常夏の恋

夜色シアン

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Re:Memories of summer

常夏の恋-Re:Memories of summer-①

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「暑っつ~……」

 と彼は部屋の中で伸びつつ、その言葉を呟いた。それも今の季節は夏。記録的猛暑が続く常夏の季節の真っ只中だ。故に彼は……いや水無透也みずなしとうやは汗をダラダラと流しながら部屋の中で伸びていた。

「そうだ、扇風機……」

 この季節は家の中にいても相当な暑さが人を襲う過酷な季節。だからこそ少しでも長く涼まなければ簡単に熱中症を発症しかねなく、透也は扇風機を付けようと強ボタンを押すが、ビクともしない。暑さでやられてしまったのか、はたまたボロが来てしまったのか中ボタンや小ボタンなど何度ボタンを押してもやはりうんともすんとも言わない。

「まじかよ、なんでこんな時に……」

 なんでこんな時に……と扇風機が壊れたのは間違いなく自然現象で逆らうことなどできやしないが、短く溜息を吐きつつ近くにあったうちわで涼む。

 ーーその後うちわを仰ぎ続けた所で、あまりの暑さで喉が乾き急いで冷蔵庫へと向かう。だが開けてみればなんと中味は飲み物どころか食料も何も無かった。

「しまった……何も無い……」

 彼は暑さにより外に出たくないと、余計な体力を使いたくないと思い、出かけてなかった。それ故の失態だったが、こうなっては仕方なく買い物に出かけるしかなく、涼し気な部屋着のまま財布を持って最寄りのコンビニへと向かった。

「なんか久しぶり外に出た気がするな……」

 熱い日差しが差し込む外へと出ると、彼の家の中よりも暑く、歩くことがとても辛く感じる。

 だが、それで諦めてしまえば外に出た意味もなく、冷えた水も食料も何も無い状態で一日を過ごさなければならない。それに万が一明日もこの状態ならそれこそ困る。

 そんなのはゴメンだと彼は一歩、また一歩と歩みを進めて行くことにした。

 途中、やはり暑くて日陰で休んでいる野生の猫や犬を見つけるが愛でに行けば目的を忘れてしまう……いや、こんな暑い日に愛でれば逆に暑くなるだろうと、愛でたい気持ちを押さえ込み、的地へと一直線で向かって歩みを進めていた。

「やっほ、久しぶり!」

 最寄りの店までまだ距離がある中、暑くて朦朧としてきた彼の目の前に特徴的な白いワンピースを着て麦わら帽を被ったきめ黒く艶のあるショートヘアの少女が、陽炎の奥から現れた。

「幻覚に幻聴……?本当にやべぇな……」

「うわ、久しぶりに再開したらそれって……」

 と彼女はあたかも今にも倒れそうな透也を知っている口振りでその言葉をいうが、彼は彼女のことなど知らない。

 とりあえず朦朧としてきた頭を無理してなんとか考えるが、やはり彼女の名前は出て来ることは無く、失礼に当たるものの誰なのか聞こうとした直後。めまいが発生しその場に膝から崩れ落ちてしまう。

「って大丈夫!?」

 原因は軽い脱水症状と熱中症。普段なら水分補給をしっかりしていれば問題は無いが、出かける前に水を飲んでもこの暑さならば時間の問題。かれこれ十分以上は暑い日差しに晒されてるため、更に汗を流し、結果脱水症状が起きてしまったのだ。

「ねぇ!ちょっと!……とりあえず涼しい所に……よいしょ、よいしょ」

 意識を失いかけているが、親切な彼女は彼の重たい身体を日に当たらない場所へと引きづって運び寝かせた。

「ふぅ、重かったぁ……これで体調が良くなるといいけど」

 直急に彼の近くで正座すると自身の膝……いや太ももを枕代わりにと言わんばかりに彼の頭を太ももに乗せた。

 こんな街中で……と言いたいところだが彼らがいる場所は周りの人から見ても田舎だと言われる場所。だからこそ白昼堂々そんなことをしても案外見られることが少ないのだ。

 ーーそれから数刻の時が経つと、ようやく意識がハッキリとしてくる。

 だからこそ目の前には名も知らぬ白いワンピースを着た彼女の顔、そして大きくも小さくもない胸部が目に入る。

「ご、ごめん!!」

 下心はないと言えば嘘になるだろうが、彼にとって彼女は見ず知らずの人。さすがにずっと膝枕させてもらうのも限りなくやばいと察した彼は直ぐに起き上がる。

 しかし完全には体調が回復しておらず、立ち上がった瞬間再びふらついてしまう。それほどまでに症状が酷かったのだ。

 その様子に、心配したのか「大丈夫!?」と聞かれるがどう見ても大丈夫ではない。

「まったくもう……ダメだよ、ちゃんと水分補給とかしないとっ!透也はおっちょこちょいなんだから」

 透也のことを再び知っているかのような口調で話すが、彼もまた彼女のことは知らない。いや、知っていたとしても誰だか思い出す事が出来ないでいた。

「そうだ!飲み物買ってくるね!ちゃんと戻ってくるからここで待っててよ!」

「え、あ、あぁ……え?」

 ふらついた彼を心配してか、その言葉を言い放つとタッタッタッとどこかに走り去っていく。
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