にゃー」と声をあげた。それはまるで苗への祝福のようだった。

苗を植え終えた後、僕は休憩のために腰を下ろした。けれど、三匹はまだエネルギーを持て余しているらしく、今度は苗の間を駆け抜け始めた。

「こら！　まだ小さい苗なんだから、踏まないように気をつけろよ！」

ルシファンが植えたばかりの土を鼻で掘り返しそうになり、リッキーがルーセリックの葉をクンクンと匂いを嗅ぐ。そんな中でも、シャズナだけは苗に近づきすぎないように優雅に歩いていた。

「シャズナ、お前は本当にしっかり者だな。」

シャズナは僕の言葉に振り向き、誇らしげに尻尾をふった。それを見て、ルシファンとリッキーもようやくおとなしくなり、僕のそばに集まってきた。

夕日が農場をオレンジ色に染める頃、苗の植え付け作業は終わり、三匹と一緒にその様子を眺めた。新しい命が土の中で育ち始めることを思うと、不思議と胸が高鳴る。

「ルーセリックが育ったら、どんな料理に使えるだろうな？」

想像を膨らませながら、僕は三匹を撫でた。彼らも疲れたのか、リッキーは僕の足元に頭を乗せ、ルシファンは背中を向けてくっついてくる。シャズナは静かに座り、苗の方向を見つめていた。

農場での作業を終え、三匹とトラックに乗り込む。夕暮れの道を走る中、三匹は疲れて丸くなり、静かな寝息を立てていた。

「次に農場へ来るときには、苗が少し成長しているかもしれないな。」

静かな車内で彼らを見守りながら、新しい作物への期待と、三匹との穏やかな日々を心に刻む。どんな未来が待っているのか楽しみで仕方がなかった。