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52.理想の裏側
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さりげなく私の手を握り、理想の王子様モードの笑みを浮かべ、何かを期待するように熱い視線を送ってくる王弟殿下に危機感を感じた私は、重ねられたその手を振り払うと、脱兎のごとく逃げ出した。
これ以上の接触は絶対マズい。
万が一、私が魔法を使って変装していることがバレるのも充分マズいが、今の王弟殿下の態度が普段の私に対するものとあまりに違い過ぎて、イチイチおかしな反応しちゃいそうで本当にマズい。
今も物凄く挙動不審だと思うけど、これから先まだまだ王弟殿下と行動を共にするというのに、思い出す度、不審な態度とっちゃいそう……。
正直、こんな王弟殿下の姿を知ってしまうのって、秘密を覗き見してるようで恥ずかしい。
口を開けば罵詈雑言。態度は悪いし、酒癖も女癖も悪いというのが標準装備の王弟殿下が、美人でナイスバディな女の人相手だとこうも態度が変わるなんて、詐欺だよね……。
確かにロザリーとして出会った時の王弟殿下も優しそうな好青年風ではあったが、あそこまで甘い雰囲気を醸し出してはいなかった。
王太子殿下もそうだったけど、理想の王子様といわれてる人達の裏側を知れば知るほど、現実の残念さが浮き彫りになっていく。
それを知る度、もし今後素敵な人に出会って優しくされても、本当は何か問題がある人なのではないかと穿った見方をしてしまいそうだ。
そこまで考えてふと王太子殿下の言葉が脳裏を過る。
『キミにはもう一生嫁に行く予定はないんだから、そんな心配しなくても大丈夫だよ』
同時にあの時のキラッキラに輝く王子様スマイルを思い出し、自然と乾いた笑いが出た。
「……宿に戻ろっかな」
虚しい気分になった私は、適当な裏路地に入ると、すぐに『姿変えの魔法』を解除して本来の姿に戻った後、クルトさんの待つ宿へと戻ったのだった。
「おかえりなさい。随分と遅かったので道に迷ったか、具合が悪くなったのではないかと心配してました」
「申し訳ありません。ちょっと色々ありまして……」
クルトさんに王弟殿下との思いがけない遭遇を話すべきか迷っていると。
「おい、小僧。邪魔すんぞ。こっちにクルト来てるだろ」
予告も無しに当の本人が現れギクリとしてしまう。
思わず逃げ腰になる私に、クルトさんは何か察するものがあったのかポンポンと軽く頭を撫でると、優しく微笑みかけてくれた。やっぱりクルトさんは優しい。
「ノックくらいしてはいかがですか?病人がいるのですよ」
「あ?病人なんて言ってる割には元気そうじゃねぇか」
クルトさんの言葉を無視して王弟殿下はツカツカと私に歩み寄ると、ごく至近距離で私の顔を除き込んできた。
ギャーッ!!
私はそう叫んで逃げ出しそうになるのを必死に堪える。
今更ときめくなどということはないものの、さっきの今でこの状態は後ろめた過ぎて心臓に悪い。
私は一瞬にして青くなりながら、ぎこちなく目を伏せた。
「お前ホントに顔色悪ぃな。すぐ出てくから寝てろよ。起きてるから元気になったのかと思うじゃねぇか」
「……はい。お気遣いありがとうございます」
「アーサー、無理はしないほうがいいですよ」
クルトさんは明らかに様子のおかしい私をさりげなくベッドのほうへ行くよう促してくれる。
私は大人しくベッドに横たわり上掛けにくるまると、二人の話に耳を傾けた。
私に聞かれたくない話なら部屋を出て話すだろうから、問題ないよね?
「それで?アルフレッド様は私にどのような御用でしょう?」
「あ、そうだ。クルト。聞いてくれ。俺はついに出会ってしまったかもしれない」
「どういうことでしょう。ちゃんと説明していただけますか?」
突然始まった王弟殿下の脈絡もない話に、クルトさんが困惑している様子がその声の感じで伝わってくる。
私は出会いと聞いて、さっきの出来事なのではないかと思い、変に緊張してしまった。
「俺の呪いが効かない女が現れた」
「……それはまた」
王弟殿下の説明聞いてすぐに何の話か合点がいったらしいクルトさんは、感心したような相槌を打った後、何か言いたそうな顔で私のほうをチラリと見る。
あ、聞き耳たててたのバレてました?
それとも、その女性が私かもしれないって疑ってます?
でも呪いって……?
王弟殿下もクルトさんにつられるように私を見ると、途端にニヤリと口の端を上げた。
「なんだ?盗み聞きか?お前も女に興味が出てくる年頃だもんなぁ」
私は身体を起こすと、即座に否定する。
その女性というのが私のことなのかどうかは凄く気になるが、王弟殿下の女性関係に興味はない。
「……いえ。そういうことが気になったのではなく」
「お?もしかしてどんな呪いか聞きたいのか?」
呪われてる身としては是非ともその内容を教えてもらいたい。
私は期待を込めて頷いた。
「俺に掛けられた呪いはな、『どんな女でもひと目で虜にする呪い』だ」
その内容を聞いた途端、私はカイル様の契約の対価を聞いた時以上のガッカリ気分を味わった。
それって呪いっていうより、単なるモテ自慢ですけど。
真面目に聞いた私がバカでした。
「俺が口説けばどんな女もイチコロだぜ」
「……おモテになるようで何よりです」
最早なんとコメントしたらいいのかわからず、ジト目になりながら適当な相槌を打つ。
すると、クルトさんは呆れたようなため息を吐きながら王弟殿下に視線を向けた。
「アルフレッド様。これ以上は子供に聞かせる話ではありません。続きはお部屋で伺いましょう」
「……そうだな。悪い」
「アーサー。顔色がよくありません。我々はこれでお暇致しますのでゆっくり休んで下さい」
クルトさんは笑顔でそう言い残すと、ばつの悪そうな表情の王弟殿下を連れて部屋を出ていった。
これ以上の接触は絶対マズい。
万が一、私が魔法を使って変装していることがバレるのも充分マズいが、今の王弟殿下の態度が普段の私に対するものとあまりに違い過ぎて、イチイチおかしな反応しちゃいそうで本当にマズい。
今も物凄く挙動不審だと思うけど、これから先まだまだ王弟殿下と行動を共にするというのに、思い出す度、不審な態度とっちゃいそう……。
正直、こんな王弟殿下の姿を知ってしまうのって、秘密を覗き見してるようで恥ずかしい。
口を開けば罵詈雑言。態度は悪いし、酒癖も女癖も悪いというのが標準装備の王弟殿下が、美人でナイスバディな女の人相手だとこうも態度が変わるなんて、詐欺だよね……。
確かにロザリーとして出会った時の王弟殿下も優しそうな好青年風ではあったが、あそこまで甘い雰囲気を醸し出してはいなかった。
王太子殿下もそうだったけど、理想の王子様といわれてる人達の裏側を知れば知るほど、現実の残念さが浮き彫りになっていく。
それを知る度、もし今後素敵な人に出会って優しくされても、本当は何か問題がある人なのではないかと穿った見方をしてしまいそうだ。
そこまで考えてふと王太子殿下の言葉が脳裏を過る。
『キミにはもう一生嫁に行く予定はないんだから、そんな心配しなくても大丈夫だよ』
同時にあの時のキラッキラに輝く王子様スマイルを思い出し、自然と乾いた笑いが出た。
「……宿に戻ろっかな」
虚しい気分になった私は、適当な裏路地に入ると、すぐに『姿変えの魔法』を解除して本来の姿に戻った後、クルトさんの待つ宿へと戻ったのだった。
「おかえりなさい。随分と遅かったので道に迷ったか、具合が悪くなったのではないかと心配してました」
「申し訳ありません。ちょっと色々ありまして……」
クルトさんに王弟殿下との思いがけない遭遇を話すべきか迷っていると。
「おい、小僧。邪魔すんぞ。こっちにクルト来てるだろ」
予告も無しに当の本人が現れギクリとしてしまう。
思わず逃げ腰になる私に、クルトさんは何か察するものがあったのかポンポンと軽く頭を撫でると、優しく微笑みかけてくれた。やっぱりクルトさんは優しい。
「ノックくらいしてはいかがですか?病人がいるのですよ」
「あ?病人なんて言ってる割には元気そうじゃねぇか」
クルトさんの言葉を無視して王弟殿下はツカツカと私に歩み寄ると、ごく至近距離で私の顔を除き込んできた。
ギャーッ!!
私はそう叫んで逃げ出しそうになるのを必死に堪える。
今更ときめくなどということはないものの、さっきの今でこの状態は後ろめた過ぎて心臓に悪い。
私は一瞬にして青くなりながら、ぎこちなく目を伏せた。
「お前ホントに顔色悪ぃな。すぐ出てくから寝てろよ。起きてるから元気になったのかと思うじゃねぇか」
「……はい。お気遣いありがとうございます」
「アーサー、無理はしないほうがいいですよ」
クルトさんは明らかに様子のおかしい私をさりげなくベッドのほうへ行くよう促してくれる。
私は大人しくベッドに横たわり上掛けにくるまると、二人の話に耳を傾けた。
私に聞かれたくない話なら部屋を出て話すだろうから、問題ないよね?
「それで?アルフレッド様は私にどのような御用でしょう?」
「あ、そうだ。クルト。聞いてくれ。俺はついに出会ってしまったかもしれない」
「どういうことでしょう。ちゃんと説明していただけますか?」
突然始まった王弟殿下の脈絡もない話に、クルトさんが困惑している様子がその声の感じで伝わってくる。
私は出会いと聞いて、さっきの出来事なのではないかと思い、変に緊張してしまった。
「俺の呪いが効かない女が現れた」
「……それはまた」
王弟殿下の説明聞いてすぐに何の話か合点がいったらしいクルトさんは、感心したような相槌を打った後、何か言いたそうな顔で私のほうをチラリと見る。
あ、聞き耳たててたのバレてました?
それとも、その女性が私かもしれないって疑ってます?
でも呪いって……?
王弟殿下もクルトさんにつられるように私を見ると、途端にニヤリと口の端を上げた。
「なんだ?盗み聞きか?お前も女に興味が出てくる年頃だもんなぁ」
私は身体を起こすと、即座に否定する。
その女性というのが私のことなのかどうかは凄く気になるが、王弟殿下の女性関係に興味はない。
「……いえ。そういうことが気になったのではなく」
「お?もしかしてどんな呪いか聞きたいのか?」
呪われてる身としては是非ともその内容を教えてもらいたい。
私は期待を込めて頷いた。
「俺に掛けられた呪いはな、『どんな女でもひと目で虜にする呪い』だ」
その内容を聞いた途端、私はカイル様の契約の対価を聞いた時以上のガッカリ気分を味わった。
それって呪いっていうより、単なるモテ自慢ですけど。
真面目に聞いた私がバカでした。
「俺が口説けばどんな女もイチコロだぜ」
「……おモテになるようで何よりです」
最早なんとコメントしたらいいのかわからず、ジト目になりながら適当な相槌を打つ。
すると、クルトさんは呆れたようなため息を吐きながら王弟殿下に視線を向けた。
「アルフレッド様。これ以上は子供に聞かせる話ではありません。続きはお部屋で伺いましょう」
「……そうだな。悪い」
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