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第1部
ストレイシープの罠
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どのくらいの時間を宮原の身体を抱き締め、宮原の黒髪を撫でていただろうか。
落ち着きを取り戻した宮原は沢海の胸で眠りにつき、宮原は無意識に自分の身体から、その温もりが離れないように沢海の身体に手を絡ませていた。
外れないように、解けないように、宮原の手は沢海を求め続けている。
沢海は何度も深呼吸をしながら興奮した勃起を抑え、宮原の背中を子守唄を歌うかのようにトントンと優しく叩く。
宮原の頬から顎にかけて幾筋もの涙の跡が残り、その表情を汚していた。
沢海は宮原の閉じられた目尻に口付けをすると、その涙の跡を拭うように唇を落としていく。
半開きの宮原の口から寝息が漏れ、沢海の唇が擽ったいのか時折、少し顔を背けたりしている。
『ーーー何やってんだ、オレは…』
宮原を不都合な理由でもう2度と泣かせはしないと強く決心をしていたにも関わらず、また宮原の頬に涙を流させてしまった。
宮原が快感に溺れる涙なら何度も泣かせてみたいと思うが、今回の宮原の涙は全く違う。
何よりも本能的な拒絶が引き起こした宮原の泣き声が、沢海の耳奥にこびり付いて離れてくれない。
自分の感情を表して、自分の欲望を与えて、自分自身の全てを差し出せば、宮原の心も身体も満たされていくと思っていた。
宮原の気持ちが自分の方へ向いていることも分かっていたし、自分自身も宮原がただ1人の大切な存在なのだと自覚もしていた。
お互いがお互いを尊重し合う事が出来れば、不可解な感情を持つ筈がないと沢海の中で軽率な考えがあった。
沢海が一番大切にしていた筈の宮原の無垢な感情が宮原自身から痛みを伴って欠けていた事に気が付けなかった。
未だに宮原の感情は壊れたままにも関わらず、宮原は沢海の事が好きなのだとその事実を持って、無意識に隠してしまっていた。
そして、その綻びが現れてしまった。
『ーーーこれじゃぁ、オレも宮原を犯した奴と一緒じゃないか…』
宮原の心の傷の深さに触れて癒せるのは自分しかいないのだと分かっていた筈なのに、表面上でしか触れず、実際はもっと深い場所で宮原が傷付いている事に対しては一切触れようとはしなかった。
ーーー知らなかった。
ーーー知ろうともしなかった。
ーーー分からなかった。
でも、その理由は沢海自身の都合の良い言い訳にしかならない。
宮原が触れてほしくない場所を勝手に抉じ開けて、引き摺り出して、結果的に宮原を傷付けてしまったという事実だけがそこにはある。
沢海の腕の中で眠りに就く宮原の頬を撫で、もう一度触れるだけの口付けをする。
宮原の体温を口唇で感じ、その温かさに安堵する反面、沢海はただ溜息を吐くしかなかった。
ーーーそれでも、オレは宮原を抱きたかった?
どれだけ心も身体も傷付くのが分かっていても、宮原を自分の手に入れたかった。
ーーーそれでも、オレは宮原を抱きたかった?
自分の心も身体も歯止めが効かないのだと、ただそれだけの直情的な理由が潜在意識の中であったのかもしれない。
ーーーそれでも、オレは宮原を抱きたかった?
もっと自分を見てもらいたい、もっと自分を好きになってもらいたい、もっと自分を愛してもらいたい。
宮原の手が緩み、沢海の上着から離されると、沢海は宮原の寝顔を見詰め、溜息を含んだ自嘲が漏れる。
「ーーー宮原…
…好きだよ。
お前の事、好きなのに…傷付けて、ごめん。
ーーーなぁ…
オレ、どうしたらいい?
どうすればいい?
宮原の事、好きなだけなのに…
ーーーなんで、上手くいかないんだろ…」
焦りと苛立ちが綯い交ぜになり、自分の中で処理をする事が出来ずに身体の中でヘドロのように凝り固まっていく。
沢海はベットから立ち上がると、そのまま寝室を出て行く。
リビングの時計を見ると午後9時を少し過ぎていた。
「ーーー電話、した方がいいよな…」
沢海はリビングのソファーに腰掛けると、ケータイを取り出し、電話をかけた。
「あ…オレだけど。
藤本、お願いがあるんだけどさ…」
落ち着きを取り戻した宮原は沢海の胸で眠りにつき、宮原は無意識に自分の身体から、その温もりが離れないように沢海の身体に手を絡ませていた。
外れないように、解けないように、宮原の手は沢海を求め続けている。
沢海は何度も深呼吸をしながら興奮した勃起を抑え、宮原の背中を子守唄を歌うかのようにトントンと優しく叩く。
宮原の頬から顎にかけて幾筋もの涙の跡が残り、その表情を汚していた。
沢海は宮原の閉じられた目尻に口付けをすると、その涙の跡を拭うように唇を落としていく。
半開きの宮原の口から寝息が漏れ、沢海の唇が擽ったいのか時折、少し顔を背けたりしている。
『ーーー何やってんだ、オレは…』
宮原を不都合な理由でもう2度と泣かせはしないと強く決心をしていたにも関わらず、また宮原の頬に涙を流させてしまった。
宮原が快感に溺れる涙なら何度も泣かせてみたいと思うが、今回の宮原の涙は全く違う。
何よりも本能的な拒絶が引き起こした宮原の泣き声が、沢海の耳奥にこびり付いて離れてくれない。
自分の感情を表して、自分の欲望を与えて、自分自身の全てを差し出せば、宮原の心も身体も満たされていくと思っていた。
宮原の気持ちが自分の方へ向いていることも分かっていたし、自分自身も宮原がただ1人の大切な存在なのだと自覚もしていた。
お互いがお互いを尊重し合う事が出来れば、不可解な感情を持つ筈がないと沢海の中で軽率な考えがあった。
沢海が一番大切にしていた筈の宮原の無垢な感情が宮原自身から痛みを伴って欠けていた事に気が付けなかった。
未だに宮原の感情は壊れたままにも関わらず、宮原は沢海の事が好きなのだとその事実を持って、無意識に隠してしまっていた。
そして、その綻びが現れてしまった。
『ーーーこれじゃぁ、オレも宮原を犯した奴と一緒じゃないか…』
宮原の心の傷の深さに触れて癒せるのは自分しかいないのだと分かっていた筈なのに、表面上でしか触れず、実際はもっと深い場所で宮原が傷付いている事に対しては一切触れようとはしなかった。
ーーー知らなかった。
ーーー知ろうともしなかった。
ーーー分からなかった。
でも、その理由は沢海自身の都合の良い言い訳にしかならない。
宮原が触れてほしくない場所を勝手に抉じ開けて、引き摺り出して、結果的に宮原を傷付けてしまったという事実だけがそこにはある。
沢海の腕の中で眠りに就く宮原の頬を撫で、もう一度触れるだけの口付けをする。
宮原の体温を口唇で感じ、その温かさに安堵する反面、沢海はただ溜息を吐くしかなかった。
ーーーそれでも、オレは宮原を抱きたかった?
どれだけ心も身体も傷付くのが分かっていても、宮原を自分の手に入れたかった。
ーーーそれでも、オレは宮原を抱きたかった?
自分の心も身体も歯止めが効かないのだと、ただそれだけの直情的な理由が潜在意識の中であったのかもしれない。
ーーーそれでも、オレは宮原を抱きたかった?
もっと自分を見てもらいたい、もっと自分を好きになってもらいたい、もっと自分を愛してもらいたい。
宮原の手が緩み、沢海の上着から離されると、沢海は宮原の寝顔を見詰め、溜息を含んだ自嘲が漏れる。
「ーーー宮原…
…好きだよ。
お前の事、好きなのに…傷付けて、ごめん。
ーーーなぁ…
オレ、どうしたらいい?
どうすればいい?
宮原の事、好きなだけなのに…
ーーーなんで、上手くいかないんだろ…」
焦りと苛立ちが綯い交ぜになり、自分の中で処理をする事が出来ずに身体の中でヘドロのように凝り固まっていく。
沢海はベットから立ち上がると、そのまま寝室を出て行く。
リビングの時計を見ると午後9時を少し過ぎていた。
「ーーー電話、した方がいいよな…」
沢海はリビングのソファーに腰掛けると、ケータイを取り出し、電話をかけた。
「あ…オレだけど。
藤本、お願いがあるんだけどさ…」
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