セカンドライフ!

みなみ ゆうき

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本編

11.種あかしされました!

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「やだな~。そんな顔すんなよ~」


軽い口調でそう言う二階堂に対して、俺は完全に警戒モードだ。


俺の正体知ってるってどういうことだ?
まさか以前会ったことがあるとか?
今まで二階堂なんていう名字の同級生いたかな?


大急ぎで色々と考えを廻らせていると、二階堂がそんな俺を面白そうな表情で見ながら、あっさり答えを口にした。


神崎かんざき 颯真そうま、知ってるだろ?」

「……あ!」


知ってるもなにも颯真は俺の母親の柊子さんが勤めている会社の社長の息子で、俺の幼馴染だ。


そう言えばアイツ、中学からどっかの全寮制の学校に行ったはずだけど……。

──まさか。

俺はようやく二階堂が俺の正体に気付いた理由に合点がいった。


「颯真がいるっていう全寮制の男子校ってここか!」


男子校なんて興味がなかったので、俺はすっかり忘れていた。


当時颯真に一緒の学校に行こうと誘われた俺は、男ばかりの学校でしかも山奥にある全寮制の学校なんて冗談じゃないと言って断った。

俺はその頃から彼女がいたし、元々女の子が大好きだった俺は、男ばかりの環境なんて死んでも考えられないと思った覚えがある。

まさか三年後、自分が女関係で苦い思いをした挙げ句、ここに来てしまう羽目になるとは夢にも思っていなかった。


二階堂が俺の正体を知ってるってことは、もしかしなくても颯真が俺の転校のことをコイツに話していたということだ。

俺から颯真に連絡していない以上、柊子さん経由で颯真に連絡がいっていたということなのだろう。


──アイツ、俺から連絡しなかったこと怒ってんだろうな。

もし責められたら、前のスマホのアドレスを全削除したから颯真の番号も消えてしまったし、俺の番号も変わったから連絡の取りようがなかったと言っておこう。


颯真は気のいいヤツだが、俺が隠し事をしたり、話さないことがあったりするとすごく怒るのだ。

アイツは何故か昔から何でも俺の事を知りたがる不思議なヤツだ。

物心ついた頃から一緒にいると言っても過言ではないほど親密な付き合いをしてきた颯真は、中学になって自分が全寮制の学校に入って滅多に会うことがなくなっても、ほぼ毎日連絡をしてきた。

俺のほうは色々他に連絡するところが多くて忙しく、滅多に返事を返さなかったのだが……。

代わる代わる色んな女の子と付き合っている俺に、『いつか刺されるぞ』と苦言を呈してきたのも颯真だ。

颯真はちょくちょく連絡をくれるし、母親経由でよく噂話を聞くので結構頻繁に会ってる気になっていたが、よく考えてみたら中学入学から会っていない。


「二階堂って颯真と友達なのか?」

「俺、去年神崎と寮で同室だったんだよね。だから光希のことも神崎から聞いて知ってた訳。
今回噂の光希が転校してくるってんで、どんなヤツがくるんだろうって楽しみにしてたら、まさかの変装とは!ウケるわ~!!」


そう言いながら本人を前にしてついに大笑いし始めた。

完璧だと思っていた変装を『ウケる』言われると、物凄く恥ずかしい。

しかし、二階堂がそう言って笑ってくれたので、近寄りがたいインテリ眼鏡という印象が急に親しみやすいものに変わった気がして嬉しくなった。


「……笑うなよ。俺にも色々事情があるんだよ。 素のままじゃ目立つし」

「お、神崎の言ったとおり結構な自信家だな。是非ともその自慢の美貌を今度俺にも拝ませてくれ。
でもこの学校じゃ、その格好のほうが悪目立ちするぞ。 ここは自分の容姿を磨いていかに良く見せるかというセルフプロデュース能力も重要なんだ。見た目を気にしないヤツは自己管理が出来てないと見なされるからな」

「なるほど。納得。 それでやたらと見た目でどうこう言われた訳か……」


しかしそう言われたところで今更見た目を変えるつもりは毛頭ない。

自信家だと言われても、俺の見た目は本当に目立つのだからしょうがない。

騒がれるのも御免だし、何よりも東條に俺の事を知られるのが一番困る。

これ以上俺が変装していることを知られないように、颯真にもしっかり口止めしておかないと。

──後で会いに行って直接文句言ってやる!


そう考えたところで俺は颯真がどこのクラスにいるのかも、今の見た目がどうなっているかすら知らない事に気が付いた。

成長期の三年はさすがに長い。

もしかしたらどこかですれ違っても、俺のほうが颯真だって気付かないかも知れない。


──そうだ!二階堂に一緒に付いていってもらえばいいんじゃん。


「そう言えば、颯真ってクラスどこ?」

「神崎はSクラスだよ」


俺の記憶が確かならば、Sクラスとは、成績、家柄、容姿の3つが揃った特別な人間と、高等部からの一般の特待生しか在籍できない特別クラスだと入学案内に書いてあった気がする。


「それって、あの特別棟にあるとかいう選ばれた人間だけしか入れないクラス?」


俺の記憶違いかもしれないので、確認のためにあえてそう聞いてみた。


「そう。神崎はその選ばれた一員だ」


二階堂が誇らしそうな顔をしてそう言ったが、俺にはなんで二階堂がそういう気持ちになるのかよく分からなかった。


「Sクラスねぇ。あのサルが……」


颯真は大きな会社の社長の息子だが、アイツの母親が身体が弱かったため、その静養を兼ねて都心から少し離れた俺の地元に小さな颯真と一緒に住んでいたのだ。

俺と同じ公立の小学校に通っていて、当時は背が小さくて動きがすばしっこいことから皆にサルみたいと言われていた。

それが選ばれた人間しか入れないSクラスにいるとは驚きだ。

と言うことは、あの頃チビでサルだった颯真は、今はイケメンになっている可能性が高い。

颯真のところのお父さんも相当格好いいし、お母さんも儚げな美人だから遺伝子的にそうなっていても不思議じゃないんだろうが、サルの颯真しか知らない俺にはそう言われてもピンとこない。

俺が時の流れを感じてしみじみしていると、二階堂が呆れたような顔で俺を見ていた。


「……お前絶対人前でそんなこと言うなよ。神崎の親衛隊から制裁されるぞ」


この学校の事情が全くわからない俺は、普通に考えればツッコミどころ満載な言葉にどう反応したらいいのかわからず、半笑いで言葉を返してしまった。


「アイツ親衛隊なんて持ってんの!?なんの応援活動してるワケ?制裁って物資の流通でも止めんの?」


途端に二階堂の表情が残念な子を見るようなものに変わる。


「神崎のヤツ。厄介なこと押し付けやがって……」


ボソッと呟かれた一言に俺はちょっとムッとしてしまった。


「しょうがないだろ。来たばっかで何にもわかんないんだから」

「わかった。とりあえずお昼行こうぜ。歩きながら説明させてくれ。このままじゃ何も食べずに昼休みが終わりそうだ」


二階堂がそう言ってさっさと先に歩き出す。

俺は何がそんなに呆れられる事だったのか理解出来ないまま、二階堂に置いていかれないよう必死に後を追いかけたのだった。
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