異世界転移した現役No.1ホストは人生設計を変えたくない。

みなみ ゆうき

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本編

57.情感

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さて、鬼が出るか蛇が出るか。

さすがにそんな物騒なことにはならないと思うけど、どんな能力が覚醒するのやら。

出来ることならエレナさんみたいにステータス確認とか出来る能力が欲しいんだけど。
そうすれば俺自身のスペックもわかるし、オレールの時にどんな能力が覚醒したのかもわかるもんな。


俺はちょっとだけ期待に胸踊らせつつ、ベッドルームに移動すると、素早く自分に浄化の魔法をかけた。
ここのところずっと気絶状態からのスタートだったため、自らそんな真似をするのは男娼時代以来のことだ。

本来だったらシャワーを浴びて、念入りに男を迎えいれるための準備を施したほうがいいんだろうけど、宰相様も忙しいため、今はその時間が勿体ない。
なので自分でローション仕込みながら、フェラで勃たせてすぐ挿れる感じにしようかと思ってたんだけど。


「……コウキさん、貴方は一体何をしてらっしゃるのですか?」


毛足の長い絨毯の上に跪き、宰相様のズボンに手を掛けたところで訝しげにそう訪ねられてしまった。


「何って、宰相様のを口でしようかと」


途端に宰相様が渋面を作る。

もしかして、口でされるのに抵抗がある、とか?

この世界じゃまずやらない事らしいし、貴族の中には前戯自体面倒だと考える人間もいるって話だし。

以前『月下楼』のオーナーであるアシュリーに教えてもらったこの世界の一般的なセックスは、抱く側が適当に相手の穴を解した後、自分のチンポを扱いて勃たせたらすぐに挿入し、ひたすら腰ふって自分がイッたら終わりっていうお粗末なものだった。

まさか宰相様もその部類だった?

それならそれで時間の短縮になるし、過程がどうであろうと、俺はとりあえず中出ししてもらえばそれでいいんだけど。

さて、どうすんの?

暗にそう尋ねる意味で、上目遣いに宰相様を見つめる。
宰相様は俺の頭を優しく撫でながらも、眉間の縦皺を深くした。


「コウキさん。貴方にとっての性交とは?」


思いがけない質問に、俺は少しも考えることなく口を開く。


「何かを得るための手段、ですかね? 宰相様は?」


まさか『愛を確かめあうもの』だとか言われたらどうしようなんて、絶対あり得ないことを想定しながら質問を返すと。
宰相様は、さっき俺をセドリックのところに迎えに来た時のように、うっかり見惚れそうになるほど麗しい笑みを湛えた。

そして。


「必要に駆られてするもの、といった感じでした。──今までは」


片膝を着き、俺と目線を合わせると唇に軽くキスを落としてくる。
予想外過ぎる展開に、俺は一瞬固まった。


「ですが、今日に限っては、情緒というものを大事にしたほうが良いのではないかと思いまして」


宰相様は甘い声で囁くと、半ば呆然とする俺をあっという間に抱き上げ、ベッドに横たえたのだった。




「運命に引き摺られたくはないと思っていたのですがね……」


俺の服を脱がせながら困ったように笑う宰相様から目が離せない。

誰だ……?この人。この表情とか口調とかまるっきり別人じゃん!
しかもこの言い方って、まさか……。

脳内にさっき聞いたばかりの『血に課せられた運命』の話が甦る。


それってやっぱり宰相様も、実は『勇者である俺』に好意を持ってるってことだよな?

だったら今までの腹黒全開の態度はなんだったのかと首を傾げたくなるけど、それが宰相様の標準仕様なのだろう。

ツンデレ。若しくは俺は決められた運命になんて従わないぜ!っていう感じだったとしても、自分の意思とは関係なしに好意を抱く羽目になるなんて、俯瞰で物事を捉え、常に他人を自分の手のひらの上で転がしておきたいタイプの人には結構な屈辱だったんじゃなかろうかと推察できる。


だってさ、無条件に好意を抱き、助けになりたいと思うなんて、その気になれば王族に宰相の家系っていう国の要をいいように扱える可能性があるってことじゃん。

だからおそらくこの『運命に抗えない気持ち』ってやつは宰相様の持ち札の中でも最もきりたくないカードだったと思うんだ。

それをこの国の未来を守るために差し出してきた潔さは賞賛に値する。

たぶんこれって、『ジェローム・バートランド』個人として、俺、『宇佐美高貴』個人への信頼の表れなのかなとも思うけど。


宰相様は俺に覆い被さると、再び唇を重ね、深いキスを仕掛けてきた。
俺も黙ってそれに応えると、最初で最後となる『ジェローム』との密接な時間に身を委ねた。



◇◆◇◆



「ん…ッ……、そこ…ッ…、そんなにされたら、すぐイクって……!」

「フフッ……、いくらでもイッて下さい。魔力のことを気にされてるなら問題ありませんよ。減った分はすぐに私の口付けで補充して差し上げますし、なんなら体力のほうも回復魔法を使えばいいのですし。それにほら、私の口内にコウキさんの精を放っていただければ私も魔力の補給が出来て良いことづくめです」

「ぁ…は…ッ……、そういうんじゃ、なくて…ッ…!」


宰相様の場合、それ洒落になんねぇから!
さっきの甘い展開は何だったのかと思うほど、宰相様の腹黒仕様は如何なく発揮されようとしている。


俺は今、裸でベッドに仰向けに寝転がりながら宰相様から一方的に愛撫を受けてる状態だ。

ベッドで重なりあいキスをした後、時間を惜しむかのようにすぐに後孔へと伸ばされた手に、この人もやっぱりこの世界の一般的なセックスがお好みなのかと思ったら。

まずはこの客室にも常備されてた『月下楼』でも使ってる最高級の媚薬入りローションを後孔内に仕込まれ。
その後媚薬の効果がじわじわと出始めるまでひたすら全身を舐めつくされた。──それこそてっぺんから爪先まで。

媚薬の効果が出始めた頃合いになると、乳首を指で弄ばれながら、チンポを舐められ咥えられ。奥が疼いて仕方がなくなってからは、パクパクと物欲しそうに口を開いている穴をわざと避け、その周辺ばかりを重点的に舐められた。

そしてやっと後孔に指が入れられたと思ったら、それこそじっくりと内部の感触を確かめるかのように指の腹で擦られ、かき混ぜられ。
今は指を二本入れられながら敏感な凝りをグリグリと刺激され、もう片方の手で屹立を擦られている状態だ。

──正直この人がここまでするとは思わなかった。

宰相様にとってセックスは必要に駆られてするものだって言ってたじゃん!気乗りしないヤツがここまでしないだろ。普通。
絶対コイツ、ムッツリだ。腹黒ムッツリ宰相だ。

しかも早く挿れて終わらせて欲しいと懇願しないと、エンドレスでイカせ続けられそうな気がするし、そのお願いにしても果たしてタダで済むのか俄然怪しくなるような攻めっぷり。
さっき宰相様に対して抱いた、センチメンタルな感情を全部返して欲しいとすら思ってしまう。

俺は密かに悪態を吐きながら必死に快感を逃がす努力をしていた。


「ん…ッ…、さっき、情緒を大事にしたほうがいいって、言いませんでしたっけ……?」

「それはもちろん。だからこうしてコウキさんの反応を私の全てでじっくりと楽しませていただいております。
コウキさんの身体は受け入れる側の天性の素質みたいなものがあるのでしょうか? ほら、もうすっかり内部が柔らかくなって、まるで男を誘うように蠢いていますよ」

「あぁぁ…ッ…!」


危うくイキかけてなんとか根性で凌いだ。

クソッ!絶対ェ、すぐ挿れさせて、一回で終わらす。
──プロ、ナメんなよ。


「全部で楽しんでるなんて意地悪だな……。肝心なとこに俺の欲しいモノはくれないくせに……。 それとも俺に言わせるつもり?
──ジェロームの全てで俺を味わって欲しいって」


拗ねたようにそう言えば、宰相様は驚いたように目を見開き全ての動きを止めた。
その隙になんとか上体を起こした俺は、より一層脚を大きく拡げ、俺の内部に穿たれていた宰相様の手に自分の手を添えた。


「もう指だけじゃ物足りない……。ジェロームの、俺の中にちょうだい……」


男娼時代に培ったリップサービスと、男をその気にさせる恥じらったような表情と媚びた仕草を駆使して、さも切羽詰まったかのような感じで宰相様に訴えかける。

宰相様はそれの真意を見極めようとしているのか、じっと視線を合わせてから軽くため息を吐くと、ゆっくりと指を引き抜いた。


「ぁ…んッ…」


そしてすぐに宰相様の剛直が、まだ閉じていない俺の尻穴にあてがわれる。


「コウキさん。貴方という人は本当にたちの悪い人なのですね……」

「ん……」

「これが演技だとわかっていても、こちらはいともあっさり惑わされるし煽られるのですから」


ゆるゆると入り口付近だけを浅く抜き差しされるという、どう考えても焦らされているとしか思えない動きに堪らず腰を揺らすと、宰相様が一気に腰を進めてきた。


「あぁぁ…ッ…、んんッ…! は…ぁ……」


身体が無理に押し開かれる圧迫感と、欲しかったものが与えられ満たされる充足感に俺は大きく息を吐き出す。

宰相様は俺の内部の感触を確かめるように数度抽挿を繰り返すと、徐々にスピードをあげ、激しく腰を打ち付けてきた。


「ぁあ…ッ…!は…ぁ…、ん…ッ…!あ…ッ…、ぁん…ッ…」


こうなれば俺はもう演技する必要もなく、ただ快感を追い求めればいい。

俺は両手を伸ばし身体を密着してくれるよう促すと、身を屈めた宰相様に自分から抱きつき、その唇を塞ぎにかかった。
すかさず舌を絡ませ口腔内を貪る。

宰相様は積極的に俺の動きに応えてくれながらも、抽挿を疎かにすることなく、内部にある俺の感じるポイントをしっかりと刺激しながら腰を振る。
情けなくもすっかり蕩かされた俺の身体はすぐに限界を迎え、今度は一刻も早い解放を求めて切なく震え出していた。


「も、ダメ…ッ…、早く…なかにだして…ッ…!ジェローム…!」


堪らず懇願すると、宰相様は眉間の縦皺を深くし熱の籠った眼差しで俺を見つめながらより一層大きく腰を打ち付け、欲望の証を俺の最奥へと放ってくれた。

俺は宰相様の熱い迸りを身の内に感じた後、内心かなりホッとしながらも、自身の欲望を解放するため一気に高みへと上り詰めた。
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