うろ覚え乙女ゲームの世界に転生しました!モブですらないと思ってたのに……。

みなみ ゆうき

文字の大きさ
2 / 40

2.思い出したはいいけれど……

しおりを挟む

あらためまして。

私の名前はメリンダ・バンフィールド。
前世の名前は佐倉ののか。

これが二度目の人生だってことにさっき気付いたばかりの元日本人。二度目の人生が始まってるってことは一度目はすでに終わったってことなんだろうな……。いつどうやって人生の終わりを迎えたのか全く覚えてないけど。

前世は共働きの両親と妹の四人暮らしで、ちょっとおしゃれを頑張れば『かわいいね』と言われる程度の普通の容姿。恋人はいたことなかったけど、仲の良い友達はちゃんといる普通の大学生だった。

地元の私立大学に通い、無事地元の企業に就職も内定してて。
本当に山も谷もない穏やかな人生を送っていたのだ。

趣味はゲーム。ジャンルにこだわらず面白そうだと思うものはひととおりやってみるってことをしていて、友人達からはよく節操なしと言われていたけど、面白いものにジャンルの壁なんてないと思うんだよね。実際全部面白かったし。
地元のスーパーでレジ打ちをして稼いだバイト代はほぼゲームの購入資金や課金に使っているほどのゲーム好き。
キャラクターのレベルばかり高くて女子力は低いって妹に馬鹿にされることもあったけど、自分的には充実した日々だったから後悔はしていない。


私には五歳離れた妹がいた。その妹の趣味もゲームだったのだが、妹の場合は乙女ゲーム限定。
私があんまりやらないジャンルだったけど、妹に付き合わされてゲームを見たり、時にはスチルコンプのために妹の好みじゃないキャラクターを代わりに攻略したり。

全エンドコンプで表示されるQRコードを読み込むと、キャラクターを演じている声優さんによる特別ボイスが聞けるっていう特典のために買ってはみたものの、ストーリー展開があまり好みじゃないっていう理由で私が全部進めたこともあった。

まさにそのゲームこそが今回の人生で私の夫となったヘンリー・バンフィールド辺境伯の息子であるアーネストが登場するゲーム。
タイトルも他のキャラクターの名前すら思い出せないけど、攻略対象者が全員トラウマ持ちっていう設定だけは覚えてる。

物語は平民の主人公が入学した王立学園で繰り広げられ、最初攻略対象全員から全く相手にされなかった主人公がふとしたきっかけで相手のトラウマを知り、そこから秘密の共有をすることで仲良くなり、最終的には相手からの愛の告白でハッピーエンドというもの。

正直言ってこのゲーム、全くもって興味が持てず、ネットで攻略方法を調べながら進めてたし、選択肢以外の文章は全部スキップ機能を使って読み飛ばしていたために途中の展開なんてさっぱりだ。

攻略キャラクターは王太子、宰相の息子、騎士団長の息子、隣国の王子、商人の息子、裏社会のボスの息子、担任教師っていう王道な設定。

アーネストは主人公の学校に勤める教師で、二周目から攻略できる隠しキャラ。
ただの平民の教師だと思ってたら実は辺境伯で主人公は玉の輿コースっていう。


実際アーネストは去年学園を卒業しているにもかかわらず、領地に戻って来ることはなかった。それどころか、ひとり息子だというのに領地経営を手伝うこともなく、母校の教師になるといって、現在学園に併設されている専門機関で教師の資格を得るために勉強中なのだ。

そんな状態なので、私がバンフィールド辺境伯のもとに後添えとして嫁いだ時も、お祝いの言葉どころか手紙のひとつも来ることはなかった。実際こんな事がなかったら一生会うこともなかったかもしれないっていうくらい全く存在感もなかったのに。


夫の死も私が追い出されるのもゲームの展開どおりだって言われたらそれまでだけど、今の私にとってはこれが現実。

さっきは前世の記憶が戻ったせいで『ののか』のほうの意識に思いっきり引っ張られてしまったけど、メリンダとしての私は、夫を亡くして胸が張り裂けそうなほど悲しいし、あんな事を突然言われて絶望感しかない。


これからどうしよう……。

ゲームの中の私はどうしたんだろう……?

せめてモブとして出てきていれば、この先の展開がわかるのに……。


──まあ、ゲームの内容すらほとんど覚えてない状態なのに、メイン以外にどんな人がいたかなんて、わかるわけないんだけどね……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...