23 / 42
23.夜泣きと情けない俺
しおりを挟む宮殿を出ると決めてからの行動は、我ながらはやかったと思う。
御者の人とは前から仲良くしていたからか、何も聞かずに街まで送ってくれた。今の送迎もこの人がしてくれている。
街についたらまず仕事から探したのだが、運良く食堂で住み込みの仕事を見つけることが出来たため、すぐに面接を申し出たら「そんなもの必要ない。採用」と女将さんに言ってもらえたのでその日から住むことになった。
開業時間は午後からでちょうどよく、定休日も続けて週に3日あるので遠出するにしても困らないし、お客さんも蒼葉のことを可愛がってくれるので安心して働くことが出来ている。
だだ宮殿を出てから1週間。蒼葉の夜泣きが日に日に酷くなっているのが気がかりだ。世の中の5歳が夜泣きするかは分からないが、今日は2時間に1回は必ず起きている
今は深夜2時。蒼葉を抱いて部屋の中をぐるぐると歩いているが、中々泣き止んでくれない。
本人は寝ながら泣いているので、起きたらケロッとしているし、体調にも問題は無いのでまだ助かっているが。
環境に慣れないことと、姉や義兄が恋しくなってくる時期が重なって強いストレスを感じているんだと思うけど、日中は寂しいも何も言わないので本心が分からない
たった5歳の感情も読み取れないなんて、自分が情けないし、こんな時姉ちゃんや義兄さんだったらどうするだろうかと考えて、無性に心細くなって蒼葉と一緒に泣いてしまう。
帰る方法も何も見つかっていないし、唯一出来た友人たちを頼ることが出来ないこの環境も、自分で選んだとは言え少ししんどいものがある。
それに俺が宮殿を出たことに、王妃と冠男はめちゃくちゃに怒っていたから、そろそろほんとに殺されそうな危機を感じている。
結界を張っている限りなんの問題もないのだが、やはり人に命を狙われているという危機感は気持ちいいものではない。
もし、この世界にずっといることになった時のことも考えないといけないのだろうか。もし何かの拍子に俺が死んでしまったら蒼葉はどうなるのだろうか…
ここに来てから、ネガティブで女々しい事ばかりを考えてしまう。たぶん俺も弱っている。
「星の精霊くん。星を映してくれないか。」
「まかせてよ」
お願いするとどこからか少年の声がして、天井一面に星をうつしてくれる。自分の意思で魔法は使えなくても、精霊に頼めば答えてくれることはここに来てから知ったことだ。
ネガティブな事を考え始めると永遠に負のループに入るので、星を眺めて寝ることが日課となりつつある。
いつの間にか泣き止んですやすや寝息を立てている蒼葉と一緒にベットに入り、いい加減、現実をしっかりと受け止めて行動しようと考えながら目を閉じる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
237
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる