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2.思い出したはいいけれど……
しおりを挟むあらためまして。
私の名前はメリンダ・バンフィールド。
前世の名前は佐倉ののか。
これが二度目の人生だってことにさっき気付いたばかりの元日本人。二度目の人生が始まってるってことは一度目はすでに終わったってことなんだろうな……。いつどうやって人生の終わりを迎えたのか全く覚えてないけど。
前世は共働きの両親と妹の四人暮らしで、ちょっとおしゃれを頑張れば『かわいいね』と言われる程度の普通の容姿。恋人はいたことなかったけど、仲の良い友達はちゃんといる普通の大学生だった。
地元の私立大学に通い、無事地元の企業に就職も内定してて。
本当に山も谷もない穏やかな人生を送っていたのだ。
趣味はゲーム。ジャンルにこだわらず面白そうだと思うものはひととおりやってみるってことをしていて、友人達からはよく節操なしと言われていたけど、面白いものにジャンルの壁なんてないと思うんだよね。実際全部面白かったし。
地元のスーパーでレジ打ちをして稼いだバイト代はほぼゲームの購入資金や課金に使っているほどのゲーム好き。
キャラクターのレベルばかり高くて女子力は低いって妹に馬鹿にされることもあったけど、自分的には充実した日々だったから後悔はしていない。
私には五歳離れた妹がいた。その妹の趣味もゲームだったのだが、妹の場合は乙女ゲーム限定。
私があんまりやらないジャンルだったけど、妹に付き合わされてゲームを見たり、時にはスチルコンプのために妹の好みじゃないキャラクターを代わりに攻略したり。
全エンドコンプで表示されるQRコードを読み込むと、キャラクターを演じている声優さんによる特別ボイスが聞けるっていう特典のために買ってはみたものの、ストーリー展開があまり好みじゃないっていう理由で私が全部進めたこともあった。
まさにそのゲームこそが今回の人生で私の夫となったヘンリー・バンフィールド辺境伯の息子であるアーネストが登場するゲーム。
タイトルも他のキャラクターの名前すら思い出せないけど、攻略対象者が全員トラウマ持ちっていう設定だけは覚えてる。
物語は平民の主人公が入学した王立学園で繰り広げられ、最初攻略対象全員から全く相手にされなかった主人公がふとしたきっかけで相手のトラウマを知り、そこから秘密の共有をすることで仲良くなり、最終的には相手からの愛の告白でハッピーエンドというもの。
正直言ってこのゲーム、全くもって興味が持てず、ネットで攻略方法を調べながら進めてたし、選択肢以外の文章は全部スキップ機能を使って読み飛ばしていたために途中の展開なんてさっぱりだ。
攻略キャラクターは王太子、宰相の息子、騎士団長の息子、隣国の王子、商人の息子、裏社会のボスの息子、担任教師っていう王道な設定。
アーネストは主人公の学校に勤める教師で、二周目から攻略できる隠しキャラ。
ただの平民の教師だと思ってたら実は辺境伯で主人公は玉の輿コースっていう。
実際アーネストは去年学園を卒業しているにもかかわらず、領地に戻って来ることはなかった。それどころか、ひとり息子だというのに領地経営を手伝うこともなく、母校の教師になるといって、現在学園に併設されている専門機関で教師の資格を得るために勉強中なのだ。
そんな状態なので、私がバンフィールド辺境伯のもとに後添えとして嫁いだ時も、お祝いの言葉どころか手紙のひとつも来ることはなかった。実際こんな事がなかったら一生会うこともなかったかもしれないっていうくらい全く存在感もなかったのに。
夫の死も私が追い出されるのもゲームの展開どおりだって言われたらそれまでだけど、今の私にとってはこれが現実。
さっきは前世の記憶が戻ったせいで『ののか』のほうの意識に思いっきり引っ張られてしまったけど、メリンダとしての私は、夫を亡くして胸が張り裂けそうなほど悲しいし、あんな事を突然言われて絶望感しかない。
これからどうしよう……。
ゲームの中の私はどうしたんだろう……?
せめてモブとして出てきていれば、この先の展開がわかるのに……。
──まあ、ゲームの内容すらほとんど覚えてない状態なのに、メイン以外にどんな人がいたかなんて、わかるわけないんだけどね……。
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