夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

文字の大きさ
134 / 192
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて

第131話 それはまるで呼び水の如く

しおりを挟む
【前回】何事もなく朝を迎えられた
第131話 それはまるで呼び水の如く

――どうやって感じ取っているのやら。

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


 燦燦《さんさん》と輝く太陽の元、その光を浴びてキラキラと輝く海面はあまりにも眩しい。その上、雲1つないこの晴天は基本的に夜に活動する事の多い俺にとってはかなりの脅威となっている。言った所で仕方ないのかもしれないが。
 相変わらず飽きもせず、肌が荒れるだけの海水でじゃれているガキ共を眺めつつ。随分と長電話をしているらしいジーラが全く姿を現さない辺り、なかなか重要な案件か。場合によっては、まだ日にちこそ経っていないが調律《チューニング》システム改良版の何らかの報告があるのかもしれない。

 それなら俺にも聞かせてくれても良いんじゃないかとは思うが……まぁその辺り、変な気遣いをしている可能性は大いにあるが。

 日陰にあるビーチソファにてくつろぐ中、数十m先に確認出来た水面近くの黒く大きな影。
 最初こそは1つだった物の、2個3個と現れては潜水し。また顔を出すという行動を繰り返している。

「……やっぱそうだよな。」
「せんせ。」
「どうした、セディルズ。お前も2人のようにはしゃいでこなくて良いのか。」
「僕はちょっと疲れちゃったから。」
「そう。」
「ずっと海の遠くの方を見てるけど……何か居るの?」
「……。」
「せんせ?」

 あー……確信持ったか。

「見つかった。」
「み、見つかった?」

 セディルズの次の言葉を遮るように、この島を取り囲むように随分と大きな水柱が幾つも上がり。それに伴って発生した虹と共に海面から大きな水飛沫と共にその巨体が日光の下に晒される。
 体の大きな人魚達が何ともまぁ綺麗な笑顔を称えながら。これは俺が言える事ではないかもしれないが、相変わらず最後に会った時から何も変わらない姿で顔を出しては驚いたルシウス達がこっちへ逃げてくる。

 まぁ、やっぱり来るよなぁ。

「ティア~!」
「相変わらず元気だなぁお前は。」
「……あれ? でもティア、匂いは変わんないのに魔力と姿、すっごく変わってるね。どうしたの?」
「人間と大分掛け離れたような……。まぁでもどんな姿をしていようとティアはティアだから。」
「はいはい。」
「それにしてもティア、相変わらず目の下の隈が消えないね。」
「消えてほしいとは思ってるし、睡眠もしっかりと取ってるはずなんだがな。……それと、そんなに見つめても俺はこれ以上海に近付かんからな。」
「えぇえ~……。」
「せ、先生。彼らは……信用出来るのか?」
「あぁ。こいつらはお前達が会いたがっていた海の精霊だからな。」
「子供……? ねぇティア、この子達は?」
「俺の生徒。」
「え、あの人間嫌いのティアが、生徒? 生徒ってな、何?」
「ん、ぁあ。学校のだよ。」
「学校の先生してるの!?」
「非常勤だし俺が受け持ってるのはこいつらだけだがな。」
「それでも凄い事だよ! ……ふふ、そっかぁ。」
「……何だよ。」
「ううん、気にしないで。それよりもさ、ティア。一緒に泳ごう?」
「嫌だって言ってるだろうが……。」
「……鮫の件なら、ごめんね。」
「……別に怒ってる訳でも気にしてる訳でもないんだ。それよりもあの2匹も呼んでくれないか?」
「……うん、分かった。」

 ただ単に俺が臆病者なだけだから忘れろと言ったはずなんだがな。

 結果、今ここに顔を出したのは人魚の精霊。珊瑚礁の精霊。海月の精霊。そして最後に、海洋の精霊までもが顔を出した。
 世間一般的に外洋と呼べるこの場所に出てくる精霊は基本的に体がでかい。それもこれも、かなりの外洋であるのも相まって自分達を害する存在が少ない事や俺達のような漁をする文明的生命体の往来が少ない事。そもそもとしてこいつらを始めとする魔法生命体や海洋生命体達に妨害されている事から水深が浅くとも巨大化が進む。


 無論、それ以上に深海生命体は大きくなる。


 元々深海の生き物は水圧に耐える為に巨大になる傾向がある訳だが、これが通常サイズである分、深海の生き物はもっとでかくなる。
 その為、運悪く深海生命体が呼吸の為に浮上したりとか。その他にも何らかの生物を追って海面まで浮上してきた深海生命体によって沈没させられたりとか。逆に襲われたりする事もよくある。
 それ故、この海域周辺は俺が同伴していない場合に限り、重武装した船で行く事が義務付けられている。事実的な話をすれば、そういう風に義務付けられているので重武装していない船の方が少ないが。
 そんな精霊達の姿は俺が人魚の精霊、珊瑚礁の精霊、なんて呼んでいる通りの姿だったりする。
 人魚の精霊は本当に上体が人、下腿が魚の人魚がそのまま体長10mぐらいに巨大化した物。珊瑚礁の精霊は見た目ではなく、綺麗な珊瑚礁の周辺にしか姿を現さない事や人魚の姿ではあれども体の鱗が所々珊瑚礁のように鮮やかで。海月の精霊は人魚が頭から海月を被っているような姿で、ひらひらと海月らしい触腕には毒があるとも聞いている。
 問題の、リヴァイアサン。こいつは少なくとも色んな魔法生命体と関わった事のある俺でも、こいつ以上にでかい魔法生命体を見た事がない。
 それでもこの海の深い所に存在する、深く広い海溝を築くには細く短い体ではあれど、刺々しい背びれが膜によって頭頂部から尾の中腹辺りまであって。精霊、というよりは海獣と呼ぶに相応しい海の赤い悪魔。こいつによって沈没させられた船は数知れず。

 まぁ、ネビュレイラハウロ帝国の船は頑なに沈めないどころか、海上戦が発生すると見方をしてくれるんだがな。

「おい、流れるように俺の足に触腕を絡めるな。」
「痺れさせて可愛がっても良い……?」
「良い訳ないだろ。ったく。」
「あ……。」
「幾ら誘われても行かんからな。」
『……。』
「お前もお前だ。俺の服を咥えて優しく何度か引っ張った所で海には近付かんからな。」
『……きゅあ。』
「そんな可愛い声を出しても駄目だ。」
「せ、先生。こ、の人ら……全部精霊なん?」
「あぁ。海月の人魚は深海の精霊なんだが深海の精霊ってのは沢山居るからな、俺はそのまま海月の精霊って呼んでる。綺麗な柄の人魚は珊瑚礁の精霊で、本来は珊瑚礁の周辺にしか姿を現さないんだが……こいつらはかなり仲が良いからな。大抵一緒に移動する事があるんだ、特に俺の所へ来る時は。もう1匹は人間の間にある伝説で名高いリヴァイアサンという精霊と燐獣の相の子でな、海洋の精霊としてよく知られてる。……まぁ、俺達としてはよく俺達の船舶を護ってくれたり、場合によっては漁や戦争を手伝ってくれる良き守護獣みたいなもんだな。」
『あそ……んで。』
「前より言葉が上手くなった事は褒めてやるが、体の大きさの関係上お前と出来る遊びはかなり限られてるから断る。」
『じゃあ……撫で、て。』
「あぁ、それなら構わん。」


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第132話 今しか出来ない体験を」

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。

今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

処理中です...