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51.予期せぬ遭遇
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ようやく目眩が治まりうっすらと目を開けると、そこには超至近距離で王弟殿下の顔があった。
どうやら倒れる前に聞いたあの声の主は王弟殿下だったらしい。
しかもこの体勢って、もしかしなくても倒れそうになったところを抱き留められたってことだよね!?
これ、かなりマズい状況なんじゃ……。
状況を把握し青くなった私は慌てて身体を起こそうしたのだが、王弟殿下の力強い腕がそれを止めた。
「大丈夫?無理しないで」
そう言った王弟殿下の蕩けるような表情と砂を吐きそうな甘い声に、私は目の前にいるこの人をよく似た別人なんじゃないかと疑った。
だって、ロザリーとして最初に出会った王弟殿下は確かにこんな感じではあったが、アーサーとして出会った普段の王弟殿下は顔はいいけど口と態度が悪いチンピラのような人物なのだ。
とても同一人物とは思えない。……いや、思いたくない。
反応がない私のことをどう思ったのか、王弟殿下は心配そうな視線で私を見つめている。
そういえば、私。すっかり忘れてたけど魔法の効果ってどうなってるんだろう?
宿を出る前、クルトさんには絶対大丈夫だと太鼓判を押されたけど、イマイチ不安が残るんだよね……。
使った本人よりも魔力の高い人間には通用しないっていう話だけど、私自身自分の魔力がどの程度のレベルなのかよくわかっていないし、王弟殿下はあのカイル様が古代の魔術書と契約して魔力を底上げしないと敵わない相手らしいので持ってる魔力は相当強いと思うんだけど……。
恐る恐るすぐ目の前にある王弟殿下の顔を窺いみると、酷く魅力的な笑顔で私に微笑みかけてくれた。
うん。大丈夫みたいだけど、王弟殿下の真実を知った今となっては胡散臭さしか感じないな。
私は勝手に漏れそうになる渇いた笑いを必死に堪えると、さりげなく身動ぎして王弟殿下から離れようと試みる。
どうやら魔法は効いているらしいということはわかったが、これ以上直接身体に触れられていることが非常にマズいということを思い出したのだ。
今の私は『姿替えの魔法』で、見た目だけは完璧ボディの持ち主となっているが、それは所詮まやかしに過ぎず、実際に触れられてしまうと、まな板に鶏ガラボディだということが即座にバレてしまう。
「助けていただいてありがとうございました。もう大丈夫ですから」
暗に解放するよう求めると、王弟殿下は困ったような笑みをみせた後、壊れ物でも扱うかのような丁寧な動作で、私を近くにあったベンチへと座らせてくれた。しかも何故か王弟殿下も隣に座ってくる。
なんか距離が近いんですけど……。
私がさりげなく距離をとろうと少し腰を浮かせると、更に距離を詰めてきた王弟殿下に話し掛けられてしまった。
出来たら放っておいて欲しかったのに。
「急に私の目の前で倒れたから、驚いたよ」
完全に王子様モードで話しかけてくる王弟殿下に、最大級の警戒をしながら謝罪する。
「ご迷惑おかけして申し訳ございませんでした」
「迷惑だなんて思ってないよ。むしろそのお陰で君とこうして知り合えたのだから、運命に感謝しなくちゃね」
王弟殿下は逃がさないというつもりなのか、膝の上に重ねて置いていた私の手を取ると、歯の浮くような台詞をウィンク付きで平然と言ってのけた。
ホントに誰?この人……。もしかして、見た目そっくりな別人とかだったりして。
何者にも染まらない漆黒の髪に、憂いを帯びたような藍色の瞳。
確かに見た目は王弟殿下で間違いないのだが、目の前にいる人物と普段の姿とのギャップが凄すぎて脳が勝手に別人だと思い込もうとしているらしい。
最初にロザリーとして出会った時は確かにこんな感じではあったが、ここまで甘ったるい感じじゃなかった気がする。
……もしかしなくても、この見た目だからかな?
男の人って、美人でナイスバディな女の人好きだもんねぇ。
軽くジト目になっていると。
「名前聞いてもいいかな?」
王弟殿下は私の手を握りながらそう尋ねてきたのだ。
名前!?
驚いた私はつい王弟殿下をまじまじと見てしまった。
目があった瞬間、その藍色の瞳に宿る光が何かを期待するようなものに変わった気がする。
しまった……。そういえば、男の人としっかり視線を合わせるのって『あなたに気があります』のサインなんだっけ……。
私は失礼にならないようあくまでも恥ずかしがっている体を装って視線を逸らした。
「私のことはフレッドと呼んで下さい。
そしてあなたの名前を口にする権利を私にくださいませんか」
先に名乗られ、尚且つ催促されちゃいましたよ!……うーん。どうするべきか。
いくらこの姿の私が目の前にいる人物が王弟殿下だとは知らないことになっているとはいえ、王族相手に嘘を吐くのも気が引けるし、そもそも名乗れる名前など持ち合わせていない。
「わたくしの事は好きにお呼び下さい。……フレッド様」
「そんな他人行儀な言い方は悲しいな。私のことも様など付けずただフレッドと呼んで欲しい」
無難な答えを返したつもりが、王弟殿下には納得いただけなかったようだ。
は?いや、だって他人だし。そもそもこの姿の私とは初対面ですよね!?
そうは思ったもののジッと見つめながら微笑まれるとなんだか無碍に断るのも気が引ける。
「……フレッド……さん?」
さすがに王族を呼び捨てになど出来ません。
すると。
王弟殿下は嬉しそうな表情ではにかんだのだ。
今までみたことのないその表情に、私の脳内処理が追い付かずなんとコメントしたらいいのかわからない。
この人、誰ですかー!?
どうやら倒れる前に聞いたあの声の主は王弟殿下だったらしい。
しかもこの体勢って、もしかしなくても倒れそうになったところを抱き留められたってことだよね!?
これ、かなりマズい状況なんじゃ……。
状況を把握し青くなった私は慌てて身体を起こそうしたのだが、王弟殿下の力強い腕がそれを止めた。
「大丈夫?無理しないで」
そう言った王弟殿下の蕩けるような表情と砂を吐きそうな甘い声に、私は目の前にいるこの人をよく似た別人なんじゃないかと疑った。
だって、ロザリーとして最初に出会った王弟殿下は確かにこんな感じではあったが、アーサーとして出会った普段の王弟殿下は顔はいいけど口と態度が悪いチンピラのような人物なのだ。
とても同一人物とは思えない。……いや、思いたくない。
反応がない私のことをどう思ったのか、王弟殿下は心配そうな視線で私を見つめている。
そういえば、私。すっかり忘れてたけど魔法の効果ってどうなってるんだろう?
宿を出る前、クルトさんには絶対大丈夫だと太鼓判を押されたけど、イマイチ不安が残るんだよね……。
使った本人よりも魔力の高い人間には通用しないっていう話だけど、私自身自分の魔力がどの程度のレベルなのかよくわかっていないし、王弟殿下はあのカイル様が古代の魔術書と契約して魔力を底上げしないと敵わない相手らしいので持ってる魔力は相当強いと思うんだけど……。
恐る恐るすぐ目の前にある王弟殿下の顔を窺いみると、酷く魅力的な笑顔で私に微笑みかけてくれた。
うん。大丈夫みたいだけど、王弟殿下の真実を知った今となっては胡散臭さしか感じないな。
私は勝手に漏れそうになる渇いた笑いを必死に堪えると、さりげなく身動ぎして王弟殿下から離れようと試みる。
どうやら魔法は効いているらしいということはわかったが、これ以上直接身体に触れられていることが非常にマズいということを思い出したのだ。
今の私は『姿替えの魔法』で、見た目だけは完璧ボディの持ち主となっているが、それは所詮まやかしに過ぎず、実際に触れられてしまうと、まな板に鶏ガラボディだということが即座にバレてしまう。
「助けていただいてありがとうございました。もう大丈夫ですから」
暗に解放するよう求めると、王弟殿下は困ったような笑みをみせた後、壊れ物でも扱うかのような丁寧な動作で、私を近くにあったベンチへと座らせてくれた。しかも何故か王弟殿下も隣に座ってくる。
なんか距離が近いんですけど……。
私がさりげなく距離をとろうと少し腰を浮かせると、更に距離を詰めてきた王弟殿下に話し掛けられてしまった。
出来たら放っておいて欲しかったのに。
「急に私の目の前で倒れたから、驚いたよ」
完全に王子様モードで話しかけてくる王弟殿下に、最大級の警戒をしながら謝罪する。
「ご迷惑おかけして申し訳ございませんでした」
「迷惑だなんて思ってないよ。むしろそのお陰で君とこうして知り合えたのだから、運命に感謝しなくちゃね」
王弟殿下は逃がさないというつもりなのか、膝の上に重ねて置いていた私の手を取ると、歯の浮くような台詞をウィンク付きで平然と言ってのけた。
ホントに誰?この人……。もしかして、見た目そっくりな別人とかだったりして。
何者にも染まらない漆黒の髪に、憂いを帯びたような藍色の瞳。
確かに見た目は王弟殿下で間違いないのだが、目の前にいる人物と普段の姿とのギャップが凄すぎて脳が勝手に別人だと思い込もうとしているらしい。
最初にロザリーとして出会った時は確かにこんな感じではあったが、ここまで甘ったるい感じじゃなかった気がする。
……もしかしなくても、この見た目だからかな?
男の人って、美人でナイスバディな女の人好きだもんねぇ。
軽くジト目になっていると。
「名前聞いてもいいかな?」
王弟殿下は私の手を握りながらそう尋ねてきたのだ。
名前!?
驚いた私はつい王弟殿下をまじまじと見てしまった。
目があった瞬間、その藍色の瞳に宿る光が何かを期待するようなものに変わった気がする。
しまった……。そういえば、男の人としっかり視線を合わせるのって『あなたに気があります』のサインなんだっけ……。
私は失礼にならないようあくまでも恥ずかしがっている体を装って視線を逸らした。
「私のことはフレッドと呼んで下さい。
そしてあなたの名前を口にする権利を私にくださいませんか」
先に名乗られ、尚且つ催促されちゃいましたよ!……うーん。どうするべきか。
いくらこの姿の私が目の前にいる人物が王弟殿下だとは知らないことになっているとはいえ、王族相手に嘘を吐くのも気が引けるし、そもそも名乗れる名前など持ち合わせていない。
「わたくしの事は好きにお呼び下さい。……フレッド様」
「そんな他人行儀な言い方は悲しいな。私のことも様など付けずただフレッドと呼んで欲しい」
無難な答えを返したつもりが、王弟殿下には納得いただけなかったようだ。
は?いや、だって他人だし。そもそもこの姿の私とは初対面ですよね!?
そうは思ったもののジッと見つめながら微笑まれるとなんだか無碍に断るのも気が引ける。
「……フレッド……さん?」
さすがに王族を呼び捨てになど出来ません。
すると。
王弟殿下は嬉しそうな表情ではにかんだのだ。
今までみたことのないその表情に、私の脳内処理が追い付かずなんとコメントしたらいいのかわからない。
この人、誰ですかー!?
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