夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

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第二章:一年生二学期 ご無沙汰、我が家

第39話 どんな助言もまずは考える事から

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【前回】故郷の品が収められた部屋に向き合った
第39話 どんな助言もまずは考える事から

――下手な物を渡す訳にはいかないから。

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「……まぁ、こんな物か。」

 念の為に確認した結果、やはり確認しておいて良かったという確証が得られた。どうにもあの錬金術のレシピは古過ぎる。
 俺の記憶では当たり前のように。さも日常と言わんばかりに定期的に補充されていたあのポーション達と、今回俺がレシピを元に作り出したポーションを見比べるに里で作られていたポーションは全てこの伝統的なレシピとはかけ離れた製法で作られているであろう事も分かった。
 その理由は簡単で、伝統的なレシピのポーションを作る為の材料があの里周辺からは取れない事。なら、そもそもとしてかなり閉鎖的だった一族的な法則性から見るに昔の煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティ達はもっと違う土地を生活圏とし、そして何より昔の彼らはかなり強かったんだろう。
 それが、俺の知ってる煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティは貧弱で脆弱で上っ面を着飾る事にばかり意識が向いているただの置物だったという訳だ。

 念の為、2種類の方法で作って良かったな。

 幸い、この帝国でも多少値は張るがあの無能共と違って無駄に溜まった金で錬金陣を利用して作ったポーションの調合。そして全く同じ材料を利用し、今度は錬金窯を使ったポーションの調合を行った。
 その結果、何方も同じ規模の物を作る事が出来た。流石にあいつらには手が届かない値段なのもあってあいつら自身に色々と工夫してもらうか。はたまた、俺の方で素材だけ用意して後はやらせるのも手かもしれない。
 とりあえず、現状としてはこれで十分だろう。これ以上は実際に奴らにやらせてみれば良いだろうし、これは丁度良い機会だ。そう遠くない内にあいつらの戦闘力に関するチェックもし、陛下に許可を貰って

【だ~め。】
「しん、えんからの……よび、ご……え。」
【主様、少し休んで。】
「……心配される程の事じゃない。だから」
【私はこうしたいの。……貴方に私達が視認出来てなくても、私達はずっと貴方の影から貴方を見てるんだから。見てたし、聞いてたわよ。あそこ、主様にとって辛い場所なんでしょ? ……じゃあ、辛い思いをした分、今はゆっくり休まないと。】
「別に俺は」
【ご主人様、休んで! ご主人様が休んでる間は僕達が護るから!】
【ご主人様、ご主人様が気付いてないだけでかなり疲れてるって事をそろそろ自覚した方が良い。】
【ほら、ご主人様! 僕を抱き枕にして良いよ!】
「お前らな……。」

 でも体は意外にも限界を迎えていたようで、アルシュとリュートに押し倒されるように。≪深淵からの呼び声≫に前足でその体に倒されるや否や、途端に強い睡魔に見舞われてまともに動く事すら出来ない。
 心成しかしんどいような……酷い倦怠感に体を抑えつけられて頭までおかしくなってきたようで自ら≪深淵からの呼び声≫の懐を望んで身を委ねたらもう逃げられない。逃げる気など、最初からありはしないが。

【ようやっと素直になったわね、主様。ほら、体だって疲れてるって嘆いてるでしょ? なのに無理なんてしちゃ駄目よ。】
【ご主人様。今のご主人様は何に関しても働き過ぎだ。何もそんなに焦る必要なんてないだろうに。】
【うーん……。あ! リュート、ご主人様って元々は軍人なんだよね?】
【まぁ……そう、聞いているが。】
【……何、アルシュ。まさか主様が戦争に飢えてるとでも言いたいの?】
【運動したいんじゃないかな~ってアルシュは思っただ~け! でもでも、ご主人様! 魔法をぶっ放したり、運動したりしたいなら戦争じゃなくても出来るよ!】

 ……?

「……何を言ってる。あの場以外で俺が本気を出せる場所なんて存在する訳がないだろ。」

 仮にあったとしても、俺はそれを知らない。生まれてこの方、俺は戦争に全てを奪われてきたし、俺も戦争する立場になって誰かの何かを沢山奪ってきた。そして、その度に自分の実力をひしひしと感じてきた。
 誰かを護る為にも、誰かの為に生きる為にも、自らの実力を再認識する為にも、俺は戦場に出なければならない。いつからそうなったのかは忘れたが、少なくとも俺はそうじゃないと死ぬような存在にもう既になってしまっている。

【あるよ! ダンジョンに行けば良いんだよ!】
「ダンジョン……? 冒険者共がよく行くあの場所にか……?」

 ダンジョン。何の前触れもなく、誰の都合も考えずに不規則的な周期で突然現れては国家の貴重な収入源となる非常に危険だが非常に価値のある場所。だが、これがあるからこそ救われる命もあれば奪われる命もある。結局はこれも戦争と一緒という事だ。
 しかし、今気にするべきはそこじゃない。

「……あんなならず者共の巣窟が何の役に立つってんだ。時々は俺達が顔を出して魔獣共の相手をしなければならない事すらもある……。仕事が増えるだけだ、あんな物。」
【だからだよ! ご主人様はご主人様で遊んで、あの子供達にも魔法の使い方を叩き込めばご主人様も楽しいし、あの子達も強くなれるから良い事尽くしだと思うの!】
【主様、疲れたら私が今みたいにベッドになってあげるからその方が良いんじゃない? 勿論、主様がそれを望まれるならではあるけど私は大賛成よ?】
「……考える。ただ、今日は休む。」
【うん。お休み、主様。】
【お疲れ様、ご主人様。】 【お休み~ご主人様!】


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第40話 慣れない世界への第一歩」

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