エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

20 雄叫び

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「ハートクレア准尉!」
 セーグネルに指示を仰ぎたかったカウルは当惑した。
 その場に放置されたカウルはセーグネルに呼び掛けるも、彼女は銃座の機銃で応戦を開始し、自分たちのことなど眼中にない。
(どうすれば──)
 セーグネルから「ここにいろ」と言われただけで、他に明確な指示もなく、シーナは眼下で気を失ったままだ。
「スレヴィアス上等兵!」
 とにかくシーナを起こさなければ、彼の肩を叩きながらカウルはシーナに呼び掛ける。
 ブロロロロ。
 しかし、そんなカウルの声をかき消さんばかりに敵の戦闘機のプロペラ音が辺りを覆う。
「っ!?」
 上空を見上げたカウルの目に、『アマネ』の周囲をまるでたかるように旋回する無数の敵機の機影が映る。
(来る──!)
 『アマネ』の対空砲火も、セーグネルのいる銃座も敵機を打ち落とすべく火を吹いているが、敵を撃退できていない。
 バババババッ!
「わあっ!」
 すると、カウルの右手側──『アマネ』の艦首から、破裂音とともに火花が散った。 敵の機銃掃射の流れ弾が、そのまま右舷前方の海面に水柱の列を立て続けに上げる。
 その衝撃に驚き、身を伏せるカウル。握っていた小銃が放り出され甲板の上を滑る。

(し、死ぬ……)
 ばくばくと脈打つ心臓の音が耳元に聞こえる。
「ハア──ハア──」
 手足に力が入らないカウルは、甲板に四つん這いになりながら、乱れる呼吸を落ち着かせようと試みる。
(こ、『鼓動』を──)
 カウルは胴体の防弾装具に両の手のひらをあて、目をぎゅっと瞑り自分の両手に意識を集中させた。
 ぱあ、とカウルの手のひらが光り、防弾装具にカウルの『心』がこもる。
 生存可能性を高めるには、自身の身に纏うものに出来る限り『心』を込めて、その『存在』を他のものより優位にさせておくしかない。
 次いでカウルは、頭に被る鉄帽や戦闘服に手を当てて、『心』を注入した。──『鼓動』に習熟した者なら、体表全体から『心』を放出することが出来るのだが、まだ新兵で『鼓動』が未熟なカウルは、自分の手からしか『心』を放出できなかった。
「ハア……ハア……」
 なんとか精一杯装備に『心』を込めたカウルであったが、
──ブウウン!
 右舷前方の上空から、敵戦闘機が機首をこちらに向けて降下してきた。
「っ──!」
 息を飲むカウル。
 敵機は狙いを定めたように、カウルたちをいる右舷に真っ直ぐ突っ込んでくる。
──逃げ……
 身を隠そうととっさに辺りを見たカウルであったが、掩体はすでに半壊し、その陰にはシーナがいる。
──このままでは、自分も、倒れたシーナもやられてしまう。
 バッ!
 生存本能か──カウルの手が甲板に転がっていた小銃に伸びた。
 小銃を掴んだカウルは銃把を握り、すでに小銃に挿入されていた弾倉に左手を当てる。
 カウルの手のひらから光が漏れ、弾薬に『心』が注入された。
 そしてカウルは、ガシャン!と小銃の槓桿コッキングレバーを引いて小銃を構えた。

 銃口にある照星に敵機の機影が重なる。


「──ぉおおおおおっ!!」
 無意識のうちに腹の底から発せられた雄叫びとともに、カウルは接近する敵戦闘機に向けて、小銃を連射した。
 

 
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