ヒロインの姉も楽じゃない!

禕餓邏祀

文字の大きさ
2 / 3

2話

しおりを挟む
早速、入学式が行われる講堂まで来たが視線がとても痛い。
公爵家の娘という肩書きという点よりも、妹であるミリーの容姿の良さで多くの者がこちらを見ているように感じる。
まぁ、それもそうだろう。
淡い桃色の髪に初夏を思わせる新緑の目、ずっと絶やすことの無い微笑みを浮かべているミリーは可愛い。
流石、ヒロインと言うべきであろう。

「お姉様。入学式は隣におられますか?」

「いや、二年の場所……今いる中央の左側か右側のどちらかに居る。」

「そうですか…残念です、お姉様と一緒にいられるものと勝手ながらに思っていたものですから。」

「そう落ち込むな。入学式など直ぐに終わる。」

そう言いながら、寂しげな表情をさらに曇らせるミリーの頭を撫でる。
すると不安が和らいだのだろう、少し表情が明るくなる。

「さぁ、もう直ぐ始まる。自分の席に行きなさい。」

「はい、お姉様。また後ほど!」

席へと向かいながら手を振るミリーに私も振り返す。
すると、手を大きく掲げ振り出した。
あれほど注意したのに全く困った妹だ。

さて、私も指定された場所へ行かねばと歩き出す。
すると突然、後ろから声を掛けられた。

「本日もアゼルティ嬢はお美しいようで」

「貴方も太陽の様にお元気ですこと、オリフェッタ様。」

「相変わらずつれねぇーな、アゼル。そんなんじゃ男にモテないぜ。」

「何を言う、いつもの事ではないかオータ。あと、私がモテるかどうかは関係無いだろう。」

「いーや、関係あるねって、俺を置いて先に行くなよ!」

こいつとの時間は無駄だと判断し移動を開始する。
すると追いついてきてズカズカ隣を歩きだした。
オリフェッタ・タージャ・マルケド。
マルケド公爵家の次男で、私と同学年。
この学園に入ってから腐れ縁だかなんだか知らないが、軽口を言い合う仲になってしまった。
180を優に超える高身長で、顔と性格が良いらしいので令嬢からの人気はある。
何故こんな男がと思うが、人の感性を愚弄する趣味は無いので口に出すことはない。

「あ、そういや今年も同じクラスだったぜ。よろしく頼むな、アゼル!」

笑顔で爆弾発言をしたオータを凝視する。
また、こいつと同じ?
はぁ、、私の運はついていないようだ。

「やめろよ、そんなに見つめられると照れちまう。」

「そうか、ならそのまま自分の熱で燃え死ぬといい。」

「そんなに俺と一緒が嫌?!オータ君ショックなんだけどー。」

因みに講堂での席は隣だったようで、入学式が始まるまでずっと話しかけられていたが、全て無視した。
最悪のスタートだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

処理中です...