【R18】君に触れる、全てのものから

すぐる

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第1部

寝癖

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沢海はベットルームのシーツを敷き終えると、何事もなかったかのようにリビングに向かい、宮原を探す。

リビングのテーブルには剥離紙とハサミが置かれ、使用していないネキシオロジーテープがフローリングの床に転がっているのが見える。

沢海はリビングのソファーの背凭れから近付くと、宮原は眠気に襲われたのか身体を丸めて皮のシートに沈み込み、寝息を立てていた。

少し口を開けて呼吸をしている無防備な宮原の寝顔に呆れてしまう。

「…ったく、幸せそうに寝てんなよ…」

沢海は眠っている宮原の頬を抓ると、耳元で優しく話し掛ける。

「ねぇ。左膝のテーピング、見せてみて」
「…ん…」

沢海に声を掛けられると半分だけ意識があるのか、目を閉じたままハーフパンツを鼠蹊部まで捲ると、テーピングを巻き終えた左足を沢海の声がする方向へ黙って伸ばす。

完全に寝惚けている宮原に沢海はニヤリと悪い笑顔をする。

寝転がる宮原の踵を乱暴に掴むと、サッカー選手特有の血豆だらけの足の指を思いっきり引っ張り、宮原の意識を覚醒させる。

「…って…痛ってぇ!」
「あぁ、起きた?
ーーーテーピングの位置と張り具合を見るから、立ってみてよ」
「ーーーん……う、ん……」

痛みの刺激で一気に目覚めさせられ、2度目の寝起きでフラつく宮原は立ち上がってはいるが、沢海の胸の中に前傾姿勢で倒れ込みそうになる。

辛うじて自分の身体を支えてはいるもの、沢海の両肩に手を置くと、また目を閉じようとする。

沢海は態と自分の上半身を動かすと、力無く両肩を掴んでいた宮原の手が外れ、そのまま沢海の腕の中に身体が倒れていく。

ゆっくりと呼吸する宮原の息が沢海のTシャツに伝わる。
安心して甘えてくる仕草に愛おしさを感じ、自然と宮原のこめかみに唇を落とした。

ギュッと宮原の身体を抱き締めたくなる衝動を抑え、沢海は宮原の腰を何度も叩く。

「起ーきーろー!
ほら、ちゃんと立てって!」
「…うーん…
起きてるよぅ……」

宮原は眉間に皺を寄せて真っ直ぐに立ち上がると、沢海は宮原の側で膝を付き、左足の腿から膝裏、膝裏から脹脛までの筋肉の可動を確かめる。

沢海が指と手の平でテーピングの貼り方と位置を確認をしていると、宮原は内腿が擽ったいのか足を揺らした。

宮原はゆっくりと目を開けると上から視線を落とし、沢海の手慣れた処置を見ている。

「うん、いいね。
この位置の巻き方で大丈夫だ。
ーーー寝癖、ついてる」

沢海は立ち上がりながら宮原の髪を手櫛で梳くが、ピンと外向きに髪の毛が跳ねる。

「もう…こんなところで寝るからさぁ…
身嗜みくらいちゃんとしろよ。
ーーーこら!また寝るなって!」

宮原は何度も目を擦り、大欠伸をすると今度は自ら沢海の胸元に入り込み、自分の鼻先を押し当てる。
沢海のTシャツの胸元からバニラ系の甘い匂いが宮原の鼻を擽る。

「…バニラ、の…匂いがする…
アイスクリーム、食べたいなぁ…」
「ーーーは?……ったく。
ちょっと、待ってろってば!
宮原、寝るなよ!!」

寝惚けている宮原を沢海はソファーに座らせると洗面台から自分が普段使用しているワックスを持ってくる。

ワックスを指で掬い、手の平で伸ばすと宮原の両足の間に入り込み、真正面から屈む。

沢海が手を伸ばし、宮原の黒髪に触れる。
長めの前髪をサイドへ、サイドから後ろへ髪を手櫛で梳かされ、骨張った指が手慣れた仕草で毛先を整えていく。

沢海は自分の腕の中にいる宮原の前髪を纏める為に前屈みの状態から背を反らせると自然と顎が上がり、宮原はゆっくりと目を開ける。

抱き寄せられるような体制の心地良さに、沢海と至近距離で目が合い、宮原は沢海の舌が入れ易いように少しだけ口を開いて、また目を閉じる。

「ーーー?ーーー」

沢海が口付けをしてくれるような視線に呑まれ、宮原は黙って上を向いて唇の柔らかい感触を待つ。
赤く染まる舌を少しだけ口から出して、沢海の唾液の味を確かめようとする。

「ーーー??ーーー』

数秒の後、宮原は片目をゆっくりと開けると、宮原の直ぐ真正面で沢海の顔が笑っていた。

「……なっ…なんだよっ!」
「なんだよっ!宮原!」

宮原の言葉をそのまま沢海が揶揄うように真似る。

沢海の甘い口付けを少しだけ期待して待っていた数秒の時間に宮原は1人で恥ずかしくなり、赤面してしまう。

ニヤニヤと笑っている沢海の胸を乱暴に押し退け、近過ぎる身体の距離を取る。

「期待した?」
「ーーーなっ……期待って?
…して、してないよっ!」

耳朶まで真っ赤に染め、見透かされたかのように動揺する宮原に沢海は優しく笑うと、相反するように冷たい言葉を吐いた。

「ーーー宮原、あのさ……
先に学校行ってて。
オレ、シャワー浴びてから行くから」
「ーーーえ……」

唐突に突き放される沢海の言葉に宮原は一驚すると表情の色が瞬く間に消え、固く強張ってしまう。
無意識に宮原の右手が沢海のTシャツの裾を掴み、「なんで?」「どうして?」と声にならない意思を伝えてくる。

グッと握り締められた宮原の指を解く事もせず、沢海は困ったような顔をして含羞む。

宮原は完全に俯き、不安定な感情を自制するように下唇を噛んでいる。

『ーーーやっぱり、いきなり1人で学校に行けって言われても…
……理由なんて分かる訳ないよな……』

意気消沈する宮原をソファーから立ち上がらせると、宮原は不安そうに沢海の顔を覗き込んでくる。
その瞳の奥が水を湛え、ゆらゆらと波立つ。

沢海は少し乱暴に宮原の身体を引き寄せ、腕の中に強く抱き締めると自らの下半身を宮原に押し付けた。

「ーーー!」

沢海のTシャツには隠れてはいるが勃起したペニスがボクサーパンツ越しに分かり、宮原は身体を竦ませ、腰を引く。
沢海は逃げようとする宮原の身体を捕まえると後ろ手に回し、更に下半身を密着させると堪らずに宮原が声を漏らす。

「ーーーあっ……」

起立したペニスを宮原の下腹部にゴリゴリと押し当てると布地の上から何度も腰を上下に動かし、擬似性行を彷彿とさせる。

沢海の剛直の根本から強く擦り上げられ、時折ペニスのカリの括れを引っ掛けられ、居た堪れずに宮原は沢海から顔を背ける。

下を向く宮原の視界の中に、沢海のボクサーパンツが見え、中で圧迫しているペニスの形がハッキリと分かる。
見てはいけない事を見てしまったかのように、宮原は慌てて視線を彷徨わせる。

「あ、あのーーーご…ごめ…ん……」

沢海は宮原の頭をポンと叩く。

「…謝って欲しい訳じゃないんだ…
ただーーーちょっとオレにも時間をちょうだい。
コレだと部活にも出れないから、さ…」

静かに頷く宮原に沢海が手を伸ばす。

「宮原」
「ーーーはい」

明らかに気落ちしている宮原の頬を癒すように撫でるとそのまま顎を持ち上げ、触れるだけの口付けをする。

「ーーー沢海…先…輩ーーー」

宮原は視線の先にある沢海と自分の強張る指先を何度も視線を動かすと、言いたい言葉を咽喉で飲み込む。

その様子に沢海は気を咎め、心の中で「…ゴメン」と呟いた。


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