体の自分と心の彼女

はっくん

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3章

いじめ

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 転校して間もない時は通話がメインで、長い間なんて事のない話をしていたが、いつの日か話の時間が短くなってきて、頻度は少なくなっていった。半年経ったある日、彼女から突然電話がかかってきて、出ると声が震えており、「助けて」と言われた。何があったのかを訪ねるとかおりは、ぼくが転校してから止まっていたいじめが再開したことを僕に告げた。「もうしんどい、いじめられるためだけに学校に行っている感じがする。親には迷惑をかけたくないし、先生は気づいているのに見て見ぬふりをしてる。」僕は今持っている言葉をすべて使い、かおりを励ました。「あの時の約束で辛い思いをしているならごめん。俺はずっとかおりの味方やからしんどくなった時はいつでも声かけて!今からそっちに行こうか?」といった。あの時の約束とは、「今後は人に対してきつい口調で当たるのではなく、優しく接する。常に笑顔を保つ。そのうえで友達を作る。」という僕がかおりに対して求めた約束である。一人で遊ぶのも楽しいが、友達と遊ぶ方がもっと楽しいことを彼女には知ってほしかったから決めたのだが、いつかそれは目標ではなく足枷となっていたと今では感じている。結局、彼女はその後「もう大丈夫だから・・・」と言い続け結局救いにはならなかったと思う。
 あの日から電話が途絶えてしまい、こちらから掛けても出ない日が続いた。ある日、知らない番号から電話がかかってきておそるおそる出ると「お世話になっております。藍川かおりの母です。山岡優斗さんの携帯で間違いないでしょうか?」と言われて大きな声で「いつもお世話になっております。山岡優斗です。」と返した。何秒か間隔があいて、お母さんからかおりについて話してくれた。「うちのかおりの件で山岡君には伝えておきたいと思って今日電話をかけさせてもらいました。今、かおりは学校ではなく滋賀県の病院で生活しています。いじめについて山岡君はかおりから話は聞いていたと思うんだけど、それがあって今のかおりはうつに近い状態になっていて記憶がフラッシュバックするたびに自分の体を傷つけてしまうようになっているの。携帯を見るといじめを思い出してしまうと私は考えたから今は一時的に封印していて、いくら山岡君が掛けてもつながらなかったと思う。その件に関して謝りたいと思って・・・ごめんなさい。」と悲しい声で教えてくれた。その時、言葉を出すことも不自由なぐらいに固まってしまい、自分に対する怒りと何もしてやれない悲しみが湧いてミュートで叫ぶことしかできなかった。
そしてお母さんはいじめた人やその内容についても教えてくれた。「かおりにいじめを起こした人達は元々からかおりに対していいように思っていなくて、集団でいじめていたみたい。いじめの内容としてはトイレに入ろうとしても道をふさがれて通れないようにして、漏らしてしまった姿をSNSに挙げて知らない人にも嫌われるように仕向けていたり、シンプルな暴力や物がなくなったりする日が毎日続いたみたい。私たちは何も助けてあげることが出来なかった。」ちなみにいじめた子の主犯格の子の将来の目標は警察官というのがまた腹が立つ原因である。
お母さんはその後「手紙で今後はやり取りするのはどう?それなら大丈夫だと思う」と言ってくれて僕は「ありがとうございます。住所を教えてもらってもいいですか?」返した。
 お母さんとの話が終わって今自分に出来ることを考えに考えた結果心理カウンセラーになることを目指して少しでもかおりの気持ちを理解できる人になりたいと思った。その思いを手紙に書いて精神病院充てに送った。後日、かおりから手紙が帰ってきた。「拝啓 山岡優斗君へ まずはこんな形でのやり取りになってしまいごめんなさい。これまで人とあまり関わることがなかったから、もしかしたらみんなの嫌がることをしてしまったのかもしれない。だから約束をまもれなかった。でも、私が電話をかけた時に今すぐに行こうかって言ってくれた時はほんとうに嬉しかったし、生きるいみを失っていた私におおきな夢が出来ました。それは、心理カウンセラーになることです。優斗の今の夢と同じだったから最初はびっくりした。今私は辛い状況にいるけど、だからこそ人の気持ちを理解できることが出来ると思うの。だから、優斗は私のために心理カウンセラーになるんじゃなくて、もっとおおくの人に愛される夢を見つけてください。それが私が優斗に与える約束です。絶対に約束ね!破ったら別れます(笑)」文字は昔よりも見にくく、所々漢字が抜けていて昔のかおりとはかけ離れた物だったが、かおりらしい手紙で見終わったときには涙がこぼれた。
 心理カウンセラーは彼女こそなるべき仕事だと思った僕は、多くの人に愛される職業を探した。お笑い芸人やバンドマンなど普通とは異なる職業をいろいろ考えたのだが、心の中にはかおりのような思いをもう誰もしてほしくないという気持ちがあった。前までかおりに守られてきた僕だからこそ、今度はかおりやいじめられている人を救えるように。
 だから僕はこの世で一番嫌いな職業であった教師という道を選んだ。
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