僕と君は想ってる

天野睡

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君も想う

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文化祭の日姉さんが完全復活した。簡単に言うと、鎮静剤が切れたのだ。
「お姉ちゃん。」
僕は姉に抱きつく。
「よしよし。」
「お姉ちゃん。」
僕は人目を気にせず泣いてしまう。
「辛かったよ。寂しかったよ。」
「ごめんなさいね。ずっと寂しい思いをさせて。」
あの頃の優しい姉さんだった。
そこから十分間そんな状態だった。
「姉さんここ一年のことどれぐらい覚えてる?」
泣き止んだ僕は美琴の気持ちがよく分かった。
なんか恥ずかしい。
しかし、そんなことを言うわけにもいかず、僕は質問をした。
「未琴の話全部覚えてるわ。」
「そうなんだ。」
姉さんと話せてる。
多分僕の顔は緩みっぱなしだと思う。
「そういえばお友達が増えたんだって。」
「うん。また改めて紹介するよ。」
楓も紹介しようと。
「検査の結果、異常な所はなく、問題ないそうです。ただもう少し詳しい検査を行うらしいのでもう少し入院の必要があるようです。」
美智子さんが教えてくれた。
「一度家に帰り琴美さんの着替えなどを持ってきます。」
ガラガラガラガラ
僕と姉さんの二人きりになった。
そこからは姉さんとずっとお話した。
「未琴。文化祭どうだったの?」
「売り上げ二位に落ちちゃった。」
「そう。それは残念だったわね。」
話のネタは尽きなかった。
「ふわぁーー。」
「眠たくなった。」
疲れや緊張や心配があったからかいつもより眠たい。
「大丈夫。」
まだ話していたい・・・。
「うぅぅ。」
どうやら眠ってしまってたらしい。
「お姉ちゃん。」
「なーに?」
どうやら膝の上で寝ていたらしい。
ガラガラガラガラ
「琴姉!」
鈴花がやって来た。
「鈴ちゃん。」
「琴姉。」
鈴花はその場で泣き始めてしまった。
「鈴ちゃん。大きくなったね。」
「グスッ  グスッ。」
結局、僕達は病院に泊まった。
翌日、僕達は本気で急いで学校に向かった。
「なんだか嬉しそうですね。」
美琴が話しかけて来た。
「姉さんが完全復活したんだ。」
「そうなんですか。」
美琴も喜んでくれた。
放課後いつも通り美琴と会う時間。
「お姉さんが元のお姉さんになって良かったですね。」
「うん。」
あの日死んでいたらわからなかったんだ。「一つ聞いてくれますか?」
美琴が真剣な目をする。
「なに?」
「実は私今度手術をすることになりました。」
その事実は僕にとって重くのし掛かる。
「本当なんだな。」
「はい。あのゲームしましょう。」
そういうと美琴はトランプを取り出した。
「前みっくんの家でやったやつです。」
カードが配られる。
カードを取ったら逃げられない。
それでも僕はカードを手に取った。
勝負の結果、僕は負けた。
「質問か命令か。」
「質問。」
「もし・・・もし私が死にたくないっていったら、どうする?」
色々大人っぽい美琴だが、彼女だってまだまだ子供だ。喜んだり 怒ったり 泣いたりする。
「私死んじゃうんだ。」
それが怖くないなんてことはない。
「命令。」
僕はその質問に答えられなかった。
「じゃあ。私とある場所に行ってください。」
というわけで僕達は旅行に行くことになった。
旅行は十月二十四に決まった。
「みっくん。」
待ち合わせの駅にはもうすでに美琴が待っていた。
「ごめん。待たせた。」
「いえ。あのーお姉さんは大丈夫ですか。」
「うん。」
ご飯は作ってきたし、大丈夫だ。
「どこに行くの?」
「私が思い出に残ってる場所です。」
そういうと僕は美琴と一緒に電車に揺られる。そして色々歩く。
「着きました。」
ついたのは、一つのお墓だった。
「ここは?」
「私の父と母のお墓です。」
「えっ!」
美琴の母親はいたはず。
「実は本当のお母さんじゃないんです。」
どうやら母親は美琴を産んですぐに亡くなり父は過労で亡くなったらしい。
「ありがとうございます。私中々勇気が出ませんでした。ですが、みっくんのおかげで来ることができました。」
美琴は涙を流していた。
「ごめんなさい。最後まで続けられなくてでも、これからもみっくんは生きていけると思います。」
僕達は契約で繋がっていた。
「これで契約を終わりましょう。」
美琴は契約書をビリビリと破る。
「ありがとう。」
「ありがとう。」
僕達は、色々と見て回る。
そして、電車で帰ってきて、駅で別れた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
姉さんが出迎えてくれた。
「どうしたの?」
「いや。なんにもないよ。」
「そんなわけないでしょ。何悩んでるの?」
どうやら姉さんには敵わないらしい。
「実は。」
僕は今まで二人の秘密にしていたことを話した。
「そんなことがあったのね。ごめんね。」
「別にいいよ。」
「で未琴は何に悩んでるの?」
僕は、美琴のことが好きらしい。でも、美琴は死んでしまう。それに僕は美琴との大事にしていたものを、今日壊してしまった。
「どうやら姉さん。僕は美琴のことが好きらしい。」
あの文化祭の日から美琴のことを見ている僕がいる。
「でも、僕は美琴といる資格を無くしてしまったんだ。」
姉さんは黙って聞いてくれた。
「一つ言っていい。」
全ての話を聞いてくれた姉さんはいう。
「一緒にいる資格って何?」
「それは・・」
あの日の約束が資格だ。
「約束が資格なら。いつでもまた約束したらいいじゃない。」
「でも。それじゃ。」
「でも それじゃ それはとかそれは逃げてるだけだよ。立ち向かう勇気がない人がいう言葉だよ。」
姉さんのことばは、重く深く刺さる。
「今、美琴ちゃんは、絶望の淵にいる。
そこから連れ出せるのは、未琴だけだよ。あの日美琴に救われたんだ。今度は未琴、あなたが救ってあげなさい。」
僕は、初めてあった日を思い出した。
「君を未来に連れ出してあげる。」
僕は、決めた。もう迷わない。
「さぁ。早く行きなさい。」
「分かった。」
僕は玄関から出ていく。
「本当に世話のかかる弟なんだから。」
「琴姉。」
「良かったの?さっきまでの未琴なら落とせたかもよ。」
「私決めたもん。私は未琴の一番の幸せを応援するって。でも、それは美琴じゃないとダメなんだよ。」
はぁーはぁーはぁー。
僕は全力疾走する。美琴の家は覚えてる。
ピンポーン
ガチャ
「美琴!」
「どうして。」
「ちょっと来て。」
僕は連れて展望台にむかう。
「思ったより、昼でもいい景色だな。」
「あの。」
「美琴。」
僕は振り返る。
「初めてあった日美琴が何て言ったか覚えてる。」
「・・・。」
美琴は黙っている。
「あの日美琴は言ったろ。世界の素晴らしいところを見せてくれるって。」
「それはもう終わりました。」
「僕の素晴らしい場所は美琴がいる世界だった。」
あの日からずーーと、思っていた。
「僕は美琴のおかげで救われたんだ。だからありがとう。僕を救ってくれてありがとう。
これからは、僕が君を救いたい。」
「無理ですよ。私はもう死ぬんです。」
その目からは、輝きが失われていた。
「いや。絶対に助かる。」
「なんでそんなことが言えるんですか。」
「おいおい。忘れたのか。」
僕は覚えてくる。
「運命の女神様がいるんだろ。この世界でどんなに可能性が低くてもゼロじゃないなら助かる。だって、僕達は同じ名前で同じ誕生日で夏が好きで、料理が得意で赤が好きでトランプで十回同じカードを出すくらいの奇跡に比べたら、もっとずっと高いよ。そしてその奇跡が目の前で起こってるんだ。
奇跡はあるんだよ。」
「・・・ひっく。」
「うぇーん。」
美琴が泣く。
「私もっとみんなといたいよ。」
いれるよ。
「もっと遊びたいよ。」
遊べるよ。
「私もっと生きたいよ。」
「生きれる。それくらいの幸せを美琴は手に入れて当たり前だ。」
後日談
美琴の手術は十一月一日に行われた。
僕はただただ祈る。
神様がいるなら、一人の女の子の命を守ってください。



















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