いつぞやの約束は夜空の向こう

夜櫻 雅織

文字の大きさ
7 / 34
第一章 自分探し

第7話 反響する激情

しおりを挟む
【前回】魔法についての当たり前を聞いた
第7話 反響する激情

――それほどまでに、強い気持ちだったんだろう。

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


「……駄目だ、分からん。」

 とりあえずレポート以外の宿題を先に済ませてノートパソコンの暗証番号の捜索に映るも今の所、全く手がかりがない。
 幸いなのはそこまでセキュリティが厚くなく、何度も試す事が出来る事ぐらいだろうか。
 だが手掛かりは他にもまだまだある。
 談話室という名のリビングから行く事の出来る、俺の部屋と蓮燔の部屋。そこへ繋がる廊下は異様な程に長く、それだけ部屋が広いという事なのだろうがそれにしても月明かりがよく当たりそうな廊下だ。
 そもそも俺は蓮燔にここへ連れてこられて直ぐに談話室に腰を下ろした為、生憎と他の場所は調べていない。なら、記憶に直結せずとも普段俺がどんな生活をしていたのかなどの情報は洗えるはずだ。

 まるで警察か何かだな、ここまで来ると。

「まずは手元から、だな。」

 移動して調べるのも良いだろうが、蓮燔の話から察するに俺は今しばらくこのプライベートスペースから出られない。正直、管理される檻を変えられただけのように思えてしまうがまぁ言った所で仕方ない。
 スマホのロックを解除し、中身に目をやるもゲームアプリの類は確認出来ない。
 SNSとよく分からないアプリ、辞書、写真、カメラ、マップぐらいしかない。
 よく分からないアプリが気になって開いてみると、どうやらメモ帳だったらしい。まるで自分の字が嫌いだと言わんばかりに字がびっしりと刻まれており、比べなくとも鞄に入っていたメモ帳よりも沢山ページがある。
 内容としては誰が蓮燔を虐めたのか。次の授業内容の予想。月の傾き方。そして、一際気になった「忘れてはならない」とタイトルされたページ。
 開いてみれば真っ黒に塗り潰されたページに動画の再生マークがついている。
 不気味である事、不思議である事には間違いないものの、何となく音を出してはいけないような気がして鞄の中を漁っていればイヤホンが出てくる。


 しかし、その内容は凄惨とした物だった。


 何処かであった残虐の記録。女も子供も男も全く関係なく、無数の死体がただただ映っている。
 でも何故か既視感があり、これをまともに見れているのを考慮すると元々こういう光景は慣れているのかもしれない。それか、これを好むような人格だったのか。
 考えている間にも進んでいる動画に、少しばかり変化が訪れた。
 つい先程までばたばたと視えない何かによって人が死んでいく映像だった物に誰かの顔がはっきりと映し出され、そのよく分からない男は此方に対して怒っているらしい。

『奏、お前は何でこんな事をしたんだ……!! お前の所為で、お前の所為で……!!』

 どうやら、男は俺を殴っているらしい。
 そんな映像を見て、また何故か憶えていないはずなのにこの男に対して、それと何かに対してこみあげてくる強い怒り。
 記憶を失う前の俺は、こいつをどうしても殺したかったらしい。
 明らかに俺の声と思われる物が俺の中から反響して体に、頭に響く。俺を殴っているこの男を呪い殺したい、嬲り殺したいという気持ちが俺の渦巻いて仕方なく、――― でも、それも直ぐに終わる。
 一体何が起きたのか、俺を殴っていたその男は腹の辺りを鋭く黒い何かに貫かれている。棘だらけで、血を吐きながらも喚く男を引き摺っては奥の壁に叩きつけて何度も何度も刺している植物の蔓のようで、茨のようで、でもそれがそんな触手のように動くなど到底信じられない。
 槍のように扱われているそれは何度も何度もその男を刺し、やがて原形が失われていく。

『……もう、良い。』

 そう呟いたのを最後に、動画は止まった。


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第8話 主が居れば、それで良い」

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。

今後とも『いつぞやの約束は夜空の向こう』をよろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

龍は唄う 神子と子守唄を

イチイ アキラ
恋愛
『神子が御実家より帰宅される途中、事故に遭い――片目を失った。』  入院していた病室で、さおりはその新聞を読んで「え?」と混乱していた。  何故なら片目を失ったのはさおりであり――さおりは神子ではない。  神子はさおりの双子の妹の、しおりであるからだ。  しかも「しおり」は第三皇子の婚約者であるという。  さおりは片目と記憶を失い、神殿で暮らす事となる。  しおりと皆に勘違いされたまま。

復讐は、冷やして食すのが一番美味い

Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。 1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。 2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。 3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。 狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。 「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。 ----- 外部サイトでも掲載を行っております

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

処理中です...