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第二章:一年生二学期 ご無沙汰、我が家
第34話 少しは自分の楽しみを増やす為に動けば良いのに
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【前回】慣れない事の所為で心が乱れて動けなくなった
第34話 少しは自分の楽しみを増やす為に動けば良いのに
――返すばかりじゃ自分の未来を削り過ぎるから。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
「お前ら、この後は暇か。」
「暇だが……珍しいな。先生、何かやりたい事でも?」
「……なぁ、ディール。ああいう時の先生ってどんな感じなん?」
「それなりに疲れてる時ね。」
喧しいぞ、そこ。
可愛げのない、というのはこういう事を言うんだろう。言った所で改善してくれないであろう事は分かり切っているので口には出さないが。
しかし、それでも少しは驚いてほしかった気持ちはある。そして悔しい事に、それなりに疲れてはいる。
慣れない事というのは幾つになっても、どんな時でも非常に疲れる物で幼い頃に肉親も友人も隣近所の人も全て失った俺からしてみれば学校なんて物に毎日通う事も。そこで勤務する事も。ガキ共の相手をする事も。学校の先生になる事も。戦場からこんなにも長い間離れて胸焼けがしそうなぐらいに平和過ぎる環境に身を置いた事もない。
何ならここ最近は戦争の必要性や戦争の存在意義について疑うという七漣星にあるまじき思考回路が自分の中に芽生え始めている事にもちゃんと気付いている。これは……早く取り除かなければならない。その、はずなんだ。
少なくとも、まだ俺は人を殺す事に抵抗を覚える程に落ちぶれてはいない。……ただ、目の前に居るこいつらが目の前に出てきたら何にも言えなくなってしまうあたり、俺は本当に限界なんだろうと感じつつある。
だからこそ、一度全てをリセットする事にした。物はついでだ、たまにはこいつらの羽を伸ばす事も考えてやろうといつもは使わないベクトルに頭も動かしてみた。
まぁ、下手すると関係ないのも湧く可能性もあるにはあるが。
「せんせ、その茶封筒は……?」
「ほれ、1人1枚な。」
「一枚……? あ、チケット! え、水族館の!?」
「す、水族館。」
「リシェラは好きだもんね~水族館。」
「し、師匠と行ける水族館はも、もっと大好きです!」
「それは確かに。師匠、私達が嬉しいんだから師匠も嬉しいでしょ?」
「その自信はどっから来たのかの方が非常に気になるんだがな、俺は。」
「水族館……。しかもこれ、最近出来た所のチケットだな。よく取れたなぁ、こんなの。」
「イルグがくれた。」
「……ベク先生、絶対先生の為に用意したんとちゃう?」
「前にルールゥ先生も気にしてたからな。」
「……余計な一言が多いんだよお前らは。」
それはさておき、今はそっちよりもこっちだ。加えて言うならここで言葉を紡いだ所で何の利益にもなりやしない。
個人的にはもう少しばかり子供らしいリアクションを期待していたのだが彼らにとってはそこまで面白くない物だったらしい。実物を見てもそんなにドライな対応が出来るのかは今から見物だな。
何方かと言えば夏よりも冬の方が好きな俺だが、俺がそう言ったからと言って必ずしも冬が続く訳ではない。それなら嫌いなこの夏を少しでも楽しくなるように自分で努力しなければならないのが困る所だが……今回はお節介なジーラとイルグがこうやって用意してくれた訳だ。
たまには乗ってやらんでもない。今に限った話だが。
「でも先生、先生は海が駄目だったんじゃないか?」
「あ、せや。大丈夫なん?」
「水族館は問題ない。で、行くのか。行かないのか。」
「「行く!」」「行きたいです!」「い、行きたい!」
そうか。
それならばともう1つポケットから2つ分のちょっとした革製の小袋を取り出す。使うかどうかはこいつらの自由だが……まぁ、使わざるを得ないタイミングは来るだろう。こいつらは子供なのだから。
「トルニア、セディルズ。受け取れ。」
「お、おん。」
「う、うん。……これ、は?」
「財布。」
「え、財布!?」
「な、なん……え、お金入ってる。」
「入れてないのをやる訳ないだろ、特にお前らはまだ自由になったばかり。当然金なんてないんだ、遊びに行くのに無一文はあまりにも面白くないだろうよ。どーせお前らの事だ、今までのバイト代の殆どはルシウスの両親に遠慮して、自分の物を自分で買い揃える為に散々使ってるだろうからな。」
「で、でもこれはせんせの……。」
「前にも言ったが俺には使いきれない量の金が有り余ってるからお前らみたいなガキ数人程度を養う事なんざ造作もない。人の足元見てないでとっとと受け取れ。」
「……ありがと、先生。」
「せんせ、ありがと。」
「バイトが落ち着くまでは毎月小遣いやるからもっと欲しけりゃ体を壊さない程度に頑張れ。」
「稼げるようになったら先生にプレゼント買うから。」
「要らん、そんなもん。」
「じゃ、じゃあ作るから。」
「要らん。お前らの為に使え。」
「俺らがそうしたいんや。」
「う、うん。せんせの為に、そうしたい。」
結局置き場が困るだけだってのに……。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第35話 その表情の裏に隠れる本当の心は幸せか」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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感想なども励みになります。
今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
第34話 少しは自分の楽しみを増やす為に動けば良いのに
――返すばかりじゃ自分の未来を削り過ぎるから。
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「お前ら、この後は暇か。」
「暇だが……珍しいな。先生、何かやりたい事でも?」
「……なぁ、ディール。ああいう時の先生ってどんな感じなん?」
「それなりに疲れてる時ね。」
喧しいぞ、そこ。
可愛げのない、というのはこういう事を言うんだろう。言った所で改善してくれないであろう事は分かり切っているので口には出さないが。
しかし、それでも少しは驚いてほしかった気持ちはある。そして悔しい事に、それなりに疲れてはいる。
慣れない事というのは幾つになっても、どんな時でも非常に疲れる物で幼い頃に肉親も友人も隣近所の人も全て失った俺からしてみれば学校なんて物に毎日通う事も。そこで勤務する事も。ガキ共の相手をする事も。学校の先生になる事も。戦場からこんなにも長い間離れて胸焼けがしそうなぐらいに平和過ぎる環境に身を置いた事もない。
何ならここ最近は戦争の必要性や戦争の存在意義について疑うという七漣星にあるまじき思考回路が自分の中に芽生え始めている事にもちゃんと気付いている。これは……早く取り除かなければならない。その、はずなんだ。
少なくとも、まだ俺は人を殺す事に抵抗を覚える程に落ちぶれてはいない。……ただ、目の前に居るこいつらが目の前に出てきたら何にも言えなくなってしまうあたり、俺は本当に限界なんだろうと感じつつある。
だからこそ、一度全てをリセットする事にした。物はついでだ、たまにはこいつらの羽を伸ばす事も考えてやろうといつもは使わないベクトルに頭も動かしてみた。
まぁ、下手すると関係ないのも湧く可能性もあるにはあるが。
「せんせ、その茶封筒は……?」
「ほれ、1人1枚な。」
「一枚……? あ、チケット! え、水族館の!?」
「す、水族館。」
「リシェラは好きだもんね~水族館。」
「し、師匠と行ける水族館はも、もっと大好きです!」
「それは確かに。師匠、私達が嬉しいんだから師匠も嬉しいでしょ?」
「その自信はどっから来たのかの方が非常に気になるんだがな、俺は。」
「水族館……。しかもこれ、最近出来た所のチケットだな。よく取れたなぁ、こんなの。」
「イルグがくれた。」
「……ベク先生、絶対先生の為に用意したんとちゃう?」
「前にルールゥ先生も気にしてたからな。」
「……余計な一言が多いんだよお前らは。」
それはさておき、今はそっちよりもこっちだ。加えて言うならここで言葉を紡いだ所で何の利益にもなりやしない。
個人的にはもう少しばかり子供らしいリアクションを期待していたのだが彼らにとってはそこまで面白くない物だったらしい。実物を見てもそんなにドライな対応が出来るのかは今から見物だな。
何方かと言えば夏よりも冬の方が好きな俺だが、俺がそう言ったからと言って必ずしも冬が続く訳ではない。それなら嫌いなこの夏を少しでも楽しくなるように自分で努力しなければならないのが困る所だが……今回はお節介なジーラとイルグがこうやって用意してくれた訳だ。
たまには乗ってやらんでもない。今に限った話だが。
「でも先生、先生は海が駄目だったんじゃないか?」
「あ、せや。大丈夫なん?」
「水族館は問題ない。で、行くのか。行かないのか。」
「「行く!」」「行きたいです!」「い、行きたい!」
そうか。
それならばともう1つポケットから2つ分のちょっとした革製の小袋を取り出す。使うかどうかはこいつらの自由だが……まぁ、使わざるを得ないタイミングは来るだろう。こいつらは子供なのだから。
「トルニア、セディルズ。受け取れ。」
「お、おん。」
「う、うん。……これ、は?」
「財布。」
「え、財布!?」
「な、なん……え、お金入ってる。」
「入れてないのをやる訳ないだろ、特にお前らはまだ自由になったばかり。当然金なんてないんだ、遊びに行くのに無一文はあまりにも面白くないだろうよ。どーせお前らの事だ、今までのバイト代の殆どはルシウスの両親に遠慮して、自分の物を自分で買い揃える為に散々使ってるだろうからな。」
「で、でもこれはせんせの……。」
「前にも言ったが俺には使いきれない量の金が有り余ってるからお前らみたいなガキ数人程度を養う事なんざ造作もない。人の足元見てないでとっとと受け取れ。」
「……ありがと、先生。」
「せんせ、ありがと。」
「バイトが落ち着くまでは毎月小遣いやるからもっと欲しけりゃ体を壊さない程度に頑張れ。」
「稼げるようになったら先生にプレゼント買うから。」
「要らん、そんなもん。」
「じゃ、じゃあ作るから。」
「要らん。お前らの為に使え。」
「俺らがそうしたいんや。」
「う、うん。せんせの為に、そうしたい。」
結局置き場が困るだけだってのに……。
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