エッセイ【何となく話したくなった小噺達】

夜櫻 雅織

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第5話 『時は、誰にも平等じゃない』

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「時間は、誰にでも平等に流れている」
そう言ったのは、きっと余裕のある人だ。
焦っている時の1分は、息が苦しくなるほど長くて、
楽しい時間の1時間は、砂のようにこぼれて消える。

だから、時間は平等なんかじゃない。
その人がどんな気持ちでいるかで、
1秒の重みすら変わってしまう、不確かな存在だ。

時計の針は、いつも同じ速さで進んでいるけれど、
私たちの「時」は、思い出の中で加速も減速もする。

忘れられない出来事は、何年経っても昨日のように蘇るし、
ぼんやり過ごした1週間は、あとから振り返ると何も残っていない。

「時間がない」と言いながら、
本当に足りないのは、「今、この瞬間に心を向ける力」かもしれない。

でも、不思議と――
過去に戻ることも、未来を早送りすることもできないのに、
私たちはいつも「時」に支えられている。

失ったと思っていた何かも、
十分に届かないと思っていた何かも、
時をかけて少しずつ変わっていく。
まるで、海岸を撫でる波みたいに。

私の「今」は、過去が積み上げた点と点が繋がった、たった一瞬の線だ。
でも、この一瞬が、次の未来を決める。
そう思うと、「何気ない今」だって、とても大切に思える。

「時は戻らない」
だからこそ、進む意味がある。
失うから、得る意味がある。

時とは、私たちを焦らせるものじゃなく、
生きていることを確かめる、透明な伴走者なのかもしれない。
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